マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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今デュエルも2話構成です――海馬瀬人VSインセクター羽蛾 後編になります

前回のあらすじ
羽蛾氏、結構善戦
頑張れ羽蛾! 負けるな羽蛾! 全ての昆虫愛好家が応援してるぞ!

でも昆虫軍デッキの就職は厳しい



第22話 究極の姿

 羽蛾は形勢が傾きつつあることを感じつつも、《ミレニアム・スコーピオン》が突破されない限りは問題ないと自身を励まし、力強くドローする。

 

「ヒョヒョッ! この程度の反撃――ちょうど物足りないと思ってたところさ! 俺のターン! ドロー!」

 

 羽蛾は良いカードを引いた。と、思わずにやける。

 

「俺は魔法カード《トランスターン》を発動! コイツの効果は俺の表側表示のモンスターを墓地へ送り、そのモンスターと種族・属性が同じでレベルが1つ高いモンスターをデッキから呼び出すのさっ!」

 

「《孵化》と似た効果か」

 

「そのとおり! だがあの時とは違い今度リリースするモンスターのレベルは5! よってより強力なモンスターを呼び出せる! 《ヘラクレス・ビートル》をリリースし特殊召喚! 昆虫界の英雄よ! その枷を外し真の姿を現せ! 特殊召喚! 現れろ! 《セイバー・ビートル》!!」

 

 《ヘラクレス・ビートル》の黒い甲殻が光と共に弾け飛び、羽根を広げシャープになった茶色の身体を躍らせる。その角は光り輝いていた。

 

《セイバー・ビートル》

星6 地属性 昆虫族

攻2400 守 600

 

 さらに羽蛾はこのターン引いたカードを発動させる。

 

「さらにフィールド魔法《ガイアパワー》を発動! これでフィールド上の地属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、守備力は400ポイントダウンする!」

 

 大地の女神の加護によりフィールドに大樹が生え、地を司る者たちに力を与え、守備を捨て攻撃に転じさせる。

 

 《セイバー・ビートル》の角の輝きが全身に広がり、

 

《セイバー・ビートル》

攻2400 守 600

攻2900 守 200

 

 《ミレニアム・スコーピオン》の毒針と鋏が鋭利に尖り、

 

《ミレニアム・スコーピオン》

攻2500 守1800

攻3000 守1400

 

 繭が力強く脈動した。

 

《進化の繭》を装備した《プチモス》

攻 0 守2000

攻 500 守1600

 

「ヒョヒョヒョッ行きな! 《セイバー・ビートル》! 《レアメタル・ドラゴン》を貫け! セイバー・ピアシング!!」

 

 《レアメタル・ドラゴン》の角と《セイバー・ビートル》の角がぶつかり合う。

 

 《レアメタル・ドラゴン》がその重量とパワーでじりじりと押しこむも輝きを増した《セイバー・ビートル》の角が《レアメタル・ドラゴン》の角を溶かし、そのまま一直線に溶かしながら貫いた。

 

海馬LP:3150 → 2650

 

「ふぅん、精々足掻くことだ……」

 

「っ! だったら《ブレイドナイト》を食い尽くせ!《ミレニアム・スコーピオン》!」

 

 新たな獲物に襲い掛かる《ミレニアム・スコーピオン》。

 

 その尾の毒針での一撃を躱し、《ミレニアム・スコーピオン》甲殻に剣を突き立てる《ブレイドナイト》だが、その剣は銀色の鎧に弾かれ鋏で捕えられ、そのまま捕食された――

 

――かに思えたが盾を両顎に噛ませ喰われまいと抵抗を続ける。だが抜け出せない。

 

 そして盾が噛み砕かれ、その盾の後を追うように捕食された。

 

海馬LP:2650 → 1650

 

「モンスターを破壊(捕食)した《ミレニアム・スコーピオン》の効果を再び発動! 攻撃力は500ポイントアップ!」

 

 食事(戦闘)を終えた《ミレニアム・スコーピオン》の銀に染まりつつある甲殻がより甲冑のように変化する。

 

《ミレニアム・スコーピオン》

攻3000 → 攻3500

 

「ヒョヒョヒョッ! これで攻撃力はブルーアイズすら上回ったぜ! 俺はこれでターンエンド! どうだ! 昆虫の恐ろしさ思い知ったか!」

 

 

 これで流れは戻ったと海馬に吠えるも、海馬はどこ吹く風と言った具合だ。

 

 

「弱い犬ほどよく吠えるものだ……俺のターン、ドロー。この時《強欲なカケラ》にカウンターが乗る」

 

 壊れた壺が半分ほどその姿を現す。

 

強欲カウンター:0 → 1

 

「そしてまずは1枚目のリバースカードオープン! 魔法カード《召喚師のスキル》!」

 

 海馬のフィールドに召喚師が魔法陣を描く。

 

「その効果によりデッキからレベル5以上の通常モンスターを手札に加える!」

 

「レベル5以上の通常モンスター……まさかっ!」

 

 海馬瀬人が扱うレベル5以上の通常モンスターは羽蛾には1つしか考えられない。

 

「そのまさかだ! 俺は《青眼の白龍》を手札に加える!」

 

 魔法陣から透明な《青眼の白龍》が海馬の手札に舞い降りる。

 

「だけどお前のフィールドのモンスターは0! アドバンス召喚のリリースが足りないぜ!」

 

 強がる羽蛾へ海馬は嘲笑を向ける。

 

「どこまでも愚かな男だ……そんな永続罠1枚で俺のブルーアイズを止められると思うな! 2枚目のリバースカードオープン! 魔法カード《(いにしえ)のルール》を発動! よって手札からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する!」

 

「な、なんだとぉ!?」

 

 前のターンの《命削りの宝札》の効果で《青眼の白龍》を呼ぶ準備が整っていたと気付く羽蛾。

 

「現れろ! 俺自身の手で得た魂のカード! 《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》!!」

 

 巻物が天に上り、そして天を割り伝説の白き龍が翼を広げ木の葉を吹き飛ばし海馬のもとに降り立った。

 

《青眼の白龍》

星8 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「待たせたなブルーアイズよ! その力を思う存分振るうがいい! 滅びのバーストストリイイイム!!」

 

 《青眼の白龍》の滅びのブレスが《セイバー・ビートル》を襲う。

 

 《セイバー・ビートル》も《青眼の白龍》を貫かんとブレスの中を突き進むが、《青眼の白龍》に近づくにつれブレスの力は強まっていき最後は太陽に挑んだもののように地に落ちていった。

 

「ヒョッ! 《セイバー・ビートル》まで……」

 

羽蛾LP:3150 → 3050

 

 やっと呼び出せた《青眼の白龍》に海馬は上機嫌だ。

 

「ハーハッハッハッー! 強靱・無敵・最強! 俺はカードを1枚セットしターンエンドだ!」

 

 

 

 《青眼の白龍》の特殊召喚を許してしまった羽蛾だがその顔に絶望はない。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 俯きがちにカードを引く羽蛾――今にも笑いが零れそうだ。

 

「ヒョヒョヒョヒョヒョッ! ブルーアイズを呼び出したのはいいけど、忘れちゃいないかい? 俺の《ミレニアム・スコーピオン》は十分に育ちブルーアイズを上回っていることに!」

 

「なら攻撃してくるがいい……」

 

 その海馬のなんら脅威にならないとでも言いたげな態度に羽蛾の頬は引きつる。

 

「ならブルーアイズもコイツのエサにしてやる! やれ! 《ミレニアム・スコーピオン》!」

 

 大きなエサだと上機嫌に飛び出す《ミレニアム・スコーピオン》だが、突如としてその動きが不自然に止まる。

 

「ど、どうした! 《ミレニアム・スコーピオン》!」

 

 《ミレニアム・スコーピオン》突き出した鋏や毒針、さらには全身の至る所に鎖が巻きつけられていた。

 

「貴様の攻撃の際に罠カード《闇の呪縛》を発動させてもらった」

 

 鎖から逃れようと《ミレニアム・スコーピオン》がもがく姿を海馬は哀れみをもって見つめる。

 

「その効果により攻撃力は700ポイントダウンし、攻撃もできず、表示形式の変更もできん」

 

《ミレニアム・スコーピオン》

攻3500 → 攻2800

 

「くそっおぉ! 俺はターンエンドだ!」

 

 海馬の罠にまんまとかかってしまった羽蛾は悔しさと共にターンを終えた。

 

 

 

「底が知れるな……俺のターン、ドロー。そして《強欲なカケラ》に2つめのカウンターが乗る」

 

強欲カウンター:1 → 2

 

 壊れた壺は遂に《強欲な壺》としての姿を取り戻した。

 

「そして強欲カウンターが2つ以上乗ったこのカードを墓地に送り2枚ドローする」

 

 海馬のドローと共に《強欲な壺》は砕け散りその役目を終えた――折角治したのに。

 

「その惨めな姿に引導を渡してやれっ! ブルーアイズ! 滅びのバーストストリイイイム!!」

 

 《青眼の白龍》から放たれる滅びのブレスに鎖で動きを封じられた《ミレニアム・スコーピオン》に対処する術はなく、数々の獲物を喰らい強化した甲殻もそのブレスには為す術もなく呑まれていった。

 

羽蛾LP:3050 → 2850

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

 

 

 羽蛾の集めた昆虫軍団はことごとく打ち破られ、残るは《進化の繭》となった《プチモス》のみ。

 

 だが羽蛾はまだ笑う――機は熟したと。

 

「さすがブルーアイズだね~でもそれもここまでだよ。俺のターン、ドロー! ヒョヒョヒョッ! モンスターの攻防に気を取られ忘れちゃいないかい俺のフィールドの繭のことを!」

 

「ふぅん、それがどうかしたか?」

 

 どんなモンスターもブルーアイズの敵ではないと言いたげな海馬。

 

 だがそんな海馬を羽蛾は笑う。

 

「ヒョヒョッ! 《進化の繭》の中で自分のターンで数えて6ターン経過した《プチモス》は究極の姿へと進化するのさ! 俺は《進化の繭》を装備した《プチモス》をリリースし特殊召喚! 今こそ繭を破り究極の姿を現せ! 《究極完全態・グレート・モス》!!」

 

 《進化の繭》の中の《プチモス》だったものがその繭を食い破り鱗粉を撒き散らし毒々しい羽根を広げ飛翔し、その鱗粉に触れた残った繭は崩れ落ちる。その姿はまさに「毒蛾」。

 

《究極完全態・グレート・モス》

星8 地属性 昆虫族

攻3500 守3000

 

「ヒョヒョヒョッ! その攻撃力は何もせずとも《青眼の白龍》をも超える3500! さらにフィールド魔法《ガイアパワー》の効果も加わり――なんと攻撃力4000! 《青眼の白龍》なんて目じゃないね~」

 

 《究極完全態・グレート・モス》は大地の加護を受け頭の赤い2本の角、額の角、牙の全てが鋭利に伸び、さらにその羽根はその毒々しさを一層増す。

 

《究極完全態・グレート・モス》

攻3500 守3000

攻4000 守2600

 

「ヒョヒョヒョッ! 今こそお前(海馬)がいないから優勝できただの、武藤遊戯の方が強いだの好き勝手言ってやがった連中を黙らせてやるよ! この俺と《究極完全態・グレート・モス》がな!」

 

 そんな羽蛾の意思に呼応するかのように《究極完全態・グレート・モス》が威嚇音を上げながら羽根を広げ、鱗粉を撒き散らす。

 

「さぁ行け! 《究極完全態・グレート・モス》! 真の最強たる一撃を見せてやれ! モス・パーフェクト・ストーム!!」

 

「迎え撃てブルーアイズ! 滅びのバーストストリイイイム!!」

 

 《青眼の白龍》のブレスと《究極完全態・グレート・モス》の毒鱗粉を収束させた一撃が衝突する。

 

 一見すると拮抗している両者の攻撃だが、ぶつかり合う攻撃の余波で毒鱗粉が撒き散らされ《青眼の白龍》の体を蝕み溶かしていく。

 

 そして最後はブレスを吐く力も失った《青眼の白龍》に毒鱗粉の奔流が直撃しその白き体を完全に溶かした。

 

海馬LP:1650 → 650

 

「くっ! おのれ、俺のブルーアイズを……」

 

「ヒョヒョヒョヒョヒョー! これで《青眼の白龍》は3体とも墓地! 蘇生させるのも永続罠《王宮の牢獄》で封じた! もう勝ったも同然だピョー! ターーンエ ・ ン ・ ドだ!」

 

 

 

 己の分身たるカードをコケにされ怒りに燃える手で海馬はデッキに手をかける。

 

「俺のターン! ドロー! …………」

 

「どうしたんだい? もしかして壁モンスターすら出せないとか。それなら別にサレンダーしたっていいんだぜ~」

 

 挑発を重ねる羽蛾。

 

「ふぅん、貴様程度のデュエリストにこのカードを使うことになろうとはな……」

 

「見苦しいハッタリならやめた方がいいよ~」

 

 そんな羽蛾の挑発を無視し観客席にいる遊戯を見つめ海馬は宣言する。

 

「とくと見るがいい遊戯! これがお前を倒すため俺が手にした新たなブルーアイズの力だ! 魔法カード《龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)》発動!」

 

「何をするつもりかは知らないけど、永続罠《王宮の牢獄》で《青眼の白龍》を呼び戻すことはできないよ~ん」

 

「この効果により自分のフィールド・墓地からドラゴン族の融合素材モンスターを除外し融合召喚を行う! 貴様の永続罠の対象は墓地からの蘇生のみ! 墓地のカードを除外するこのカードは止められん!」

 

「なんだって!」

 

 海馬の前に龍の形をした額縁に収められた鏡が浮かび上がる。その鏡には3体の《青眼の白龍》が映し出されていた。

 

「俺は《青眼の白龍》3体で融合召喚! その伝説を超えた力を示せ! 現れろ究極の力! 《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》!!」

 

《龍の鏡》の中の3体の《青眼の白龍》が混じり合い強大な力の波動を発する。

 

 その波動に《龍の鏡》は砕け、《青眼の白龍》がより強大に進化した3つ首に額に赤い文様を入れた《青眼の究極竜》が3つの首から生誕の雄叫びを挙げる。

 

《青眼の究極竜》

星12 光属性 ドラゴン族

攻4500 守3800

 

「こ、攻撃力4500だとぉ!」

 

「俺の怒りはこんなものではない! さらに装備魔法《巨大化》を《青眼の究極竜》に装備! これにより装備モンスターの攻撃力は自分のLPが相手より少なければ倍になり、逆ならば半減する!」

 

「海馬のライフは650、お、俺のライフより少ない……」

 

「よって《青眼の究極竜》の攻撃力は倍となる!」

 

 謎の文字が描かれた丸い石版が《青眼の究極竜》に溶け込むと、《青眼の究極竜》の巨体が《究極完全態・グレート・モス》が小さく見えるほどに巨大化した。

 

《青眼の究極竜》

攻4500 → 攻9000

 

「真の究極とはなんたるかを知るがいい! 《青眼の究極竜》! スーパー・アルティメット・バーストッ!!」

 

 その巨体から放たれる3つの滅びのブレスは《究極完全態・グレート・モス》とともにフィールドの全てを薙ぎ払う。

 

 《究極完全態・グレート・モス》の毒鱗粉も根こそぎ薙ぎ払われ《青眼の究極竜》には届かない。

 

 そして《究極完全態・グレート・モス》を消し飛ばしてもなおブレスの勢いは衰えず羽蛾にまでその破壊の奔流が襲った。

 

「ぎゃあああああああああああああ!」

 

羽蛾LP:2850 → 0

 

膝をつく羽蛾を確認した後Mr.クロケッツは試合終了を告げる。

 

「そこまでです。勝者、海馬瀬人!」

 

「お、俺の《究極完全態・グレート・モス》が……」

 

 自身の切り札の敗北を嘆く羽蛾。

 

 だが海馬はいつものように言い放つ。

 

「ふぅん、当然の結果だ」

 

 

 そんな2人に目を配りMr.クロケッツは粛々と自身の仕事をこなす。

 

「次の準決勝第1試合、城之内克也VSキース・ハワードの両名は規定時間までに準備をおすませ下さい」

 




アルティメット氏、初勝利を勝ち取る――負けフラグなんて言わせない!


でもそろそろ
《究極完全態・グレート・モス》サポートが出ても良いと思います!

《青天の霹靂》じゃあ満足できねぇぜ!

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