ガンガン時間を飛ばして行くぜ!!
前回のあらすじ
「じょう」を継ぐ者
『城之内 克也氏が全米リーグから、米エンターリーグへの移籍を表明して早くも大注目――』
「牛尾! もう1度勝負だ!!」
「へいへい」
マンションの一室にて灰色の髪の少年「エド・フェニックス」とデュエルマットでデュエルしていた牛尾は、大人げなく得た勝利を余所にぼんやりとテレビのニュースを眺めていたが、少年エドの呼びかけに意識を戻し、フィールドに並んだカードを集めていく。
そうして再戦の流れが生まれる中、I2社のカードデザイナーである眼鏡をかけたエドの父――フェニックス氏がカードデザインの手を止め、牛尾へ申し訳なさそうに声をかけた。
「すまないね。エドの相手まで頼んでしまって」
「構いませんよ。護衛だなんだと言っても今の俺は基本暇っすから」
「そう言って貰えると助かるよ――しかし本当なのかい? 究極のDを狙う人間がいるなんて話……」
そう、今回の牛尾たちは「カードデザイナーであるフェニックス氏が制作中のカード『究極のD』を狙う者がいる」との情報が匿名でもたらされたゆえに、I2社の要請を受けてボディガード染みた仕事をこなしているのだ。
「まぁ、いないなら、いないに越したことはないんすけどね――その手の情報が上がった以上、念の為ってやつです」
やがて息子であるエドに万が一のことがあれば、と不安気なフェニックス氏だが、対する牛尾はあくまで「転ばぬ先の杖」程度のものだと返す。
フェニックス氏が今回手掛けているカードデザインは、I2社としても重要なプロジェクトではあるが、もたらされた匿名の情報が不確定な代物の為、騒ぎ立てる程の内容ではないのだ。
「ボクのターン! ドロー! ボクは――」
「エド、悪い。タイムだ。電話終わるまでちっとばかし、待ってくれ」
そうしてエドとのデュエルが進んでいくが、牛尾のポケットで自己主張する通信機に呼び出されたことで、エドに向けて牛尾は小さく手を挙げて謝罪しつつ、マンション周辺にて警戒する仲間からの通信を受けた。
「――どうかしたんすか?」
『此方、コブラ。下手人を捕縛した』
「そっすか、お疲れさんした。そっちは任せます――悪ぃなエド。もういいぞ」
「よし! ならボクは手札のこのカードを――」
そして厳つすぎる新入りであるコブラへ弟子入りさせられたゆえか思わず馴れない敬語で返した後、通信を終えてエドとのデュエルに戻る牛尾だが、通話内容が気になったフェニックス氏が息子のデュエル観戦ついでに探るように問いかけた。
「捕まったのかい?」
「らしいんですが――この顔、覚えありますか?」
そのフェニックス氏に対し、牛尾はコブラから端末に送られた下手人の人相を見せるも――
「いや、知らない顔だが……彼がそうなのかい?」
「まぁ、そうなんすけど……ぱっと見、『究極のD』どころか『Dシリーズ』の情報すら掴めるようなタマにゃ見えないんで、予断は許さない方がいいっすね」
フェニックス氏は眼鏡の位置を直して凝視するが、覚えがない様子。
それもその筈、不法侵入しようとしてコブラに捕縛された男「
I2社のやり手デザイナーであるフェニックス氏とは縁遠い人間であろう。
「あくまで仲間の一人の可能性が高いという訳か……」
「あっ、この人!」
「どうした、エド?」
ゆえに、相手の全容を推理するフェニックス氏だったが、横から顔を覗かせたエドが見覚えがあると主張する。それは――
「前にデザイン画を拾ってくれた人だよ! ほら、風で窓から飛んじゃった時の!」
「ああ、あの時か」
「成程、そん時にフェニックス氏の住居を探り当てたって寸法っすね」
少し前にデザイン中の究極のDのデザイン画が風にさらわれた件をフェニックス氏が思い出す中、牛尾も納得したように頷く。偶発的なことであるのなら、ゆかりのないDDが情報を入手できた説明もつこう。
そうして懸念が消えたとフェニックス氏も安堵の息を漏らした。
「……はぁ、良かった。これで解決ですね、牛尾さん」
「いや、申し訳ないんですが、DシリーズをI2社に通すまで護衛は続けさせて貰います――この男の仲間がいる可能性もありますから」
「確かにその可能性もあるな……では引き続きお願いします」
「任せてください――っと、また電話が。ちょいと失礼」
だが、気を抜いた時が一番危ういのだとの説明にフェニックス氏も納得を見せた矢先、再び自己主張し始めた通信機を片手に牛尾は会釈しつつ席を立つ。
やがて少し離れた位置で通信相手からの連絡を聞くが――
「おっ、良いところに――――神崎さん、情報にあった不審者取っちめましたが、念の為もう暫く――――えっ? 手が離せないから後のことは頼む? 急にどうしたんすか? そもそも後って――」
その相手である神崎は、牛尾の説明など意に介することなく、必要事項を足早に伝えるだけ伝えて、恐らく背後で響いたであろう轟音と共に通話は唐突にブツリと途切れた。
「……なんだったんだ?」
「なんなんだ、アレ……」
「ああ、悪いエド。ビックリさせちまったよ……な――」
そんな慌ただしい連絡劇のせいか驚いた表情を見せるエドに手のひらを立てつつ謝る牛尾の視界には――
「父……さん?」
エドの呟きの通り、空から綿毛のようにゆっくりと落ちる光が1枚のカードに宿り、爛々と眩い輝きを放ち始めるそのカードに吸い込まれるように、フェニックス氏が手を伸ばしていた。
そのどこか神秘性すら感じさせる光景にエドと牛尾が揃って固まるが、牛尾の胸中にはかつてアテムから受けたものと別ベクトルではあるが酷似した危機感がざわめきたつ。
――あっ、ヤバい。
やがてフェニックス氏の動きを止めようとする牛尾だが、出遅れたその動きが間に合う訳もなく、光り輝くカードにフェニックス氏の手が触れる。
同時に周囲へ光の奔流が荒れ狂った。
フェニックス氏の住居の周辺をパトロール中に空から落ちる怪しげな光を「危険なもの」と即座に判断したアメルダは、響みどりを引き連れてフェニックス氏の一室に駆け付けるも、彼らの視界に最初に映ったのはエドを庇うように倒れた牛尾の姿。
「牛尾、何があった!!」
やがてアメルダが棒立ちするフェニックス氏を視界に収めつつ、牛尾に檄を飛ばすが答えはない。
「アメルダ……牛尾が……牛尾が、ボクを庇って……!」
そして響みどりが倒れた牛尾の状態を確認する中、涙を流すエドから要領を得ない説明がなされるも、アメルダが見やるのはエドの背後にフワフワ浮かぶ――人の全身に緑の体毛に覆われ、背に翼の生えたヒーローだった。
――あれは《
そのヒーローの正体はアメルダの心中の声の通り、《
下級の精霊の鍵――
上級、最上級と異なり「願いの要求」すら出来ず、精々が所持者へ向かうオカルト方面の影響を軽減する程度の力しか持たない。
さらには1度の使用で「物自体」がぶっ壊れ、綺麗サッパリ消えてしまう――言っては何だが、あんまりな代物である。
しかし、その反面、製造・運用に対して危険性が小さく、低コストな点が強みと言えよう。
そうして牛尾が其処までしてエドを庇わなければならない状況だったと把握したアメルダは、「それ」を引き起こしたであろうフェニックス氏に強い視線を向けるが――
「フフフ、素晴らしい! 素晴らしい力だ!!」
当のフェニックス氏は、宙に浮かぶ1枚のカードを前に普段の温厚さからはかけ離れた邪悪な表情で笑みを浮かべていた。
――盗人程度の案件に神崎さんがこれだけ人員を割いた理由がコイツか。人間を乗っ取るタイプの異能存在……科学の外にいるものたち。
そして、アメルダは今のフェニックス氏の状態へ考察を重ねていく。相手に先手を譲る真似は本意ではないが、
――コブラは盗人の連行中、牛尾は負傷で動けない。響は
やがて自分たちの現在の戦力を図るアメルダ。今回と
いや、そもそも――
『クリリー!』
「ヒーロー見参――って、ところかな」
「……部外者であるキミに、そこまで頼んだつもりはないんだけどね」
偶々近場のデュエル会場にいた《ハネクリボー》を肩に乗せた響 紅葉と、乃亜が駆け付けた以上、いたずらにリスクを背負う真似など必要がないのだ。
「響プロだ……!!」
「でもさ、乃亜――オレが出ないと、姉さんが鉄火場に立つことになりかねないだろ?」
「心配せずとも、牛尾を強引に叩き起こすさ」
そんな具合でHERO使い憧れの登場に思わず目を輝かせたエドを余所に、紅葉と乃亜は軽口を交わし合うが――
「……怪我人に無茶は止めなさい」
『クリィ……』
「だよな。相棒の言う通り、姉さんに無茶させる訳にはいかないぜ」
乃亜を咎めるような響みどりの言葉に、ハネクリボーと紅葉は顔を見合わせた。
「響、牛尾たちを連れて撤退を。キミの弟は退く気はないらしい」
「了解……です。エドくん、こっち来て」
「やれやれ、次から次へとやかましい奴らだ」
そうして響みどりが、宙に浮かぶ《
「賑やかなのは嫌いかい?」
「なら、直ぐにキミを倒して静かにさせて上げようじゃないか」
「倒される相手くらいは自分で選ぶんだな」
紅葉、乃亜、アメルダが破滅の光へ挑発を返して見せれば、破滅の光の足元より、光の円がゆっくりと広がって行く。
「ふん、世界の破滅への前哨戦にしても面倒だ――まとめてかかって来い!」
やがて、その光の円は破滅の光もろとも紅葉、乃亜、アメルダたちの足元まで迫り、デュエルフィールド代わりと化して行った。
――よし、乗ってきた。
「おっと、幾ら何でも3 VS――むぐぉ!? あ、
「随分と自信家じゃないか」
「究極のDの力の前では貴様ら程度が、何人束になろうが同じこと。なら、面倒は一度に纏めてしまった方が良いだろう?」
心中のアメルダの声を余所に、余計なことを言おうとした紅葉の口をハネクリボーがふさぎつつ、乃亜が挑発するが、破滅の光は己が余裕を示すように肩をすくめて見せるばかり。
かくして、3 VS 1の特殊ルールによる闇のゲームが幕を開けた。
「と、父さんを返せ!!」
「ククク、そんなに返して欲しいのなら――――お前も戦うんだな、エドォ!!」
「エドくん!?」
――しまっ……
まだ幼いエドを巻き込む最悪の形で。
「 「 デュエル!! 」 」
そして光の円の内側に引き寄せられたエドが床に転がり、周囲が光のドームに覆われ外と遮断された状況の中、3 VS 1から4 VS 1となったとしても、変則的なバトルロイヤルのデュエル形式自体は変わらない。
「変則的なバトルロイヤルルールだ。詳細はキミが決めると良い」
「なら、俺のライフを倍の8000とし、此方の通常ドローを2枚にさせて貰おうか。ターンはお前たち4人で順番に回すと良い――先攻・後攻もそっちで決めさせてやろう」
ゆえに乃亜に促されるまま、特殊ルールを定めたフェニックス氏に憑りついた破滅の光だが、語られる内容にそう大きな理不尽は見えない。それは己の力への自負の表れのようにも思える。
だが、そんな相手の態度を意に介さず、先陣を切るべくアメルダが前に出た。
「なら僕から行こう。ドロー! 魔法カード《手札抹殺》を発動。全てのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数分ドローする」
そして初手を――いや、墓地アドバンテージを強引に稼ぎ、全てのプレイヤーが手札を入れ替えた段階で、彼のデッキの中核ともなるべきカードを引き寄せんとする。
「さらに魔法カード《アームズ・ホール》を発動。通常召喚権利の放棄とデッキの上からカードを1枚墓地に送ることで、デッキから装備魔法1枚を――装備魔法《スーペルヴィス》を手札に」
やがてアメルダの足元に開いた次元のゲートから1枚のカードが手札に飛来する中――
「僕のフィールドにモンスターが存在しない時、墓地の罠カード《もののけの巣くう祠》 を除外し、アンデット族1体――《
「チェーンして《増殖するG》を捨て、効果発動! お前がこのターン特殊召喚する度に俺は1枚ドローだ!! 早速ドローさせて貰う!」
破滅の光の周囲に黒い影が一瞬映る余所で、黒いコウモリの群れがアメルダの背後で集まる中、黒き鎧で上半身を覆った病的なまでに白い肌と長髪の男が形成されていく。
やがて身の丈を超える長さの漆黒の槍を片手で血の色のマントをはためかせた。
《
星8 闇属性 アンデット族
攻2800 守2100
「魔法カード《アドバンスドロー》でレベル8以上である《
「ふん、特殊召喚されたことで《増殖するG》の効果により1枚ドローだ」
だが早々にコウモリの群れへと戻ってフィールドから高笑いと共に消えた《
《
星4 炎属性 昆虫族
攻1500 守1500
「装備魔法《スーペルヴィス》を《
そんな《
「自身をリリースし、墓地のデュアルモンスターを再召喚した状態で蘇生する。今こそ真の姿を見せろ! 《ナチュラル・ボーン・サウルス》!!」
その炎に身を散らした鱗粉の輝きの中から、ティラノサウルスのような恐竜が骨格だけしかない身体で立ち上がり、身体中の骨をカラカラと震わせながら大地をせり上げて現れる。
と思いきや、その骨の身体は時を巻き戻したように肉と皮が再生していき、「生前」と言わんばかりの恐竜そのものの姿を見せた。
《ナチュラル・ボーン・サウルス》 攻撃表示
星4 闇属性 → 地属性
アンデット族 → 恐竜族
攻1700 守1400
「属性と種族が……それがソイツの効果か」
「対象がフィールドから離れたことで墓地に送られた装備魔法《スーペルヴィス》の効果により、墓地の通常モンスターを1体を蘇生する。《
そして先程、炎に身を散らしたと思われた《
《
星4 炎属性 昆虫族
攻1500 守1500
「だが、2度の特殊召喚により、俺は《増殖するG》の効果でさらに2枚ドロー!!」
「カードを4枚セットしてターンエンド」
しかし、アメルダはこれ以上動きを見せず、アッサリ目にターンを終えた。4枚のセットカードがあれどレベル4モンスター2体の布陣は、いささか消極的にも見える。
アメルダLP:4000 手札0
《ナチュラル・ボーン・サウルス》 《
伏せ×4
VS
破滅の光LP:8000 手札7
「はっ、随分と消極的なターンじゃないか。俺のターン! 特殊ルールにより2枚ドローさせて貰う!!」
――こいつらは、この場の警護を任されていた人間たち……なら、オレの出方を伺っている公算が高い。
たった攻撃力1700のモンスターを呼び出しただけのアメルダのデュエルを嗤う破滅の光だが、その心中は冷静に相手の力量を推し量っていた。
フェニックス氏の記憶から、I2社が用意した守り手であることが知れる以上、最低限の実力は有していなければ不自然というもの。
「スタンバイフェイズに墓地の《キラー・スネーク》の効果発動! 自身を手札に加える!」
そんな破滅の光の手札に、1匹の翼の生えた緑の蛇が飛び込んでくるが、まだ終わりではない。
「まだだ! 墓地の《ティンクル・セイクリッド》発動! 墓地の『セイクリッド』モンスター1体を除外し、このカード自身を回収だ! 《セイクリッド・スピカ》を除外!!」
墓地に眠る純白の機械戦士たちの1体の身体を捧げたことで、二重に重なった十字の光のクロスが手札に舞い込み――
「墓地の魔法カード《汎神の帝王》を除外し、効果発動! デッキより3枚の『帝王』カードを選択し、相手が選んだ1枚を手札に加える! だが、全て同じカードを選ばせて貰おう!」
「なら、そのまま手札に加えると良い」
そうしてアメルダの返答を余所に、このターンだけでも実質5枚の手札を増やした破滅の光は、出方を伺うような相手を押し潰すべく動き出す。
「言われずとも! そしてお前たちを倒す 世界のお披露目だ! フィールド魔法《
やがて巨大なタワーを中心とした近代的な街並みが広がる中――
「そしてお前のフィールドの《ナチュラル・ボーン・サウルス》を贄に、手札からコイツを特殊召喚する――来いっ! 《多次元
ビル群もろとも《ナチュラル・ボーン・サウルス》を薙ぎ倒しながら黒き装甲で覆われた巨人が身体の中央の白い宝玉を光らせつつ、アメルダのフィールドに降りたった。
《多次元
星7 闇属性 悪魔族
攻2800 守2500
「フィールドからカードが墓地に送られたことで、フィールド魔法《
《
「此処で魔法カード《儀式の下準備》! デッキより儀式魔法と儀式モンスター1組を手札に加え――すぐさま儀式魔法《邪神の復活》を発動!! レベル8以上となるように手札のモンスターを贄に捧げ、儀式召喚!!」
明かりが灯る《
「三つの太陽の柱を贄に!! 愚かな虫けらに鉄槌を下すべく降臨せよ!! 《大邪神レシェフ》!!」
そして、その三筋の光の柱から巨大な石像の如き邪なる神の身体が現れ、二つの光球より巨大な腕が伸び、背中から伸びる翼代わりの5本のブレードを広げ、宙に浮かぶ。
《大邪神レシェフ》 攻撃表示
星8 光属性 悪魔族
攻2500 守2000
「あんなカード、父さんのデッキにはなかった筈……!?」
そんな《大邪神レシェフ》の身を覆う禍々しい形相を見せる白いオーラを前にエドが思わず呟くが、破滅の光は眼中にないのか、取り合う気はないとばかりに――
「合計2枚のカードがフィールドから墓地に送られたことで、カウンターがさらに加算!!」
《
「そしてフィールド魔法《
フィールド魔法《
「《大邪神レシェフ》の効果! 手札の魔法カード1枚を墓地に送り、相手モンスター1体のコントロールをターンの終わりまで得る!!」
《大邪神レシェフ》の背中から伸びるプレートより、エクトプラズムのような純白のエネルギーが生成されていく。
「魔法カード《ティンクル・セイクリッド》を捨て、ラディアンを返して貰おうか!! ディストラクト・ブレイン!!」
やがて鞭のように放たれた純白のエネルギーに貫かれた《多次元壊獣ラディアン》 が傷一つない身体で跳躍し、破滅の光の陣営に戻って行った。
「此処でラディアンの効果! フィールドの『壊獣カウンター』2つを取り除き、自分フィールドに『ラディアントークン』を特殊召喚する! 幻影分身!!」
《
そして着地したと同時に《多次元壊獣ラディアン》 は、己の影から自身と瓜二つの分身体を生成し始める。
『ラディアントークン』 攻撃表示
星7 闇属性 悪魔族
攻2800 守 0
「永続魔法《進撃の帝王》と、永続魔法《アドバンス・フォース》を発動!! そして《アドバンス・フォース》の効果によりレベル5以上のモンスター1体を2体分の生贄とし、アドバンス召喚!!」
やがて役目を終えたとばかりに《多次元壊獣ラディアン》 の身体を食い破るように現れるのは――
「
突如として浮かんだ圧縮された木星に昆虫染みた緑の鎧が覆われ始めれば、やがて背面に白き縦長のプレートが装着された人型の戦士が大地に立った。
《
星8 闇属性 戦士族
攻2500 守2000
「……プラネットシリーズの所持者だったとはね」
「ふん、
同じプラネットシリーズの所持者でもある紅葉の呟きを鼻で嗤った破滅の光が、最後に残った《
三つ首の付け根がある箇所を起点に全身へ奔るスパークに覆われる巨躯は「雷撃」との名に恥じぬ威容が見えた。
《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》 攻撃表示
星9 光属性 雷族
攻3300 守2100
「《
だが此方も、そのままくれてやるつもりはないと《
「――グレート・クラプティー!!」
それに対して《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》が紫電を走らせ抵抗を見せるも、力及ばず吸い込まれたと同時に、脈動した《
《
攻2500 → 攻5800
「バトル!! 行け! 《
「僕のフィールドにモンスターが存在しない時、墓地の罠カード《もののけの巣くう祠》を除外し効果発動。墓地のアンデット族1体を効果を無効にして蘇生させる――《ゴブリンゾンビ》を蘇生」
そして《
《ゴブリンゾンビ》 守備表示
星4 闇属性 アンデット族
攻1100 守1050
「所詮は時間稼ぎ! 薙ぎ払え!
「破壊された《ゴブリンゾンビ》の効果でデッキから守備力1200以下のアンデット族1体――《馬頭鬼》を手札に加える」
破滅の光の言うように互いの力の差は明白である以上、《
「だが、今度は防げまい! 《大邪神レシェフ》の攻撃!! ジ・エンド・オブ・カタストロフ!!」
そうして《ゴブリンゾンビ》の肉片の1つがカードとなってアメルダに加わるが、それより先に《大邪神レシェフ》の突き出した両腕に乱回転する3つの太陽の如き光球がバチバチとプラズマを起こしていた。
「永続罠《デュアル・アブレーション》を発動! デッキよりデュアルモンスター1体をデュアル召喚した状態で特殊召喚する! 来い! 《ナチュラル・ボーン・サウルス》!」
しかし、此方もアメルダを守るように骨のティラノサウルスが現れると同時に、その身体に肉と皮をつけ、太古の恐竜としての姿で牙を剥く。
《ナチュラル・ボーン・サウルス》 攻撃表示
星4 闇属性 → 地属性
アンデット族 → 恐竜族
攻1700 守1400
「またそいつか! 構わずやれ、レシェフ!!」
「ダメージステップ時に罠カード《生存競争》発動! フィールドの恐竜族1体を2回攻撃可能とし、攻撃力を1000アップだ!」
やがて、そんな闘志を嘲笑うかのように《大邪神レシェフ》から放たれた光の波動に膝をつきかけた《ナチュラル・ボーン・サウルス》だが、その内より猛り狂う野生が肉体の膂力と、爪牙の鋭利さを増大させ――
《ナチュラル・ボーン・サウルス》
攻1700 → 攻2700
破滅の光LP:8000 → 7800
「だがダメージはたった200!!」
《ナチュラル・ボーン・サウルス》の脅威的な跳躍による回避行動から続いた強襲により頭を嚙み砕かれ、事切れた《大邪神レシェフ》が大地に倒れ伏す中、破滅の光は大した損害ではないと返すが――
「《ナチュラル・ボーン・サウルス》の効果! このカードが破壊したモンスター1体をアンデット族とし、僕のフィールドに守備表示で復活させる! 今度は逆にお前のエースを頂こう!」
頭が食われ倒れていた《大邪神レシェフ》がフラフラと立ち上がり、何処からかゾンビのようなうめき声を漏らしながらアメルダのフィールドに誘われるように移動。
《大邪神レシェフ》 守備表示
星8 光属性 悪魔族 → アンデット族
攻2500 守1500
「チッ、それが狙いか――なら裏切り者には早々に消えて貰う! 『ラディアントークン』で攻撃だ!!」
倒した相手を
「その攻撃宣言時、罠カード《ガムシャラ》発動! 攻撃された守備モンスターを攻撃表示に変更する!」
そうして《ラディアントークン》が拳を振りかぶった姿に、《大邪神レシェフ》も迎撃耐性を取るように緩慢な動きで拳を構えるが――
《大邪神レシェフ》 守備表示 → 攻撃表示
守1500 → 攻2500
「だとしても攻撃力は此方が上!!」
その攻撃力は2500である以上、攻撃力2800の《ラディアントークン》には返り討ちに遭う。
やがて近代的な街並みに広がる大空が夜に包まれる中、《大邪神レシェフ》の胸を貫いた《ラディアントークン》だが、
それどころか、生前の戦い方など忘れたように瘴気をばら撒く《大邪神レシェフ》の力に、《ラディアントークン》の身体はヘドロのように崩れて消えていった。
破滅の光LP:7800 → 7600
「なにっ!?」
その腐食した《ラディアントークン》の身体が崩れた際の衝撃を受ける破滅の光が「不可解だ」と訝し気な視線を向けるが――
「くっ、なにが……!」
「僕は罠カード《メタバース》を発動し、デッキからフィールド魔法《ヴァンパイア
「そいつはバトル時のみアンデット族の攻撃力を500アップさせるカード……! 成程、《ナチュラル・ボーン・サウルス》の効果で奪ったモンスターがアンデット族になることを利用して!!」
その真相は他ならぬアメルダから語られた。
いつのまにやらフィールド魔法《
つまり、《ナチュラル・ボーン・サウルス》に破壊され、
「だとしても破壊されたのはトークン! 墓地に送られない以上、罠カード《ガムシャラ》の効果ダメージは発生しない!!」
――しかし、想定以上に存外やり手じゃないか。だが……ククク、既に俺の罠はお前たちの首をジワジワと絞め始める……
「バトルを終了し、墓地の速攻魔法《超進化の繭》を除外し効果発動! 墓地の昆虫族《増殖するG》をデッキに戻し、1枚ドローする!」
そうして思わぬ痛手を被った破滅の光だが、その胸中の余裕は崩れない。
既に己の策に囚われた4人の獲物をいたぶるべく、足元で生成された繭が崩れると同時に飛来した1枚のカードを発動させた。
「多少はやるようだが所詮は児戯! 魔法カード《妨げられた壊獣の眠り》発動! フィールドの全てのモンスターを破壊し、デッキより互いのフィールドに1体ずつ『壊獣』を特殊召喚する!!」
すると、空を裂かんばかりの咆哮と共に嵐がフィールド上を駆け巡り、アメルダのフィールドの《ナチュラル・ボーン・サウルス》と《大邪神レシェフ》を飲み込んでいく。
だが、破滅の光が呼び出した《
「アドバンス召喚された《
「そういうことだ! 折角、モンスターを並べたお前のフィールドもこれでリセット!!」
やがて舌を打つアメルダへ破滅の光が得意げな表情を見せると同時に、空より2体の怪獣ならぬ壊獣が双方のフィールドに降り立つ。
破滅の光の元には、青き羽根を広げた黄色の巨大な蛾の怪獣ならぬ壊獣が突風をまき散らし、
破滅の光のフィールド
《怪粉壊獣ガダーラ》 攻撃表示
星8 風属性 昆虫族
攻2700 守1600
アメルダの元には、金属質な黒い巨大なコブラのような壊獣が、身体中に黄金ラインを輝かせながら雄叫びを上げていた。
アメルダのフィールド
《壊星壊獣ジズキエル》 攻撃表示
星10 光属性 機械族
攻3300 守2600
「さらに魔法カード《アドバンスドロー》を発動! フィールドのレベル8以上――《怪粉壊獣ガダーラ》を墓地に送り、2枚ドロー!! そして引いた2枚のカードを伏せ、ターンエンドだ!!」
しかし、折角呼び出した《怪粉壊獣ガダーラ》を惜しみなくドローに変換した破滅の光は、迷うことなくこれ見よがしに罠を仕込みターンを終える。
「エンド時に《
それと同時に、《
《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》 攻撃表示
星9 光属性 雷族
攻3300 守2100
アメルダLP:4000 手札1
《壊星壊獣ジズキエル》
《デュアル・アブレーション》
フィールド魔法《ヴァンパイア
VS
破滅の光LP:7600 手札1
《
《進撃の帝王》 《アドバンス・フォース》 伏せ×2
かくして最初のバトルを終えた段階でアメルダが相手の盤面にカウンターパンチを与えたものの相手の損害は軽微であり、更には稼いだアドバンテージも破滅の光が打った一手により無に帰す結果となる。
未だ「究極のD」という切り札を切らぬ破滅の光に対し、アメルダ、乃亜、紅葉は思案を巡らせ、破滅の光もまた、その三人の出方を伺う腹の探り合いの段階と言えよう。
そうして、向けられる意識の違いがあれども4名ともエドへ意識を割かぬ中、己が手札の1枚を心配気に見やるエドが、この命を弄ぶおぞましき舞台にて、その未だ弱き身で何を想い、何を成せるのかは誰にも分からない。
『クリー』
紅葉の背後にて浮かぶ《ハネクリボー》の視線だけが、唯一エドを見つめていた。
DD「
~今作のフェニックス氏(エド父)のデッキ~
「究極のD」のカードを世に送り出したデザイナーとのことなので、類似点の多い漫画版のエドのエース《
なお、やることは『
するシンプルなもの。2枚の手札コストも、フィールド魔法《
~今作の破滅の光(原作でDDに憑りついたヤツ)のデッキ~
当初は上述したフェニックス氏のデッキに「究極のD」をぶっこむだけだったが、折角なので――
遊戯王ゲーム「DM8 破滅の大邪神」のラスボスである《大邪神レシェフ》を投下。
丁度「光属性」で破滅の光っぽいぞ!!(言うなれば、斎王の「究極のアルカナ」枠)
効果発動の為の魔法カードのコストとして魔法カード《ティンクル・セイクリッド》を含めた「セイクリッド」たちを一部採用。
これを上述したフェニックス氏(エド父)のデッキと悪魔合体だ!!(☆ゝω・)b⌒☆
~今作のアメルダのデッキ~
アメルダのエースである未OCGカード「バルログ」の「破壊したモンスターを『炎属性』にして奪い」「自己強化する」効果に寄せたデッキ
(もう一方の未OCGカードの「魔空要塞ジグラート」? あっちは弟ミルコのロボだから……)
とはいえ、類似効果が「破壊したモンスターを『アンデット族』にして奪う」
《ナチュラル・ボーン・サウルス》しかいなかったので、其方を主軸に。
アンデット族と化し、フィールド魔法《ヴァンパイア
(なお恐竜族になっちゃう《ナチュラル・ボーン・サウルス》ェ……)
奪った敵が微妙な際は《