マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
ガッチャ! マインドクラッシュは勘弁な!!(おい)






GX編 第1章 原作開始前 サバイバル レース
第222話 王の運命


 

 

 逆立てた赤い髪をしたボロ切れを着た少年が砂漠の如き荒れ果てた地に立つ砂に埋もれかけた遺跡の跡地にて呆然と雲を眺めていた。

 

 両親から捨てられた身空で、万が一にも戻ってこないようにと、砂漠のど真ん中に放り出す徹底っぷりに、少年は漫然と己の死を受け入れ始めていた。

 

 飢えと渇きに身体の活力は失われて行くも、その心に悲哀の感情さえ湧かず、ただ雲を眺めて死を待つだけの日々。

 

 だが、此処で絶望すら通り過ぎた少年に影がかかる。

 

 

 そんな気配もなく現れた相手に少年の意識が向く中、影より言葉が落ちる。

 

「幾ら空を眺めようとも、空はお前を救いはしない」

 

 しかし相手の言葉を漫然と聞き流す。

 

 

「幾ら天に願おうとも、天はお前を救いはしない」

 

 

 

 

 少年の元に転がったのは、トカゲのような生物によく分からない植物などの胃の中に入れば全て同じと言わんばかりの品々。

 

「食え」

 

 

 そんな強い言葉に突き動かされるように震える手で件の代物を口に運ぶ少年の口内に酷い苦みが広がった。

 

 不味い。

 

 口に運んだものは、とても食えたものではないゲテモノ以下の代物。

 

 

 だが、少年の手は止まらない。空っぽだった中身に水を注ぐように地面に転がった命を喰らっていく。

 

 

 少年の身体が求めていた、血を肉を、力を。

 

 

 味覚が示した拒否反応すら押しのけて、転がった全てを強引に呑み込んだ少年が口元を拭う姿に影は語る。

 

 

「お前を救えるのは、他ならぬお前自身だ」

 

「…………貴方は?」

 

 そんな影へ、立ち上がった少年が強い視線を向けて名を問うが――

 

 

 

「生憎と持ち合わせていない」

 

 

 少年の意識は此処で途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 影との出会いも過去となった頃、少年は孤児院にて眼鏡をかけて本をパラパラとめくる。あの出会い以降、少年はいつの間にやらKCが管理する孤児院に放り込まれていた。

 

 当時は混乱していた少年も、今や孤児院でのカリキュラムを受け、すくすくと成長している最中である。

 

「なんで呼び出されたかは分かってるよな!」

 

「ヴァロン、貴方も懲りませんね。いつもの個人主義なボクへの小言でしょう?」

 

 だが、目の前で青筋を立てて仁王立ちするヴァロンの言葉に少年はワザとらしく溜息を吐きつつ返すが――

 

「ヴァロン『先生』だ! ったく、シスターをあんまり心配させるなよ――親のいねぇ俺たちだからこそ、もっと団結をだな」

 

「必要な交流は済ませています」

 

 端的に返す少年の変わらぬ姿にヴァロンは怒りも霧散し、小さく息を吐く。

 

 実際問題として、少年の行動に目立った問題もなく、他の少年少女たちのまとめ役を買って出てくれる――などと助かっている部分が多いが、ヴァロンは昔の己を見ているような気がしてどうにも気がおけない。

 

「むしろ貴方とのデュエルにこそ時間を割きたいくらいです」

 

「負けっぱなしの癖に相変わらず、生意気なヤツだな……まぁ、この小言も今日で最後になるから、胸に刻んどけよ?」

 

 知識・力・デュエル――あらゆる面で貪欲なまでに求める少年へ、ヴァロンは念押しするように己の人生で培った教訓を語り始める。

 

「人間、一人で出来ることなんざ高が知れてる。だからこそ――」

 

「最後? どういうことですか?」

 

「結束ってヤツの力は馬鹿にならないことを……って、そっちか。あれだ。シスターと相談して『早熟なお前に此処のレベルの教育システムじゃ物足りないだろうな』って話になってな」

 

 だが、そのありがたいお話は、残念ながら途中で打ち切られる結果となり、少年の今後へと話題が移る。

 

 そう長くはない時間とはいえ、少年が世話になったこの場所とも別れの日が来たのだ。

 

「俺の知り合いんとこにお前を送ることになった――あっ! 勘違いするなよ! お前が邪魔って話じゃないからな! 武者修行ってもんだ! しんどくなったら何時でも戻って来いよ!」

 

 ゆえにヴァロンは少年にありったけの声援を送り、肩に手を置く――「いつでも帰って来て良い」と。

 

 正直ヴァロンは乗り気ではなかった話だが、他ならぬ少年の望みである以上、切って捨てる訳にもいかない。

 

「まぁ、此処みたいに優しくはないから精々覚悟――」

 

「何処ですか!?」

 

「……日本だ」

 

 

 そうして少年は、進み続ける。その先に目指したものがあると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅっ!?」

 

 KCの訓練室にて、ギースの蹴りを腕でガードした少年だが、その小さな身体は容易く吹き飛び、地面を大きく跳ねた後、壁際まで転がった。

 

 だが、すぐさま体勢を立て直した少年が横に跳ぶ――途端に先程まで少年の頭が在った場所に右拳が通り、壁を打ち据えた。

 

 

 そんな攻撃後の隙を狙い少年が、足払いを仕掛けた――が、その足を逆にギースの足が掬いあげるように持ち上げ、宙で無防備に浮いた少年の腹部目掛けて拳が放たれる。

 

 その一撃を既のところで両腕でガードした少年は、インパクトの瞬間ギースの膝を蹴り、自ら後ろに跳ぶことでダメージを軽減。

 

 

 やがて少年の足が床の上を滑った後に止まり、相手の出方を伺う中、ギースはポツリと零す。

 

「……余計なお世話かもしれんが、お前の在り方は私から見ても生き急ぎ過ぎているように思える。お前の才は破格だ。そうまで焦る必要が何処にある?」

 

 それはギースなりの心配の声。「凄い才能の持ち主」なんて安い言葉で紹介された後、鍛えるように命じられ、当人の望み通りに大人に交じって心身共にデュエルと磨いて来た姿を間近に見てきたゆえに否応なしに理解させられる。

 

 

 眼前の年端もいかない少年は、かつてギースが焦がれた「才」に愛されている現実を。

 

 しかし、それゆえに解せない。何故、そこまで徹底して己を追い込むのか――その一点がギースには理解の外だった。

 

 何が、そこまで彼を駆り立てるのか。

 

「心配、ご無用……です。ボクの状態は、ボクが一番……分かっています……! 頂きに至るには、半端な覚悟……では、影すら踏めない……!」

 

「才あるゆえの苦悩……か。私には縁遠い話だ。何も助言はしてやれん。だが、辛い時はいつでも言え」

 

 だが、痛む身体を押して大きく一歩踏み出した少年の覚悟の籠った姿と決意に、ギースは押し負けるように鍛錬を再開する。

 

 他の人間に任せるよりも、せめて加減を知った己が担った方が、最悪を避けられると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肉体の鍛錬を終え、訓練室を後にした少年はドリンク片手に、休憩所のイスに力尽きるように座り込む。

 

 やがて頭にタオルを被せた少年は、自身の握り込んだ拳を見やった。そこには強くなった実感が確かにあれど、目指す頂きへの遠さも同時に感じながらも、息を整える。

 

 

「随分とお疲れのようだな」

 

 だが、そんな少年の意識の外から声が届いた。

 

「…………そういう貴方はお得意の占いでの待ち伏せですか? 斎王」

 

「そう邪険にせずとも運命の導きは常にキミに向かうべき先を示してくれる」

 

 頭のタオルを首に下げ、眼鏡をかけ直した少年の視線の先にいたのは、額にひし形の灰の毛を纏めた深い青の長髪を持つ少年占い師。

 

――斎王(さいおう) 琢磨(たくま)。未来予知の力を持つ男……

 

 そんな占い師の名は、少年の内心が示す――斎王(さいおう) 琢磨(たくま)。それが彼の名。

 

 占いにより未来を高精度で予知できる特殊な力を持つ。

 

――ボクにはない「特別」を持つ男……

 

 少年の内に燻る嘱望の念を余所に、斎王はテーブルの上にタロットカードを並べて、なにやら占っていた。

 

「キミを差すカードは正位置の月――混沌」

 

 やがてタロットカードのXVIII番、月のカードを手に斎王は、占った少年の行く先を語り始める。

 

「今のキミは危うい。曖昧に揺れ動くその指針が差すべき場所、キミが向かうべき先を今一度見極めるべきだ」

 

 タロットが示した「混沌」の内実は、少年の内にうごめくもの。

 

 少年の掲げる目標は素晴らしくあれど、目的の為に力を求めるストイック過ぎる姿勢が、時に己が夢を歪んだ形に惑わせかねない。

 

 そう危惧する斎王の言葉を前に、少年はその忠告を切って捨てる。運命という呪縛を乗り越えねば、己が目指す先へは行けないのだと。

 

「生憎ですが、占いに興味はありません。ボクは己で道を切り開く――その先にしかあの人はいない」

 

「だが、そこに不安もある」

 

「――ッ!」

 

「正位置の月のカードは、『不安』をも差し示している」

 

 そんな中、その心中を見抜いた言葉に心を揺らす少年を余所に、斎王は説き伏せるように続ける。

 

「私もキミと同じく拾われた身――恩を感じているのは事実。だが、キミには危うさが目に余る」

 

 斎王も、その特異な力ゆえに悪用を企む人間から追われる日々を送っていた。KC内の立場としては斎王も、少年も、大きな違いはない。

 

 それぞれが受けた恩を返せるように、何らかの形で力になろうとしている。

 

 だが、少年のあり様は斎王から見ても、苛烈だった。このままでは壊れてしまうのではないか――と心配になる程に。

 

 ゆえに斎王は、先達として道を示す。

 

「そしてキミにはXIX――正位置の太陽の導きが見える。その熱はキミを正しき未来へ導いてくれるだろう」

 

 そして指の間からもう1枚のタロットカードを見せる斎王を余所に、少年は付き合い切れないとばかりに席を立つ。

 

「占いに興味はないと言った筈です。そんなに相手が欲しいのなら、神崎さんでも占ってあげるんですね」

 

「生憎、彼は私の導きを必要としていない」

 

「ボクもそれには同意ですよ。失礼します」

 

 しかし斎王の言葉は少年の心に届くことなく、その背を見送ることしか斎王には出来なかった。

 

 

 

 

 そうして一室に一人残された斎王は、手の内のタロットカードを眺めながら力なく呟く。

 

「未来を見通せようとも、仲間の迷いを晴らすことすら叶わない……か。ままならないものだな」

 

 世界の運命すら見通せる――などと評される程の強大な力を持っていても、結局のところ己はちっぽけな人間でしかないのだと斎王は自嘲する。

 

 KCの人間の殆どが未来を見通す斎王の力に、さして興味を抱かない訳が少し分かった気がした。

 

 

 そうして感慨にふける斎王に、聞きなれた声が届く。

 

「此処にいたのか兄上――宿題をみて欲しいのだが……」

 

美寿知(みずち)か、少し待ってくれ」

 

 そこにいた長い黒髪を持つ斎王の妹――「美寿知(みずち)」が「普通の生活」を取り戻しつつある様子にフッと小さく微笑んだ斎王は、勉強道具を並べるスペースを作る為、タロットカードを片付けていく。

 

 だが、そんな中、斎王の手は1枚のカードを手に取り、ピタリと止まった。

 

 それは、神崎を占った際に示したカード。何度占おうとも結末の変わらなかった運命の札。

 

 

 

 XII――逆位置の吊るされた男。

 

 

 

 その意味するところは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 KCのオカルト課にて、遊戯は懐かしい顔にあったと御伽の元に駆け寄り、元気よく声をかける。

 

「久しぶり、御伽くん! ニュースで見たよ、D(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)――凄く人気なんだって、ほら! ボクもこの前、買ったんだ!」

 

「……あ……ありがとう……遊戯くん……」

 

 その人物は椅子に座りながら、燃え尽きたように全身を脱力させている遊戯の友人――御伽。

 

 御伽が生み出したボードゲーム――「D(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)」はデュエルマット(仮)の正式バージョンの販売と共に、身軽さの課題をクリアされた。

 

 それに加え、御伽の尽力によって、I2を通じてデュエルモンスターズと連携――これにより、ダイス内のモンスターの種類を増加させ、多様なバトルスタイルを売りにしたことも相まってD(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)は大きな躍進を遂げた。

 

 平たく言えば、原作のアニメ版にてペガサスの手により、「御伽VS闇遊戯」戦での《ブラック・マジシャン》がD(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)に輸入されたアレの大規模版である。

 

 お陰で売上も大幅アップし、多くの人々がD(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)を手にしていることだろう。御伽も大満足だ、と思いきや――

 

「……うん、そうなんだ……人気なんだ……なのに、競技人口が……」

 

 先程からやたらと御伽が項垂れていることから察せられるように新たな問題も浮上していた。

 

 それが「競技人口の伸び悩み」である。増えてはいるが、売上の伸びに比べると微妙なラインだったのである。

 

 理由は明白――遊戯が見せた《ブラック・マジシャン・ガール》が入ったダイスが全てを物語っていた。

 

 平たく言えば、ブルーアイズの銅像を眺めて「ふぅん」する社長のように、「自分の好きなエースカードのダイス」を手にして満足してしまう客層が多かったのだ。

 

 その為に、透明なダイスやら、キーホルダー代わりの専用のチェーンが販売される程に。

 

 御伽が、D(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)とデュエルモンスターズを搦めてしまったゆえの弊害と言えよう。どのみちペガサスからの提案がある以上、避けられぬ道やもしれないが。

 

 

 そうして「ボードゲームの道具」よりも「コレクターアイテム」としての側面が大きくなった結果、「D(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)の競技の発展」という御伽の願いは微妙に叶わぬ結果となった。

 

 

 そんな――「D(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)はデュエルモンスターズの食玩じゃねぇ!!」とばかりに項垂れる御伽に、空気を変えるべく遊戯は新たな話題を投下する。

 

「え、えーと、そうだ! ペガサス会長とのD(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)のエキシビジョンマッチと『デュエル』! 凄く盛り上がったんだよね!」

 

 それはD(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)の世界大会での出来事。

 

 その会場にて、御伽はペガサスとD(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)にて互いに一歩も譲らぬ熾烈を繰り広げ、大いに盛り上がりを見せたのだが――

 

「うん……デュエルの方が凄く盛り上がったんだ…………デュエルの『方が』」

 

 その後で行われた御伽とペガサスのデュエルは、もっと盛り上がった。

 

「で、でもD(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)も凄く盛り上が――」

 

「……あっ、そろそろ行かないと。今日はプロ制度を提案しに来たんだ……これから、詳細を詰めなきゃ、ははは……」

 

 やがて頑張って励まそうとする遊戯だが、腕時計に目を落とした御伽はフラフラと幽鬼のように立ち去っていく。

 

「う、うん、頑張ってね!!」

 

 その背に、遊戯は軽い声援を送って見送ることしか出来なかった。

 

 

 ゲームクリエイターという部門では一歩も二歩も先を行く御伽の姿は、遊戯とて他人事ではないのだから。

 

 

 

 

 かくして、遊戯が今回KCに来た目的である「ゲームクリエイターとしての今後」を相談するべく、神崎に胸の内を明かすが――

 

「端的に申し上げて、転職をお勧めします」

 

「…………やっぱり、そうなりますよね……」

 

 一刀両断もかくやな具合にバッサリと語った神崎の言葉に遊戯は、応接室のソファに座ったまま困ったように頭をかいた後、おずおずと問いかける。それは――

 

「神崎さん、ボクの作ったゲーム……どうでしたか? 大会では、結果は残せたんですけど……」

 

 海外の大会で結果を残した己の作ったゲームの評価を問うもの。

 

「面白いと思います」

 

「本当ですか!!」

 

 そんな神崎の言葉に思わず前のめりになる遊戯。諸事情により、評価基準に不安があった為、遊戯のデュエル関係以外を「特別視」しない神崎の言葉はありがたい。

 

「ですが、『騒がれていた程ではない』とも思います」

 

「……ですよね」

 

 だが続いた言葉に対し、遊戯は声を落として脱力しながらソファに座り直し、心境を語る。

 

「みんな、『デュエルキングが作ったゲーム』として評価して、なんだか『ゲームそのもの』の評価からズレているような気がするんです」

 

 そう、今回の遊戯の相談事はどんなゲームを作っても「デュエルキングの作ったゲーム」という前提が押し出され、正当な評価がなされていない件にあった。

 

 相談相手に神崎を選んだのは、「ゲームデザイナーとしての遊戯」に毛ほども興味がない相手だったからである。

 

「それは避けられないことだと思います。私も同じ立場であるのなら、似たようなキャッチコピーを選ぶかと」

 

 とはいえ、これは神崎の言う様に無理からぬ話。そうして世に送り出されれば、一定以上の収益が見込めるのだ。外す意味がない。

 

 仮に「つまらない」としても、「デュエルキングの感性に時代が追い付いてない」なんて逃げ道もある。

 

「貴方が感じているであろうものは、把握できます。ですが、どうしようもないものです」

 

 そう、仕方のない話なのだ。「物を売る商売」である以上、売り上げアップの伝家の宝刀があれば誰だって使う。

 

「ですので、武藤くん、貴方には2つの選択肢があります。最初に告げた転職か、このままゲームクリエイター『デュエルキング』として生きる道」

 

 ゆえに神崎は遊戯に二つの選択肢を提示する。いや、「デュエルキング」ではなく「ゲームデザイナー武藤 遊戯」としての評価を求めている遊戯からすれば実質的に一択だ。

 

「そしてもう一つが、新たな夢を探す道」

 

 それが妥協。

 

 遊戯に訪れた最初の「超えられぬ壁」である。

 

 皮肉な話だ。アテムが残したデュエルキングの称号が、遊戯の願いを妨げる結果となろうとは。

 

「ボクの名前を伏せるのは……」

 

「無理ですよ。貴方は目立ち過ぎる」

 

――髪型も含め、肩書が大き過ぎる。

 

 しかし諦めきれないのか遊戯が希望を求めて抵抗を見せるも、神崎は「ありもしない希望だ」と切って捨てる。

 

「ボクの…………新しい夢……」

 

「今すぐに決断を下す必要はありません。ですが、先送りにすればする程に周囲に及ぼす影響は大きくなっていくことだけはお忘れなきように」

 

 俯き身体を震わせる遊戯に神崎は事務的に現状を並べていくが、相手のあまりの落ち込み様に、小さく息を吐いた後、逃げ道を用意する。

 

「…………一度、原点に立ち戻るのもいいかもしれませんね。ご自宅のお爺様の元で己を見つめ直してみては?」

 

 それが問題の棚上げと、決断からの逃避。

 

 双六に相談すれば、「背を押す」との名目で遊戯の意を汲んだ決断を代わりにしてくれる可能性は十分にある。

 

「……考えてみますね。今日は相談に乗ってくれてありがとうございます。今回の『お礼』は何をすればいいですか?」

 

 やがて此度の会談をお開きにするべく、相談の対価の話に移る遊戯。

 

 これは未来の脅威と戦う神崎が「助けを求めやすくする」為に遊戯が決めたルールのようなものだ。

 

 神崎と表面上だけでも友好な関係を築けている相手が必要最低限にしか関わらない「ビジネス的な関係」の人間が多かったゆえのもの。

 

 神崎がアクターとそれなりの期間、同じ陣営にいられたのも、この距離間を保てたお陰だと遊戯は判断したのだ――まぁ、全然違うのだが。

 

 

「とはいえ、本日はさして助けになれた訳でもありませんし、そうですね……」

 

 そんな中、神崎は「今回は、さして力になれていない」ゆえに、それ相応の小さい対価に頭を悩ませ――

 

「あぁ、そうだ――武藤くん、今回の相談の対価が決まりました」

 

「? なんですか?」

 

「私が指定した相手とデュエルして貰えませんか? 本気で」

 

 特定の相手とデュエルする――そんな「遊戯からすれば」大したことのない内容に、遊戯は「お安い御用だ」とデッキを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「えーと、よろしくね? ボクは――」

 

「武藤 遊戯――現デュエルキング」

 

 

 

 

 

 

 

 

 斎王の全てを見通したかのような言葉から逃げるように立ち去った少年は、ギースとの肉体訓練での疲労を抜くべくクールダウンしていた中、神崎に呼び出され、遊戯とデュエル。

 

 

――あれが、デュエルキング……今のボクじゃ影どころか背中すら見えない。

 

 結果は敗北――デュエルキング相手では、年端もいかぬ少年の実力では仕方のない話であろう。

 

 そんな少年に向けて、遊戯を帰路につかせた神崎は少年のデュエルへ賞賛を送る。

 

「そう肩を落とすことはありませんよ。正直、あそこまで食らいつけるとは予想外でした」

 

「慰めの言葉は不要です」

 

「慰めではありません。事実を述べているまでです――貴方のデュエルの才は素晴らしいものだ」

 

 そう、神崎は知っていた。原作知識からの情報もそうだが、なにより実際に訓練を開始した段階で「とんでもねぇな」と思いしらされたのだから。

 

 

 

 

 

 

「――不要と言った筈です!!」

 

 

 だが、声を荒げて立ち上がった少年からすれば、敗北の味は身に染みる様子。

 

 

 そんな怒れる少年の視線に射抜かれる神崎だが、対するスタンスは変わらない。

 

「武藤くんが貴方くらいの年齢の実力と比べれば、今の貴方の方が強い。この事実は確固たるものですよ?」

 

「……今の情報に溢れた時と、昔が同じ条件だとでも?」

 

 しかし、すぐさま冷静さを取り戻し眼鏡の位置を直した少年から、痛いところを突かれた。

 

 誰よりも情報を有していながら、少年よりだいぶ酷いレベルのデュエルを繰り広げ、遊戯に負けた神崎の心にグサリと「正論」の矢が刺さる。

 

「ボクには分かる。ボクはもう爆発的に成長することはない。なら、後はどれだけ研ぎ澄ませられるか――その一点こそが、ボクが選べる唯一の道」

 

――その年齢でする心配ではないと思うんですけど……

 

 重苦しい雰囲気で己が限界を語る少年だが、神崎からすれば「年端も行かない子供のする話ではない」感が強い。

 

「貴方は自分の才能を過小評価し過ぎている気もしますけどね」

 

――原作でも作中最強格だった訳ですし。原作の家庭の事情ゆえの苦境がなくとも、ギースの実力を一瞬で抜き去ったところを見るに才は健在。

 

 そうして、少年の肩の荷をなんとか降ろそうと四苦八苦する神崎だが、いまいち相手に響いている様子はない。

 

 

 

――その年齢でオカルト課の面々とイーブンに持ち込めている時点で十二分にヤバい領域に足を踏み入れているでしょうに何故、焦るのか。

 

 秀才に天才の苦悩は分からなかった。

 

「おっと、そろそろ休憩時間も終わりですね。ですので、最後に今一度お節介を――周りに目を向けることは、時に良き刺激になることもありますよ」

 

 やがて「一旦時間を置く」との逃げの選択を取った神崎は、最後にそれっぽいことを言った後、()()()()()()()()様子でその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 そうして再び一人になった少年だったが、今度はハツラツとした子供の声が響く。

 

「あっ、俺と同い年くらいのヤツいるじゃん!」

 

『止めときなよ。この会社、変な気配のヤツばかりだ――関わらない方が良い。キミにはボクがいるじゃないか。他のヤツのことなんて、どうでも良いだろう?』

 

 そのクラゲのような髪型をした子供と、その後ろで宙に浮く額に三つ目の眼を持つ紫と黒の肌を持つオッドアイの人型の精霊が、翼を広げることで空中で立つような姿勢を取った。

 

 そうして近づく子供の姿に少年は「見知らぬ顔だ」と挨拶代わりに問いかける。

 

「ボクに何かようですか?」

 

「俺、遊城 十代! 今、この会社の中、探検してるんだ!」

 

「……そうですか」

 

 その子供――遊城 十代の声に、少年は興味なさげに相槌を打つが、対する十代は少年に強い興味を持ったように隣に座った。

 

「お前も俺みたいに、此処に呼ばれたのか?」

 

「そんなところです。ボクはこれで失礼させて――」

 

 そんな十代の距離の詰め方に煩わしさを感じた少年が席を立つが――

 

「なぁ! 俺と一緒に探検しようぜ!」

 

 その少年の手は十代によって掴まれる。

 

『十代。こんなヤツいらないよ。探検ならボクと一緒にすれば良いじゃないか』

 

「そんなこと言うなよ、ユベル! 探検は仲間を集めながらするもんだぜ!」

 

 やがて虚空に向かって話しかける十代の姿に、少年は「十代の特異性」を理解した。

 

――コイツ、まさか精霊が見えるのか……?

 

 精霊が見える――この力は、オカルト課でも所持している人間が極僅かだ。

 

 やがて少年が目線は動かさずに周囲を警戒するように見渡すが、そんな姿を十代の傍にいる精霊『ユベル』がクスクスと嘲笑の声を漏らす。

 

『プッ、コイツ、ボクを探してるね。見えもしないのに無駄なことを――もう行こう、十代。精霊が見える人間を探す探検だろう? コイツは見えないから、やっぱりいらないよ』

 

「お前、名前は?」

 

『十代、この前のことをまだ怒っているのかい? アイツらはキミを悲しませたんだ。罰を受けるのは当然のことだよ。それどころか、むしろあの程度で済ませて上げたことに感謝するべきさ』

 

 自身の言葉を無視する十代をあやすようにユベルが言葉を並べるが、十代は振り返ることなく少年の名を問い、手を差し出す。

 

 

「……『アモン』だ」

 

 

 これが少年――アモンの、太陽のような子供、「遊城 十代」との初めての出会いであった。

 

 

 






光の結社「ぐわぁあああぁあーーーーッ!!!!」

破滅の光「ひ、光の結社ダイーーン!!」



Q:アモン!? 何故アモンが此処に!? ガラム家の養子にならなかったのか、アモン!


A:医療機関発達しまくっているオカルト課があるので、ガラム家はそっちを頼った感じです。
ゴア・ガラム当主は、原作の様子から後継ぎは実子派のようですし。

なのでアモンは巡り合うことすらないので探し出して保護し、ヴァロン(と原作では焼死したシスター)の孤児院にパスされた。


やったね(ガラム家で生まれる予定の実子である)シドくん! エコーが本田ヘアーにならないよ!!


Q:斎王!? 何故斎王が此処に!? 占い師にならなかったのか、斎王!

A:予知能力ゆえに利用+迫害されていたので妹共々捕獲もとい保護。

神崎が一切、斎王たちの予知能力に興味ないので(原作の十代たちがひっくり返しまくる予知ですし)

兄妹共々普通に童実野町の学校に通っている。ちなみに書類上の保護者はギース・ハント。
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