マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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Show must go on(ショー・マスト・ゴー・オン)!  It’s(イッツ)投稿 time(タイム)


2020・11・07
本来あったクロスオーバー回を諸事情により、別枠に移動したので代わりのIF話を投稿させて頂きました。
(諸事情に関しては、詳しくは活動報告をご覧いただければ、幸いです)

今作は『遊戯王シリーズ』一本でいくぜ!!


今回は――

原作キャラから見たアクター

勘違いされているアクター周りの部分を見たい

アクター周りの考察

イリアステルとの和解(別ルート)


などのリクエストを纏めさせて頂きました。






第219話 IF話 リニューアル

 

 

 イリアステルの本拠地であるアーククレイドルにて、アンチノミーの悲痛さのこもった声がこだまする。

 

「Z-ONE!! 頼む、ボクをパラドックスの元へ行かせてくれ!!」

 

「いけません、アンチノミー。今、最優先すべきはメインプランを進めること――キーマンである貴方に万が一すらあってはならない」

 

 時は「超融合編」が終わった後、生存反応が途切れていないにも拘らず戻らぬパラドックスに「なにかトラブルがあった」と判断し、助けに行くことを進言したアンチノミー。

 

 だが、その主張はZ-ONEには聞き入れられない。

 

 アンチノミーには5D’s主人公「不動 遊星」にシンクロ召喚の新たなる境地を示す使命がある。これはイリアステルの中でアンチノミーにしか出来ないことだ。

 

 万が一、ミイラ取りがミイラになる事態になれば、イリアステルの未来救済の計画は水泡に帰すだろう。

 

「計画の為にはパラドックスの協力はあった方が良い! そうだろう!? 彼の反応がある場所に行って回収すれば済む話じゃないか!!」

 

「そういった問題ではないのです」

 

「だったら、何を問題にしているんだ!! 仲間の安否を不意にする程の理由があるのかい、Z-ONE!!」

 

 しかしアンチノミーは譲らない。パラドックスのいる場所が分かっているのだから、行って帰ってくれば済む話だというのに、どうして此処まで頑ななのか――その理由も教えられずに引き下がることなど彼には出来なかった。

 

「……分かってください」

 

「なら、捜索だけでも良い! 彼の反応が完全にロストした訳じゃないんだろう!!」

 

「パラドックスの潜伏先……いえ、囚われている可能性の方が高い――その場所がKCだと知ってもですか?」

 

 そうして続いた追及に折れるようにZ-ONEが訳を話すが、できれば伏せたままにしておきたかった事実だ。

 

 なにせ、シンクロ召喚の新たなる境地は、研ぎ澄ませた精神が必要不可欠である。ゆえに、その精神を曇らせかねない情報である。アンチノミーの精神力を疑う訳ではないが、懸念は最低限にしておきたかった。

 

「あの海馬 瀬人を退けることが如何に難しいことか分からない貴方ではないでしょう?」

 

「なら、ボクが囮になる!! それなら――」

 

 だが、仲間との絆を重んじるアンチノミーが諦めきれないように声を発する中――

 

「止さないか、アンチノミー。あまりZ-ONEを困らせてやるな」

 

「アポリア……」

 

「帰らぬ友の身を案じているのはキミだけではない。それに加え、これ以上の損失が生じれば計画の実行すら危うくなる」

 

 Z-ONEを援護するようなアポリアの声が届いた。

 

 そう、パラドックスのことを「助けたい」と思っているのはアンチノミーだけではない。Z-ONEもアポリアだって同じである。

 

 しかし、それでも「破滅の未来の回避」という壁の前では酷く動きを制限される現実があるのだ。

 

「ゆえにZ-ONE――私から一つ提案がある」

 

「アポリア、貴方まで――」

 

 

「皆まで言うな。キミの懸念は理解しているつもりだ」

 

 だが、此処でアポリアがアンチノミーの側に回るような発言にZ-ONEが苦言を漏らそうとするが、それをアポリアは制しつつ、指を一つ立てて道を示す。

 

「いるだろう? KCの内部に精通し、神崎 (うつほ)のやり口を熟知し、なおかつ海馬 瀬人に並ぶデュエリストが」

 

 そう、今回のパラドックスの救出にイリアステル以上の適任者が一人いた。

 

役者(アクター)――もう一つのイレギュラー」

 

「彼……が?」

 

 そうして出てきた意外な名前にZ-ONEが考え込む仕草を見せる中、アポリアは説得の為の情報の肉付けを行っていく。

 

「そうだ。彼は協力者であった筈の神崎 (うつほ)の危機に駆け付けなかった――袂を分かつだけの何かが彼らの間にあったことは明白だ」

 

 KCのオカルト課設立から続く関係が、バトルシティを終えた後から途絶えたのだ。その情報を後押しするように、アクターは神崎の危機に駆け付けなかった。

 

 此処に付け入る隙があるとアポリアは示す。

 

「Z-ONE、これならば勝算は決して低くはないだろう?」

 

「彼を此方に引き込む……と?」

 

「そこまでする必要はない。彼がKCに所属していた以上、なんらかの目的があった筈だ。それを此方で叶えてやれば良い」

 

 協力の対価も、イリアステルならば大抵のものは用意できると語るアポリアに、Z-ONEは詳細を詰めるように問いかけた。

 

「接触の方法は?」

 

「KCグランプリから規模を拡大したワールドグランプリが開催されるとの情報がある。ならば強者を求める海馬 瀬人は必ずコンタクトを取る筈だ」

 

「凄いよ、アポリア! これなら――」

 

 神出鬼没なアクターとのコンタクト手段まで用意していたアポリアの手腕に対し、アンチノミーが期待に満ちた声を響かせる中、Z-ONEも内にくすぶる希望を前に最後の懸念を問うが――

 

「もしアクターと戦闘になった場合は?」

 

「安心してくれ、Z-ONE――レインを使う」

 

「ッ!!」

 

 その返答に初めてZ-ONEは眉をひそめた。

 

「その反応は想定済みだ。だが、彼は表の人間を先んじて害することはない。それに加え、表で活動させているレインが消えることで騒ぎが起これば困るのは相手の方だ」

 

 だが、そこからZ-ONEが反対の声を上げる前にアポリアは先んじて危険性は低いことを告げる。

 

 レインは童実野高校の一生徒の肩書がある以上、下手に手を出せば武藤 遊戯を敵に回す可能性すらある――アポリアには「それ」をアクターが許容するとは思えなかった。

 

「……ですが」

 

 しかし、それでも決断を躊躇うZ-ONEにアポリアは瞳に悲哀の色を浮かばせながら相手の心中を察する。

 

「パラドックスの敗北が堪えたようだな」

 

「……仲間との別れが辛くない訳がないでしょう」

 

「Z-ONE……」

 

 たとえ、生前の記憶を転写したロボット(紛い物)であっても、Z-ONEにとって彼らはかけがえのない仲間なのだ。

 

 そんな何処か小さく見えるZ-ONEの姿にアンチノミーが沈痛な声を漏らすが――

 

「違うな、Z-ONE――我々は別れぬ為に動くのだ」

 

 力強く宣言したアポリアの言葉が、彼らを突き動かす結果となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 此処で時は進み、海馬の「ワールドグランプリ」の参加の打診を断ったアクターがKCの屋上から消え、いつの間にやら地上に降り立っていた頃に移る。

 

 

 そうして人の気配のない場所に歩を進めていたアクターは、その足をピタリと止め、物影へ向けて声を放った。

 

「何の用だ?」

 

「私はレイン恵。イリアステルに所属する自律型――」

 

「用件は?」

 

 やがて物影から出てきたレインの語りを切って捨てたアクターの先を促す声に、レインは宙にモニターを映し出す。そこにはノイズをかけ、正体を隠したアポリアが映し出される。

 

『私はアポリア――イリアステルと言えば理解して貰えるか?』

 

「前置きは不要だ」

 

 そしてイリアステルの情報をどこまで把握しているかを試すようなアポリアの問いかけすら一蹴したアクターの姿に、アポリアは「噂通りの男だ」と内心でため息を吐きながら相手に合わせた端的な物言いを返す。

 

『なら、一つキミに依頼したい。報酬は其方の望むものを用意しよう』

 

 これは裏切りの提案。

 

 

 

 

 

 

 

 

 此処で再び時は飛び、アポリアの提案を受けたアクターが、作戦実行に指定した日時――海馬がワールドグランプリの開催地であるアメリカに渡ったタイミングに移る。

 

 

 そうして見届け人+監視役の変装したレインを引き連れKCのオカルト課に向かったアクターが戻るその時を待つアポリア。

 

 だが、待ち人は思いの外アッサリとレインを引き連れ、大きめの麻袋を肩に乗せて帰還した。

 

「戻ったか。こうして直に会うのは初めてだな。私はアポリア、イリアス――」

 

「馴れ合う気はない。確認を」

 

 やがて挨拶代わりの言葉を並べるアポリアを余所に、アクターは肩に担いでいた麻袋をそっと地面に転がして離れ、アポリアの動きを待つ。

 

 そして二人の間にピリピリと奔る緊張感にレインがオロオロする中、アポリアは麻袋を裂いて中身を確認すれば――

 

――パラドックス……! やはり囚われていたか……だが、無事で何よりだ。

 

 そこには瞳を閉じて眠るパラドックスの姿が横たわり、身体の負傷の具合を慎重に確認して終えたアポリアは、今までずっと険しかった表情を和らげさせた――命の危険はなかったようだ。

 

 

 そうしてパラドックスを抱えたアポリアは、再び険しい表情でアクターからの報告を促す。

 

「無事を確認した――対象は?」

 

「始末した」

 

「レイン」

 

「…………く、首……捥いでた」

 

「随分と派手な方法を取ったものだ」

 

 だが、事実確認の為に発言させたレインの言葉にアポリアは眉をひそめた。そう、今回のアクターへの依頼は「パラドックスの回収」だけではない。

 

「『確実に殺した証明をしろ』との条件だった筈だが?」

 

「…………『パラドックスの身柄を第一に』とも言っただろう? いや、そもそも『神崎の首を差し出す』と()()()()()()()()()を私は信じてはいなかった」

 

 それが神崎の殺害――だが、此方は()()()()()()()()()ことであり、アポリアも「適当な理由をつけて逃がす気なのだろう」と信じていなかった。

 

 そして、それ自体に何かを言うつもりもアポリアにはなかった――イリアステルとしては、「パラドックスの無事」だけで十分だったのだから。

 

「其方の要望に沿ったに過ぎない」

 

「だとしても、まさか本当にかつての仲間を売るとはな」

 

「仲間だったつもりはない」

 

 そうして淡々としたアクターの姿に若干の困惑の思いを抱きつつも、アポリアはアクターの仮面を指さしながら話を先に進めた。

 

「………………そうか。なら報酬の話に移ろう。だが、その前に面を外せ。万が一の可能性は排除しておきたい」

 

「必要性が見えない」

 

「お前と神崎が成り代わっている可能性を提示している。神崎 (うつほ)をZ-ONEの元に連れていく訳にはいかない」

 

 それがアクターの素性の確認――低い可能性の一つでしかないが、万が一を考えるのならば、晴らしておきたい部分だった。

 

「私……ちゃんと見た……」

 

「最終確認だ」

 

 しかし「神崎の死」を己が目で確かめたレインから「自身の目を疑うのか」と若干不機嫌な声が届くが、アポリアとしても譲れぬラインである。

 

「映像回線だけ先に開け」

 

「なんだと?」

 

「『二度手間は面倒だ』と言ったんだ」

 

 だが、仮面を外すことに否定的だったアクターはアポリアに追加条件を押し付けつつ、己の仮面へと手を伸ばす。

 

 やがてその仮面がガチャンという音と共に外され、あらわになったその素顔にアポリアの瞳は驚愕に見開かれた。

 

「気は済んだか?」

 

「…………馬鹿な」

 

『アポリア、彼を私の元へ』

 

 やがてアクターの声にも反応を見せぬアポリアだったが、映像を確認したZ-ONEの通信越しの声が届いた瞬間に、内心の動揺を意志の力で抑え込んだ。

 

「…………了解した。Z-ONEの元まで案内しよう」

 

 そうして再び仮面を装着したアクターを連れ、アポリアはイリアステルの本拠地たるアーククレイドルへの道を開く。

 

 

 パラドックスの無事と引き換えに彼らが得た――いや、失うことになるのは果たして。

 

 

 

 

 

 

 神崎の死を受けたKCのオカルト課にて、空いた席にそのまま座ることになった乃亜は、対面にてソファに座る牛尾から渡された報告を前に苛立ちを見せる。

 

「死体がない? どういうことだ、牛尾」

 

 神崎 (うつほ)の死――それが与えた影響は想定よりも遥かに小さかった。

 

 遊戯たちやモクバ、羽蛾、竜崎、北森などの「その死を悲しみつつ、前に進もうとする」面々、

 

 アメルダやヴァロン、佐藤などの「元々神崎に敵が多かった実情を知るゆえに、ある程度の覚悟が既に済んでいた」面々、

 

 アヌビスのような「神崎の死と同時にKCを去った」もの、

 

 BIG5のように「その死に酒の場を設け、静かに弔いを上げる」面々、

 

 オカルト課のお得意様も「乃亜という優秀な引き継ぎ手の存在」から、さして騒ぎ立てることもなかった。

 

 他は海馬や乃亜、ギース、牛尾のような「神崎の死に疑念を持つ」面々の間で「放置」か「追及」で意見が別れた程度だ。

 

 それらの影響の少なさは報告にあった「死体がなかった」との情報も一役買っていることだろう。

 

「ああ、殺害の瞬間までは監視カメラに映像は残ってた――だが、火の手が上がってカメラがおしゃかになった後の空白の時間に誰かが死体を動かした可能性が高ぇ」

 

 牛尾が説明するように、あくまで神崎の死は「無駄に高性能だったKCの監視カメラの映像」と「現場の状況」、そして「忽然と姿を消した神崎の存在」から判断されたに過ぎない。

 

 死亡の瞬間までの経緯以外は未だ明らかになっていない部分の方が遥かに多いのだ。

 

「アクターか?」

 

 ゆえに神崎を殺害したアクターが死体を持ち去った可能性を示唆する乃亜だが――

 

「いんや、アイツは殺しを行った後で直ぐに立ち去ってる。外の防犯カメラにも()()()姿()が映ってた」

 

 監視カメラに神崎の死体が確認できる段階で、アクターは別の場所にいた証拠が残っている以上、その説は否定される。

 

 そして牛尾が踏み込んだ報告を続ければ――

 

「そんでもって、焼け残った場所の血痕を調べさせたんだが……『死体が二本の足で立って動いた』としか考えられねぇ動きだったらしい」

 

「ゾンビ映画さながらだね」

 

「その例えを笑えねぇ研究してっからなぁ、此処は――乃亜、お前さんはツバインシュタイン博士の研究方面を当たってくれねぇか? 俺にはさっぱりだからよ」

 

 明らかになるのは「ありえない」「不可解な」現実ばかり。ゆえに更なる調査が必要と言外に告げた牛尾は、ソファから立ち上がって仕事に戻ろうとするが――

 

「あー、後一個いいか?」

 

「なんだい?」

 

 ふと足を止めて乃亜へと振り返りながら頼み出る。やがて先を促した乃亜の発言に居心地が悪いように頭をかいた後、おずおずと切り出した。

 

「葬式はどうすんだ? 『葬儀は必要ない』って遺言があったんだろ? だけど、俺も世話になった身だし――」

 

「モクバから泣いて頼まれてね。知り合いだけで小さく済ませることにしたよ」

 

「そうかい。日が決まったら教えてくれ」

 

「遺体のない葬式をする羽目にならないようにしないとね」

 

 そうして「せめて遺体くらいは」との願いの元、牛尾が部屋を後にしようとするが、再びその足は迷いを振り切れぬようにピタリと止まった。

 

「…………なぁ、乃亜」

 

「今度はなんだい、牛尾。まだ何かあるのか?」

 

「調査、やめねぇか?」

 

「…………聞こう」

 

 牛尾から告げられた発言の内容に対し、怒鳴り返しそうになった己を律した乃亜は目頭を揉みながら牛尾に着席を促した。

 

 やがて席に着いた牛尾は、言うべきか否かを未だに悩みながら、その重い口を開いた。

 

「そもそも今回の事件は不可解な点が多いんだよ」

 

 そう、今回の「神崎の死」は不可解な点が多かった。それは「死体の消失」だけではない。

 

「アクターが本気だったなら、態々カメラに映る場所を犯行現場に選ぶ訳がねぇ――いや、アイツの身体能力考えれば、証拠すら残さずに殺れた筈なんだ」

 

 バトルシティでアクターの身体能力の一端を知り、なおかつオカルト的な方面の力を熟知している光景を見た牛尾には、今回のアクターの犯行があまりに()()に見えた。

 

 アクターならば誰の目にも触れることなく、神崎を殺害し、痕跡すら残さず立ち去ることが可能だとの確信が牛尾にはある。

 

「だが、結果はどうだ? 『これでもか!』って程に証拠を残してやがる」

 

 いや、そもそも事件の証拠になった「監視カメラの映像」も、態々最新鋭の防犯カメラがズラリと並ぶKCを犯行現場に選ばなければ回避できたことである。

 

 優れたデュエリストを望む神崎なら、アクターが連絡の一つでも入れれば犯行現場は好きに操作できることは明白だ。

 

「まるで『神崎さんはちゃんと死にました』って誰かに宣伝してるみてぇによ」

 

 だというのに、膨大に用意されたとしか思えない証拠の数々はアクターの犯行を裏付け過ぎて、逆に不自然だと牛尾は語る。

 

「だからかねぇ――俺には、あの人が『自分は死んだことにしとけ』って言ってるような気がしてならねぇんだ」

 

 そして極めつけは「神崎が抵抗らしい抵抗ができてない」事実。神崎が武芸に精通していることは牛尾だけでなく、KCの面々なら大体の人間が知っている。

 

 敵に狙われることも多かった神崎が、不意を突かれたからと言って成す術もなく殺される未来が牛尾には見えなかった。

 

「……頭の片隅には残しておくよ」

 

「そう……だな。変なこと言っちまって悪い――残った奴らが納得する為の『答え』がねぇとキツいよな」

 

 そうして今回の不可解さを語って見せた牛尾に乃亜は絞り出すように声を漏らし、言外に退出を促す姿に牛尾は今度こそ一室を後にした。

 

 

 やがて閉まった扉を眺める乃亜は、祈るように合わせた両手を己の額に当てつつ思案する。

 

 牛尾が語った違和感など乃亜は当に気づいていた。だが、その先が分からないゆえに調査に乗り出したのだ。

 

 何の目的で「己の死を偽装したのか」――それを把握しなければ、戻って来る為の環境すら作れない。

 

「……今度は何を企んでいるんだい、神崎」

 

 

 その声に応える誰かはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イリアステルの本拠地たるアーククレイドルの一角にある廃材の山にて、Z-ONEは出迎えるようにその両手を広げ、眼下に向けて声を落とす。

 

「こうして直接お会いするのは初めてですね。私はZ-ONE、イリアステ――」

 

「破滅の未来の救済の為に力を貸したい」

 

「貴方が?」

 

 だが、Z-ONEの発言など意に介した様子もないアクターの無礼を、傍に控えていたアポリアがいさめようとするが、それはZ-ONEの目線によって遮られた。

 

そんな周囲のやり取りに意識すら逸らさないアクターは何処までも淡々と話を進めていくが――

 

「プランならある」

 

「聞きましょう。貴方には友を救って貰った借りがある」

 

 Z-ONEは相手の無礼を気にすることなく、先を促して見せた。

 

 そう、ある種のイレギュラーだったアクターは、もう一方のイレギュラーである神崎とは異なり、イリアステルにとって「極めて都合の良い」存在なのだ。

 

 

 窮地に陥った彼の仲間を救い、目障りだったイレギュラーの排除も同時に行い、そして未来の救済に協力的であり、綺麗ごとでは世界が救えぬことに理解を見せ、救済のプランも提示してくれる。

 

 邪険にする方が難しいだろう。

 

 

 そんな肯定的なイレギュラーが語る未来救済のプランは――

 

 

 

「不動 遊星を此方に引き込む」

 

「不動……遊星……を?」

 

 最後の人類へジワジワと幸福と言う名の毒を染み込ませていく。

 

 

 

 

 

 人類の救済を誓う新たなメンバーを加えたイリアステルの活動の行く先は果たして。

 

 

 

 

 

 

 






イリアステルに追われることがなくなったぜ! やったな、神崎!!


死体役:変装したシモベ


Q:素顔って?

A:この時の為にオレイカルコスの力で適当に偽装した。


Q:どうして神崎の死を偽装したの?

A:パラドックスに明かしたプランがアウトだったので、評価リセットを狙った。

つまり神崎は未来を救済するまで「神崎 (うつほ)」として生きることを放棄したので、乃亜が頑張る必要はあんまりない。





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