マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
デビルゾア「キースデッキではなく、江戸川デッキが俺の居場所だったんだ……!!」





第263話 私は未来のあなた自身なのです

 

 

 ノース校の代表戦を終え、実施された軽食パーティで生徒たちは各々交流を行う。

 

 それは間近のインパクトが強烈であったカイザー亮のデュエルを話題に意見を交わしたり、

 

 まだ見ぬライバルや、1年振りの再会を果たした好敵手とのデュエルに興じたり、

 

 そんなデュエル観戦をしながら、振る舞われた料理に舌鼓を打つことに注力したり、

 

 または互いのデッキの品評をしつつ、カードトレードを画策したり、

 

 はたまた、ノース校の立地が流氷に囲まれた僻地ゆえに男子校と化した弊害による不足した出会いを求める者たちまで――と、多岐にわたる。

 

 

 だが、そんな騒がしくとも楽しい時間は日が暮れる頃には終わりを告げ、二人の校長の友好の握手を締めとし、此度の交流戦はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 そうして、本校生徒たちが手を振って別れを贈る姿が豆粒ほどのサイズに遠ざかった中、ノース校が所有する潜水艦が船体を出したままの甲板にて、「次はプロでリベンジだ!」と気合を入れる江戸川を余所に、離れていくデュエルアカデミアの島を眺めていたオブライエンの脳裏に言葉が響く。

 

“どうせなら面白い方を俺は選ぶぜ!”

 

 その言葉は「代表戦の後に」と約束していた十代とのデュエルでのこと。

 

 代表戦で戦った明日香の闘志溢れるも「デュエルの定石」に沿ったプレイングと異なり、十代のデュエルは「己の嗜好」が大きなウェイトを占めていた。

 

 それは、時にエースのぶつかり合いにこだわったり、時に相手の土俵で勝負してみたり――と、様々だ。

 

 とはいえ、それは手を抜いている訳でもなければ、定石が分からない訳でもないことが何となしに殆ど初対面のオブライエンにすら分かる。あれ(十代)は、そんな器用な人間ではない。

 

 器用な人間は、ノース校のデュエリストに片っ端からデュエルを挑んだりしなければ、連戦し過ぎて後半おかしなテンションになったせいで友人(三沢)医療教諭(鮎川先生)にドクターストップをかけられなどしないだろう。

 

 ただ、「ワクワクする」なんて曖昧な理由で、時折それら全てを放り投げた思いもよらない決断をする。言ってしまえば――

 

「不思議なデュエリストだったな」

 

――交流戦は「ノース校の敗戦続き」と聞いていたが、思いのほか有意義な時間だった。

 

 オブライエンにとって興味深いデュエリスト。そんな言葉が適していよう。

 

 ノース校で見聞きした情報から過度な期待を持っていなかったオブライエンとしては朗報である。

 

――KCから依頼された「学園の内情を生徒視点から探る」今回のミッション、中々面白い。

 

 なにせ、オブライエンはただの学生ではない。父より幼き頃から傭兵の手解きを受けた現役のプロフェッショナルだ。

 

 そんな彼の任務は、デュエルアカデミア本校の前校長の失態を受けての「外部の目」としての役割。

 

 そう、過去はコブラが行っていた件が、そのコブラが本校の校長に抜擢されたゆえに暫定的に任された身なのだ。

 

 そうして、今まで見たことのないタイプのデュエリストとの出会いに思わず挑戦的な笑みを小さくこぼすオブライエン。

 

「……楽しんでいるのか、オレは?」

 

 しかし、己の頬に手を当てたオブライエンは思わぬ自身の心境の変化に僅かに戸惑いを見せた。傭兵として必要ない領分であろう。

 

 だが、その脳裏に父と過ごした過去の情景が過る。

 

 それは、幼少時のオブライエンが「傭兵」を「雇い主の言いなり」「まるで忠実な犬みたい」と父に零した件。

 

 確かに、依頼を受けて活動する以上、そういった側面があることは事実だ。現にオブライエンの父も、その点は否定しなかった。だが――

 

“燃えろ、My son(我が息子よ)

 

 それでも己の中で譲れぬ領分を捨てる必要はないと教授してくれた。

 

 そんな熱く燃える戦士だった父の姿を思い起こし、オブライエンは今や遥か遠く離れたデュエルアカデミアの島から視線を切り、船内へと歩を進める。

 

――ダディに、良い報告が出来そうだ。

 

 その背には、何処か不思議な高揚感が満ち始めていた。

 

 

 

 

 

 

 ところ変わって日を改めたアカデミアにて――

 

 ノース校との交流戦の熱気も冷めやらぬアカデミアの空気を余所に校長室に訪れていた亮は、デスクを前に座して腕を組む部屋の主たるコブラを前にしていた。

 

「コブラ校長、お話が」

 

「なにかね? キミが私に願いごとなど珍しいじゃないか」

 

 そうして、粛々とした様相の亮に対し、コブラは軽口と共に相手の要求を引き出していく。

 

 フォース生徒は様々な特権が学園よりもたらされている。

 

 それはレアカードの入手、人脈の紹介、コネクションの構築、大会の参加権――等々、細かく並べればキリがない為、割愛するが言ってしまえば「己を高める」為に「必要である」と「要望」すれば「大抵のもの」が「手に入る」レベルだ。

 

 吹雪のショーマンシップから来る衣装やら小道具やら演出やらも、この辺りから出ている。

 

 他は、藤原は精霊関連の蔵書を求める傾向が強く、小日向はシンプルにデッキ強化のレアカードを求めることが多い。

 

 とはいえ、フォース生徒の中で亮はあまりこの手の権利を行使しないタイプな為、上述のコブラの言葉通り「珍しい」ゆえに「余程のことか」とコブラは瞳を鋭くさせるが――

 

「フォースに上がれそうな生徒はどの程度いますか?」

 

「持って回った言い方などしなくていい。多少、無礼でも構わん。端的に述べたまえ――キミたちにはそれが許されている」

 

 亮から告げられた言葉はアカデミアの実情の確認でしかない。しかし、流石に個人情報に類することは教えられない為、コブラも亮の真意を問いただす他ない。

 

 多少、無茶な要求であっても「皇帝(カイザー)」の頼みならば無碍には出来ないところだ。

 

「……俺たちは直に卒業です。ですが、俺はお世話になった学園に恩を返せていない」

 

「それはキミの勘違いだ。キミというブランドは十二分に学園の為になっているとも」

 

「俺はデュエルばかりの男です。様々な面で学園に多くのご迷惑をお掛けしました……」

 

「年齢的に多感な時期の『それら』に応対するのが我々の仕事だ。キミが気にすることではない」

 

 だが、ノース校との交流戦が「新入生が学園になれた後に行う」との方針から原作よりも遅い時期に設定されており、そろそろ卒業を控えた亮から帰ってくるのは後悔や自責の言葉ばかり。

 

 とはいえ、コブラからすれば見当違いも甚だしい自己評価でしかない。

 

 正直、一度は地の底にまで落ちかねなかったアカデミアのブランドが今も維持――いや、劇的な上方修正が叶ったことは、「皇帝」と評されるカイザー亮の存在が大きかった。

 

 前校長である鮫島がアカデミア内部の諸々の問題を抱えていても、太鼓判を押すだけの力が亮にはある。

 

「だとしても、俺は……俺は学園を去るものとして、なにか一つでも――」

 

「端的に述べたまえ」

 

 ゆえに、言葉を濁す亮へコブラは強い言葉で先を促した。

 

 

「キミは『何がしたい』」

 

 

 その答えは果たして。

 

 

 

 

 

 

 そんな会合など知る由もない十代は購買近くのイートインコーナー代わりのデュエル場にて、いつもの調子で今日も今日とて目についたオベリスク・ブルー生徒にデュエルを挑む。

 

「おっ、そこのセンパ~イ! 俺とデュエルしようぜ~!」

 

 その十代の姿はオベリスク・ブルーでも日常になりつつある為か、最初の頃にはあった慣れない敬語も省略され、「しょうがない奴」とばかりに相手の了承を得てデュエルが開始。

 

「よっしゃぁ! 一気に攻撃だ!」

 

 デュエル自体は一進一退の攻防が繰り広げられているが、チャンスはさておきピンチであっても構わず十代は楽しそうだ。

 

「甘いぜ! 罠カードだ!」

 

『ブルーに上がってもキミは変わらないな』

 

 そうして、相手の攻勢をなんとか防いだ十代の隣で浮かぶユベルは、苦笑交じりに微笑むのが最近の彼らの日常である。

 

 

 

 

 だが、そんな十代たちの日常の様子を少々辟易した様子で眺める万丈目は、アカデミアの購買名物「ドローパン」片手に思わず呟いた。

 

「……相変わらずデュエル馬鹿だな」

 

 日々デュエリストとしての腕を磨くことに余念のない万丈目から見ても、十代のデュエルの頻度は若干以上に過剰である。その元気が何処から無尽蔵に湧くのか知りたいくらいだ。

 

「まぁ、そう言うな、万丈目。どうにも交流戦のカイザーのデュエルを見て火が付いたらしくてな。『カイザーと絶対にデュエルする』と張り切っているんだ」

 

「ふん、はしゃいでいる姿が目に浮かぶようだ」

 

 とはいえ、ドリンク片手の三沢の説明に己も思うところがあるのか万丈目も鼻を鳴らしつつ、呆れ顔に留める。とはいえ、その顔は「幾ら何でも限度がある」と言わんばかりの表情だ。

 

「万丈目くんも似たようなものだと思うけど?」

 

「同じにしないでくれ、天上院くん。俺と違って、アイツはただ数をこなしているだけだ」

 

 しかし、明日香から見れば「万丈目もストイックな性質であり、似た者同士」との言を万丈目は即座に否定した。

 

 闇雲にデュエルして強くなれるのなら誰も苦労しない。1戦1戦、勝利と敗北の背景を吟味しなければ、意味がないのだと。

 

「目指す先が違えども過程が同じなら、道中は楽しんだ方が得かもしれないな」

 

「……なんだ『それ』は。まさか、あの時の一件を蒸し返す気か?」

 

 だが、ポツリと差し込むような三沢の声に、万丈目は鋭い視線を返すが――

 

「いや、ただの個人的な考察を披露しただけさ」

 

「……ふん、そういうことにしておいてやろう」

 

 とぼけた様子の三沢の姿に、万丈目は追及の矛を収めた。

 

「『あの時の一件』って?」

 

「――て、天上院くんには関係のない話だ!」

 

 だが、過去の事情(十代との衝突)を知らぬ第三者の存在を一瞬忘れていたせいか、訪れた思わぬ追及に大きく肩を跳ねさせた万丈目は、慌てた様子で話題を変えようとするが――

 

「そう言われると気になっちゃうんだけど……」

 

 なんだかんだで、十代たちとの接点が増えた明日香からすれば捨て置く気にもならない。

 

「察してやってくれないか。譲れぬ男の矜持なんだ」

 

「そ、そういうことなんだ。悪いね。後、三沢――あのデュエルバカには、しっかりと口止めしておけよ」

 

「十代が関係しているの?」

 

「あっ」

 

 やがて三沢のフォローを交えつつ煙に巻こうとした万丈目だったが、念を押した結果に口を滑らせた己のウッカリを悔やみながらも、なんとか誤魔化そうとするが――

 

「いや、これは何と言うか、アレなんだ……アレで――なぁ、三沢!」

 

 己の限界を悟って、三沢にキラーパス(無茶振り)

 

「そろそろ約束の時間だ。移動を始めた方が良い――俺は十代を拾ってから向かうよ」

 

「そ、そうだとも、天上院くん! この話は別の機会にしようじゃないか!」

 

 だが、席を立ちつつ空の容器をゴミ箱に捨てる三沢からの言葉に、この場はお開きとなる。

 

 

 

 

 

「十代ー! そろそろ切り上げないと間に合わなくなるぞー!」

 

「ヤベッ!? もうそんな時間か!?」

 

『十代、相手が「デュエルの状態を保存して中断を――」とか何とか言ってるけど、どうするんだい?』

 

 そうして、三沢からタイムリミットを告げられ、慌てる十代にユベルは助け船を出すも――

 

「このまま決めるぜ!」

 

『まぁ、この手札ならこのターンに決着もつくか』

 

 勝負の流れを掴んだ実感があるゆえか、十代はデュエルを続行。

 

 なお、最終的にデュエルは十代の勝利に終わるも、思いのほか速攻を決められなかったことから予定に遅れない為にダッシュする羽目となった。

 

 

 その結果、「廊下を走っちゃダメなノーネ! 危なイーノ!」という定番のセリフを受けることになるが、余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 十代と同じ1年生のオベリスク・ブルー生徒が集められたアカデミアの一室にて、教壇に立つ佐藤は常と変わらぬ平坦な口調で彼らを集めた要件を告げる。

 

「もうじき学園祭のシーズンです」

 

「うぉー! 祭りだー!」

 

「静粛に」

 

「――あっ、はい……すみません、佐藤先生」

 

 それは、アカデミアでの大きなイベントの話題。分かり易いお祭り騒ぎの気配に十代も思わずテンションが上がるも、即座に佐藤にいさめられ肩を小さくした。

 

『折角のお祭りなんだから、少し羽目を外すくらい許して欲しいね』

 

「イベントを前に浮かれる気持ちは分かりますが、自分たちが学園の顔である『オベリスク・ブルー』である自覚を持った行動を心がけてください」

 

 やがて、しょんぼりした十代の姿にユベルが援護射撃に回るが、佐藤からの説教と言う名の追求の手は続く。

 

 正直、旧体制での生徒の失踪騒ぎや、校内の数多の問題の情報を大々的に公開した今のアカデミアは原作程の余裕や寛容さはない。普通なら廃校になっていても、おかしくない次元なのだから。

 

「己の行動の一つ一つがアカデミアの全生徒の将来を左右する可能性すらある事実を重く受け止めるように」

 

「…………はい」

 

『ハァ~、KCの時から変わらず嫌味な奴だ』

 

 それゆえに口酸っぱく締めくくった佐藤を前に、十代は申し訳なさげに反省の姿勢を見せるが、実質の部外者なユベルからすれば納得いかない様子の中、話題を此度の要件に戻せば――

 

「では、話を戻します。本来であれば、ブルー1年生のあなた方は、ブルー2年生との合同の形での学園祭参加になりますが――今年は優秀な生徒が増えました」

 

「いや~、それ程でも……って、2年の先輩と合同?」

 

「ですので、新体制初の『ブルー1年単独』での学園祭参加を認める決定となります」

 

 普段は手厳しい佐藤からの「優秀」との評価に照れ混じりに頭をかく十代の疑問の口をふさぐように、佐藤は端的に締めくくる。

 

「限られた人数ゆえ行える範囲は限られますが、節度ある行動を願います――以上です。質問があれば応対しますが、基本キミたちで議論するように」

 

 やがて、教壇を降り、脇に退いて座した佐藤を余所に、一室に痛いくらいの沈黙が広がっていく。

 

 そうして、どれだけの時間が経ったか定かではないが――

 

「お、おう? ……始めて良いのか?」

 

『良いんじゃないかな。「生徒の自主性に任せる」って話だろ?』

 

 何もせずにジッとしていられる性分ではない十代が思わず、そう言葉を零したことを思えばあまり時間は経っていないのかもしれない。

 

「――では、僭越ながら私、原 麗華が進行役を担当させて貰います!!」

 

 しかし、口火が切られたゆえか先の沈黙を取り戻すように委員長気質の原 麗華が教壇に上がり、「学園祭」と板書しつつ司会進行役を名乗りでた姿に、十代も乗り遅れる訳にはいかぬと己の希望を述べるが――

 

「あっ! はい! はーい! 俺、劇とかやりたい! ヒーローショーみたいなの!」

 

「遊城くん! 希望は後で募りますので、まずは私の説明を聞いた上で現状の把握を優先してください!」

 

 そうして、「もうテンション上げて大丈夫」な空気に十代が生来の明るさを出していく中、原 麗華が「注意点」との板書と共に先程、佐藤が言った「新体制初」における側面を纏めていく。

 

 その説明にオベリスク・ブルー1年生の面々がそれぞれ意見を述べていく中、その辺りの小難しい話題へ頭上に「?」マークを浮かべる十代へ三沢が助け船を出した。

 

「劇か……難しいだろうな」

 

「えっ、そうなのか?」

 

『何か知ってるのかい、三沢?』

 

「裏方にどうしても人数が必要だからな。簡易的なものなら出来なくはないだろうが……」

 

「相変わらず物を知らんな、貴様は――各々の分野を志望する先輩方が来賓にアピールする場でもある。そんな中でチンケなものでも出してみろ。アカデミアの看板に泥を塗ることになるぞ」

 

 そう、十代が提案したヒーローショーなどは意外と人手がいる。更には、スタッフを担当する生徒も「学園祭を見て回る時間は欲しい」以上、思いのほか求められる人数は少なくない。

 

 それに万丈目が付け加えたように、アカデミアは「プロデュエリスト」を目指す者「以外」も多々存在する。それは「カードデザイナー」であったり、「ゲームデザイナー」であったりと様々だ。

 

 そういった「普段のデュエルでは自己アピールし難い面々」にとって、この学園祭は願ってもない場である以上、熱の入りようは十代とは別の意味で猛々しい。

 

 三沢が言った「簡易的なもの」では最悪の意味で目立つだろう。

 

「兄さんの話じゃ、新体制が始まったばかりのオベリスク・ブルー1年は、数人しかいなかったらしいわ」

 

 前年度は明日香の言った問題から、「2、3人でアカデミアのブランドに恥じないレベルの学園祭の出し物してね!」が余りにも酷であった現実ゆえに、「1年生は2年生と合同」にせざるを得なかったくらいである。

 

「今ですら、辛うじて二桁いる程度だからな……中々、責任重大だぞ」

 

「俺たちが失敗した場合、今後の1年ブルー生徒が『2年合同で固定』――なんて話にもなりかねないしな」

 

 とはいえ、万丈目と三沢が頭を悩ませるように、幾らオベリスク・ブルー1年が増えたと言っても「十人ちょっと」では人的余裕は殆どない。出来る範囲は限られる。

 

 幾ら佐藤の発言から「試験的な運用」とのことが示唆されていても、手を抜いていい理由にはなりえない以上、一同は脇に退いて座り、未だに沈黙を守る佐藤をチラとみて「あーでもない、こーでもない」と意見を交わすが――

 

『十代、人手が足りないならラー・イエローから借りたらどうだい? 人数が多いんだ。何人かいなくなっても大した問題じゃないだろう?』

 

「でもさ! 折角のお祭りなんだし、俺たち含めて『みんな』が楽しめた方が良いじゃん!」

 

『…………キミが、そう言うなら無理強いはしないよ』

 

 そんな中で、ユベルの「人手が足りないなら別から無理矢理に引っ張ってくれば良い」との提案を十代は小さく横に首を振って「否」を返しつつ、眉間にしわを寄せて悩まし気な三沢たちに己の主張を披露する。

 

 確かに三沢たちが語ったような問題があるのは十代も理解したが、学園祭の主役は生徒たちである以上、自分たちが楽しめないのでは本末転倒である。

 

「その通りです、遊城くん!!」

 

「うぉっ!?」

 

 だが、「楽しむこと」を何より重要視する十代の声に、急に割り込んできた原 麗華の気合の入った声に十代がひっくり返りそうになる中、原 麗華は教壇にて拳を握り続ける。

 

『説明、終わったみたいだね』

 

「私たちはオベリスク・ブルー1年の最初の一歩を踏み出す機会に恵まれました! ならば、今こそ、未来のアカデミア生徒の良き前例となるべきではないでしょうか!!」

 

「張り切ってるわね、麗華」

 

「……お祭り……」

 

 そんなこんなで、やる気に満ちた原 麗華の音頭を取る姿に周囲の熱も引っ張られる中、雪乃とレインもまたその熱気にあてられていく。

 

 

 果たして、その熱が生み出すのは一体どんな魔物(出し物)になるのやら。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなお祭り騒ぎの気配を感じてか、授業終了のチャイムが鳴るオシリス・レッドの教室にてジュンコは隠し切れない程の楽しみな様子で両腕を頭上に挙げて伸びをしながら未来へ心躍らせる。

 

「学園祭かー、楽しみねー!」

 

「吹雪様と偶然お会いできるかもしれませんわ~」

 

 そう、学園祭の間は寮の隔たりが一部解除される。その為、彼女らがファンであるフブキングこと吹雪に出会えるチャンスは低くはない――というか、3年のオベリスク・ブルーの出し物に足を運べば、ほぼ確実に出会えるだろう。

 

 それゆえに、ジュンコたちは学園祭の日を今か今かと楽しみにしていた。

 

「何を言っているんですか? 当日のオシリス・レッドは通常授業ですよ?」

 

「なん……ですって……!?」

 

 だが、生徒からの質問に答え終えた響から無情な現実が突き付けられた。

 

「響先生! 後生ですから! ちょっとだけでも許してください!」

 

「お願い致しますわ! これが最後のチャンスでしてよ!」

 

「恨むのなら過去の自分たちを恨みなさい」

 

「正論……!」

 

 しかし、諦めきれぬジュンコとももえが祈るように縋るも返ってくるのは圧倒的な正論。

 

 変な意地を張らずに普通に授業を受けて頑張っていれば、余程のことでもない限りラー・イエローには上がれる程度の実力は最低限ついていた筈なのだ。

 

 とはいえ、正論で誰もが納得できるのなら世の中はとっくの昔に平和である。ゆえに、ももえは禁断の方法を画策。

 

「こ、こうなったら、その日だけは授業をサボるしかありませんわ! これだけは譲れませんの!」

 

「サボるのは構いませんが、警備の邪魔にならないように寮で待機していてくださいね。倫理委員会に保護されて、冷たい床で1日過ごすなんて嫌でしょう?」

 

 しかし、その作戦は響の忠言により即座にとん挫した。アカデミアの治安維持を務める面々にガチられては、一般人であるももえたちに勝ち目はない。

 

「徹底し過ぎですわ!? わたくしたちが何をしましたの!?」

 

「今の体制では基本的にイベントごとはオープンにしていますから、レッド生徒に余計な負荷を与えない為です。キツいですよ――『落ちこぼれ』とのレッテルが貼られた視線は」

 

 とはいえ、これだけ徹底するのにも訳がある。

 

 現体制のアカデミアでは、学内の情報をオープンにしている以上、返ってくる声は前体制の比ではないのだ。

 

 良い声ばかりならば気にする必要はないのだろうが、悪しきに罵る声がゼロな訳がないだろう。

 

 軽い気持ちで送られる誹謗中傷の言葉に心を傷つけない訳がない。ただでさえ彼ら生徒は、ナイーブな年齢なのだ。リスクは可能な限り排したいのも無理からぬ話。

 

「うっ……でも、私たちだって、ちょっとは成長してますし――」

 

「安易に貼られるレッテルに詳細な事実関係なんて加味されませんよ」

 

 それに加えて、幾らジュンコが言うように彼女らも少しずつ進歩していたとしても、その情報を受け手が正確に把握してくれる保障など何処にもない。

 

 ゆえに「過保護」と言われようとも、これ以上の失態を許されない立場であるアカデミアとしては徹底せざるを得ないのだ。

 

 

 そうして、ジュンコとももえが机にうつ伏せになりつつ絶望の様相でさめざめと泣く中、教科書の類を片付けていた翔は、オベリスク・ブルーの寮がある方向を見ながら肩を落とす。

 

――あー、学園祭行きたかったっスねー……でも、お兄さん何するんだろう? 店番してる姿なんて想像できないっス。

 

 それは、翔の兄である亮に向けた――アカデミアの最高位にいる兄と、最低位にいる己との差への絶望混じりの情景。

 

 だが、そんな優秀な兄である亮が学園祭で店番している姿を想像し、そのあまりの似合わなさに思わず内心で吹き出しそうになる翔だったが、そんな己へ背後から声がかかる。

 

「なぁ、丸藤」

 

「……? なんっスか、慕谷くん」

 

「学園祭の日の1日だけ授業休んで寮で中継見ながら祭り気分を味わわないか? レッドの男連中みんなで集まってパーっと騒ごうぜ」

 

その声の主である万丈目の元取り巻きの1人こと慕谷からの遊びの誘いを受ければ――

 

「おっ、それ良いっすね。僕、お菓子買い貯めしとくっす!」

 

 これを翔は乗り気で快諾。昔の彼ならば考えられない選択だろう。

 

 やがて、慕谷たちと帰路を共にしながら翔は、未来の宴の計画を話題に花を咲かせる。

 

 

 そんな彼らの姿は、祭りの形が一つではないことを感じさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなお祭り気分なアカデミアに引っ張られた訳ではないだろうが、「凄い発見をした」との遊戯の知らせを受けて呼び出された神崎は軽い足取りで夜更けに遺跡の地下深くへ向かっていた。

 

 それはシンプルに、詳細な情報を得られれば「将来的な危機の予測」を立てやすくなった朗報ゆえの前向きの気分でもあり、

 

 また、「漫画版5D’sでは語られなかった原作の部分」を知ることが出来るファン冥利につきるミーハーな気分でもあったりもするが、そこはあまり問題ではない。

 

 今、重要なのはいい歳してウキウキな気分で神崎は調査依頼をしていた遺跡を訪れたことだけだ。

 

「神崎さん、こっちです」

 

「これは、武藤くん――凄い大発見をなされたと聞きましたが、その場に立ち会わせて頂けるなんて光栄です」

 

 そうして、夜も遅いゆえに小さな照明の光が辛うじて周囲を照らす暗がりの遺跡の地下部分にて、神崎は一先ず遊戯に礼を述べるが――

 

 

「おや、皆さんはどうなされたのですか?」

 

「教授たちには席を外して貰ってます」

 

 他の面々にも挨拶しようとした神崎は、周囲に遊戯以外の姿がないことに遅ればせながら気づいた素振りを見せれば遊戯より「人払いした」との発言を受け、若干気を引き締める。

 

 思ったより真面目な話なのかもしれない、と。

 

「……? そうですか」

 

「これを見て欲しかったんです」

 

 そうして、照明を掲げた遊戯に促されるまま照らされた遺跡の壁画を見上げれば、そこにあるのは巨大なドラゴンの周りを、数体のドラゴンたちが争うように取り巻く姿が描かれている。

 

――陰陽祭の伝承……か?

 

 やがて、その壁画の様相を原作知識からあたりをつける神崎へ、遊戯が重い口を開いた。

 

「シンクロ召喚、未来の召喚法」

 

“これが俺たちの時代にある召喚法――シンクロ召喚です”

 

 そんな遊戯の脳裏に響くのは「未来から来た」と語った未来のデュエリスト(遊星)の姿。

 

「…………これって、あの時のドラゴンですよね?」

 

“そんなドラゴンは知らない! 本来の歴史には存在しなかった!”

 

 今の遊戯の脳を揺さぶるのは「滅びの未来から来た」と語った未来のデュエリスト(パラドックス)の姿。

 

「確かに、よく似ていますね」

 

 そして、今の遊戯が見やるのは「限定的な未来の知識を持つ」と語った現代の人間。

 

 だが、その人間である神崎の煙に巻くような所作に遊戯は声を荒げた。

 

「とぼけないでください! 未来を断片的に知っている貴方は、ずっと前から知っていたんでしょう! だから、ボクたちに調査を依頼した!」

 

“私は歴史を観測し、最善の歴史を探っていたが――その中で歴史を歪めている存在を見つけた”

 

 なにせ、()()()情報を明かしておいて今更、隠し立てされるなど許されはしない。遊戯の心にパラドックスの言葉が重くのしかかる。

 

「何か問題でも? 武藤くんには私が断片的な未来の情報を有している点は既に明かしたじゃないですか」

 

――遺跡の存在は知っていても、発見自体はイレギュラーなんだけどな……

 

「なら、答えてください!」

 

 だが、それでも不思議そうな様子で詳細を語ろうとしない神崎へ、遊戯は強い言葉で問いかける。

 

「未来の遊星くんに何をさせるつもりなんですか!!」

 

 今の遊戯には返答次第では敵対の覚悟すら伺えた。

 

 

 しかし、とうの神崎は只々疑問である。遊戯の怒りの根源が見えない。

 

――彼には“世界を救って貰う”訳だが、そういう答えを求めている様子ではない……よな?

 

「……どうにも話が噛み合っていないように思えます。あの時の不動さんの発言を鑑みるに、彼のご両親は高名な方なのでしょう?」

 

 ゆえに、「情報不足」と判断した神崎は、パラドックスの一件で遊戯が把握した範囲の情報を確認するように羅列していく。

 

「今の時代に不動さんのご両親の存在が把握できていない以上、不動さんがいた時代は最低でも今から30年程度のスパンがある筈――今の私の年齢的に、どうこう出来るとは思えないのですが」

 

 とはいえ、神崎が語ってみせたように「現実的な視点に縛られている」限り、神崎は遊星に手出しできない状況である。

 

 神崎の脳裏に「まさか冥界の王を代替わりしたゆえの寿命の崩壊を知られた?」との懸念が浮かぶが、それにしては遊戯の対応が妙に半端のようにも思えた。

 

 だが、遊戯はその辺りを疑ってはいない。

 

“足掻き続けた先に父さんと母さんが、みんなが掴んだその想いをそんな言葉で否定はさせない!! 人には未来を変える力があるんだ!!”

 

 このパラドックスとの衝突の際の遊星の発言を鑑みれば、神崎が遊星に直接関与しているとは考えにくいのは明白だ。ゆえに、介入のタイミングは――

 

「だとしても、遊星くんの両親が若い頃なら――――………………?」

 

 と、続けようとした遊戯は、遅ればせながらに状況の不可解さに気づく。遺跡の情報を問題にしている今、神崎が年代ばかり気にする現実はあまりにも妙だった。

 

――いや、どうして……さっきから遺跡についての話題が出ないんだ? ボクたちが遺跡の情報を手にした以上、隠す意味はない筈……

 

 神崎が情報を隠したがっていることは、過去の一件より遊戯も理解している。しかし、「遺跡を調査させた」以上、それは「情報を開示した」と同義である筈だ。

 

 それは、つまり「遺跡での情報を踏まえた議論がしたかった」との結論が下せる筈であろう。

 

「先程の発言から察するに、武藤くんは未来の不動さんを心配している訳ですよね? この遺跡に不動さんへ危険を及ぼす代物でもあったのですか?」

 

「いや、だから――」

 

 だというのに、神崎は未だに「遺跡の情報」を欠片も開示しない不可解な現実。噛み合わない会話。

 

――まさか……知らない?

 

 しかし此処で、遊戯は己が神崎を色眼鏡で見ていた事実に思い至る。

 

 幾ら「未来の情報は酷く断片的」との話を聞いていても、「自分が知っている程度のことなど神崎は全て知っている」と頭から決めつけていた。

 

 だが、神崎の原作知識は意外と穴が多い。「何月何日の何時何分に~」などの詳細な情報は殆どないのだ。知識が「記録」ではなく「物語」である以上、当たり前の話である。

 

 

 ある種の遊戯の自己評価の低さが招いた食い違い。

 

 

――そうか、教授を頼った以上、神崎さんは遺跡の碑文を完全に解読できる訳じゃない……

 

 ゆえに、現状のズレを遊戯はかなりの速度で凡その形、把握し始める。

 

 そう、神崎は遺跡の碑文を「読む」ことは出来ても、「解読」できる訳ではない。

 

 一つ例題を上げれば、『ラーの翼神竜』のヒエラティックテキストに記された――

 

“神は三体の生贄を束ねてその力を得る ただし神を従えし者 古の呪文を天に捧げよ”

 

 との内容を「読む」ことは出来ても、それが「どんな意味(効果)を持つのか?」を「解読」出来ないのだ。

 

 

 とはいえ、今回の双方の認識のズレの一番の大きな要因は、「この遺跡こと《閃光竜スターダスト》が遊星に危害を及ぼす筈がない」との原作知識からなる神崎の先入観が主だが。

 

 平たく言えば、神崎の認識では「遊戯が此処まで取り乱すレベルの危機」が遊星に訪れることはない筈である。ゆえに、話が噛み合わない。認識が食い違う。情報に齟齬が生まれる。

 

「武藤くん?」

 

 そうして、思考の海に沈み黙して語らぬ遊戯へ心配するように声をかける神崎だが、相も変わらず遊戯からの返答はない。

 

“初めまして、神崎さん――貴方の話は『父から』聞いています”

 

――遊星くんが、こう言っていたけど、ひょっとして遊星くん自身は神崎さんから伝言の類すら受け取ったことがない? なら、どうして……

 

 それもその筈、今の遊戯は大きな疑問に差し当たっていた。いや、矛盾と言い換えても良い。

 

 詳細な未来の情報を有していたパラドックスが「知らない」と断言した以上、《閃光竜スターダスト》の件に神崎が関わっている可能性は非常に高い。

 

 だというのに、《閃光竜スターダスト》に必要不可欠な情報を神崎が持っていない――と思しき反応を見せる。

 

 流石に「今の神崎の反応」を「演技」とは遊戯も思っていない。そもそも「演技」する「必要すらない」話なのだから。

 

 ゆえに、相手の反応を確認しようと思考の海から顔を上げた遊戯の瞳に映るのは、心配気な様子で己を見やる神崎の姿。

 

「落ち着きましたか? 問題があったのならば話し合いましょう。場合によっては私も未来の情報を開示する必要があるかもしれません」

 

「えっ、いや、その……」

 

――……あれ? これって……

 

 やがて、神崎があれ程までに避けていた「未来の情報の開示」が提案される程に心配されていた現実に、遊戯はようやく違和感の正体にたどり着く。

 

 

 その答えはあまりに簡単なことだった。

 

 

――まさか遊星くんが《閃光竜スターダスト》を手にしたのは、ボクが神崎さんに伝えた情報が原因……?

 

 本来の歴史において、遊戯が神崎に何を告げたのかは分からない。

 

 パラドックスの「歴史は想定以上の歪みを見せている」との発言から「本来の歴史の自分(遊戯)」が「神崎に何処まで踏み込んだ」のかも分からない。

 

 何も知らず、疑わず、無根拠に信頼して何もかも伝えてしまったかすら分からない。

 

 

 ただ、唯一分かっていることもある。

 

 

 それは今、神崎の未来の行く末を遊戯が握っている事実のみ。

 

 

 遊戯からの何気ない情報一つで神崎の行動は大きく変わるだろう。

 

 

 それを自覚し始めた瞬間に己に宿る「全能感」と「忌避感」――己が世界を動かしているような得難い感覚。

 

 (遊戯)の発言によって、相手(神崎)の未来が決定しかねない そんな他人の人生をオモチャのように手にした感覚。

 

――なんだろう、この感覚。凄く気持ち悪い……

 

 そうして、何処か息苦しさを覚えた遊戯は内から生じる気分の悪さを誤魔化すように、己の口を手で塞ぐ。

 

 それは「思わず情報を明かさないように」との無意識の所作だったが、遊戯の様子を「考え込んでいる」と誤認した神崎は場を仕切りなおすようにパンと手を叩いた。

 

「考えが纏まらないようですね。では、問題を一つずつ定義していきましょう」

 

 やがて、神崎は指を一つずつ伸ばして遊戯が答え易くなるように進行する。

 

「1つ、この遺跡に何らかの危険要素が発見された」

 

 遊戯の反応を見るに、それが深刻なものであることが神崎からも伺える。

 

「2つ、それは未来にて影響を与える時限式タイプの代物。詳細な時期は、不動さんがいる時代」

 

 そして、「遊星くんに何をさせるつもりなんですか!!」との発言を鑑みれば、「遊星でなければならない」確信が遊戯にあることは明白。

 

「3つ、その問題に現在の私が介入することで、状況を悪化させかねない可能性が高い」

 

 更に、糾弾するような遊戯の様子を見るに「非人道的な行い」が必要であることが察せられ、神崎が「非人道的であっても実行する」程の「何か」を遊戯は知った。

 

「今の私に定義できるのは、このくらいです」

 

 そうして、三本指を立てて締めくくった神崎だが、とうの本人としては今でもサッパリ現状を把握できていない。

 

「焦らずとも構いませんよ。ゆっくり深呼吸してから考えてください」

 

 そう優しげに提案する神崎だが、本音としては是が非でも説明して貰いたいが、同時にこれ以上、遊戯の不興を買う真似は絶対に避けたい。

 

「武藤くんが『話したくないこと』は『話さなくて』構いません」

 

 そうして、待ちの姿勢になった神崎を前に、遊戯は沈黙したままである。

 

 

 今の遊戯は、言葉が出てこなかった。

 

 パラドックスとのデュエルの際に《閃光竜スターダスト》が存在していなければ、どうなる?

 

 パラドックスとのデュエルの際に不動 遊星が駆けつけなくなれば、どうなる?

 

 パラドックスとのデュエルの際に遊戯たちが負ければ、どうなる?

 

 

 きっと、目の前にいる人が、あっけなく死んでしまうのだろう。

 

 

 これからの遊戯の発言一つで未来は容易く変わる。変わってしまう。

 

 

 武藤 遊戯には――彼には、それだけの影響力がある。

 

 

 滅びの未来なんてものを知らなければ、何も悩まず答えられていた筈の言葉が出てこない。

 

 良くも悪くも未来を変えられてしまうことを自覚しなければ、背負う必要がなかった重責が、その肩にのしかかる。

 

 

 

「武藤くんは、()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 さぁ、デュエルキング――今度はキミが選ぶ番だ。

 

 

 

 (未来)を左右する選択を。

 

 

 

 




知らない頃には戻れない。





Q:なんで遊戯はガチギレしてたの?

A:未来で遊星が使っていたカードが「人死にが出るレベルで危険な闇のカード」であったことが発覚し、神崎が関わっている可能性が極めて高い状況証拠が凄い出てきた。



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