マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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どうした? なにを呆けている――IF話はまだまだこんなものではない!

スリップ・ストリームだ! 私の後に続け!!





そんな具合で今回のIF話はリクエストから――

「神崎に気楽にデュエルして欲しい」

「本編でペンギンの人が言っていた『BIG5とのデュエル交流』の話」

「本編のVSモクバ戦のような背負うもののないデュエル」

「休暇を上げて」

などを纏めさせて頂きました。




第218話 IF話 熱きおっさんたち

 

 

 BIG5たちは、何かと便宜を図ってくれる神崎の労をねぎらうべく、BIG5+神崎の6人で飲みに出ていた。

 

 だが、ふと「そう言えば神崎の家に行ったことはないな」との話題が上がり、神崎の城ことお家訪問タイム――そう、宅飲みの流れへ。

 

 

 その流れになったのだが、神崎がBIG5たちを案内した場所は見慣れたマンションが見えるばかり。そう、彼らが「それ」を見間違える筈がない。

 

 何故なら――

 

「社員寮だな」

 

「社員寮ですね」

 

 

 KCの社員に宛がわれた所謂「社員寮」なのだから。

 

 

「ふぇー! 神崎くん、貴方! 社員寮に住んでるんですか!?」

 

「はい、帰って寝るだけですから」

 

――最近は寝てすらいないですが。

 

 

 《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧が仮にもBIG5と肩を並べる立ち位置の癖に、社員寮暮らしであったことに驚愕の声を上げるが、神崎は「帰って寝るだけ」の場所に興味は皆無だった。

 

 それに加え、最近――冥界の王の力を得てからは、偶に掃除に帰るくらいである。

 

「仮にも上に立つ者として、それはどうなのかね」

 

「そこまでにしておけ――今更、他の場所に移動する方が億劫だ」

 

 そんな中《深海の戦士》の人こと大下の苦言が投げかけられるが、《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門が手で制する。

 

 もはや乗りかかった船ならぬ、訪れかけた住処――酒の入った状態で、おっさんにこれ以上の長距離移動は面倒臭いのだ。

 

 そうして踏み入れた先は――

 

「せっっっっまッ!! ウサギ小屋ですか此処は!?」

 

 普通のワンルーム。《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧が肩身の狭さに文句を漏らす程だ。

 

「大の男が6人も集まれば狭いだろうさ」

 

「一人住まいなら、無問題でしょうねぇ」

 

 しかし《深海の戦士》の人こと大下と《ジャッジ・マン》の人こと大岡の言う様に、1人暮らしの部屋は、おっさんが6人も集まるようには出来ていない。

 

 

 そんな中、《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門が備え付けの冷蔵庫を開くが――

 

「とにかく飲み直そう。神崎、冷蔵庫…………ビールの1本すらないか」

 

「食材の類すら見当たらんぞ」

 

「買い置きはしないタイプなもので」

 

――食事はその辺でサバイバルで済ませますし。

 

 その後ろで冷蔵庫の中身を見た《機械軍曹》の人こと大田の呆れた声を裏打ちするような神崎の言葉通り、このワンルームには何もない。

 

 生活感皆無の一室――いや、実際「生活」に殆ど利用されていない以上、生活感が出る訳もないのだが。

 

 ゆえに、いつもの張り付けた笑顔の神崎へ、「マジか、お前」な5つの視線が突き刺さる中――

 

「カップ麺くらいあるだろう? あれで――」

 

「ないようだね」

 

 《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門が最後の戸棚を開けるが、《深海の戦士》の人こと大下の言う様に、そこには何もない。このワンルームには何もかもがなさ過ぎる。

 

 話の種どころか、飲み会場所にすら適していないレベルだ。

 

 

「神崎くん! 貴方、修行僧かなにかですか!? もっとお金を使いなさい! お金を!!」

 

「キミのワーカーホリックさは知っていたつもりだが、此処までとはな――正直、舐めていたよ」

 

 ゆえに《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧と《深海の戦士》の人こと大下が苦言を呈するが、当人は笑って流すスタンスらしく、右から左である。人生投げ捨てスタイルの神崎がデカい家を建てても、寂しいだけだろう。

 

 

 そして狭いワンルームにて6人のおっさんがやいのやいのする中、《機械軍曹》の人こと大田が数少ない家具であるテーブルに此処に来るまでに買っておいた酒の類をドンと乗せた。

 

「言いたいことは分からんでもないがもう止せ、儂はさっさと飲み直したい」

 

「ではグラスをご用意します」

 

 それを合図とするように渋々テーブルの周りにBIG5たちが仕方なしに腰を落とす中、神崎はグラスの類を用意し始める。

 

 そうして、この場から離れた神崎をチラと警戒しつつ見た《ペンギン・ナイトメア》大瀧は、一室にテーブル以外に唯一あった家具――ベッドの下へと手を突っ込んだ。

 

「なにをしておるんだ、大瀧」

 

「ベッドの下には男のロマンが眠っているのです! この大瀧 修三! なにが出ようとも笑って肩を叩き合うことを誓いますぞ!!」

 

 《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門の訝し気な視線に《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧から意気揚々と宣言されるも、その内容に《深海の戦士》の人こと大下と《ジャッジ・マン》の人こと大岡はそれぞれ呆れた声を漏らす。

 

「相変わらず子供じみたくだらない真似を……」

 

「酒が回り過ぎてますねぇ」

 

「フッ、なに――儂ら含めて男はいつまでもガキのままだ」

 

 だが、《機械軍曹》の人こと大田だけは楽し気にクツクツと笑っていた。

 

 己が愛する工場で日夜ロマンを追い続ける彼の内には、未だに少年心がヒャッハーしている。多分、死ぬまでヒャッハーしている確信が彼にはあった。

 

 

 そうして子供じみた家探しが密かに行われる中、何も知らずに人数分のグラスをおぼんに乗せた神崎が戻って来れば――

 

「グラスは人数分あったので――って、何をなされているんですか、大瀧さん?」

 

「ふはははは、もう遅いですぞ、神崎くん! 貴方のロマンは今、白日の元に晒されるのです!!」

 

 ベッドの下の獲物の感触に《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧がクワッと目を見開き、腕を突きあげ「とったどー」と高らかに宣言。

 

 その手に収まるのは1枚のポスターのような大きさの代物。

 

「ポスター……かの?」

 

「グフフ、では早速――オープン!!」

 

 一体なにが描かれたポスターなのか首をかしげる《機械軍曹》の人こと大田を余所に《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧の手により勢いよく広げられれば――

 

 

 

「これ……は」

 

「デュエルマットだな。正式販売されたヤツだ」

 

「貴方も購入したんですねぇ」

 

 《深海の戦士》の人こと大下、《機械軍曹》の人こと大田、《ジャッジ・マン》の人こと大岡が三者三葉の反応を示すように、ソリッドビジョンシステムが内蔵されたテーブルデュエル用のデュエルディスクならぬ「デュエルマット」である。

 

 場の空気になんとも言えぬ雰囲気が漂う――圧倒的、圧倒的、話題不足!

 

「はい、日常での使用から改良点が見つかる可能性もありますから」

 

 やがて、それらしい理由とともにテーブルに人数分のグラスを並べていく神崎だったが、ここにきて《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧は激怒した。

 

「かぁー!! また仕事! 仕事仕事で仕事に仕事ですか!!」

 

「訳の分からないことになってますよぉ」

 

 発言の意図を計りかねる《ジャッジ・マン》の人こと大岡が溜息交じりに呟くが、当の《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧はグラスに注がれたビールをグビッと飲んで気持ちのリセットをするのに忙しい様子。

 

 そんなおっさんの代わりに、今の彼の心情を平たく表せば「つまんねぇ!!」と言ったところか――逆切れも甚だしい。

 

「折角だ。酒の肴に一勝負してみるか――場所、取ってくれんか?」

 

「地面に置けばいいだろう」

 

「それでは、ソリッドビジョンが見え難いだろうが」

 

 それでも退屈しのぎと《機械軍曹》の人こと大田と《深海の戦士》の人こと大下がデュエルの準備のやり取りを余所に《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門はデュエルマットのサイズを見ながら今後の商品展開に意識を巡らせる。

 

「普段使いも可能な専用の簡易テーブルがあれば便利かもしれんな」

 

「こうなったら、神崎くん! デュエルです! 仕事ばかりの貴方に、私のペンギンちゃんデッキで癒しを叩きつけてやろうじゃないですか!!」

 

 だが、そんな彼らのやり取りを余所に、テーブルに並ぶグラスやら缶ビールやらを一気に隅に寄せた《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧は、テーブルに、ふんだくったデュエルマットを乗せ、ついでに自身のデッキを乗せて、神崎を指さす。

 

「それをKCで売り出す旨味は見えないな」

 

「その手の会社に話でも持って行っても面白いかもしれんぞ」

 

 《深海の戦士》の人こと大下と《機械軍曹》の人こと大田の会話を余所に、デュエルの流れが止められなかった神崎は、デッキを取り出してデュエルマットの所定の位置に乗せつつ、前世の卓上でのデュエル方式を懐かしみながら――

 

「ではデュエル」

 

「デュエル!!」

 

 

 酔っ払い相手のデュエルが幕を開け、《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧は、己が相棒たるペンギンたちを次々に展開していった。

 

 

「どうですかねぇ――あまりKCが手を伸ばし過ぎるのも反感を買いますよぉ」

 

 そうしてギャラリーの1人《ジャッジ・マン》の人こと大岡が、「デュエルマット用のテーブル」の需要を酔いの回った頭で議論する中、《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧のフィールドには――

 

「どうです! 魔法カード《同胞の絆》により、集ったペンギンちゃんたちの愛らしさは! 最高でしょう! 永続魔法《水舞台(アクアリウム・ステージ)》のお陰で水属性モンスター以外では破壊できません!!」

 

 4体のまつげが翼のように長いもの、剣をもったもの、×印の看板をもったもの、氷のアーマーで身体を覆ったもの――それぞれ特徴的な4体のペンギンが、テーブルの上でところせましとデフォルメされた身体で並ぶ。

 

 

大瀧LP:2000

《トビペンギン》 《ペンギンナイト》 《否定ペンギン》 《極氷獣ポーラ・ペンギン》

水舞台(アクアリウム・ステージ)

VS

神崎LP:4000

 

 

 やがてターンを終えた《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧の布陣は、お得意の永続魔法《水舞台(アクアリウム・ステージ)》により、疑似的な戦闘耐性を有したまさに鉄壁ンギンの構え。

 

「水属性のいない神崎くんのデッキでは太刀打ちできません! なはははは!」

 

「では大瀧さんのフィールドの4体のペンギンカードを2体ずつリリースし、2体の《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》を特殊召喚します」

 

 その構えは、大瀧の4体のペンギンが全て大地から噴出したマグマに呑まれたことで消えた。泳ぎが得意なペンギンたちでもマグマの中は泳げない。

 

「ペ、ペンギンちゃーん!?」

 

 やがて大瀧の愛するペンギンちゃんの命を喰らい、デフォルメされたマグマの化け物が2体ばかり並んだことで、周囲に熱気が立ち昇るようなエフェクトが流れる。

 

 そんな中、神崎は速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》で《ハネクリボー》を呼び、ターンを終えた。

 

 

大瀧LP:2000

《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》×2

水舞台(アクアリウム・ステージ)

VS

神崎LP:4000

《ハネクリボー》

伏せ×1

 

 

「ペンギンちゃんが悍ましい温暖化の化け物に……!? 温暖化はペンギンちゃんの大敵だというのに……!!」

 

だが、今の《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧は愛らしいペンギンちゃんたちの見るも無残な光景を見せられ、歳のせいか涙が零れそうになる――否、酒のせいである。

 

「煩いぞ、大瀧。今、真面目な話をしとるんだ」

 

「このままでは温暖化の化け物どものせいで、私のライフは次のターンに尽きる……ですが、《ガード・ペンギン》ちゃんがくれば! まだ耐えられます!!」

 

 しかし《機械軍曹》の人こと大田のヤジにもめげず、絶体絶命な大瀧はデッキのペンギンちゃんたちの愛らしい姿を思い浮かべ、己を鼓舞した後、デッキに手をかけ瞳を閉じた。

 

 このままでは《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》2体それぞれの1000ポイントダメージ――合計、2000のダメージで残りライフ2000の大瀧は敗北する。

 

 だが、此処で《ガード・ペンギン》を引けば、ダメージを受けた際に特殊召喚され、その分回復する効果により、大瀧のライフは辛くも残り、反逆の狼煙を上げることが出来るのだ。

 

「温暖化の化け物どもを亀で射出し、神崎くんにペンギンちゃんの怒りの鉄槌を喰らわせて差し上げますよ!! さぁ、ペンギンちゃんたち! 今こそ私に力を!!」

 

 そしてペンギンを愛する想いならば誰にも負けない自負のある大瀧は、次のドローでペンギンちゃんカードを「必ず引いて見せる」と心に誓ってカードを引き抜いた。

 

「――ドロォオオオ!!」

 

 

《ボルト・ペンギン》

 

 

「ぐぁぁああぁああぁ!!」

 

大瀧LP:2000 → → 0

 

 

 ペンギンちゃんを愛するあまり、優劣をつけられぬ大瀧の優しさが招いた敗北だった。

 

 《ガード・ペンギン》だけを望むような真似が彼に出来る筈もない。

 

 

 愛するペンギンちゃんを守れなかった後悔が《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧の心を苛み、悔し気にテーブルをバンと叩いた。

 

「くっ、温暖化攻撃とは卑劣な! もうひと勝負です、神崎くん!! ペンギンちゃんの仇を――」

 

「失礼。電話が」

 

「あっ、どうぞ、どうぞ」

 

 だが、ペンギンちゃんの大敵である温暖化攻撃(今名付けた)には負けられないと、再度勝負を挑もうとした《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧だが、コール音の鳴る電話を取り出した神崎をササッと見送り――

 

「ならば、大岡!! BIG5最弱の貴方を倒し、溜飲を下げさせて貰いますよ!!」

 

「ほう、私ならば勝てる……と――いつまでも私が過去のままだと思わないことですね!!」

 

 BIG5の中で一番デュエリストとして未熟な《ジャッジ・マン》の人こと大岡に勝ち星を取りに行った。

 

 今の《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧のデッキは、まさに勝利のみを追い求める――ヘルペンギンちゃんデッキである(なお、デッキ内容は同じ)

 

 

 

「 「 デュエル!! 」 」

 

 

 そうしてデュエルの攻防が繰り広げられるが、思う様に攻め切れない事実に大瀧は歯噛みする。

 

 大瀧のペンギンの軍勢の前に立つのは――

 

 剣先の伸びる尾と、左右の手に収まる二本の剣を構える鎧姿の戦士、《アーメイル》に

 

 緑の蛇のような体に翼の生えた一つ目のドラゴン《一眼の盾竜(ワンアイド・シールドドラゴン)》と、

 

 コウモリのようなサングラスに青いバトルスーツを着込んだ拳士《格闘戦士アルティメーター》。

 

 

 これら3体は攻撃力も低く、効果も持たない通常モンスターだ。しかし――

 

「どうです! 私の場の3体のモンスターの攻撃力は全て700! 永続罠《ガリトラップ-ピクシーの輪-》によりペンギン共は攻撃できない!!」

 

「くっ、大岡の癖に生意気な!!」

 

 その3体のモンスターの周囲にはとても小さな妖精が円を描くように舞い、水色の壁を形成している。

 

 それらの存在ゆえに、デュエルマットに並ぶペンギンちゃんたちが大瀧に「無理無理」と言わんばかりに前ヒレをパタパタする仕草に大瀧は癒されつつも、想定外の苦戦に再度咆えた。

 

「大岡! どうして私に気持ちよくデュエルさせないのです!!」

 

「同じ攻撃力ゆえに、全て『最も低い攻撃力』となる――攻撃制限ロックか」

 

「通常モンスターでロックビートするなら、もっと打点のある奴を使ったらどうかね?」

 

 そんな理不尽な叫びを余所に酒を飲みつつ観戦ムードな《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門と、《深海の戦士》の人こと大下が、デッキの改善案を示すも《ジャッジ・マン》の人こと大岡は鼻で嗤って返す。

 

「ふっ、これだから数字でしかものを語れない人間は駄目なんですよ」

 

「ならば、こうです! 亀で、《トビペンギン》ちゃんを射出!!」

 

「うぐっ……!?」

 

 だが、そう嗤う大岡の代わりにデュエルマットにプレイヤーとして立つチェスのルークの駒に、《カタパルト・タートル》の背中のカタパルトから射出された《トビペンギン》は長いまつげの翼を広げて3体のモンスターを飛び越えて着弾。

 

大岡LP:4000 → 3350

 

 

大瀧 LP:4000

《ボルト・ペンギン》 《カタパルト・タートル》 裏守備モンスター

水舞台(アクアリウム・ステージ)》 伏せ×1

VS

大岡 LP:3350

《ア―メイル》 《一眼の盾竜(ワンアイド・シールドドラゴン)》 《格闘戦士アルティ・メーター》

伏せ×1

 

 

 そうして《カタパルト・タートル》の射出効果によるバーン戦術に切り替えた大瀧は、自分のターンエンド宣言と共に高笑う。

 

「ははははは! 貴方が幾ら攻撃を制限しようとも、永続魔法《水舞台(アクアリウム・ステージ)》に守られたペンギンちゃんを倒せなければ、私に攻撃も出来ないのですよ!!」

 

「ふっ、それはどうでしょうねぇ――魔法カード《融合》!!」

 

「自らロックを崩す気ですか!?」

 

驚愕の声を漏らす大瀧の眼前のテーブル上にて、光の輪となった《一眼の盾竜(ワンアイド・シールドドラゴン)》を半透明になった《ア―メイル》が通り過ぎれば――

 

「集いし竜が、太古の力を呼び起こす! 光さす道となれ! 融合召喚! 飛翔せよ! 《魔装騎士ドラゴネス》!!」

 

 土色の兜と鎧を纏い緑の手甲と肩アーマーをつけた二刀流の剣士が背中から生える竜の翼を広げ、なんか星屑っぽいエフェクトを光らせる。

 

《魔装騎士ドラゴネス》 攻撃表示

星3 風属性 戦士族

攻1200 守 900

 

「まだです! 2枚目の魔法カード《融合》発動!」

 

 そしてお次は《格闘戦士アルティ・メーター》が描いた光の輪を骸骨こと《ワイト》が通れば――

 

「集いし骨が、此処に友情(遊城)を紡ぎ出す! 光さす道となれ! 融合召喚! 出でよ! 《アンデット・ウォーリアー》!!」

 

 光の中から肩アーマーだけをつけた骸骨の剣士がクルリと膝を抱えながら1回転した後、両足を左右に広げ、拳を突き出すモーションを取りつつ現れた。

 

《アンデット・ウォーリアー》 攻撃表示

星3 闇属性 アンデット族

攻1200 守 900

 

「《魔装騎士ドラゴネス》に《アンデット・ウォーリアー》か……これまた渋いチョイスを……」

 

「それに加え、魔法カード《簡易融合(インスタントフュージョン)》で2体目の《魔装騎士ドラゴネス》を呼び出した。此方は攻撃できない――となれば、3体の生贄……は、元々揃っていたか」

 

 そして展開を終えた大岡のフィールドを眺める《機械軍曹》の人こと大田と、《人造人間サイコ・ショッカー》大門が推し量る が、大瀧は「その程度」と強気に返す。

 

「はんっ! 融合しても、その攻撃力はたった1200! 効果すら持っていない身では、ペンギンちゃんには勝てません!!」

 

 なにせ、2種とも攻撃力が秀でている訳でもなく、効果を持っている訳でもない――大瀧のペンギンたちを倒すには些か力不足だ。

 

 とはいえ、全て同じ攻撃力の為、永続罠《ガリトラップ-ピクシーの輪-》の攻撃制限により防御面は維持されているが。

 

「魔法カード《クロス・アタック》! さらに魔法カード《威圧する魔眼》! さらにさらに《ワイト》を召喚し、永続魔法《ウィルスメール》!!」

 

 だが、大岡の3枚のカードにより、勝負の流れは大きく変化を見せる。

 

「ほう、これで《魔装騎士ドラゴネス》と《アンデット・ウォーリアー》、そして《ワイト》のダイレクトアタックが可能になったか」

 

 そう、《深海の戦士》の人こと大下が評すように――

 

 同じ攻撃力の2体の内、一方の攻撃権を放棄することでダイレクトアタックが可能になる魔法カード《クロス・アタック》。

 

 攻撃力2000以下のアンデット族モンスターをダイレクトアタックが可能にさせる魔法カード《威圧する魔眼》。

 

 そしてレベル4以下のモンスター1体にダイレクトアタックを可能にさせる永続魔法《ウィルスメール》。

 

 

 これらにより、大岡のモンスターたちは、大瀧を守るペンギンたちの壁を飛び越えることが出来る。

 

「ただいま戻り――」

 

「これもくらいなさい! 行くのです、《ワイト》! ソニック・エッジ!!」

 

 黒い外套を羽織っただけの骸骨が、スピードスケートの選手のように足の骨を滑らせ、左右に動きながら突き進み、大瀧へ回し蹴りを放ち、

 

「続けて――行けっ! 《アンデット・ウォーリアー》!! スクラップ・フィストソォオオオォドッ!!」

 

 勢いよく跳躍した《アンデット・ウォーリアー》が右拳を構えて急降下し、右拳を突き出しながら大瀧へ、拳を振るい、

 

「まだです! 《魔装騎士ドラゴネス》! シューティング・ソニックブレェエェエエェド!!」

 

 胸を反るような仕草で星屑っぽいエネルギーをチャージした《魔装騎士ドラゴネス》がブレスを吐く仕草とともに、己の体で光の矢と言わんばかりに突撃し、剣で鋭い突きを放つ。

 

「ぬわぁぁぁぁああぁあ!!」

 

大瀧LP:4000 → 2800 → 1600 → 1300

 

「これでライフは逆転しましたよぉ」

 

「くっ、大岡の癖に生意気な!!」

 

 人によっては見覚えがある三者三様の攻撃が通った事実にドヤ顔を見せる《ジャッジ・マン》の人こと大岡に、グギギ顔を見せる《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧。

 

――遊星!? いや、ただの偶然か……

 

 そしてビニール袋片手に戻った神崎が、「遊戯王5D’sで見たことあるやつ!?」な《アンデット・ウォーリアー》周りのやり取りに困惑する中、《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門が軽く手を挙げて声をかけた。

 

「おお、戻ったか、神崎。しかし買い出しまで……そう、気を使って貰わずとも構わんというのに」

 

「『ついで』でしたから。デュエルはどうなっていますか?」

 

 やがてビニール袋の中からひとっ走り買い出しにいった酒のつまみを取り出す神崎は、現在のデュエルの様子を問えば、《深海の戦士》の人こと大下の実況の声が聞こえる。

 

「ふむ、永続魔法《ウィルスメール》のデメリット効果により、バトルフェイズ終了後に《ワイト》が墓地に送られたことで、永続罠《ガリトラップ-ピクシーの輪-》の攻撃制限ロックも復活する」

 

「大瀧のダメージソースが1ターンに1度の《カタパルト・タートル》に依存しとる以上、大岡が削り切るのが早いだろうな」

 

 そして《機械軍曹》の人こと大田も、《ジャッジ・マン》の人こと大岡の有利を確信し始めるが――

 

「ふはははは! 甘い、甘すぎですぞ、その計算! 罠カード《戦線復帰》! これで墓地のペンギンちゃん1体を守備表示で復活です!!」

 

 大瀧のフィールドに水飛沫が上がったと思えば、その先から氷の外殻をまとったペンギンが跳び出した。

 

「おいでなさい、プリティ・ボディ! 《極氷獣ポーラ・ペンギン》!! 特殊召喚時、相手モンスター1体を手札に戻します! お消えなさい、《魔装騎士ドラゴネス》!!」

 

「ロックを崩す気か」

 

 大門の言う様に、《ガリトラップ-ピクシーの輪-》は自軍モンスター1体では効果を発揮しないカードだ。残った《魔装騎士ドラゴネス》も魔法カード《簡易融合(インスタントフュージョン)》のデメリットでエンド時に破壊される以上、大岡の守りは瓦解する。

 

 

「甘いィ!! カウンター罠《パラドックス・フュージョン》! 私の融合モンスター1体――《魔装騎士ドラゴネス》を2ターン後の未来まで除外し、そのペンギンの戦線復帰を無効!! 飛べない鳥はお消えなさい!!」

 

「ペ、ペンギンちゃーん!!」

 

 かと思われたが、フィールドに戻ろうと跳び上がっていた《極氷獣ポーラ・ペンギン》が《魔装騎士ドラゴネス》の剣のフルスイングによって、お空にホームランされる結果となった。

 

「魔法カード《簡易融合(インスタントフュージョン)》の自壊も回避したが――焦ったな、大瀧。次のターンに発動しておけば、相手のロックを崩せただろうに」

 

 《機械軍曹》の人こと大田の解説を余所に、悔しさからかうつむく《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧。

 

 

大瀧 LP:1300

《ボルト・ペンギン》 《カタパルト・タートル》 裏守備モンスター

VS

大岡 LP:3350

《魔装騎士ドラゴネス》 《アンデット・ウォリアー》

《ガリトラップ-ピクシーの輪-》 《ウィルスメール》 伏せ×1

 

 

――大瀧さんの有利か。

 

 そうしてBIG5たちの実況とデュエルのやり取りを見た神崎は、デュエルの大まかの流れを把握する。

 

「なはっ」

 

 そして、それを合図とするようにうつむいていた《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧は不気味な笑い声をあげ始めた。

 

「なははははははっ!!」

 

「敗北を悟り、笑うしかありませんか!」

 

 そんな大瀧の姿を《ジャッジ・マン》の人こと大岡は嘲笑って返すが――

 

「裏守備モンスターをリバース!! 《ペンギン・ソルジャー》!!」

 

「そのカードは!?」

 

 肩アーマーを装着したペンギン剣士の出現に、大岡の瞳は驚愕に見開かれた。

 

 そしてフィールドを駆けた《ペンギン・ソルジャー》が両腕を交差した後、勢いよく剣を水平に振るい水のエフェクトを発生させながら斬撃を放つ。

 

「モンスター2体を手札に戻す《ペンギン・ソルジャー》か――決まったな」

 

「此方を確実に通す為に、相手のリバースカードを前のターンに使わせた訳だな」

 

 やがて《深海の戦士》の人こと大下と、《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門の出荷される家畜を見るような眼差しとともに、《魔装騎士ドラゴネス》と《アンデット・ウォーリアー》の体が崩れるように消えていき――

 

「その通り!! 新たにペンギンちゃんを呼び出し――さぁ、今こそ行くのです! ペンギンちゃんたち!! 大岡にダイレクトアタック!!」

 

 永続罠《ガリトラップ-ピクシーの輪-》の守りどころか、壁モンスターすら失った《ジャッジ・マン》の人こと大岡には、ペンギンたちの突撃に対し、成す術はなく。

 

「またしても、こんなペンギン野郎にぃいいぃいいい!!」

 

 負け惜しみの罵倒を放つことしか出来なかった。

 

大岡LP:3350 → → → 0

 

 

 

「ふっ、『ペンギン野郎』などと――それは褒め言葉です!!」

 

 大岡の断末魔を余所に、キメ台詞っぽいのをキメ顔で返した大瀧は、グラスに注がれたワインをグビッと飲み干し、息と共に言葉を吐く。

 

「プハァ! あー、スッキリスッキリ! 勝利の美酒は格別ですなあ! ハッハッハ!」

 

「もう1度! もう1度勝負です! 最後に勝ったものが勝者だ!!」

 

 上機嫌な大瀧に、再戦の申し出を入れる大岡だが――

 

「ほほう――なれば、この勝負を最後とし! 勝ち逃げさせて頂きましょう!! はははははッ!!」

 

 大瀧は取り合わず、気分のいいままボトルのワインをグラスに注いで2杯目の勝利の美酒に酔う中、神崎の帰還に気づきグラスを向けた。

 

 

 

「おや、神崎くん。戻っていましたか――どうせ仕事の電話だったのでしょうが、問題なかったですかな?」

 

「いえ、面会予定の話が少々」

 

「なんだ『鳥かご』の話か? それともあの癇癪坊やの話かな? いや、酒の席でする話ではないな」

 

「過去の傷と言うものは厄介だからな――掘り起こされる罪悪感もひとしおだと儂は思うぞ」

 

 だが「面会」との話に様子を伺っていた《深海の戦士》の人こと大下はすぐさま通話相手を把握して興味を失うも、かつては人を殺す兵器を作っていた《機械軍曹》の人こと大田からすれば、他人事とは思えない。

 

 しかし、その辺りの事情など関係のない《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧は神崎が持つビニール袋に視線を向ける。

 

「おやおや? その手の買い物袋はなんでしょう?」

 

「通話の待ち時間の間に、おつまみでも買って来ようと思いまして」

 

「グフフ、チョイスは悪くないですな」

 

 差し出されたビニール袋を受け取った大瀧は三杯目の勝利の美酒におつまみを添え、満足気だ。

 

 そんな中、KC周辺は自分たちの庭も同然である《深海の戦士》の人こと大下にふと疑問が浮かぶ。

 

「しかし近場にこの時間でも空いている店があったとは驚きだよ」

 

「いえ、なかったので急いで走ってきました」

 

「…………肉体改造も程々にしておきたまえ」

 

 とはいえ、浮かんだ疑問も脳筋な回答がなされた為、話を流しにかかる大下。なにかと付き合いの長い後輩にあたる相手とはいえ、この辺りは「何処を目指しているんだ」と理解の及ばない範囲であった。

 

 

 

 そんな中、《ジャッジ・マン》の人こと大岡はデュエルマットをトントンと指で叩きながら、神崎へと視線を向けて眼鏡を上げながら告げる。

 

「神崎くん、戻ってきたのなら一勝負と行こうじゃないですかぁ」

 

 それはデュエルのお誘い。負けて終わるのは我慢がならない様子。だが、態々戻ってきたばかりの神崎を指名したのは――

 

「ふっ、我らに勝てぬと悟って逃げの一手か」

 

 《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門の言う様に、他のBIG5の面々の実力が高いゆえ。

 

「なんとでも良いなさい。勝てる勝負しかしないのが私のモットーですからねぇ」

 

「さっき思いっきり負けとっただろうに」

 

「黙りなさい、大田! BIG5最弱の汚名も今日限りです!!」

 

 呆れた様子の《機械軍曹》の人こと大田へムキになって怒鳴りつけた大岡は、デッキをシャッフルしてデュエルマットにドンと置いた。やる気が漲っている様子。

 

「キミはそれで良いのかね……」

 

「神崎のデッキは火力に乏しいからな。相性という点ではいい塩梅か」

 

 やがて《深海の戦士》の人こと大下と、《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門の呆れ気味な声を合図に、デュエルが開始された。

 

 

 そして数ターンが経過し――

 

 

大岡 LP:3000

《アンデット・ウォーリアー》×2 《魔装騎士ドラゴネス》

《ガリトラップ-ピクシーの輪-》 伏せ×1

VS

神崎 LP:1600

《ハネクリボー》

《ウィルスメール》

 

「魔法カード《死のマジック・ボックス》発動!」

 

 《ジャッジ・マン》の人こと大岡の声を合図に、互いのフィールドに現れた3つの「?」マークが並ぶ黒い縦長の箱が1つずつ現れ、指定された2体をそれぞれ閉じ込めた。

 

 すると、大岡のフィールドの箱へ向けて空中より現れた数多の剣が殺到し、中の《アンデット・ウォーリアー》を貫く。

 

「これで貴方の《ハネクリボー》を破壊し、《アンデット・ウォーリアー》をプレゼントしてあげますよぉ!!」

 

 だが、剣が貫いた大岡のフィールドの箱が開けば宣言通り、神崎の《ハネクリボー》の数多の剣が突き刺さっており、対する神崎のフィールドの箱から《アンデット・ウォーリアー》が飛び出した。

 

 

 そうして神崎のフィールドに攻撃表示の的になりかねないモンスターが鎮座する中、《深海の戦士》の人こと大下は缶ビール片手にぽつりと零す。

 

「魔法カード《簡易融合(インスタントフュージョン)》でターンの終わりに自壊する以上、損失はほぼ無しか――キミも飲んだらどうだい、神崎」

 

「今はデュエル中ですので後で頂きますね――破壊された《ハネクリボー》の効果で私はこのターン戦闘ダメージを受けません」

 

 そうして大下から差し出されるもう1本の缶ビールを脇によけた神崎を余所に――

 

「想定内です!! 《アンデット・ウォーリアー》で《アンデット・ウォーリアー》を攻撃!!」

 

「自爆する気か!?」

 

 2体の《アンデット・ウォーリアー》たちがクロスカウンターの様相を見せる中、《機械軍曹》の人こと大田が意図を読み切れず叫ぶ。

 

 

「こら、大門! 貴方、つまみばかり食べ過ぎじゃないですか!? 私が食べる分がなくなるでしょう!!」

 

「こうしてボリボリ頬張るのが好きなんだ。許せ」

 

 そして《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧と《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門がくだらないことで揉める中――

 

 

「融合モンスター同士のバトル! この瞬間に私の鬼札が炸裂します!! 罠カード《決戦融合-ファイナル・フュージョン》!!」

 

 

 《ジャッジ・マン》の人こと大岡の必殺のカードが発動された。

 

 その瞬間、周囲からサーチライトの光が2体の《アンデット・ウォーリアー》たちのぶつかり合いに向けられる。

 

 

「バーン狙いか」

 

「そう! バトルする互いの融合モンスターの攻撃力の合計のダメージをお互いに与えます!!」

 

「1200が2体で2400!! 3000のライフを残す大岡はともかく、残りライフ1600の神崎は!!」

 

 そして《深海の戦士》の人こと大下の声に肯定を返した大岡を余所に、《機械軍曹》の人こと大田が余念のないフラグ発言をする中――

 

 

「手札から《ジャンクリボー》の効果を発動。効果ダメージを与えるカード効果を無効にし、破壊します」

 

「無駄ですッ!! カウンター罠《パラドックス・フュージョン》発動!! 私の融合モンスターを2ターン先まで除外し、モンスターの効果を――」

 

 そのフラグの回収に動いた神崎の動きすら《ジャッジ・マン》の人こと大岡は読み切っていた。

 

 

 これにより、大岡の華々しい勝利となる。

 

「あっ」

 

「――なんです、急に」

 

 かと思いきや、つまみ争奪戦をしていた《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧から零れた驚きの声に、大岡は勝利に水を差されたとばかりに、首を其方に向けるが――

 

『ジャンクリッ!!』

 

 その一瞬の隙をつくように、《ジャンクリボー》の突撃が2体の《アンデット・ウォーリアー》の頬をぶん殴り、結果、その2体はそれぞれ逆方向に飛ばされ、地面を転がった。

 

「馬鹿な!? 何故!?」

 

「カウンター罠《パラドックス・フュージョン》はモンスター効果を無効にするカードではない。大瀧とのデュエルでの《極氷獣ポーラ・ペンギン》の時は、特殊召喚を無効にして効果を発動『する前』だったからな」

 

 やがて《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門により諸々の説明が成された中、《深海の戦士》の人こと大下は溜息を吐く。

 

「酒の酔いに呑まれたか」

 

「ただのウッカリな気もしますけどねぇ」

 

「昔からデュエルの詰めが甘いヤツだからの」

 

 続く《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧と、《機械軍曹》の人こと大田に追い打ちを受けた形の大岡は、必殺コンボを躱された事実に苛立つも、ターンを終える。

 

「くっ、罠カード《決戦融合-ファイナル・フュージョン》が……! ですが、次のターンにダイレクトアタックすれば――」

 

「永続魔法《ウィルスメール》の効果を《ハネクリボー》を対象に発動し、バトルフェイズへ――《ハネクリボー》で大岡さんに直接攻撃です」

 

 だが、その次の自分のターンの動きに意識を向ける大岡の盤面のプレイヤー代わりのチェスのルークの駒に、神崎の新たに召喚された《ハネクリボー》が突撃した。

 

 その行動を大岡は嗤う。なにせ、自分への攻撃は――

 

「お忘れですか! 永続罠《ガリトラップ-ピクシーの輪-》がある限り、私への攻撃は――」

 

「モンスターへの攻撃を制限しとるだけだから、ダイレクトアタックには無力だぞ」

 

 だが、その鉄壁の守りへの信頼は、つまみをボリボリ食べ始めた《機械軍曹》の人こと大田の解説によって無為に帰した。

 

「だとしても! たった300ぽっちのダメージでは――」

 

「速攻魔法《バーサーカークラッシュ》を発動。私の墓地の《爆走特急ロケット・アロー》を除外し、《ハネクリボー》1体の攻守を除外したカードと同じにします」

 

 そうして光り輝く一筋の閃光となった《ハネクリボー》の突撃が――

 

《ハネクリボー》

攻300 守200

攻5000 守 0

 

「ちょ待――」

 

 大岡の分身ポジションのルークの駒を貫いた。

 

 

大岡LP:3000 → 0

 

 

 かくして2連敗を喫した大岡はヤケ酒とばかりにワインボトルを直接手に取ってがぶ飲みつつ、苛立ち気に零す。

 

「くっ、あんな雑魚毛玉どもに……!!」

 

「カードパワーはキミも似たようなものだろう?」

 

「攻撃封じのロックを過信し過ぎたな」

 

 だが、《深海の戦士》の人こと大下と《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門の言う様に、メイン戦力のパワー不足を他のカードで補うスタイルは大岡も神崎も大差ない。

 

 純粋に戦術面の差が出た試合と言えよう。カード効果って間違った認識で覚えちゃう時があるよね――つまりはそう言う話だ。

 

 

 やがて憂さ晴らしとばかりにハイペースで飲み続ける《ジャッジ・マン》の人こと大岡を余所に、《深海の戦士》の人こと大下もデッキを取り出すが――

 

「そろそろ私も参加したいが、相手は――」

 

「タッグ戦はどうだ? 丁度、数も6人で偶数だ」

 

「タッグデュエルモードも試しておきたいの」

 

「ぐふふ、クジの用意は万全ですぞ!!」

 

 《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門の提案に乗った《機械軍曹》の人こと大田。

 

 そして慣れた手つきで手早くクジを用意した《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧からクジを引き、3チームでのタッグデュエル大会の流れになり――

 

 

大瀧+大田チーム

 

大下+大門チーム

 

大岡+神崎チーム

 

 

 こんな具合で、神崎の名前だけメッチャ浮く状態のまま、総当たり戦による勝ち星を競うこととなった。

 

 

「リフレクター・ホウル!!」

 

――罠カード《魔法の筒(マジック・シリンダー)》踏んだ!?

 

「良くやった、大下! 後は任せて貰おう――検診のお時間だ!!」

 

 

「ペンギン共の魂を生贄に、降臨せよ! 機械神! 《パーフェクト機械王》!!」

 

「大田! 貴方……なんということを!! 謝りなさい! ペンギンちゃんに謝るのです!!」

 

 

「くっ、フィールドにクリボー共が並んで、融合召喚できない……! しかも《虹クリボー》だけ攻守が違うせいで永続罠《ガリトラップ-ピクシーの輪-》の攻撃制限ロックが使えない……!!」

 

「……すみません」

 

 

 そうして底知れぬ絶望の闇に沈みながら、合計3試合を終えた結果――

 

「優勝は大下と大門のチームか」

 

 《機械軍曹》の人こと大田が優勝者を一応称えた通り、BIG5の二強を有したチームが見事二連勝。というよりは、他のチームはチームプレーが皆無過ぎて相手にならなかった。

 

「流石はBIG5のデュエルトップ2と言ったところですか……では優勝した二人にはこのペンギンちゃんメダルを――」

 

「いらん」

 

 そして優勝者に送られる栄誉ある「ペンギンちゃんメダル」の授与は、《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門が受け取り拒否したことで、床がキャッチ。

 

「なっ!? 大門! 貴方のペンギンちゃんメダルへの狼藉!! 許しませんぞ!!」

 

 そのノーペンギンな姿勢に大瀧が怒りの声を飛ばすが、当人は右から左で酒を呷り聞いている様子はない。いや、普通にいらないのだろう。

 

 

「こんなものいつも持ち歩いてたんですねぇ……」

 

「酒も無くなってきたな……買い出しも面倒だ。今日は――」

 

「そうですね。お開きに――」

 

 やがて《ジャッジ・マン》の人こと大岡が床に転がるペンギンちゃんメダルを「こんなもの」扱いして拾う中、《機械軍曹》の人こと大田の言に神崎も同調し、此度の宴は――

 

 

「ラーメン食いに行くぞ!!」

 

 

 神崎の意に反して続行となった。アルコールが入るとラーメンが食べたくなるのは何故なのだろう? きっと人体の神秘ゆえなのであろう。

 

「今からかね?」

 

 しかし《深海の戦士》の人こと大下が言う様に、防音がしっかりなされているゆえ騒ぎまくっていたものの、今は深夜。ラーメン屋どころか開いている食事処を探すのも一苦労である。

 

「最近、見つけた屋台があってな」

 

「ぐふふ、KCの医療技術があれば、コレステロールなど恐るるに足りません!!」

 

「……ノーリスクではないんですけどね」

 

「リスクが怖くて暴食が出来ますか!!」

 

 しかし提案しただけあって準備の良い《機械軍曹》の人こと大田と、《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧の謎の宣言の元、おっさんたちはラーメン屋台を目指し、歩み出す。

 

 

 そう、おっさんたちの夜は明けないのだ。

 

 

 

 

 

 かくしておっさんたちは到着したアイマスクの仮面をつけた店主のいるラーメン屋台にて、夜食のラーメンを食していた。

 

「この歳で、この脂っこさはキツイものがありますねぇ…………」

 

「ぐふふ、ペンギンちゃん印のシーフードにしないから、そうなるのです!!」

 

 だが、彼らはイイ歳したおっさんたち――豚骨ベースのこってり味は胃袋にボディブローを喰らうかの如く、ジワジワと効く。

 

 しかし《ジャッジ・マン》の人こと大岡のくたびれた呟きを余所に、《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧は魚介系のダシのシーフード風味のラーメンをチョイスした上で「血圧がナンボのもんじゃい!」とばかりにラーメンを平らげる。

 

 そんな中、残りのおっさんたちは諦めムードで日の出を眺めていた。

 

「日も出てきたようだな……」

 

「儂は、明日が――いや、今日が怖いぞ」

 

「暫くは、胃がもたれそうだ」

 

 そう、《深海の戦士》の人こと大下、《機械軍曹》の人こと大田、《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門たちは、日の出を眺めながら「なんでこんなことしてるんだろう」と酒の酔いから覚め始めていた。

 

 

 明けない夜はない――そう、おっさんたちの夜は此処まである。

 

 

 

「ご馳走様です。お勘定、置いておきますね」

 

 やがてBIG5とは違い少々若いおっさんである神崎が、完食した器と代金を店主に返す中、お開きだとばかりに、《人造人間サイコ・ショッカー》の人こと大門が軽く手を上げ店主に謝罪を入れる。

 

「店主、悪いが残し――ほう、お残しは許さない、と」

 

 だが、そんな出された品を残してしまった謝罪は受け入れられず、店主は屋台からデュエルディスクを取り出した。何故だ。

 

「フッフッフ、ならば其方の言うデュエルで決着をつけよう!! さしずめラーメンデュエルだ!!」

 

――なにそれ!?

 

 

 そんな神崎の内心のツッコミを余所に、デッキをセットしたデュエルディスクを展開させた 大門とラーメン屋台の店主のデュエルが開始される。

 

 

 

 そう、おっさんたちの夜(明朝)は明けぬ。

 

 

 

 

 そんなおっさんたちのフィーバータイムはテッペンアゲアゲのままに、壁も、山も、オゾンすらも Close to you(クロストゥユー)して宇宙にまで届きうることだろうピポ。

 

 

 

 

 

 






残ったラーメンはラーメンデュエルによって別腹を取り戻したBIG5たちがそれぞれ完食しました。



Q:このラーメン屋台の店主って……

A:た、ただのそっくりさんです(震え声)

もしくは先祖(時系列? これはIF話ゆえに知らぬ)



Q:神崎、社員寮に住んでるの!?

A:神崎は、自分にお金を使わないタイプかな? と判断し、住居に拘らない=平時代の社員寮生活を止める理由なさげ……なら、そのままだよね――な流れです。

ご近所付き合いは帰宅が遅い(or帰らない)ので、他の住人は殆ど気付いてない感じです。






~BIG5大岡(《ジャッジ・マン》の人)のデッキ~
彼が使用した《魔装騎士ドラゴネス》を中心にしたデッキ。《ヒステリック天使》? 知りません(おい)

融合素材の攻撃力がどちらも700との奇跡の一致

その為、永続罠《ガリトラップ-ピクシーの輪-》による攻撃制限を主にしたロックビートデッキに舵を切った。


そこに融合体が1体では寂しいと思い永続罠《ガリトラップ-ピクシーの輪-》と共存できる1200打点を探せば、《アンデット・ウォーリアー》を発見。

しかも融合素材である《格闘戦士アルティメーター》の攻撃力が700という奇跡が起こる(もう一方の素材の《ワイト》の攻撃力? ワイトは知りません)

よって(大岡が使用した融合モンスター)《カオス・ウィザード》は犠牲になったのだ……


基本戦術は本編通り、他のカードでダイレクトアタック効果を与え、ロックビートしていく。

奥の手の罠カード《決戦融合-ファイナル・フュージョン》も、融合体の攻撃力が貧弱なため、自滅する危険性が少ない。

そして貧弱な攻撃力ゆえに、カウンター罠《パラドックス・フュージョン》で多少除外しても殆ど痛手にならない。


――と、此処まで語っておいてなんだが、
「やりたいことは分かるが、コスパが悪過ぎる」デッキと言えよう。
《エレキリン》並べれば大体、同じことが出来る悲劇

でも(今作の)闇のプレイヤーキラーさんとは友達になれると思う(小並感)

彼の未OCGカード『魔界の司法取引』『ハ・デスの誘導尋問』がくれば、何とかなるかも……しれなくもないかもしれない(目泳ぎ)


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