前回のあらすじ
世界の修正力「俺だって頑張ったんだよ……」
十代がラー・イエローに在籍していた事実諸々に仰天する神崎を余所に、時間は暫し巻き戻る。
プロデュエリストへの登竜門とすら称されるエリート校と名高いデュエルアカデミア。
だが当の学園は海のど真ん中の孤島に建てられており、ある種の隔離された寮生活となれば我が子の学園生活が心配になるのが親心というもの。
かつては完全なブラックボックスよろしく謎だった学園の内情も過去の話。授業参観擬きによってアカデミア訪問――と、ついでに我が子の成績チェックも加味した優雅な船旅を満喫する親御さんたち。
――随分、来賓が多いな……レッド生徒の親が集まるこのフロアだけでも、かなりの人数だ。
に紛れる神崎は、大きな船の広いフロアで行われた「我が子がオシリス・レッドに叩き落とされた件への説明会」に独り身ながらも参加していた。無論、学園の内情把握の為である。
「国数英などの通常授業の筆記テスト、お配りしたデュエル授業の筆記、並びに本日行われる実技の試験――この3つを総合して配属寮が決定され――」
――ペーパーテストは至って普通。フレーバーテキスト丸暗記なんてものはなく、1年は基礎ルールがメイン。引っ掛け問題も見られるが、三色内容が同じテストだけあって、最低限の知識があれば凡そ点数は取れる筈だが……
そうしてレッド寮の扉を爆破しそうな、ウェーブのかかった肩口までの髪に緑のベレー帽をかぶったアカデミア倫理委員会の女性職員の説明を聞きつつ、テスト用紙片手に思案を巡らせていた神崎だったが――
――レッド生の親、多くないか?
自身の周囲で怒声や金切り声などを上げる
そうして、天国と地獄が分かれた船旅を終え、アカデミアに到着した面々はアカデミア倫理委員会の案内の元、広大な室内グラウンドの周囲を取り囲む2階観客席まで案内され、各々着席。
――校長がコブラさんに代わったのは情報にあったが、こうも様変わりするとは。鮫島さんの様子も直に確認しておきたいが、流石に今の拠点は山奥の道場じゃないよな?
やがて待ち時間の最中、神崎は現段階で得られた情報から今後に思案を巡らせるも――
「おぉー、久しぶりやな、神崎ちゃん!」
「……これはアナシス様。お久しぶりです」
ボーダーシャツに海軍の船長服に似たものを羽織った恰幅の良いおっさん――「アナシス」が宝石類の輝く幾つもの指輪をした手を神崎に向けて軽く上げながら、なまりのある口調で声をかけていた。
彼は、海運業をたしなむ世界屈指の大富豪であり、かつてのKCのお得意様だったりする。海馬ですら「ちゃん」付けで呼ぶ肝の太さの持ち主だ。
「ガハハ! 『様』はやめやめ! 神崎ちゃんKC辞めたんじゃろ? なら客対応なんぞいらんちゅーの!」
やがて、お客様対応の神崎の背をアナシスはバシバシ叩きながら、隣の席にドカッと腰を落としながら問いかける。
「しっかし、神崎ちゃん随分音沙汰なかったようやけど、トラブルでもあったんか? みんな『遂に死んだんか』と笑って心配しとったちゅーの!」
それは、急に世情から姿を消した神崎の動向について――手広くやっていた人物が唐突に消えれば、気になりもしよう。
――それは心配なのだろうか……
「少し
「ふーん、そか。ところで、アカデミアには何しに来たんだっちゅーの? 聞いた話じゃ『人材発掘』しとるんやろ? それ関係か?」
だが、神崎の誤魔化すような口ぶりにもアナシスは気にした様子もなく、世間話に興じるが――
「オシリス・レッドの生徒に、面白い方がいるとの話を聞きまして様子を見に来た次第です」
「? なに言っとるんじゃ? レッドのデュエルは会場じゃやらんぞ? 『未熟』を晒しもんにするんは可哀そうだっちゅー話を知らんかったんか?」
思いの他ズレたことを並べ始めた神崎の姿に、アナシスは困惑した表情を見せた。そう、原則レッド生徒の実技試験の観戦は家族などに限定され、映像も外に発信されることはない。
なにが悲しくて、我が子の痴態を世間に晒さねばならないのか。
――えっ!? じゃあ遊城くんのデュエルは!?
しかし、
「ガハハ、こら神崎ちゃん! 潜り過ぎて浦島太郎みたいになっとるっちゅーの! しゃーない、オレが色々教えたらんと!」
「……お手柔らかにお願いします」
――情報では、原作のような色分けによる差別はない筈だったが……
やがて、事前知識もむなしく現アカデミアの右も左も分かっていないことが発覚した神崎は粛々とアナシスの解説に耳を傾けることとなる。
「パンフレットは持っとるか? 最初1年坊のイエロー、ブルーと続いて、同じように2年、3年の順番で試合をこなしていくんだっちゅーの!」
とはいえ、アナシスが語る内容は基本的なもの。神崎も流石にこの辺りは承知していた。
「最初は複数の組が一気にデュエルしちょるが、後半になればなる程に人数が減って最後の最後は、この広い会場でタイマン試合だっちゅーの! 最後は殆どプロの舞台とおんなじじゃの!」
「この会場全域を使うとは凄いですね」
――今のところ此処は情報との差異はない。なら色分け事の対応の認識を把握し切れていなかった……のか? やはりKC時代と違って内部情報を見れないのが痛いな。
「そうじゃろ、そうじゃろ! ちらほらプロリーグのスカウトも来とる程だっちゅーの! とはいえ、アイツらの狙いの生徒は、もう話通してるじゃろうから――1年の顔見に来たんじゃろうな!」
そうしてアナシスの解説を余所に、眼下の区分けされた幾つものデュエル会場でデュエルが繰り広げられ、決着がついた先から別室に待機していた生徒が新しく配置につく光景に、今度は神崎が問うた。
「アナシスさんも、
「いんや――今回はダチの娘さんの応援に来たんだっちゅーの! おっ、来た来た!」
しかし、軽く否定を入れたアナシスは眼下に広がるデュエル場の一つを視界に収めて腰を上げ――
――アナシスさんは海運産業の人。なら、知り合いも其方関係と思われるが……ああ、あの人か。GXの時間軸の人だったか。
「さちこちゃーん! 頑張るんだっちゅーの~!」
「―― ゆ き こ ですわ!!」
お互いに一際大きなアナシスからエールと、長めのウェーブの青髪のイエロー女子、
そんな件のデュエル会場にて、生徒たちの試験が次々と終っていき1年イエローの試験が終わりに差し掛かった頃、試験の順番が回って来た1年ブルー女子4人組が会場入りするも――
「あら、明日香の一番注目株がデュエルするみたいね」
「いけませんよ、雪乃さん! 私語は慎まないと!」
「肯定……現状に適していない……」
直に始まりそうな十代のデュエルへ興味を示す雪乃――を咎める麗華、と恐らく同調しているレイン。実技とは言え試験中となれば、至って全うな主張である。
「このくらい良いじゃない。それに、友達の恋は応援するのも大事でしょう?」
「なっ!? い、いけませんよ、明日香さん! そ、そういうことは! おと、おと、大人になるまではダメで――」
「そういうのじゃないわ。デュエリストとしてよ。でも、対戦相手は……誰だったかしら?」
だが、眼鏡の奥の顔を紅葉の如く染めた麗華によって雲行きが恋も花よな方面に飛びかけるが、男前ヒロインこと明日香によって両断され、話題は十代の対戦相手に移行するも――
「さぁ? 私の好みじゃない子は知らないわ。麗華は?」
「すみません。私にも……」
「該当者、検索中……検索中……検索中……」
数の多いイエロー生徒の中で、パッとしない相手のことなど誰も正確に把握していよう筈もない。
「――あっ! 確か『秋葉原』くんよ!」
かと思われたが、その正体は他ならぬ明日香がポンと手を叩きながら判明した。
そんな話題の対戦カードとなったことなどあずかり知らぬ十代は、対戦相手の黒髪メガネボーイを前に悩まし気な表情を見せる。
「相手は同じイエローの1年か! でも見覚えない顔だな……」
人懐っこく、他者に物怖じしないゆえに交友関係の広い十代だが、流石に1年も経たず数の多いイエロー生徒の全員の顔を覚えることなど出来てはいない。
だが、そんな悩める十代へ、実技の採点担当とジャッジを兼任しているであろう教員の手元の紙を覗き込んだユベルが助け舟を出した。
『イエロー生徒は人数が多いから、ボクも全員の名前は覚えてないよ。こっちの教師は……
「よし!
『おい、ボクの十代を無視するなんていい度胸――って、どこ向いているんだ、コイツ?』
そうして互いに挨拶を交わす……ことには残念ながらならず、眼鏡ボーイこと
「秋葉原さん……なんですか?」
「ええ、秋葉原くんよ。ハァ、やっと思い出せたわ」
麗華の最終確認に、胸のつっかえが取れたとばかりに明日香は気分良く肯定を返していた。
だが、残念ながら件の眼鏡ボーイ、
――明日香たんが僕の名を……でも間違ってる。
そうして「想い人に名前を別人レベルで間違って覚えられる」という中々の所業を受けた
――いや、待つんだ、ぼく!!
「おーい、
「――ぼくの
「えっ?」
『えっ? いや、でもこっちの教師が――』
そして突然トチ狂ったことを言い出す
これには十代とユベルも面食らうが、ミスター秋葉原も考えあってのことだ。秋葉原の名を己のものとする。これすなわち――
「遊城 十代と秋葉原くんのデュエル――少し興味があるの」
『あー、成程。なんとも不憫なヤツだね……』
だが、可哀そうなものを見るようなユベルの視線が物語るように「まともに名前すら覚えられない程に眼中にない」現実は何一つ変わらない。無常である。
「なんだかよく分からないけど――気合十分みたいだな! 行くぜ、秋葉原!!」
やがて「
――1年のイエロー……遊城 十代!? イエローの制服!? それに――
そんなイエロー生徒二人のデュエルを含めた情報の暴力を前に、内心で仰天する神崎だけを置き去りにして。
「おっ、1年生のブルーの番も来たか。今年の新しいオベリスク・ブルーも、やっぱり少ないの――ん? あっちのイエローの坊主が神崎ちゃんの注目株か?」
だが、此処で友人の娘ポジションの海野 幸子のデュエルを見終えたアナシスが、神崎の視線の先を見て色々察するも――
「え、ええ、まぁ」
――対戦相手はイエローの人、確かクイズデュエルの使い手だった筈。万丈目くんどころか、三沢くんですらないとは……もはや原作知識アテにならないな。
今の神崎はそれどころではない。
他称:秋葉原こと「
十代が苦手とする知識面を活用する相手なのだが、問題の核はそこではない。
――原作での人間関係を基準に出来ない以上、私の同郷を遊城くんの人間関係から測るのは難しい……か。
問題なのは、神崎が事前に用意していた今後の活動方針の9割方が吹っ飛んだことにあった。
まだ十代がアカデミアに入学して1年も経っていないというのに、早くも前途多難であろう。
「エッジマンを特殊召喚!」
そんなピカピカの1年生こと十代のフィールドに舞い降りるのは黄金のアーマーで全身を覆ったヒーロー。そしてすぐさま背中のブースターを吹かし――
《
星7 地属性 戦士族
攻2600 守1800
「バトルだ! エッジマンで――」
「此処でクイズアワ~! おたくには、ぼくが出題するクイズに答えて貰います!」
敵へと突撃しようとした《
「クイズ!? 秋葉原のデッキは、クイズデッキか! スッゲー! 面白そー!」
「ふっ、その余裕がいつまで保つかな?」
その一風変わったデュエルスタイルに興味を駆り立てられた十代は目を輝かせる。
「永続魔法《暗黒の扉》により、おたくの
やがて秋葉原の声に従い、十代の視線がフィールドの正体不明な4体の裏守備モンスターを眺めることとなる。
そして、唯一判明している最後の1体である口だけしかない頭に巨大な紺の腕を携えた、こげ茶の腰布を巻いたゴツい岩肌のモンスターへ視線を移す十代だが――
「ちなみに《グレイヴ・オージャ》は裏側守備表示モンスターがいる限り、攻撃されないよ」
「じゃあ実質4択か……なら右端だ! 行けっ! エッジマン!」
秋葉原からの注釈に十代が指さした裏守備表示モンスターへ今度こそ《
「第2問!!」
「だ、第2問!?」
した瞬間に、2本の指でVの字を作った秋葉原の宣言と共に――
「永続罠《旅人の試練》! ぼくの手札の1枚の種類を出題!! ハズレならキミのエッジマンは手札に戻って貰います!」
《
「今度は3択かよ……モンスターだ!」
「くっ、大正解! モンスターカード《雀姉妹》!」
だが、十代が指さした門を《
「でも残念! おたくが攻撃したのは 守備力2000の《ジャイアントマミー》! 永続魔法《カオス・シールド》とフィールド魔法《天使の歌声》により、その守備力は+300!+500! つまり――」
しかし、その裏守備モンスターこと、恰幅の良い全身を包帯で巻いたゾンビが構えたアンテナを思わせる形状のこん棒によって、《
《ジャイアントマミー》 裏側守備表示 → 守備表示
星5 地属性 アンデット族
攻1700 守2000 → 守2300 → 守2800
「守備力2800!?」
「そう! エッジマンの攻撃力じゃ突破はできない! ハズしたおたくには反射ダメージ分のライフが没
「くっ! ならリバースカード! 罠カード《スキル・サクセサー》発動! エッジマンの攻撃力を400アップ!」
弾き返されそうになっていた《
《
攻2600 → 攻3000
「甘い甘い! 手札から《牙城のガーディアン》を捨て、《ジャイアントマミー》の守備力をこのターン1500アップ! 解答後に答えを変えるなんて、クイズ界のタブーだよ!!」
かに思えたが、《ジャイアントマミー》の身体に土壁の鎧が纏われたと同時に《
《ジャイアントマミー》
守2800 → 守4300
「
「くっ! エッジマン!!」
炸裂装甲よろしく《ジャイアントマミー》の身体から土壁の鎧の破片が飛び散り、《
十代LP:4000 → 2700
かくしてエース格を失った十代は、フィールドに残る守備力2000から2500にパワーアップした《
とはいえ、それは相手が守備寄りなデッキであっても、些か頼りない布陣であろう。
十代LP:2700
《
伏せ×1
VS
秋葉原LP:4000 手札3枚
裏守備表示×3
《グレイヴ・オージャ》 攻1600
《ジャイアントマミー》 守2800
伏せ×1
《暗黒の扉》
《カオス・シールド》
《旅人の試練》
フィールド魔法《天使の歌声》
そして、そんな隙は見逃すまいと秋葉原も攻勢に出始め、十代からは未だ謎であった残り3体のモンスターの――
「ぼくのターン! 3体の裏側守備表示モンスターを反転召喚!! そしてモンスターが反転召喚されたとき、《グレイヴ・オージャ》の効果で300のダメージを与える! 300×3で900
巨大なカラスを模すように群れで飛ぶカラスたちが、
《カラスの巨群》 裏守備表示 → 攻撃表示
星5 闇属性 鳥獣族
攻1200 守1800 → 守2100
空色の翼を持つ鳥が、
《ステルスバード》 裏守備表示 → 攻撃表示
星3 闇属性 鳥獣族
攻 700 守1700 → 守2000
包帯で覆われた腐ったミイラの大群が、姿を現す。
《さまようミイラ》 裏守備表示 → 攻撃表示
星4 地属性 アンデット族
攻1500 守1500
やがて、彼らの出現によりビックリ驚いた《グレイヴ・オージャ》の岩肌が防御本能の如くせり上がっていき、その岩を自慢の剛腕で十代へ投げつける《グレイヴ・オージャ》。
「ぐぅっ!? 拙いぜ、これ!」
それにより都度3回の投石のダメージを受けて十代のライフは減少していき、今や残りライフは初期値の半分以下である。
十代LP:2700 → 1800
「更に! リバースした《カラスの巨群》の効果でおたくの手札を1枚墓地へ! 更に更に! 《ステルスバード》の効果で1000のダメージだ!!」
『十代!』
「うわぁぁぁああぁ!!」
加えて、おまけとばかりに《ステルスバード》の翼から放たれる羽根の弾丸に晒された十代のライフは、後がない程に削られることとなった。
十代LP:1800 → 800
「くっ、やるな……でも、これでお前のモンスターが何処にいるかは分かったぜ! 次は絶対正解だ!」
しかし、そう状況は悪化ばかりではないと十代は強気に笑う。これで秋葉原のクイズデッキの第1問『裏守備モンスター当て』の解はなされた。
「チッチッチ――お題はまだまだ! 4体の効果により自身をそれぞれ裏側守備表示に!」
幾ら秋葉原のモンスターたちが再び裏側守備表示に戻ろうとも、順番を十代が忘れない限り、間違えようがない。
《ジャイアントマミー》
守備表示 → 裏側守備表示
《カラスの巨群》
《ステルスバード》
《さまようミイラ》
攻撃表示 → 裏側守備表示
「この瞬間、《さまようミイラ》の効果発動! 裏側守備表示モンスターの位置をシャッフルタ~イム!」
「げっ!? 場所、分かんなくなっちまった!?」
だが裏側のままで動き回り、バラバラに配置しなおされた裏守備モンスターの姿に十代は悲鳴染みた声を漏らすこととなる。折角、頑張って覚えた位置もパァだ。
「――クイズだから当然さ!」
『中々面倒なデッキじゃないか。どうにか戦闘以外で相手のカードを除去したいところだけど……』
やがて、もう1枚カードをセットしターンを終えた鼻高々な秋葉原を前に、ユベルは考察を重ねる。
『アイツの「クイズに答えさせる執念」を見るに、その辺りは対策してるだろうね』
しかし、守り一辺倒で十代の攻撃を未だ躱し続けている秋葉原を捕まえるのは、少々骨が折れそうなことだけは、ヒシヒシと感じられた。
十代LP:800
《
伏せ×1
VS
秋葉原LP:4000
裏守備表示×4
《グレイヴ・オージャ》 攻1600
伏せ×2
《暗黒の扉》
《カオス・シールド》
《旅人の試練》
フィールド魔法《天使の歌声》
そして、その考察は観客側も凡そで同じなのかアナシスもしたり顔で頷くも――
「神崎ちゃんの注目株の坊主はヒーロー使いか! ――ENDの坊主を思い出すっちゅーの! でもブルーに上がるには、ちと迂闊な攻撃が多いかもしれんね!」
――「ENDの坊主」って……誰? まさか私と同郷か?
その最中に舞い込む情報の嵐に神崎は十代のデュエルどころではない程に揺さぶられていた。もはや当初立てていた今後の予定など遥か彼方である。
とはいえ、十代当人からすれば関係のない話。そんな十代が逆転を賭け、新たなヒーローを呼び起こす。
「魔法カード《ミラクル・フュージョン》! 墓地のエッジマンとワイルドマンを除外し、融合召喚! 頼んだぜ! ワイルドジャギーマン!!」
それは浅黒い筋骨隆々な体躯を、頭の兜と右腕、そして左足を《
《
星8 地属性 戦士族
攻2600 守2300
「ですが、その攻撃力は2600! ぼくの《ジャイアントマミー》を攻撃すればお陀仏だ!」
「魔法カード《
だが、秋葉原の言う通り《
《
攻2600 → 攻3100
「貫通ダメージ狙いですか! なら今こそおたくの解答タイ~ム! ショック!」
「ああ! 行くぜ、秋葉原! ワイルドジャギーマンで今度は左端を攻撃だ!」
やがて秋葉原に促されるままに、十代からの解答に《
「なら第1問の答え合わせの前に、永続罠《旅人の試練》による第2問! ぼくの手札1枚の種類は!」
「今度もモンスターだ!」
「残念、ハズレ! 《身代わりの闇》は罠カードだ! 手札に戻って貰うよ!」
しかし、第2問の三つのゲート選びに失敗した《
「なにっ!?」
「チェーンして、こいつの効果を発動していたのさ! 罠カード《トラップ・スタン》を! これで、このターンのフィールドの罠カードは全て無効!」
十代のリバースカードによって、第2問は文字通りの一回休み――これで《
「でも墓地の罠カードは封じられちゃいない! 墓地の罠カード《スキル・サクセサー》を除外し、ワイルドジャギーマンの攻撃力をさらに800パワーアップ!」
そしてダメ押しとばかりに背中から振り切られた《
《
攻3100 → 攻3900
「さぁ、答え合わせと行こうぜ、秋葉原!」
「おたくが攻撃したのは――《カラスの巨群》! その守備力は……」
《
《カラスの巨群》 裏側守備表示 → 守備表示
守1800 → 守2100 → 守2600
「2600か! なら、その数値を超えた分だけ貫通ダメージを与える! やれ、ワイルドジャギーマン! ブレード・スライサー!」
「ぅわぁあぁあああ! おたくの1300の
そうして、《
秋葉原LP:4000 → 2700
「へへっ、ようやく1問正解だぜ!」
「だとしても、
しかし、秋葉原のライフは健在。
幾ら十代の先制パンチが決まったところで次のターン、十代の残りライフを削り切る手筈が秋葉原の元に残っている以上、結果は変わらない。
「そいつは、どうかな?」
「むむむ? まだ何かあるって言――――まさか……!?」
だが、生憎と十代は元より次のターンのことなど考えていなかった。
「そうさ! ワイルドジャギーマンは全てのモンスターに攻撃できる!」
「……!? しまった!? 永続魔法《暗黒の扉》が防げるのは2体目以降の攻撃のみ!?」
秋葉原の防御の隙間を狙った《
しかし残念ながら秋葉原の手札には――
――だけど、甘いよ! ぼくの手札には……
「いるんだろ? その3枚の手札のどれかに《牙城のガーディアン》が!」
「!? ……だったら何だって言うんです! おたくがぼくの《ジャイアントマミー》に攻撃した瞬間が最後だ!」
十代が言い当てたように守備力を一時的に1500上昇させる《牙城のガーディアン》がいる。
このカードがある限り、秋葉原は1度だけ《
「でも、《ジャイアントマミー》以外を攻撃できれば……だろ?」
「確かに、その場合はライフが尽きる前に、ぼくは《牙城のガーディアン》を使うしかない……!」
『だけど《牙城のガーディアン》を《ジャイアントマミー》以外に使ってしまえば、秋葉原はワイルドジャギーマンの連撃を止められずにライフが尽きる――随分と大きな賭けに出たじゃないか、十代』
しかし、秋葉原が止められるのは1度だけ――そして、十代も《牙城のガーディアン》を使わせる前に《ジャイアントマミー》を攻撃した瞬間、《
文字通りの勝負の行く末を決める大事な大事なアタック、チャ~ンス!
「正真正銘、最後の3択クイズだぜ、秋葉原!!」
「こ、ここ、こ、来ぉい!」
「ワイルドジャギーマン! 左の2体に攻撃だ! インフィニティ・エッジ・スライサー!!」
そして残り三体の裏側守備表示モンスターの2体に向けて《
《ステルスバード》 裏側守備表示 → 守備表示
守1700 → 守2000 → 守2500
《さまようミイラ》 裏側守備表示 → 守備表示
守1500 → 守1800 → 守2300
「――ぐゎぁぁあああぁあ明日香たーんんんんんっ!!」
見事《ジャイアントマミー》以外を引き当て、敗北が確定した秋葉原は謎の断末魔を上げながら2体のモンスターが破壊されたことによる爆発に呑まれていた。
秋葉原LP:2700 → 1300 → 0
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」
『ガッチャだ。恋の方は諦めた方が良いと思うよ』
かくして、秋葉原のクイズアワーは終わりを告げる。次回の挑戦は――風だけが知っていることだろう。
そうして観客席から十代のデュエルを見届けたアナシスと神崎へ舞台を戻せば――
「ほほー、神崎ちゃんの注目株が勝ったかー! ……けど、随分と危なっかしいデュエルだっちゅーの」
「まだ1年生ですし、こんなものかと」
――頭使う方面は苦手だろうしな。だが、パラドックスのデュエルの際は学力向上の話が出ていたが……歴史は今も歪み続けているのか? それともタイミングの問題か?
若干の辛口評価を受ける十代。とはいえ、神崎からすれば
「おお! 久しいな、神崎!」
「これは長作様、正司様。ご挨拶にも伺えず――」
「構わん構わん。この場は無礼講だ! なにせ準の晴れ舞台だからな!」
だが、そんな神崎の元に新たな2人のおっさんたちが現れた。やがて2人のおっさんこと黒スーツの万丈目の兄たち――長作と正司は近場の席に腰を落とし、完全に観戦ムードである。
「おん? 万丈目んとこの凸凹兄弟か」
「そういえば、2、3年生のデュエルも始まっているというのに、弟さんのデュエルはまだでしたね」
――三沢くんのデュエルも、そういえばまだだ。メインイベント扱いなのか?
「1番大好きなお前らだっちゅーに、末の坊は筆記2番手で残念だっちゅーな!」
やがて万丈目の兄二人に遅れて気づいたアナシスが、ジャブ替わりの挑発気な牽制を入れる中――
「ふん、我らが欲しているのはそんな画一的な順位ではない。覇道を突き進む確かな力――勉学など、それを得る為の手段に過ぎん!」
「だが兄者、筆記だけとはいえ準を降した相手ならば、我らの障害になるやも――」
「皆さんの話題の1年筆記1番のデュエルが始まるようですよ。どうやら遅れたのは対戦相手の事情のようですね」
針の筵は御免なのか、神崎は強引に話題を転換し始める。その眼下にて始まるのは1年生の定期テスト筆記1番の三沢のデュエル。
そんな筆記のみとはいえ、末弟を降した男のデュエルに長作、正司も注視するが――
「ほう、あれがそうか。筆記だけの頭でっかちが、どこまで出来――相手がオシリス・レッドだと?」
「なに!? 見間違いじゃないのか、兄者!?」
件の三沢の対戦相手は、筋肉質で大柄な体躯の青年。肩にかけた赤い制服は紛れもなく『オシリス・レッド』所属の証。
――確かに赤い制服……って、投げた。
『アカデミアよ! オレは帰って来たぞーー!!』
「――あ、あれはー!? だっちゅーのー!?」
「知っているのか、アナシス!!」
そして黙する神崎を余所に、咆哮染みた叫びと共に赤い制服を宙に投げ、半裸となったボサボサに伸びまくった長髪の青年の姿に、アナシスは大仰な声を上げ、ただならぬ気配を感じた長作が先を促す。
「学園を去ったと噂されとったあの男が、どうして此処にいるんだっちゅーの!!」
「おい! 兄者にちゃんと説明しないか!」
だが、アナシスの説明は背景面が多く、肝心の人物像が一切分からない。正司も文句を言いたくもなろう。
――
やがて、何度目か分からぬ想定外に神崎は頭痛をこらえるように内心で一人ごちる中、デュエルが開始された。
そうして堕ちたエリートと、新生エリート候補生のデュエルが進んでいくが――
伏せ×4
VS
三沢LP:4000
伏せ×2
フィールド魔法《ドラゴニック
優勢にデュエルを進めていた三沢の猛攻に、
――噂は聞いたことがある。
やがて、己のターンとなりデッキからドローする三沢の脳裏には、学園で知りえた限りの
――カイザー亮に敗れ、オベリスク・ブルーから一気にオシリス・レッドまで降格した生徒がいる、と。
とはいえ、校舎に基本おらず、大体ジャングルでターザンしている彼の情報は決して多くはない。精々が昔のまだマトモな方だった頃の噂話が関の山。
――「むらっ気の大きいデュエリストだった」との噂だったが……どちらにせよ、相手にとって不足はない! 胸を借りさせて貰います!
だが、デュエルにおいて妥協を知らぬアカデミアが己にぶつけた相手となれば「堕ちたエリートだ」などと油断や慢心を三沢が持てよう筈がない。
「フィールド魔法《ドラゴニック
ゆえに全身全霊を以って勝利を掴むべく、組み上げた勝利の方程式で打って出る。
「そして、この瞬間! 手札で破壊された《ウォーター・ドラゴン》の効果発動! 弾けた水は、水素と酸素に分けられる――墓地の《ハイドロゲドン》2体と《オキシゲドン》1体を特殊召喚!」
さすれば、三沢の手札で弾けた水の竜は、3つの元素となってフィールドに降り立つ。
それは、トリケラトプスに似た姿が、泥水が流動して2体ばかり形作られ、
《ハイドロゲドン》×2 攻撃表示
星4 水属性 恐竜族
攻1600 守1000
最後の一つはプテラノドンのような形が、緑の風が集うことによって生み出された。
《オキシゲドン》 攻撃表示
星4 風属性 恐竜族
攻1800 守 800
「一気に展開してきたか! ならばリバースカードオープン! 罠カード《トゥルース・リィンフォース》! デッキからレベル2以下の戦士族を特殊召喚! 現れろ、《ドローン》!」
そんな中、周囲に弾けた水気が
《ドローン》 守備表示
星2 地属性 戦士族
攻 900 守 500
「さらに罠カード《同姓同名同盟》を発動だ! これによりレベル2以下の通常モンスターである《ドローン》はデッキから分裂召喚される!」
さらに、そんな《ドローン》が身体をブルブルさせれば周囲に泥が散らばり、周囲の水気から新たに2つの泥の塊となって分裂体が誕生。
そうして仲間を増やした《ドローン》たちはそれぞれ手を繋ぎ、扇状のポーズを取ってみせる。
《ドローン》×2 攻撃表示
星2 地属性 戦士族
攻 900 守 500
――くっ、先輩は《真竜皇バハルストス
「だとしても! 水属性である《ハイドロゲドン》2体を破壊し、手札からこのカードは特殊召喚が可能!」
かくして想定通りとはいかずとも、狙いをつけるように腕を突き出した三沢の前に、二つの水素こと《ハイドロゲドン》が水柱となって大波を生み出せば、その大波から巨大な影が飛びあがる。
「二つの水素を糧に降臨せよ! 海の
やがて水飛沫を巻き上げ、天使の翼を宙に浮かべる青き翼を広げた巨大な海竜が轟けば、意思を持ったように動く大波がうねりを上げて
《真竜皇バハルストス
星9 水属性 幻竜族
攻1800 守3000
「《真竜皇バハルストス
「無駄だ! 罠カード《和睦の使者》! このターン、俺のモンスターは戦闘破壊されず、ダメージも受けん!」
「ですが、もう1枚は除外される!」
――もう1枚は罠カード《ジャスティブレイク》……悪くないカードを除外できたが、このターンで攻め切ることはできない……なら!!
やがて相手の守りのカードの一角を崩した三沢は、相手に崩されぬ盤石な布陣を敷くべく次の式の解を披露する。
「此処で《真竜皇バハルストス
さすれば、《真竜皇バハルストス
《デューテリオン》×2 攻撃表示
星5 水属性 恐竜族
攻2000 守1400
「水属性が2体! まさに重水素な訳か!」
「その通りです! これで全ての条件は整った!
そして此度のデュエルに一筋の化学式が並べば――
「魔法カード《ボンディング-D 2 O》!
翼を広げた《オキシゲドン》が風となり、2体の《デューテリオン》と結合し、立ち昇った二つの巨大な水柱が一つに交わる。
「――《ウォーター・ドラゴン-クラスター》!!」
やがて水柱より、長大な体躯を持つ二つ首の水龍が咆哮と共に顕現することとなった。
その体は完全に液体のみで生成され、咆哮や身じろぎ一つからでさえ、周囲に水気を満たしていく。
《ウォーター・ドラゴン-クラスター》 攻撃表示
星10 水属性 海竜族
攻2800 守2600
「効果により、先輩の効果モンスターの攻撃力を0にします! クラスト・バニッシャー!」
「だが、俺の《ドローン》は通常モンスター! 影響はない!」
そんな水気に晒される
「それも計算済みです! 今や貴方のフィールドは《ドローン》たちを残すのみ! 必要経費に対し、十分な成果は得られました! 俺はカードを1枚セットしてターンエンド!」
そうして水を得た魚ならぬ泥人間こと《ドローン》に水浴びして艶出しした肉体を披露するように力こぶを作ってポージングする様を見せつけられながら、三沢はターンを終えた。
三沢LP:4000
《ウォーター・ドラゴン-クラスター》 攻2800
伏せ×3
フィールド魔法《ドラゴニック
VS
《ドローン》×3 攻900
かくして、折角用意されていた4枚のセットカードを全て失いながら何とか三沢のターンを凌いだ
だが、反面コツコツ補充して来た手札から魔法カード《虚ろなる龍輪》を発動し、《天威龍-シュターナ》を送り、追加効果で《天威龍-マニラ》を手札に加えた
「《レスキュー・ラビット》を召喚! そして自身を除外し効果発動! デッキからレベル4以下の同名通常モンスター2体を特殊召喚!」
安全ヘルメットをかぶったいつもの小さな兎を《ドローン》たちの元に送り出せば、早速とばかりに《レスキュー・ラビット》は仲間を呼ぶべく明日への逃亡をかます。
《レスキュー・ラビット》 攻撃表示
星4 地属性 獣族
攻 300 守 100
「《シャドウ・ファイター》!!」
そして現れる赤みがかった表皮を持つ人に似た姿を持ちながらも、不敵に浮かべた笑みから覗く鋭利に発達した犬歯が特徴の人外の戦士。
更に足元に伸びる当人の影もまた同じような笑みを浮かべていた。
《シャドウ・ファイター》×2
星2 闇属性 戦士族
攻 800 守 600
そうして立ち並ぶレベル2の通常モンスター5体を前に、三沢の顔色は此処に来て初めて焦りの色を見せる。
「この布陣……まさか!?」
「そのまさかだ! 魔法カード《弱肉一色》発動!」
これこそ、レベル2以下の通常モンスター5体が存在する時にのみ発動できる文字通り必殺の一撃。
「俺のフィールドのレベル2以下の通常モンスター5体以外! フィールドを
そして突如発生した泥の大津波が互いのフィールドと手札の全てを飲み込まんとうなりを上げ始める。
「なっ! ですが、ただでは通さない! 《ウォーター・ドラゴン-クラスター》の効果! 自身をリリースし、デッキから2体の《ウォーター・ドラゴン》を守備表示で呼び――いや、分裂する!」
だが、対する三沢も手をこまねいてなどいない。
泥の大津波から《ウォーター・ドラゴン-クラスター》が身体を崩壊させながら天へ飛び立てば――
「集合した重水が、今! 再構築される! 来たれ! 《ウォーター・ドラゴン》!!」
その天にて《ウォーター・ドラゴン-クラスター》が双頭を起点に二つに分かれ、長大な体躯を持つ2体の水竜が泥の大津波の中に降り立つこととなった。
《ウォーター・ドラゴン》×2 守備表示 → 攻撃表示
星8 水属性 海竜族
攻2800 守2600
「だとしても、破壊は避けられん!!」
「くっ、俺の
そうして永続罠《DNA移植手術》、《暴君の威圧》、《最終突撃命令》の《ウォーター・ドラゴン》とのコンボカードを含め、三沢のフィールドは泥の津波にさらわれ、手札すら呑み込んでいく。
やがて泥の大津波は引いていく中、
「伏せカードは《ウォーター・ドラゴン》とのコンボ用のカードだったか。危ないところだったな! はっはっは!」
「ですが、この瞬間! 再び弾けた水は、水素と酸素に分けられた! 《ウォーター・ドラゴン》の効果により、墓地の《ハイドロゲドン》2体と《オキシゲドン》1体の一組を特殊召喚!」
だが、己のあわや危機すら豪快に笑う
《ハイドロゲドン》が四足で地面に降り立ち、トリケラトプスと酷似した三本角を振り上げ、
《ハイドロゲドン》×2 攻撃表示
星4 水属性 恐竜族
攻1600 守1000
《オキシゲドン》が、プテラノドンを模した翼で空を舞う。
《オキシゲドン》 攻撃表示
星4 風属性 恐竜族
攻1800 守 800
「しかし、フィールドに3つの空きがない以上、もう1体の《ウォーター・ドラゴン》の効果は使えまい」
「想定内です。これで互いの状況は凡そ五分!」
そう、盤面を完全に崩された形の三沢だが、攻撃力1600と1800がいる以上、攻撃力900以下の
いや、次のターンに通常ドローで1枚のアドバンテージが得られる三沢の方が若干有利だろう。
「そうだな。互いの手札は0! 此処からはドロー勝負と行こうじゃないか!」
「……ドローに並々ならぬ自負があるようですね」
――俺が不得手としている面でもある……だから学園は、この対戦カードを?
「それは見てのお楽しみだ――早速、行くぞ!」
しかし、この状況を作り出すことこそが、
「手札から捨てられた《暗黒界の狩人 ブラウ》の効果により1枚ドロー! さらに手札から捨てられた《トリック・デーモン》の効果で『デーモン』カード――《デーモンの宣告》を手札に!」
そうして魔法カード《弱肉一色》の効果を利用し2枚のカードを用意した
――流石に丸腰では返してくれないか……
三沢の懸念通りに《馬の骨の対価》で《シャドウ・ファイター》の1体を墓地に送り、2枚ドローし、その手札は3枚。
幾ら《ドローン》の攻撃力が低いとはいえ、《ハイドロゲドン》たちだけでは少々不安になるところだろう。
「今こそ見せよう。俺の修行の成果――ドローの極意を!!」
だが、
「永続魔法《デーモンの宣告》を発動し、効果適用!」
「――な、なにを!?」
「俺はライフを500払い、デッキトップを宣言! 宣言したカードなら手札に加え、違ったなら墓地に送る!」
そうして更なる
なにせ、魔法カード《デーモンの宣告》は「デッキトップを調べた上」で発動するのが通説だ。「あえて間違える」ことでカードを墓地に送る手法もあるにはあるが、今の
「俺が宣言するのは――」
やがて
「幾らデッキの残りカードを覚えていたとしても、そんなもの当たる訳がない!」
そんな中、極めて全うな三沢の声につられる形で――
「そうだ! 当たる訳がなかろう!」
「そうじゃ! 当たる訳ないっちゅーの!」
「確率を知らないのか、あの男は!」
観客席の長作、アナシス、正司のおっさんたちも馬鹿を見る目を
――同名カードを3枚デッキに残していても、その確率は決して高くはない。
当然、神崎も同じ意見である。
しかし、
「《
だが、そんな外野の宣言など無視して、己の脳裏を過ったカードを宣言し、デッキトップをドローして確認する
「デッキトップのカードは――《
「当てた……だと……!?」
信じられないものを見るような三沢の言葉が証明するように宣言したカード《
「馬鹿なッ!?」
「どういうカラクリだっちゅーの!?」
「あれが、あの男が語るドローの極意だとでも言うのか!?」
長作、アナシス、正司のおっさんたちも思わず席を立ち、双眼鏡片手に
――皆さん、楽しそうですね。
そんな3人のおっさんの姿は、神崎の内心が示すように眼下で繰り広げられているデュエルを全力でエンジョイしていよう。
やがて
ターンエンドと共に《レスキュー・ラビット》で呼び出された《シャドウ・ファイター》は破壊され、
《ドローン》×3 攻900
伏せカード×2
《デーモンの宣告》
フィールド魔法《天威無崩の地》
VS
三沢LP:4000
《ハイドロゲドン》×2 攻1600
《オキシゲドン》 攻1800
そして三沢のターンとなり、攻撃されなかったことで《ウォーター・ドラゴン》の素材となる3体が無事に残り、決して悪くはない状況でカードをドローした三沢。
「ん? あの三沢という生徒――カードを引いて動きが止まったぞ?」
だが、そんな三沢の動きが完全に止まったことで、長作を筆頭に疑問を呈した観客たちによって観客席側がざわつき始める。
「手札1枚じゃ悩むことないっちゅーのに、どうした?」
「魔法カード《強欲で金満な壺》を、手札増強カードを引いたようですね。発動するか否かで悩んでいるのかと」
「……よく
やがて首を傾げるアナシスへ、三沢の手札を超視力で見やった神崎を、正司が呆れた表情で見るが――
「見間違いじゃなか? 2枚ドローなら悩むことないっちゅーの」
「確かに、そうだな……相手の補給姿勢が整った状況で、手をこまねくのは自殺行為だ。どんな世界も補給の重要性は変わらないだろう?」
むしろアナシスの疑問は深まるばかりだった。デュエルにさして詳しくない長作ですら、その不可解さは容易に想像がつく。
しかし、ドロー力に自信のない神崎には、固まる三沢の気持ちがよく分かった。
「彼は、引きに自信がないのだと思います。引いた2枚のカード次第では《ドロー・ディスチャージ》の効果ダメージでライフが尽きる」
罠カード《ドロー・ディスチャージ》――相手がカード効果でドローした時に、相手の手札にモンスターがいれば、その合計攻撃力のダメージを与え、手札を捨てさせるカード。
三沢のライフは4000と初期値だが、《ウォーター・ドラゴン》などの高い攻撃力のモンスターも多く、組み合わせ次第では一瞬でライフが尽きる。
そんな最悪など普段なら早々
「成程な。攻撃力で勝るモンスターがいる以上、無理にリスクを取りたくない訳か――だが、それは『逃げ』の思想だ。愚かと断ずる他あるまい」
そうして、三沢の心情部分を察した長作だが、迷う三沢を厳しい口調で切って捨てた。
「デュエルもよう知らん癖に、無茶苦茶言うなっちゅーの」
「ふん、どんな世界においても『此処ぞという時』に腰が引ける者が、覇を掴むことはない。決断できる者のみが、新たな境地に辿り着くのだ」
その言いように思わずアナシスも、長作がデュエルを専門外の部分から崩そうとするも、長作が冷たく返したように、これは「デュエル」の問題ではない。「心」の問題だ。
そして、それは三沢の心の奥深くに知らず知らずの内に根付いている問題でもある。
「兄者、カードを引くようだぞ? だが、1枚? 2枚引くカードではないのか?」
「神崎、何のカードだ?」
「墓地の儀式魔法《リトマスの死儀式》の効果ですね。墓地の儀式モンスターと共にデッキに戻すことで1枚ドローできます」
やがて、正司と長作から要請され、魔法カード《強欲で金満な壺》を発動しない選択を取った三沢のデュエルの動きを簡略に返す神崎だが――
「つまり恐怖に屈した半端な決断か。最悪だな」
その決断は素人目に見ても、褒められたものではなかった。
「あーあー、罠カード《ジャスティブレイク》くらっちまったっちゅーの……」
「当然だ。相手の土俵へ半端に踏み込めば火傷では済む筈がない」
やがて迷いの中で攻撃を選択した三沢は、罠カード《ドロー・ディスチャージ》に気を取られ過ぎたゆえに、「1枚除外したゆえに選択肢から無意識に外していた」カードに見舞われる。
その「攻撃された際に、攻撃表示の通常モンスター以外を破壊する」効果により、2体の《ハイドロゲドン》と《オキシゲドン》を無為に失う三沢――まさに長作の言うように火傷では済まなかった。
「ふん、筆記1位との前評判も、フタを開ければこの程度か」
やがて筆記とは言え、末弟を降した
だが、デュエル場では、墓地の罠カード《ボンディング-DHO》を除外し、デッキから《ウォーター・ドラゴン-クラスター》を手札に加えた三沢が、最後に残る手札――魔法カード《儀式の下準備》を発動。
それによりサーチした儀式セットの片方、儀式魔法《リトマスの死儀式》を発動し、手札のレベル10の《ウォーター・ドラゴン-クラスター》を素材に儀式召喚されれば――
角のように横に広い博士帽を被った白の貴族を思わせる服装の剣士が、肩掛けの赤紫のマントを揺らし、左右の手に携えた双剣を交差させ、主を守るべく守りを固めていた。
《リトマスの死の剣士》 守備表示
星8 闇属性 戦士族
攻 0 守 0
「おっ、儀式召喚まで繋げたっちゅーの。戦闘で破壊されんっちゅー話とは……流石は筆記1位なだけあって、ただでは転ばんぞ」
そうして手痛い損失を受けても切り札の1枚にまで繋げた三沢の手腕に賛辞を贈るアナシスだが、長作の評価は変わらない。
「そんなもの所詮はその場凌ぎに過ぎん――もはや逆転の目はない。既に相手の術中だ」
「ほー、お前さんには、この先のデュエルが分かるっちゅーの?」
「いや、分からん」
「――分からんのかい!」
しかし、デュエルの難しい部分への理解を一切合切放り投げた長作の結論に、思わずツッコミを入れるアナシス。とはいえ、長作とて何も無根拠と言う訳ではない。
「だが、あの男の状態なら分かる。安全策を取った筈だというのに手痛い出費を払うこととなった――あれでは、次に打つ己の選択すら信じられまい」
「兄者の言う通りだ。己を信じられぬ者に勝利は掴み取れん」
生き馬の目を抜く政財界で戦い抜く長作、
海馬社長が「フハハハハ!」している経済界で奮闘する正司、
原作ではデュエリストへの理解のなさばかり強調された二人だが、ただの無能がその二つの世界で生き抜くことなど、どうして出来ようか? 今までの経験と知識――それが彼らの根拠。
「皆さん、手厳しいですね」
――1年生に求め過ぎな気が……
とはいえ、神崎の外と内の言葉が示すように一介の高校生に求めるハードルではない。厳しいだけではダメなのである。
やがてデュエルの方は――
速攻魔法《エネミーコントローラー》で攻撃表示に変更された《リトマスの死の剣士》が、《ドローン》の攻撃を受け、装備された装備魔法《下克上の首飾り》の効果により、互いのレベル差×500アップした攻撃力を得た《ドローン》の一撃が決定打となる。
如何に《リトマスの死の剣士》が戦闘で破壊されない効果を持てども、「永続罠」がなければ攻撃力を3000に上げることも叶わない。
やがて《ドローン》たちの三位一体で宙で前転しながら飛び込む文化的アタックの前に三沢へのダメージを防ぐことは出来ず、デュエルは終局となった。
そうして
「騒がしいな」
「スカウトの方のようですね。新しい
「ふっ、兄者。どうやらアイツらには先が見えていないらしい」
「フッ、そのようだな」
そして、その騒ぎの種を超聴力で聞き分けた神崎が零す中、正司が長兄である長作へ向けて悪代官よろしく兄弟でほくそ笑み始めれば――
「神崎ちゃん! いよいよ、メインイベントじゃ! 学園で4人しかいないフォースたちのデュエルが始まるっちゅーの!」
「楽しみですね」
――『フォース』、つまり特待生寮組。だが上位者の内聞は丸藤 亮に、天上院 吹雪に、藤原 優介、そして小日向 星華。三天才の4人目の出現とは……原作の指針が測れないのは厄介だ。
テンション高くフォースの面々のデュエルを楽しみにするアナシスと、
社交辞令の内部で「原作どうすんだよ」と絶望を隠しつつ、営業スマイルを浮かべる神崎。
もはや今の神崎には、原作GXアニメ版なのか、原作GX漫画版なのか――どちらの情報を基盤に考えれば良いのか、それすら分からない。
「ククク、遂に来たぞ、兄者!」
「そうだな! 我が末弟がアカデミアを制する時が!」
そして正司と長作たちのテンションがMAXになった頃、最初のフォースの試合が始まると言うのに、一介のオベリスク・ブルーの生徒が会場に歩み出た。
「1年坊じゃと!? 驚きだっちゅーの……よもやフォース昇格をかけて1年坊が出て来るとは……」
――万丈目くん……か。兄弟の軋轢が低下したことで心境の変化は想定していたが、これはカイザーと同格扱いなのか? それとも将来性を見据えた経験の場?
今、広大な会場にて一人の生徒――万丈目が一人立つ。
それが示すのは、フォースへのデュエル権を勝ち取った事実。
つまり、フォースと同等の実力――が、
そうしてスポットライトに一人照らされる万丈目に対峙するフォースは――
「相手は――」
『――キミの瞳に何が見える?』
――マイクパフォーマンス……だと……!?
天より響き、会場中に木霊するマイクの音声が教えてくれた。
その音の発生源を見上げる観客たちが、お決まりの流れを天へと向ければ――
「 天 !! だっちゅーの!!」
「 「 「 天 !! 」 」 」
その者は混迷とした原作の歴史にて、氷の牙を突き立てる王――否、帝。
数多の
――彼は相変わらずか。逆に安心する。
『――JOIN!!』
顕現した。
世界から祝福を受ける如き歓声が会場中を覆う。
変わらない安心感
~今作の三沢デッキ(VS十代用Ver?)~
「真竜」を混ぜた『ウォーター・ドラゴン』――フィールド魔法《ドラゴニック
《ウォーター・ドラゴン》の効果の為、永続罠《DNA移植手術》や《暴君の威圧》、《最終突撃命令》と、永続罠が豊富なので《リトマスの死の剣士》の効果も狙いやすいぜ!
なお事故率(無常)
~今作の大山デッキ~
彼が使用した《ドローン》を始めとした通常レベル2戦士族を並べ、
魔法カード《弱肉一色》からの互いのフィールド+手札リセットからの、《デーモンの宣告》サーチで
強引に泥沼ドロー勝負に持ち込むデッキ。
『天威』の力を借りて、殴りかかってくる《ドローン》は凄くウザいぞ!
破壊耐性持ち? 魔法カード《強制転移》で、この超カッコいい《ドローン》と交換してあげるよ!
~今作の神田 次男こと秋葉原のデッキ~
サイクルリバースモンスターを活用し、《さまようミイラ》の裏守備の並べ替えや、永続罠《旅人の試練》などで
頑張って原作のようなクイズ要素で固めたデッキ。
なお問題は選択式オンリーの模様――偏ってるー!
自分から攻撃するのは苦手。
相手が「待ち」のデッキだった場合、パタパタ表裏して《グレイヴ・オージャ》でチクチクする凄い地味なデュエルになる。