マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
ドーマ編の幹部 + 乃亜編のボス + 漫画版GXの裏ボス + 十代のライバル(幼)
VS
光の結社編の中ボス

ファイ!!




第229話 究極のD

 

 

アメルダLP:4000 手札1

《壊星壊獣ジズキエル》

《デュアル・アブレーション》

フィールド魔法《ヴァンパイア帝国(エンパイア)

VS

破滅の光LP:7600 手札1

The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》 《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》

《進撃の帝王》 《アドバンス・フォース》 伏せ×2

 

 

 

――噂の究極のDは、未だ温存と言ったところか。意外に用心深いようだね。

 

 最初のバトルフェイズ後、反撃を受けつつもアメルダの盤面を即座に崩して見せた破滅の光に対し、次のターンプレイヤーである乃亜は余裕のある表情でカードを引く。

 

「ならボクのターン! ドロー! ふっ、キミに天地創造のデッキを見せてあげようじゃないか」

 

 そして乃亜から繰り出されるのは――

 

「魔法カード《堕天使の戒壇》発動! 墓地の『堕天使』1体を守備表示で蘇生する! 甦れ、《堕天使スペルビア》! そしてスペルビアが蘇生された時、墓地の天使族1体が復活! 並び立て、《堕天使ネルガル》!!」

 

 天より生じた白き階段より、深紅の翼にて舞い降りるのは漆黒に染まったグラスのような身体に赤い面の顔を持った異形の堕天使。

 

《堕天使スペルビア》 守備表示

星8 闇属性 天使族

攻2900 守2400

 

 更にその《堕天使スペルビア》の器の部分から噴出した黒き瘴気が灰の鎧を纏い、同色の翼を背より広げながら現れた。

 

《堕天使ネルガル》 攻撃表示

星8 闇属性 天使族

攻2700 守2500

 

「だが、俺はチェーンして《増殖するG》を発動していた! お前の特殊召喚の度にドローさせて貰う!!」

 

「その程度くれてやるさ――魔法カード《儀式の下準備》発動! 効果はキミも知っての通りだ。そしてサーチした儀式魔法発動!! 《奇跡の方舟》!!」

 

 だが高ステータスのモンスターの出現にも臆さず破滅の光がドローを重ねる中、天より今度は巨大な木造の方舟が浮かんでいた。

 

「レベル8以上の贄を――《堕天使スペルビア》を贄とし、方舟より降臨せよ! 世界の創造主にして全知全能の神!!」

 

 やがて方舟の継ぎ目から光が溢れていき、分解されるように方舟が崩れた先より――

 

「――《天界王 シナト》!!」

 

 天界の王との名に相応しき神仏たる姿をした人の祖の如き姿が降臨し、六枚の翼を広げてどこか人形を思わせる関節を動かしながら両の手を合わせて祈りの所作を取った。

 

《天界王 シナト》 攻撃表示

星8 光属性 天使族

攻3300 守3000

 

「そして《月読命(ツクヨミ)》を通常召喚! 召喚時、フィールドのモンスター1体を裏側守備表示にする! 狙うは《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》!! 月鏡の光輝!!」

 

 そんな《天界王 シナト》の後に続くのは青い長髪と紺のローブをたなびかせる青年。そうして歩み出た《月読命(ツクヨミ)》が右手の銅鏡を掲げれば――

 

月読命(ツクヨミ)》 攻撃表示

星4 闇属性 魔法使い族

攻1100 守1400

 

 《ヴァンパイア帝国(エンパイア)》に浮かぶ月明かりが乱反射して輝きを見せ、その光にひれ伏すように《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》の三つの頭が首を垂れ、最後には裏側の1枚のカードになる程に跪いた。

 

《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》 攻撃表示 → 裏側守表示

攻3300 → 守2100

 

「バトル!! 早速キミからのプレゼントの力を試すとしよう――《壊星壊獣ジズキエル》で《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》を攻撃!!」

 

「通す訳がないだろう! 罠カード《ドレインシールド》!! その攻撃を無効にし、相手の攻撃力分のライフを回復する!!」

 

 一番槍とばかりに《壊星壊獣ジズキエル》が炎のブレスを放つが、その一撃は《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》に届くことはなく、半透明な壁に阻まれたことで周囲に散っていき、その余波すらも破滅の光の益に働くように変換されていく。

 

破滅の光LP:7600 → 10900

 

「なら《天界王 シナト》で《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》を攻撃だ!」

 

「だが、守備表示! 俺にダメージはない!!」

 

「残念だけど《堕天使ネルガル》が存在する限り、ボクの天使族たちは貫通効果を得る!!」

 

「なにっ!?」

 

 しかし次の攻撃は、破滅の光の想定を裏切る形で《天界王 シナト》の腕から生成された6つの宝玉が連なりながら乱回転し――

 

「――六道輪廻(りくどうりんね)!!」

 

「ぐぅっ!?」

 

 光輪となって放たれ、《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》の三つ首から放たれたイカズチのブレスなど意に介した様子もなく突き進みその巨体を両断し、殆ど減衰することなく破滅の光を襲った。

 

破滅の光LP:10900 → 9700

 

「まだだよ! 《天界王 シナト》の効果発動! 守備モンスターを破壊した時、破壊した相手の元々の攻撃力分のダメージを与える!! キミのしもべの命の輝きをその身で味わうと良い――輪廻転生(りんねてんしょう)!!」

 

「ぐぅぉおおぉおぁあッ!?」

 

 しかし乃亜が繰り出した一撃は、それだけに留まらず、《天界王 シナト》の放った光輪の元である宝玉の一部が《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》の体内で炸裂することで生じた巨大な爆発が、破滅の光の心身へより大きな衝撃となってダメージを与えていく。

 

破滅の光LP:9700 → 6400

 

「さて、残った《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》を《堕天使ネルガル》で片づけて、《月読命(ツクヨミ)》のダイレクトアタックを受けて貰おうか」

 

 思わぬダメージに膝をつく破滅の光だが、その視界の端で《堕天使ネルガル》によって放たれた己が身体を構成する瘴気により一瞬にして《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》の身体が溶けた中――

 

破滅の光LP:6400 → 6200

 

「チッ、味な真似を……だが、これ以上は通さん! 墓地の永続罠《光の護封霊剣》を除外し、このターンのダイレクトアタックを無効にする!!」

 

 《月読命(ツクヨミ)》によってフリスビーのように投げられた銅鏡が、追撃とばかりに飛来するが、破滅の光の前に現れた光の剣によって弾かれることとなった。

 

「思ったよりライフを残してしまったね――バトルは終了だ。墓地の魔法カード《ギャラクシー・サイクロン》を除外し、表側の魔法・罠カード――キミの永続魔法《進撃の帝王》を破壊しておこう」

 

 そうして未だライフを維持する破滅の光へ、乃亜は「ならばもう一手」とばかりに《天界王 シナト》の翼の背後から生じた白き竜巻に、破滅の光のフィールドを荒らさせ――

 

「最後にカードを3枚セットしてターンエンドさせて貰うよ。そしてエンド時にスピリットモンスターである《月読命(ツクヨミ)》は手札に戻り、キミの墓地の《キラー・スネーク》は自身の効果で除外される」

 

 短期決戦を望むように残りの手札を全て伏せた。そしてターンの終わりを示すように《月読命(ツクヨミ)》の身体が煙のように消えていき、乃亜の手札に収まって行く。

 

アメルダLP:4000 手札1

《壊星壊獣ジズキエル》

《デュアル・アブレーション》

フィールド魔法《ヴァンパイア帝国(エンパイア)

VS

破滅の光LP:6200 手札3

《アドバンス・フォース》 伏せ×1

VS

乃亜LP:4000 手札1

《天界王 シナト》 《堕天使ネルガル》

伏せ×4

 

 またまた己がモンスターたちを一掃された破滅の光だが、その瞳に絶望の色はない。既に彼の手の内には、究極の力を示す準備は整っているのだから。

 

「中々やるじゃないか。俺のターン! ドロー!! このドロー時に罠カード《深すぎた墓穴》を発動! そしてスタンバイフェイズに罠カード《深すぎた墓穴》で選択したモンスターを蘇生する! 舞い戻れ、《大邪神レシェフ》!!」

 

 やがて反撃の狼煙を挙げるように再臨を果たした《大邪神レシェフ》が不届き者への怒りを示すように、その石像の身体より白いオーラを放ちながら大地を揺るがす。

 

《大邪神レシェフ》 攻撃表示

星8 光属性 悪魔族

攻2500 守1500

 

「此処で墓地の魔法カード《妨げられた壊獣の眠り》を除外し、『壊獣』モンスター1体を手札に!

さらに墓地の『セイクリッド』を除外し、魔法カード《ティンクル・セイクリッド》を回収!!」

 

 さらに前のターンに惜しみなく吐き出した手札もあっという間に補充すると同時に――

 

「そして《セイクリッド・シェラタン》を召喚! 召喚時、デッキより『セイクリッド』1体――《セイクリッド・エスカ》を手札に!!」

 

 繰り出されるは羊の角に見立てた白き兜に純白の鎧を纏った小さな光の使者が橙色のマントをはためかせ、破滅の光の手札へ更なる一手を差し出した。

 

《セイクリッド・シェラタン》 攻撃表示

星3 光属性 獣族

攻700 守1900

 

「まだだ!! お前たちのフィールドに『壊獣』モンスターが存在する時、俺は手札から『壊獣』モンスターを特殊召喚できる――来い 《怒炎壊獣ドゴラン》!!」

 

 更に、その列に腹から上へ縦一文字に炎を猛らせる赤きドラゴンが翼を広げながら長い尾をしならせつつ、並び立つ。

 

《怒炎壊獣ドゴラン》 攻撃表示

星8 炎属性 恐竜族

攻3000 守1200

 

「此処で《大邪神レシェフ》の効果発動! 魔法カード《ティンクル・セイクリッド》を墓地に送り、《堕天使ネルガル》を奪う!! ディストラクト・ブレイン!!」

 

 それに加えて《大邪神レシェフ》が操る三つの太陽が如き輝きを魅せれば、瞳を赤く染めながら破滅の光の元に膝をつき恭順を示す《堕天使ネルガル》だが――

 

「さぁ、準備は整った!! 《堕天使ネルガル》! 《セイクリッド・シェラタン》! 《怒炎壊獣ドゴラン》の3体を贄に捧げさせて貰おう!!」

 

 そうして並んだ《大邪神レシェフ》以外の3体が早速とばかりに贄として地中から噴き出た血の間欠泉に呑まれていく中、そびえ立つ三つの血の柱が一つに集い球体と化していく。

 

「見るがいい! 破滅の光の祝福を受けた、最強の力の象徴! 絶対無敵! 究極のD(ディー)を解き放つ!! 《D-(デステニー)HERO(ヒーロー)――」

 

 そんな血の繭を吹き飛ばし、血の雨を降らせながら現れるのは――

 

「――Bloo-D(ブルーディー)!!」

 

 右腕に龍の顎、背骨より竜のかぎ爪を天へと伸ばし、鮮血の翼を広げ、尾をしならせる――文字通り竜と一体化したような戦士。昏きその身は、まさに夜の闇を統べる者と言えよう。

 

D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》 攻撃表示

星8 闇属性 戦士族

攻1900 守 600

 

Bloo-D(ブルーディー)の効果! 相手モンスター1体を吸収し、その攻撃力の半分の力を己に加算する!! 《天界王 シナト》を吸収!! クラプティー・ブラッド!!」

 

 やがて戦士――《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の翼から這い出る血の触腕が頂きの天たる空に浮かぶ《天界王 シナト》を穢していく。

 

 さすれば、《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の翼へ捕食されるように取り込まれて行き、やがて《天界王 シナト》は翼から顔の一部を覗かせる末路を辿った。

 

D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)

攻1900 → 攻3550

 

「まだだ! 魔法カード《死者蘇生》発動! 甦れ、《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》!! そして手札を2枚捨て効果発動! 《壊星壊獣ジズキエル》を吸収し、パワーアップ!!」

 

 そんな《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》に続くように、宙より再び圧縮された木星をコアとして顕現した《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》が相手に唯一残ったモンスターである《壊星壊獣ジズキエル》をコアの小型木星に吸い込み力を高め――

 

The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》 攻撃表示

星8 闇属性 戦士族

攻2500 守2000

攻5800

 

「バトル!! 貴様を守るモンスターはもはやいない! Bloo-D(ブルーディー)でダイレクトアタック!! ブラッディ・フィアーズ!!」

 

 そうして並んだ圧倒的火力を代表するように《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》は、乃亜めがけて広げた翼より、血の散弾が降り注がせた。

 

「させないよ――罠カード《進入禁止!No Entry!!》発動! 全てのモンスターを守備表示にする!!」

 

 しかし、その血の暴虐は大地よりせり上がった鋼の壁に遮られて届かない。さらに不協和音の如く鳴り響くサイレンに破滅の光のフィールドの3体のしもべたちは膝をつくこととなった。

 

《大邪神レシェフ》+《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》+《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)

 攻撃表示 → 守備表示

守1500 ・ 守2000 ・ 守 600

 

「ハッ! だとしてもBloo-D(ブルーディー)の効果により、お前たちはフィールドのモンスター効果が封じられる! 前のターンのような《月読命(ツクヨミ)》で突破は叶わん――カードを1枚セットしてターンエンドだ!!」

 

アメルダLP:4000 手札1

《デュアル・アブレーション》

フィールド魔法《ヴァンパイア帝国(エンパイア)

VS

破滅の光LP:6200 手札0

《大邪神レシェフ》 《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》 《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)

《アドバンス・フォース》 《天界王 シナト》 《壊星壊獣ジズキエル》 伏せ×1

VS

乃亜LP:4000 手札1

伏せ×3

 

 そうして《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の力を誇示しつつターンを終えた破滅の光へ、乃亜は思案する。

 

――攻撃は防いだとはいえ、此方の想定以上に相手の立て直しが早い。破滅の光……か。驕るだけの力はある。

 

 乃亜たちが、ライフこそ大きく削ったものの破滅の光の実力は相応に高い。

 

 4 VS 1の状況と、多少のハンデの負い合いがあったとはいえ、毎ターン高火力のモンスターを用意し、乃亜たちの盤面を常に荒らし回る力を見れば1 VS 1の勝負であれば、乃亜とて命の勘定が必要になってくるだろう。

 

「なら、オレのターンかな。ドロー! うん、悪くない」

 

 そんな乃亜の思案を余所に、常と変わらぬ様相で気負いなくカードを引く紅葉だが――

 

――あまりターンを費やすのは得策じゃない。巻き込んでしまった少年のこともあるし、此処は天下の日本チャンプ様に早々に決めて貰おうか。

 

「流石にそのままじゃ辛いだろう? 速攻魔法《月の書》を発動。Bloo-D(ブルーディー)を裏側守備表示にする」

 

 此処で乃亜は一手切る。

 

 やがて月の輝きを閉じ込めたような青き書物が怪しげな光を放てば膝をついていた《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の身体は固まった血が溶けるように消えていき、1枚の裏側のカードと化した。

 

D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》 守備表示 → 裏側守備表示

 

「貴様ッ! 俺のBloo-D(ブルーディー)の効果をあらかじめ……!!」

 

「仕事柄、入ってくる情報は多くてね」

 

 そうして乃亜が常に余裕があった真相を察した破滅の光がハッとした顔の後、表情を怒りに染め上げるが、乃亜は挑発するように肩をすくめて見せた。

 

 そう、乃亜はKCで大きな立場を持つ人間として、I2社のペガサスとの繋がりも深いオカルト課のまとめ役として、《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の効果は()()()()()()()()である。

 

 乃亜が使用したカードをみれば、《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》が魔法・罠には無防備な点と、自己強化で守備力が上昇しない点を狙いすましたようなものばかりだ。

 

「後は日本チャンプ様に任せるよ。厄介なあのカードの憂いさえ断てば、キミの実力なら十二分に決められる筈だ」

 

「くっ……!」

 

 やがて紅葉を横目で見ながら発せられた乃亜の言葉に、破滅の光は此処にきて初めて苦い顔を見せた。

 

 

 響 紅葉――現、日本チャンプ。

 

 

 海馬 瀬人が社長業に専念した後に頭角を現したプロではあるが、その実力はワールドグランプリベスト16到達など、組み合わせの運ゆえに順位の数字とイコールはされなくとも、勝ち残った実力に嘘はない。

 

 更には大きな力を内包している《ハネクリボー》の精霊の存在も鑑みれば、相手の4人の中で最も厄介な存在と言えよう。

 

 

 その為、紅葉以外に飛び抜けた脅威はいないとの前提で多人数戦を了承した破滅の光からすれば、こうも徹底された対策と戦力が投入されていたことは誤算だった。

 

 とはいえ、世界で上位数%に位置するデュエリストが、宇宙から飛来したばかりの破滅の光を囲んでいる状況を即座に見抜け――など、土台無茶な話ではあるのだが。

 

「……良いのか? 俺をこのまま倒して!!」

 

 ゆえに揺さぶりをかけ罠を仕掛けるべく、宿主であるフェニックス氏の身柄を押さえている旨を破滅の光は強調するように叫ぶ声に、紅葉はピクリと反応するが――

 

「どういう意味かな?」

 

「耳を貸す必要はないよ」

 

「これが闇のゲームであることはお前たちも理解している筈だ! 敗者には死を! それがゲームの掟!!」

 

「つまり……人質って訳か」

 

 乃亜の忠言を断ち切るように放たれた破滅の光の説明に、紅葉は眉をひそめた。

 

「ククク、理解が早くて助かるよ――なぁ、エド。お前も()()()()()()()()()()()()()()ぁ?」

 

「――ッ!」

 

 そして今までパートナーたちの邪魔にならぬよう沈黙を守っていたエドの表情が悲痛に歪む。肉親を殺せと言われて普通は頷けまい。

 

「紅葉、フェニックス氏に憑りついているのは文字通りの『世界を滅ぼす災厄』だ。見逃せばどうなるかくらいは想像がつくだろう?」

 

「難しく考える必要はないよ。彼を倒した後で治す――これで解決だ」

 

 迷いの種を植え付けるような破滅の光の主張に対し、アメルダと乃亜がそれぞれ言葉を投げかけるが、考え込む仕草を見せた紅葉は、頼りになる――

 

「そんなに簡単にいくのかい? 姉さん……は、牛尾さんたちを運んで行っちゃったんだった。相棒はどう思う?」

 

『クリィ……クリリ!』

 

 姉は負傷者の運び出しで不在の為、相棒たる精霊の《ハネクリボー》に意見を求めるが、精霊の見えない常人からすれば一人で喋っているようにしか見えない。

 

「安全は保証できないのか……まぁ、相棒の策に乗らせて貰うよ。頼むぜ?」

 

『クリクリー!』

 

 だが、紅葉には意思疎通が叶っている様子で、その秘策の為の準備とばかりに紅葉は1枚のカードに手をかけた。

 

「オレは魔法カード《手札抹殺》を発動。全員の手札を入れ替えて――手札から《E・HERO(エレメンタルヒーロー) リキッドマン》を召喚! そしてリキッドマンの効果により墓地のレベル4以下のHERO1体を復活だ! 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フォレストマン》を蘇生!!」

 

 黒のヒーロースーツに水色のフェイスマスクに胸当てとブーツを装着した青年ヒーローが手甲代わりの水の球体を地面にかざせば――

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) リキッドマン》 攻撃表示

星4 水属性 戦士族

攻1400 守1300

 

 間欠泉のように噴き出た水の中から、右半身が大木と化した緑の肌のヒーローの男が現れ、守護者としての責務を果たすように腕を交差させ膝をつく、その体躯に水滴が滴っていた。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) フォレストマン》 守備表示

星4 地属性 戦士族

攻1000 守2000

 

「カードを2枚セットしてターンエンド」

 

「――紅葉!!」

 

 だが彼の代名詞でもある融合召喚を行わず低レベルのモンスター2体を並べただけのプレイングにアメルダは諌めるように声を荒げた。

 

 それもその筈、今のところは優勢にデュエルを運んでいるとはいえ、勝利は確実視されるものではない。手を緩めた瞬間に破滅の光が牙を剥きかねない状況でもある。

 

 もし敗北すれば、自分たちの命がどうなるかなど語らずとも分かろう。

 

「落ち着けよ、アメルダ。彼は部外者である以上、強要するのはお門違いさ。なら、ボクたちが始末をつければ良いだけだ――そうだろう?」

 

「…………失礼した」

 

 とはいえ、乃亜が言うように紅葉はオカルト課の所属ではない以上、場合によっては手を汚すこともあり得る行為を強制するのも酷な話――そんな主張にアメルダは矛を収めることとなった。

 

アメルダLP:4000 手札1

《デュアル・アブレーション》

フィールド魔法《ヴァンパイア帝国(エンパイア)

VS

破滅の光LP:6200 手札0

《大邪神レシェフ》 《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》 《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》(裏守備表示)

《アドバンス・フォース》 《天界王 シナト》 《壊星壊獣ジズキエル》 伏せ×1

VS

乃亜LP:4000 手札1

伏せ×3

VS

紅葉LP:4000 手札2

E・HERO(エレメンタルヒーロー) リキッドマン》 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フォレストマン》

伏せ×2

 

「ハハハハハハハ! ありがとよ、エドォ!! お前のお陰でBloo-D(ブルーディー)の破壊は免れた!!」

 

 そして相手のお甘い思想のお陰で、1ターン稼いだ破滅の光は形ばかりでも高らかに嗤い声を上げる。仕掛けていた罠を温存できた事実は当人にとっても喜ばしいものだ。

 

 

 とはいえ、先の人質の策は、どちらを選ぼうと同じこと。

 

 攻撃されなければ、今のように「機会を不意にした」事実がのしかかり、

 

 攻撃されれば、それを防いだ上で「父親もろとも殺す気だ」とエドに把握させることで、仲間の足を引っ張る効果を望めるだろう。

 

「俺のターン! 2枚ドロー!! お前らのライフは運命共同体! エド、弱いお前のせいでこいつらは死ぬのさ! さぁ、行くぞ! フィールドのモンスターを全て攻撃表示に!!」

 

 そうして破滅の光が従える3体のしもべたちが、攻撃姿勢を取る中――

 

《大邪神レシェフ》 + 《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》 + 《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》 (裏側)守備表示 → 攻撃表示

守1500 ・ 守2000 ・守 600

攻2500 ・ 攻5800 ・ 攻1900

 

「墓地の魔法カード《妨げられた壊獣の眠り》を除外し、デッキから『壊獣』を手札に!

そして墓地の《超進化の繭》を除外し、墓地の昆虫族《増殖するG》をデッキに戻し1枚ドロー!

さらに墓地の『セイクリッド』を除外し、魔法カード《ティンクル・セイクリッド》を回収!!」

 

 墓地より獣の如き咆哮が鳴り響き、耳障りな羽音がうごめき、二重の光のクロスが輝いた。

 

「お前のHEROを贄に、俺の手札から《壊星壊獣ジズキエル》を特殊召喚!!」

 

 そうして3枚の手札を増やした破滅の光が紅葉のフィールドの《E・HERO(エレメンタルヒーロー) リキッドマン》を指させば、苦しむ声を漏らした途端にその身体の内側から巨大な機械仕掛けのコブラのような《壊星壊獣ジズキエル》が紅葉のフィールドに立つ。

 

《壊星壊獣ジズキエル》 攻撃表示

星10 光属性 機械族

攻3300 守2600

 

「手札を2枚捨て、《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》の効果発動!! 《壊星壊獣ジズキエル》を吸収し、さらにパワーアップ!!」

 

 そしてそのまま《壊星壊獣ジズキエル》は、《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》のコアである小型の木星の内に吸い込まれていけば、《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》の身体がベキベキと取り込んだ相手の特徴を引き継ぐように変貌していった。

 

The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)

攻5800 → 攻9100

 

「さらにもう1体のHEROも《壊星壊獣ジズキエル》となれ!! そしてすぐさま《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》で吸収!! クラプティー・ブラッド!!」

 

 それに加えて紅葉の《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フォレストマン》も同様に《壊星壊獣ジズキエル》に変貌させられ、その身は《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の翼から伸びた血の触腕に絡めとられ、己が力を高めるエサとなっていく。

 

D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)

攻1900 → 攻3550

 

「バトル!! 今度こそ終わりだ!! この三連撃を受けるがいい!!」

 

 やがて《大邪神レシェフ》が三つの光球より、三筋の光線を放ち、

 

 《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》が突き出した両腕を合わせ、そこよりイカズチの砲弾を放ち、

 

 飛翔した《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》が己の翼より、散弾の如き血の雨を降らせば、紅葉の元で巨大な爆発が轟いた。

 

 

 攻撃力の合計は1万5千を超える圧倒的な数値。それゆえに立ち昇る爆炎も猛々しく天に上る。

 

 

『クリリー!!』

 

「悪いけど速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》で呼び出された《ハネクリボー》が破壊されたことで、このターンオレたちが受ける戦闘ダメージは0だ!」

 

「ふん、時間稼ぎ専用の雑魚モンスターか」

 

 だが、爆炎の中より響いた二つの声に、破滅の光は毛玉に天使の翼の生えた《ハネクリボー》を一瞥しつつ、鼻を鳴らした後に嘲笑う。

 

「そうやって次のターンに希望を繋ぐつもりだろうが――次のターンは誰だったかなぁ?」

 

「くっ……!」

 

「流石に気づくよな、エドォ――ハハハハハハハ! そうさ! この特殊ルールでお前の存在は足枷でしかない! 他の奴らの手札を見ろ! ターンを分け合った結果がドロータイミングの減少だ!」

 

 その嘲りの対象はエド――この一同の中で最もデュエリストとして弱い人間。

 

 

 この変則的な実質4 VS 1のバトルロイヤルだが、破滅の光が圧倒的に不利という訳でもない。

 

 エドたちが4人でターンを回す関係上、次に己のターンが回ってくるのは8ターン後だ。

 

 つまり、通常ドローも8ターン後、通常召喚権利の追加も8ターン後、己の盤面を整えられるのも8ターン後となる。

 

 そう、状況次第では8ターンもの間、無防備を晒す可能性――メリットである4人分の5枚の手札があれども、無視できないデメリットであろう。

 

「エド、お前も父さんは攻撃できないだろう? さぁ、攻撃できない足手まとい二人を抱えて、果たしてどこまで戦えるか見物だなァ!」

 

 更にこの中で実力が数段劣るエドが参加したことで、上述したデメリットが増しただけではなく、紅葉たちに精神的なブレーキもかけていた。

 

 エドがいなければ、アメルダも乃亜もフェニックス氏の安否を度外視した攻勢に移れただろう。

 

 紅葉とて、破滅の光の言葉に耳を貸さなかったかもしれない。

 

「 タ ー ン エ ン ド !!」

 

アメルダLP:4000 手札1

《デュアル・アブレーション》

フィールド魔法《ヴァンパイア帝国(エンパイア)

VS

破滅の光LP:6200 手札1

《大邪神レシェフ》 《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》 《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)

《アドバンス・フォース》 《壊星壊獣ジズキエル》×3 伏せ×1

VS

乃亜LP:4000 手札1

伏せ×3

VS

紅葉LP:4000 手札2

伏せ×1

 

 そうして、エドを追い詰めるように責め立てる破滅の光の主張にアメルダが助け船を出そうとするが――

 

「気に――」

 

「お、お前の言葉になんか、耳を貸すもんか! どんなに絶望的な状況でも、決して諦めないハートを持ったHEROこそ、ボクが目指す姿だ! ボクのターン、ドロー!!」

 

 エドには父のフェニックス氏より受け継いだHEROの心得がある。目指す先がある――ゆえに迷わずカードを引いた姿に、アメルダは過去の己と思わず比べながら心中で零す。

 

――……強い子だな。

 

「――ボクは墓地(セメタリー)に眠る《D-HERO ダッシュガイ》の効果(エフェクト)発動! 通常ドローしたモンスター1体を特殊召喚する!」

 

D(ディー)シリーズ!?  D-HERO(デステニーヒーロー)だと!?」

 

――まさかデュエル前に!?

 

 そんな中、破滅の光はエドから繰り出された手足に小型のタイヤを装着した黒の流線形のボディを持つHEROの出現に、逆に驚かされることとなる。

 

 それはフェニックス氏が完成させていた分のHEROたち――そう、エドは単身では力及ばないと考え、デュエルの前に咄嗟に父であるフェニックス氏の力を借りていたのだ。

 

「ボクは《V・HERO(ヴィジョン・ヒーロー) インクリース》を特殊召喚!!」

 

 やがて《D-HERO ダッシュガイ》に連れられ、角のついた一つ目のフェイスマスクに、両肩に角のついた紺と白の全身鎧に身を包むヒーローが拳を握り、フェニックス氏を救うべく現れる。

 

V・HERO(ヴィジョン・ヒーロー) インクリース》 攻撃表示

星3 闇属性 戦士族

攻900 守1100

 

「魔法カード《ミラクル・フュージョン》を発動! ボクの墓地(セメタリー)のHEROを除外し融合召喚を行う! 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン》と《E・HERO(エレメンタルヒーロー) バーストレディ》を除外融合!」

 

 次に風と炎のヒーローが融合の渦へと飛び込めば――

 

「カモン! フェニックスガイ!!」

 

 そこより赤と黒に染まった鳥の翼と竜の尾を併せ持った新たなヒーローとなってエドの元に降り立った。

 

 その《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェニックスガイ》は戦闘では破壊されない力を持ち、まさにエドの語る決して諦めない折れぬハートを持ったHEROと言えよう。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェニックスガイ》 攻撃表示

星6 炎属性 戦士族

攻2100 守1200

 

「まだだ! 2枚目の《ミラクル・フュージョン》を発動し、フィールドのフェニックスガイと墓地(セメタリー)の《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》を除外し、ミラクルフュージョン!!」

 

 だが、そんな《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェニックスガイ》に更なる力を与えんとイカズチのヒーローが融合の渦に飛び込めば、彼らの身を光が包み込み――

 

「この戦いを終わらせる終極のHERO! カモン! シャイニング・フェニックスガイ!!」

 

 幾重もの角の生えた白き兜に、緑の体躯の手足を純白の鎧で覆った光のヒーローへと進化し、身の丈程の巨大な機械的な翼を広げ、宙より現れた。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》 攻撃表示

星8 光属性 戦士族

攻2500 守2100

 

 その身には、散って行ったE・HEROの力を受け継ぐ力を持つが――

 

「だが、Bloo-D(ブルーディー)がいる限り、効果は無効化される!! シャイニング・フェニックスガイの攻撃力は上がらない!」

 

「だとしても! 魔法カード《オーバーソウル》を発動! 墓地(セメタリー)のHEROを復活させる! 蘇れ、フェザーマン!!」

 

 《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の存在により阻まれ、《E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》の輝きを陰らせる中、諦めることのないエドに応えるように、緑の獣の体毛に覆われた青年ヒーローが純白の翼を広げて現れ――

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン》 攻撃表示

星3 風属性 戦士族

攻1000 守1000

 

「そして《D-HERO デビルガイ》を通常召喚!」

 

 更にボロボロの赤黒いマントを翻す、どこか龍の顎を思わせるフードをした漆黒のHEROが長いかぎ爪を腕の前で交差させながら並んだ。

 

D-HERO(デステニーヒーロー) デビルガイ》 攻撃表示

星3 闇属性 戦士族

攻600 守800

 

「無駄だと言って――」

 

――待て、場にDを含む3体のモンスター……まさか!

 

 そうしてフィールドに3体並び立ったD-HEROを含めた3体のモンスターに破滅の光は、エドの狙いを看破する。そう、他ならぬ乗っ取った身体の持ち主――フェニックス氏が誰よりも知っていた。

 

「エド、貴様!!」

 

「そうさ! ボクの手札には父さんの想いがこもったあのカードがある!! 紅葉さんたちが引き寄せてくれたんだ!」

 

『クリリー!!』

 

「今こそ呼ぶんだ! キミのお父さんを救うカードを!!」

 

D(ディー)! E(イー)! V(ヴィ)! 三つの陣営のHERO(ヒーロー)たちの力を今此処に結集させる!! みんな、父さんを助ける為に力を貸してくれ!!」

 

 やがて《ハネクリボー》と紅葉によって精霊の力を呼び起こし、導かれた1枚のカードをエドが天にかざせば、《D-HERO(デステニーヒーロー) デビルガイ》、《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン》、《V・HERO(ヴィジョン・ヒーロー) インクリース》がその元に集うように跳躍し――

 

「――現れろ、運命を切り開くD(ディー)ヒーロー!! カモン! 《D-HERO ドグマガイ》!!」

 

 全身よりスパイクが伸びた闘牛を思わせる茶のアーマーに身を包んだ強靭な体躯を持つヒーローが、竜の如き翼を広げて天に立つ。

 

 やがてエドへと己が意思を告げるように右腕の手甲部分から鈍く光る白銀のブレードを伸ばして見せた。

 

D-HERO(デステニーヒーロー) ドグマガイ》 攻撃表示

星8 闇属性 戦士族

攻3400 守2400

 

「ヒーローたちも、きっと言っているんだ! 共に父さんを助けようって!!」

 

「精霊も見えない身で何を聞いた気になろうが、無駄なんだよ!! ドグマガイの効果もBloo-D(ブルーディー)によって無効化される!!」

 

 しかし、そうしたエドの想いの元に顕現した《D-HERO(デステニーヒーロー) ドグマガイ》も、破滅の光が言うように《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の前では、その真価を発揮はできない。

 

「だとしても! お前を倒すことは出来る!! ドグマガイでバトル!! 父さんから出ていけ! 《大邪神レシェフ》!!」

 

 だが、《D-HERO(デステニーヒーロー) ドグマガイ》は《大邪神レシェフ》に向けて急降下をかけ、その加速度により右腕の手甲から伸びるブレードが紫色の炎が燃えあがり――

 

 

「――デス・クロニクル!!」

 

 

 《大邪神レシェフ》が繰り出した剛腕と接触。

 

 

 ジリジリと競り合うようにぶつかる両者の一撃だが、僅かに押し込まれ始めた《大邪神レシェフ》が《D-HERO(デステニーヒーロー) ドグマガイ》の放つブレードの紫炎 うめき声をあげ始めた姿に破滅の光は、舌を打つ。

 

「……チィッ!!」

 

「戻ってきてくれ!! 父さん!!」

 

「ドグマガイの力が、あの男に憑りついている存在を剥がさんとしているのか!?」

 

「行けっ! エド!!」

 

『クリー!!』

 

 願うエドを余所に、デュエリスト特有の超速理解を見せるアメルダ、そして声援を送る紅葉とハネクリボーが見守る中、二体のモンスター間で巨大な爆発が生じ、黒煙が辺りを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破滅の光LP:6200 → 5300

 

 

「エド……」

 

「父さん!!」

 

 そう、元のフェニックス氏のデッキは《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》と『壊獣』を主軸にしたもの。

 

 そこに《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》のカードを投入したのならば、《大邪神レシェフ》周りのカードは当然、破滅の光が関係していると考えるのが自然だ。

 

 ゆえに、破滅の光の存在としての核が《大邪神レシェフ》にあったとしても、おかしくはない。

 

「エド、本当に……本当に……」

 

 こうして、破滅の光から解き放たれたフェニックス氏が、少し見ぬ間に一回りも二回りも大きくなった我が子を見やる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――残念だったなァ」

 

 その視線が、これでもかと大きく歪んだ。

 

「ッ!?」

 

「奇跡は安くはないんだよ、エドォ!! 時間切れだ! 俺の意思は、もうこの男の身体に根付いちまった! そのハネクリボーの助けを借りたドグマガイの力でも引き剥がせない程になァ!!」

 

 高らかに宣言する破滅の光の言葉が全てを物語り、エドに現実となって突き刺さる。

 

 既にフェニックス氏の肉体は、完全に破滅の光に奪われつつある以上、多少干渉された程度でどうこうなる段階をとうに過ぎているのだ。

 

「コミックの中のヒーロー共のように都合良くはいかないんだよ!! ハハハハハハハ!!」

 

「永続罠《デュアル・アブレーション》の効果――デッキよりデュアルモンスター《炎妖蝶(えんようちょう)ウィルプス》 を特殊召喚」

 

 そうしてエドのヒーロー像を嘲笑う破滅の光を余所に、アメルダのフィールドに赤い羽根を真っ赤に燃やす蝶《炎妖蝶(えんようちょう)ウィルプス》 が何処からともなくヒラヒラと舞いながら現れる。

 

炎妖蝶(えんようちょう)ウィルプス》  守備表示

星4 炎属性 昆虫族

攻1500 守1500

 

「ふん、今更援護のつもりか?」

 

「助かるね。速攻魔法《エネミー・コントローラー》を発動! モンスター1体をリリースし、相手フィールドのモンスター1体のコントロールを得る。狙うは勿論――」

 

 唐突な援護と思しき行為に破滅の光がいぶかしむ前に、乃亜の背後に浮かんだゲームのコントローラーのプラグが破滅の光のフィールドの1体に装着されれば――

 

「――貴様らッ!!」

 

 瞳に理性の色が戻った《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》が破滅の光の声など意に介さず、エドの元に翼を広げて飛翔した後、共に戦うことを誓うように膝をつく。

 

 

「足りないなら、何度だって叩きつけてやればいい。キミの力を、声を、想いを――ありったけ込めて」

 

「その助けくらいなら、幾らでも用意してあげようじゃないか」

 

「ぶちかませ、エド! キミの父さんの願いの籠ったカードで!!」

 

『クリー!』

 

「……はい! Bloo-D(ブルーディー)効果(エフェクト)! ブラッド・アブソリュート!!」

 

 やがてアメルダ、乃亜、紅葉、そして《ハネクリボー》に背を押されたエドの願いが《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の翼から、力の波動となって破滅の光のフィールドへと伝播していく。

 

「くっ……!  JUPITER(ジュピター)の力が!!」

 

 さすれば、《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》に囚われていた《壊星壊獣ジズキエル》たちが解き放たれ、急激な力の減衰に戸惑うように、《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》はうめき声と共に膝が崩れ落ちた。

 

The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)

攻9100 → 攻2500

 

「今だ! Bloo-D(ブルーディー)!! ブラッディ・フィアーズ!!」

 

 そうして攻撃力の下がった《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》に向け、《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の翼より血の散弾が放たれる中、破滅の光は一手切るか心中で僅かに悩むも――

 

――此処は墓地の《幻影死槍(ファントム・デススピア)》を除外して身代わりに……いや、ターンの終わりにBloo-D(ブルーディー)のコントロールは俺に戻る!!

 

 

 防ぐ為のカードを温存する決断を取り、数多の風穴を開けられる《The(ザ・) grand(グランド) JUPITER(・ジュピター)》を超過した余波をその身に受けた。

 

破滅の光LP:5300 → 4250

 

「――ぐぉおぉ!!」

 

「まだだ! 呪縛より開放されたシャイニング・フェニックスガイの力で、墓地(セメタリー)のE・HEROの数×300パワーアップ!! シャイニング・チャージ!!」

 

 そうして僅かにライフを残した破滅の光の眼前には、輝きを取り戻した《E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》が、背中の翼を一層に輝かせ、光の翼と化し――

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》

攻2500 → 攻5800

 

 

「これで今度こそ終わりだ!! 行け! シャイニング・フェニックスガイ! 終極の輝き! シャイニング・フィニッシュ!!」

 

 

 光の翼で天高く飛翔した《E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》が己の光輝く拳を、破滅の光へ引導を渡すべく叩き込む。

 

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

 やがて断末魔代わりの破滅の光の嗤い声が木霊する中、《E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》の光が、破滅の光を包み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かと思いきや、突如としてその光が、破滅の光の身体に取り込まれるように吸い取られ始めた。

 

「――詰めが甘いんだよォ!! 罠カード《チェンジ・デステニー》!! シャイニング・フェニックスガイの攻撃は無効化され――エドォ! お前に運命の選択を強いる!!」

 

 やがて拳が弾かれたことでエドの元に戻る《E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》の前に赤と青――2つの扉が現れた。

 

「シャイニング・フェニックスガイの攻撃力の半分の数値だけ、俺にダメージを与えるか! お前のライフを回復するか! そのいずれかをな!!」

 

「だったら、ボクはお前にダメージを与える! シャイニング・フェニックスガイ!!」

 

 しかし、迫られた選択に迷いなく答えたエドの声に従い赤い扉に向けて、《E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》が拳より光弾を放てば――

 

 

 

破滅の光LP:4250 → 2800

 

 

 

「そんなダメージが!?」

 

「選択を誤ったな、墓地の《ダメージ・ダイエット》を除外したことで、俺がこのターン受ける効果ダメージは半分だ」

 

 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》の攻撃力5800の半分、2900のダメージを与えられる筈だった一撃は、更に半減された形で破滅の光のライフを僅かに削るばかり。

 

「《チェンジ・デステニー》の更なる効果! この効果を受けたモンスターを守備表示に! そして表示形式の変更を行えない!」

 

「シャイニング・フェニックスガイ!?」

 

 さらに追い打ちをかけるように赤い扉より放たれた電撃を受けた《E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》の身体は、思いもよらぬ損傷にふらつき、膝をつく。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) シャイニング・フェニックスガイ》 攻撃表示 → 守備表示

攻5800 → 守2100

 

「ククク、お前のヒーローは、もはや翼をもがれたも同然――そしてターンの終わりにBloo-D(ブルーディー)は俺の元に戻る!」

 

 決死のエドの攻撃は全て凌ぎ切られ、破滅の光を倒すには届かない。

 

 手札も使い切ってしまったエドには、追撃どころか、次のターンの防御すらままならないだろう。

 

 

「所詮はガキの浅知恵――次のターンで全て終わらせてやるよ!!」

 

「そんな……!」

 

「諦めるな!!」

 

 膝をつきそうになるエドへ、紅葉の檄を飛ばすような声が届く。

 

「――速攻魔法《瞬間融合》発動! 自分フィールドのモンスターで融合召喚を行う!!」

 

 さすれば、紅葉の最後のセットカードにより、エドのフィールドにて、新たな力を生み出す渦が逆巻いた。

 

「エド! 呼ぶんだ、何度でも! キミのお父さんを救うヒーローを!!」

 

「無駄だ! 《V・HERO(ヴィジョン・ヒーロー) アドレイション》を呼ぼうが俺のライフは残る!! そして《V・HERO(ヴィジョン・ヒーロー) トリニティー》を呼ぼうとも、所詮はダイレクトアタック出来ないモンスター!」

 

 新たな融合HEROによる追撃を語る紅葉だが、破滅の光は知っている。

 

 フェニックス氏の記憶から、エドのデッキの内容を。

 

 この状況でエクストラデッキから呼び出せる融合モンスターを知っている――そのどれもが、この状況を打破できるものではない。

 

「お前が何を呼ぼうが、Bloo-D(ブルーディー)は再び俺の元より舞い戻り! フィールドに恐怖をばら撒くのさ!!」

 

「そんなことさせない! 父さんのD(ディー)ヒーローは、そんなことの為にあるんじゃない!!」

 

 ゆえに次のターン《D-(デステニー)HERO(ヒーロー) Bloo-D(ブルーディー)》の力で破壊を振り撒かんとする破滅の光だが、父がカードに込めた願いを誰よりも知るエドは、一時でも破滅の光から、その身を自由にするべくエクストラデッキに手をかける。

 

『クリリッ!!』

 

「ボクのエクストラデッキが……?」

 

 だが、その瞬間、《ハネクリボー》の声と共にエドのエクストラデッキより眩いばかりに漆黒の輝きが溢れ出る。その輝きは闇のようでありながらも全てを優しく包み込む暖かさがあった。

 

『クリリー!!』

 

「相棒が『そいつを呼べ』ってさ」

 

「紅葉さんの相棒が? ……ありがとう、ハネクリボー!! ボクはフィールドのドグマガイとBloo-D(ブルーディー)で融合!」

 

「何を呼ぼうが無駄だと――」

 

 

「今こそ運命を覆せ! 究極を超えた! 終極のD(ディー)!!」

 

 

 やがて《ハネクリボー》の言葉を訳した紅葉の声に背を押されるようにエドが《D-(デステニー)HERO(ヒーロー)Bloo-D(ブルーディー)》と《D-HERO(デステニーヒーロー) ドグマガイ》を融合の渦へと導けば、

 

 

「カモン!!」

 

 

 渦の中より天を覆う程の鮮血の翼が広がった後に弾け、深紅の雨が降る中、現れるは――

 

 

「――《Dragoon(ドラグーン) D-END(ディーエンド)》!!」

 

 

 その身に宿す竜の頭部が身体の中央で咆哮を上げ、鮮血のクリアな翼を広げるその姿は、まさに魔龍の英雄(ヒーロー)

 

 だが、その右手の手甲には、《D-HERO(デステニーヒーロー) ドグマガイ》のブレードが、

 

 左手には、《D-(デステニー)HERO(ヒーロー)Bloo-D(ブルーディー)》の腕にあった竜の顎が、

 

 それぞれ並び、ヒーローの前身たる二つの信念が武装と共に宿っていた。

 

Dragoon(ドラグーン) D-END(ディーエンド)》 攻撃表示

星10 闇属性 戦士族

攻3000 守3000

 

 

(宿主)の知らないD(ディー)シリーズ……だと!?」

 

 

――拙い、俺の残りライフは……!!

 

 

 やがて《Dragoon(ドラグーン) D-END(ディーエンド)》の威容に破滅の光は思わず、後ずさる。

 

 

 なにせ、相手の3000の攻撃に対し、破滅の光のライフも丁度3000と同じ。

 

 

 あの時、墓地のカードを発動しなかった決断が、破滅の光に引導を渡す結果を生むこととなる。

 

 

「――アルティメット・D・バーストォッ!!」

 

 

 そして未知のHEROの存在へ驚愕から立ち直れず、瞳を見開く破滅の光を討つべく、天へと突き進んだ《Dragoon(ドラグーン) D-END(ディーエンド)》から漆黒の輝きが辺りを照らすように降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破滅の光LP:2800 → 0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――くっ、俺()此処までか……

 

 フェニックス氏の内から消えゆく破滅の光の声を聞いたものはいない。

 

 






破滅の光「4人は流石に無茶だった」




~今作の乃亜のデッキ~

原作の乃亜のデッキマスター《天界王シナト》が最も活きる状況――「守備表示モンスターに貫通ダメージを与えて、自身のバーン効果を追加」を用意するデッキ

貫通担当の《堕天使ネルガル》ついでに堕天使セットで《天界王シナト》への儀式の贄を揃えよう!

原作にて乃亜が使用したスピリットモンスターたちは、《月読命(ツクヨミ)》が1人で担当すると言うことで……(震え声)


~今作のエド(幼少時)のデッキ~
作中では、Dがまだ正式にリリースされていない為、

原作の初期メンバー「フェニックスガイ」一式を主軸に沿え、
漫画版のメンバー「V(ヴィジョン)HERO(ヒーロー)」を交えたデッキ。

フェニックスガイ一式がいる以外は、凄い普通の構築。


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