マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
カイバーマン「やってみせろよ、神楽坂!」

遊矢「何とでもなるはずだ!!」

ユウラン「(A BF-)ガンダ〇(のオニマル)だと!?」

~♪




第266話 理想 と 現実

 

 

 神楽坂やブラマジガールを含め、なんかよくわからない者たちも色々乱入しまくった十代たちの学園祭は、なんやかんやで盛り上がったので結果的に大成功となった。他は――

 

 デュエル後に胴上げされていた神楽坂が1年ブルーの出し物に半強制的に組み込まれたり、

 

 十代とレインが「反省中」の張り紙と共に自由時間を大きく削減されたり、

 

 フブキングの提案によりミスコンに乱入するブラマジガールや、

 

 そんな彼女を迎えに来た保護者(師匠)の乱入――等々、話題には事欠かない。

 

 ゆえに、新体制における情報のオープンさによってアカデミアの知名度アップに大きく貢献したと言えるだろう。

 

 

 

 そうした楽しいお祭りが終わりをつげ、日々が過ぎたことで日常が戻る中、通常授業も終えた十代たちは何時もの3人で対戦相手探しをすべく購買部へと向かっていた。

 

「いやー、凄かったよなー! 神楽坂のデッキ! ホントに遊戯さんみたいだったぜ!」

 

「ふん、まだ粗が多かったがな」

 

「だが、あのデュエルの後、《ブラック・マジシャン・ガール》のカードをトレードして貰ったんだ――神楽坂なら、デッキをより洗練させていくだろう」

 

 そんな彼らの話題は学園祭の出来事――未だにお祭りテンションの十代へ呆れ気味に応対する万丈目を余所に、三沢は学園祭以降にグンと増えた「神楽坂へのカード提供の協力者」を思い出し、学友の躍進に胸を高鳴らせるが――

 

「あの女も、よく4枚目を持っていたものだ」

 

「じゃあ折角だし、また今度みんなでデュエルしに行こうぜ!」

 

「悪いが断る。貴様らだけで行け」

 

「えぇー、一緒に行こうぜ? なっ?」

 

「無理強いはよくないぞ、十代。それに今は順番待ちが長いだろうからな……」

 

 十代の提案に難色を示した万丈目の姿に三沢はフォローに回る。

 

 学園祭が終わった後に、約束だった「神楽坂のコピーデッキのデュエル」を行った十代たちだが、「もう1戦」と気軽にはいかぬ事情があった。

 

 それは学園祭の一件で有名になったこともあり、そして当然ながら当人も身一つ。

 

 それに加えて、他ならぬ神楽坂がデッキを新しいカードの提供の度に組みなおしていることも相まって、順番待ちはかなり長い。現在、整理券のナンバーが凄いことになっている。

 

 しかし、万丈目はそんな三沢の言に向けて首を横に振った。

 

「勘違いするな。値千金の経験となるなら幾らでも時間はかける――今ではないという話だけだ」

 

 それは一見すれば、「時間をかけるに値しない」と突き放すような言葉にも思えるが――

 

『ハァ、黙って聞いてれば回りくどい……つまり「神楽坂がオベリスク・ブルーに上がってから」って話だろ? 素直に認められないのか、こいつは』

 

「へへっ、そうだな! アイツならもっと凄いデュエリストになってくるぜ!」

 

「そうだな。あの学園祭のデュエルが神楽坂に成功体験となって良い方向に作用してくれる筈だ」

 

『まぁ、「他人のデッキを自在に扱う」なんて、ある程度の実力がないと出来ないだろうからね』

 

 辟易したような表情のユベルから落ちた言葉に十代は、神楽坂の躍進を信じて三沢たちの言葉を背に一歩先に駆け出した。

 

 

 

「おっ、小原と大原と――誰だ? 見ない顔だけど……」

 

 先に壁にかけられたボードの前で見慣れたラー・イエローの制服を3つ程発見し、足を止める十代。

 

「ん? なんだ、遊城か」

 

「が、学園祭ぶりだね、遊城くん」

 

「――ま、万丈目さん!?」

 

 そんな十代に軽く挨拶を返す小原と大原を余所に、3人目の見知らぬイエロー生徒が十代の背後を視界に収めた瞬間に、その肩を大きく跳ねさせた。

 

「えっ? 万丈目の知り合い?」

 

「『取巻 太陽』、中等部時代の友人だ。お前が知らんと言うことは、オシリス・レッドに落ちていたんだろう」

 

 だが、その3人目のイエロー生徒の正体は万丈目から問題のありそうな言い方を以て明かされる。

 

 そのあんまりな紹介の仕方に、大原は大きな図体を縮こませ、引け腰になりながらも話題の転換を図った。

 

「み、三沢くんたちが考えてくれた『新しいイエロー寮の決まり事』でな、仲良くなったんだよ」

 

「大原とデッキタイプが似ていたのが良い話題になったんだ」

 

「……なんの話だ?」

 

 しかし、小原の注釈も虚しく当の万丈目には届いていない模様。話題が話題の(ブルーに関係ない話の)為、無理もない。

 

 ゆえに三沢が手短に説明するが――

 

「ああ、万丈目は知らなかったな。イエロー寮では『デュエル後の一言感想戦をする決まり』を作ったんだ。最低でも『一言』喋る必要があるから、話題の切っ掛けになる」

 

「……? それに何の意味がある? そんなもの決まり事にするまでもないだろう」

 

「まぁ、物怖じしない万丈目には縁遠い話かもしれないが、『決まりだから』と後押しした方が話しやすいこともあるんだ」

 

「つまり、こいつが『そう』な訳か。気の小さい奴だ」

 

 残念ながら大原に視線を向ける万丈目には、いまいちピンと来ていない様子。そして、そんな格上(ブルー生)の視線にまたまた委縮する大原。

 

「うっ……ご、ごめん」

 

「お前みたいな奴には一生分かんないだろうさ」

 

「まぁ、良いじゃん、小原! アカデミアにだって色んな奴がいるんだし! えっーと、『取巻』だったよな? 俺、遊城 十代! よろしくな!」

 

「……あ、ああ、よろしく頼む」

 

 だが、ピクリと瞳を鋭くした小原の肩を軽く叩いた十代は、挨拶代わりに取巻と友好の握手をしつつブンブン相手の腕ごと振っていた。

 

 やがて、十代に振り回され気味だった取巻が相手のエネルギッシュさに翻弄される中――

 

「取巻、慕谷はどうした? 一緒じゃないのか?」

 

「い、いえ……そ、その、アイツはまだオシリス・レッドでして……」

 

 かつての兄貴分こと万丈目から痛いところを突かれ、取巻はしどろもどろにならざるを得ない。

 

 なにせ、過去の自分が散々馬鹿にしてきたレベルで未だ燻っているとなれば、かつての関係性など吹いて飛ぶことだろう。

 

「なら、イエローに上がった時に伝えておけ。『二人でさっさとブルーに上がって来い』とな」

 

「ま、万丈目さん……」

 

 しかし、万丈目のぶっきら棒な応援を前に、取巻の口から思わず縋るように言葉が零れるも、それ以上は言う気はないのか「フン」と鼻を鳴らすだけの万丈目へ、取巻なりの決意を告げるが――

 

『こっちは、旧交を温めるので忙しいみたいだね』

 

 その辺に興味のないユベルは、十代の意識を遠回しに小原たちへ向けさせた。

 

「それで、小原たちは何してたんだ?」

 

「見れば分かるだろ」

 

「これは……大会へのエントリーか」

 

「えっ、また交流戦するのか!?」

 

 そうして、話題は小原がにらめっこする壁にかけられたボードに見える紙こと、三沢いわく「大会のエントリー表」へと移れば、大原がおずおずと詳細を語る。

 

「が、学外の大会だよ」

 

「アカデミアの外の? なんで?」

 

「アカデミアは『陸の孤島』状態だから、学校の帰りに少し足を延ばして大会参加――って訳にもいかないだろ」

 

「き、希望者を纏めて送り迎えし、してくれるんだ」

 

「アカデミアにも慣れて来たからな。そろそろ、動き時なんだよ」

 

「へぇー、なら俺も――って、『イエロー生徒用』?」

 

 そうして大原と小原の説明に注釈を入れた三沢のお陰も相まって、手早く納得できた十代は紙面を見やるが、新たな疑問のタネに衝突したことで、呆れた様子の万丈目の声が背中から響いた。

 

「相変わらずものを知らんな、貴様は。学園では色分けが鉄則だろうが」

 

『なんだ、もう終わったのかい? もっと、そいつ(取巻)と話していて良いんだよ?』

 

「十代、此方の大会ならエントリー可能だぞ。必要最低限の定員もクリアされているから確実だろう」

 

『…………「確実」だなんて、なんだか妙な言い方だね、十代』

 

 そんな万丈目の十代をバカにするような言い方に噛みつくユベルだが、三沢からのアドバイスに十代第一とばかりに切り上げた。

 

「おっ、マジで!? ……ん? ひょっとして確実じゃない場合もあるのか?」

 

「当たり前だろ。そこいらの生徒1人の為にアカデミアが動くわけない――特に、僕らみたいなイエローなら……な」

 

 やがて、小原の自虐めいた発言を経て、十代たちは学外の大会を吟味し始める。

 

 デュエルアカデミアは島という世間とは隔絶した環境ゆえに、こういった「外」での経験は自発的にアレコレ手続きせねばならないのは遊びたい盛りの学生である彼らには少々難儀なところであろう。

 

 

 そうして、大会の申し込み用紙を入手しつつ、三沢に「記入+提出」法のレクチャーを受けていた十代に、遠方より新たな来訪者から声がかかった。

 

「ああ、此処にいましたか遊城くん、丁度いい」

 

「おっ、佐藤先生! なにかあったのか――ですか!」

 

『敬語は未だに慣れないね……』

 

「少し校長室まで来ていただけませんか?」

 

「は、はい!」

 

 その相手――教員の中でも厳格な方の佐藤の姿に慌てて言葉を正しつつ、出来の悪いロボットのように背筋をピンと伸ばしてカクカク対応する十代は、思わず小声で心当たりを振り返るも――

 

「(呼び出しかぁ~、俺なにかしちゃったかな?)」

 

「ふん、どうせ筆記の成績不振だろうよ」

 

『お前には聞いてないんだ。分かったら、口を閉じてろ』

 

「万丈目くん、キミもですよ」

 

「ッ!? 俺もですか!?」

 

『ハン、きっと成績不振だろうね』

 

 鼻でドナドナを歌わんばかりの万丈目と共に、踵を返して先導する佐藤の背を追いかける前に、小原たちへと軽く別れの挨拶を告げる。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくるぜ、三沢! 小原たちもまたな!」

 

「先に寮に戻ってくれて構わんぞ」

 

 そんな彼らを三沢は、いつもと変わらぬ日常の一幕として小原たちと共に見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 そうして校長室にて、十代と万丈目――と、別口で呼ばれていた明日香の姿が並ぶ中、彼らと向かい合う形で立つコブラは相も変らぬ圧の強い様相で口火を切る。

 

「よく集まってくれた。しかし、悪いが下らん挨拶を並べる気はない――早速、本題に入らせて貰う」

 

――やっぱコブラ校長は苦手だぜ。

 

『確かに――どう見ても、堅気の人間じゃないだろ』

 

――ユベル、そこまでは言ってないぞ。

 

「キミたちも知っての通り、フォース制定時からその人数は増えていない。このまま行けば卒業シーズンを終え、その後のフォース制度は形骸化していくことだろう」

 

 やがて十代とユベルが内心で失礼なことを考えている間にコブラが語ったのは「フォース」の話題。新体制に際して制定された制度だが、持て余している感は否めない。

 

「ゆえに、この機に新しい試みを行っておきたいのだ」

 

「新しい試み……ですか?」

 

「まさか――」

 

「ああ、キミたちの想像通り、見込ある面々への荒療治を行いたいと考えている。さしずめ『フォース候補生』とでも言ったところだ」

 

 そうして、話題へ疑問を見せる明日香を余所に、万丈目が察した答えをコブラは示して見せた。

 

 それは亮からの要望を受けた背景もあるにはあるが、実際問題としてアカデミア側も何らかのアクションは予定していた事柄である。

 

「既に2、3年生のめぼしい生徒たちにも通達は済んでいる」

 

 ゆえに、コブラは既に大局が動いている旨を明かしつつ続けた。

 

「しかし、これは強制ではない。1年生ともなれば力の差は歴然――打ちのめされ、立ち上がれなくなる可能性もある」

 

 とはいえ、最終的な意思決定は十代たちにある。散々階級ごとに分けた扱いをしてきたのはアカデミア側なのだ。急にそのハシゴを外されるのは厳しかろう。

 

「ノース校との交流戦で、フォース生の実力は身に染みて理解できている筈だ。それに加え、此方の判断で打ち切ることも念頭において欲しい」

 

「亮や兄さんたちと同じステージに……」

 

「だが、今すぐに決断を下す必要はない。撤退もまた勇気ある決断だ」

 

 そうして、明日香の独白の最中に、コブラは区切りをつけるように十代たちを見やり問うた。

 

「概要は以上になる。此処までで何か質問はあるかね?」

 

「構いませんか?」

 

「なにかね、万丈目くん」

 

 さすれば、早速とばかりに挙手した万丈目から――

 

「候補生は、そのままフォース入りすることも可能なのですか?」

 

――この好機、兄さんたちの為にも必ずものにせねば……!

 

「可能か不可能かで問えば、『可能』だ。だが、今の今までフォース生徒が一切増えていない現実を理解したまえ」

 

 投げかけられた当然の疑問へのコブラへの返答は些か辛辣なもの。フォースとデュエルすれば、その実力がフォースの適正レベルに上がるのなら誰も苦労はしない。

 

 なにせ、実際にフォースの1人である吹雪とデュエルした万丈目が、未だにフォース昇格どころか再挑戦すら許されていない以上、絵に描いた餅でしかないだろう。

 

「はい!」

 

「なにかね、遊城くん」

 

 そうして、はやる万丈目を一蹴したコブラだったが、この手の質問に普段は無頓着な十代の挙手に若干の興味を抱きつつ先を促した。

 

「三沢は? 三沢は呼ばなくて良いの――良いんでしょうか?」

 

「実に、くだらない質問だな」

 

 だが、その内容にコブラの興味は大きな失望へと変わる。

 

『まぁ、アイツの実力なら――』

 

「『此処にいない』――それこそが答えだ」

 

 何故なら、この場にいる誰もが分かり切っている内容――いや、今は「十代以外」との注釈をつけるべきか。

 

『……随分と手厳しいんだね』

 

「で、でもさ! 三沢、スッゲー強いし、頑張ってて――」

 

「お友達ゴッコを続けたいなら辞退したまえ」

 

「なんだよ、それ! そんな言い方しなくっても――」

 

 やがて、コブラが切って捨てようとした「分かり切っている話題」へ、いつまでも執着する十代だが、その先を続ける前にコブラは事の成り行きを黙して見守っていた明日香へと問うた。

 

「天上院くん、この学園の目的は何かね?」

 

 このデュエルアカデミアの存在意義を。

 

「……あらゆる第一線で通用するデュエルエリートを育成することです」

 

「その通りだ」

 

 そうして、申し訳なさゆえか十代から目を背けながら返答した明日香の発言に、満足気に頷き肯定したコブラは、十代に向きなおり今まで以上に厳しい口調で告げる。

 

「友情に足を取られて頂きに昇れぬのなら、即刻アカデミアから立ち去りたまえ。時間の無駄だ」

 

「……ッ!」

 

 それは十代の根幹の否定に等しい。

 

 楽しい「だけ」の、遊び気分のデュエルに浸りたいなら、デュエルアカデミアほどに不適格な場所はないだろう。

 

 この場は各々が抱いた夢を叶える為に足掻くための場なのだから。

 

『十代……』

 

 やがて、コブラから意思確認までのリミットなどを含めた細部の部分が告げられる中、うつむいた拳を握りしめる十代へ、ユベルは声をかけられないまま解散までの時を過ごすこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、言いようのない葛藤を胸の内に渦巻かせながら重い足取りで十代は万丈目と共にブルー寮へと帰路を進むが、購買近くのイートインコーナー代わりのデュエル場を通り過ぎる際に声をかけられる。

 

「戻ったか。その様子では、あまり良い話ではなかったのか?」

 

「三沢……待っててくれたのか?」

 

「ああ、少し心配だったからな」

 

「……そっか」

 

 時間潰しに読んでいた本をパタンと閉じて駆け寄った三沢の姿に十代が力のない返事を返せば、「悪い予感が当ったのか?」と三沢の表情も心配げだ。

 

 なにせ、学園祭で結果オーライだったとはいえ、問題を起こした件もある。ゆえに、初めて見る普段の元気が欠片も感じられない十代へ、三沢は当然のように協力の姿勢を見せるが――

 

「どうしたんだ、十代? なにか問題があったのか? 俺で良ければ力になるぞ?」

 

『三沢……』

 

「…………えーと……ハハ、筆記の結果で小言、言われちゃってさ」

 

 誰の目から見ても分かる嘘を吐いた十代の隣で万丈目は端的に状況を語った。

 

「三沢、()()()『は』デュエル実技をフォースの面々と行うことになった。候補生との話だそうだ」

 

「――万丈目!」

 

「いずれ分かることだ。誤魔化しても仕方あるまい」

 

「だからって――」

 

 その「お前は選ばれなかった」と無常に告げるような物言いに十代は思わず万丈目の胸倉を掴むが、対する万丈目は悪気すら見せずに、その腕を払って見せる。下手に隠し立てする方が無礼だと。

 

「なんだ、そうだったのか。やったじゃないか、十代! カイザーとのデュエルのチャンスだぞ!」

 

「………………なんでだよ」

 

「本当にどうしたんだ? 嬉しくないのか?」

 

 しかし、三沢は堪えた様子もなく十代の躍進を喜んで見せる。強敵とのデュエルに燃えていた十代にとって、まさに渡りに船の話だろう。

 

 とはいえ、先の万丈目の発言――いや、アカデミアがくだしたも同然の宣告など、気にすらしない友人(とも)の姿は十代には歪に映って仕方がない。

 

「――なんで、そんなに平然としてられるんだよ!」

 

「十代……?」

 

 ゆえに、十代は抱えていた苛立ちをぶちまけるように言葉を並べ立てる。

 

「おかしいだろ! 今、お前は先生たちに『いらない』って言われたんだぞ!! 三沢、ずっと頑張ってたのに……! 全部『無駄』だったって言われたようなもんじゃねぇか!!」

 

 入試はトップ通過し、入学後も1年筆記ナンバー1の座を一度も譲らず、

 

 入学して間もない2回目の試験で、直ぐにオベリスク・ブルーへ昇格。

 

 現状に甘んじず、将来を見据えて情報収集を徹底し、

 

 自身の問題点にも早急に向き合い、苦手な分野でも避けずに邁進し、

 

 日頃から勤勉で、更には適切な努力を常に探求・実践し続け、

 

 いつもデュエルに真摯に向き合っていたデュエリスト(親友)が――

 

 

 入試は突破できるレベルで投げ、定期試験の筆記は殆ど試験前から慌てて勉強を初める一夜漬け同然でギリギリ、

 

 三沢と同時期にオベリスク・ブルーに昇格した後は毎日、好きなように過ごし、

 

 興味のない分野は基本的なアカデミアの情報すら疎い有様で、

 

 問題があっても場当たり的な対応で済ませ、やりたくないことは最低限しか手を付けず、

 

 殆ど好きなことだけやっていただけのデュエリスト(自分)が――

 

「俺なんかより、ずっと頑張ってたお前じゃなくて…………なんで俺が選ばれてんだよ……」

 

『十代……』

 

 アカデミア生が目指す頂きに――その一端(候補生)とはいえ、辿り着けてしまった。

 

 デュエルアカデミアは、大して頑張っていない自分を選び、誰よりも頑張っていた親友を選ばなかった。

 

 学園側としても芽が出た方を気にかけるのは当然のことなのだが、十代はその残酷な現実に、思わず己に嫌悪感すら抱く。

 

 原作では「自分はオシリス・レッド(一番下の階級)だから」と低い自己評価で誤魔化せていた問題が、歴史が歪んだ影響ゆえか十代に突き付けられる。

 

 楽しくデュエル? そりゃぁ楽しいだろうさ。大した苦労もなく、少し手間をかけるだけで簡単に結果を残せるんだから。

 

 そりゃぁ()()()()()楽しいだろうさ。凡百共が感じる溺れた時のような結果の出ない息苦しさを知らずにいられるんだから。

 

――ようやく分かったか、十代。お前の言う「楽しく」なんて幻想でしかないということに。そう……幻想なんだ。望む道は力で勝ち取る他ない。

 

「喚くな馬鹿者、その辺りにし――」

 

 そうして、その背に乗った現実の重みへ初めて実感を伴った十代を、内心で冷たく見下ろす万丈目は時間帯ゆえにまばらな周囲がざわつき始める中、事態の収拾に回る。

 

 しかし、それより先んじて三沢が十代の肩に手を置きながら諭すように告げた。

 

「何を言うんだ、十代――お前だって頑張ってきたじゃないか。苦手な座学に四苦八苦して、カード効果の性質や特性を議論しあったこともあった。普段のデュエルだって同じだろう?」

 

 何故なら、三沢は知っている。

 

 十代は勢いばかりでデュエルしているように見えて、その実プレイミスは非常に少なく最善手を見極める目を持っていることを。

 

 それが三沢のような「事前(デュエル前)知識(学習)」からではなく「現場(デュエル中)での経験」によって成り立っているゆえに誤解されがちなだけだ。

 

 十代の学習姿勢への偏りは否定できないが、言ってしまえば努力を楽しむことが出来る稀有な人物なのだ。

 

 ゆえに、いつもデュエルのことを考えている(へ真摯に向き合っている)のは十代も同じである。

 

 だからこそ、そんな十代の奮闘を「怠惰」と切って捨てるなど他ならぬ十代自身であろうが、否定させるなど三沢は友人として許す訳にはいかない。

 

「そんなのお前も同じじゃんか……」

 

「かもしれないな。だが、そもそも頑張った分だけ報われる訳じゃないんだ」

 

 だが、それでも「結果の違い」という現実を前にした十代の覇気のない声には、三沢も肯定を返す他なかった。

 

 人はみんなに個性があるように、習熟速度にだって違いはある。そこを嘆いたところで、どうにもならない。

 

「こればかりは仕方のない話さ」

 

「でも――」

 

「――だから、先に行っていてくれ」

 

 だからこそ、三沢は未だ納得の見えぬ十代へ誓うように宣言した。

 

「先に?」

 

「後から必ず追いついて見せる! 約束だ!」

 

 十代と三沢――入学から今に至るまで苦楽を共にし、今や親友とも呼べる間柄でさえある2人。

 

 だが、そんな彼らの始まりは――

 

「――1番くん!」

 

 互いを「1番くん」「2番くん」と呼び合い茶化し合いつつも順位を競う形だったのだから。

 

 そう、彼らの原点は友であると同時にライバルであった。

 

 そして、それは十代も理解できる。

 

 

 理解()できる。

 

 

 だが、十代の脳裏に交流戦でのカイザーのデュエルが浮かぶのだ。

 

 コブラが語った「フォース制定時からその人数は増えていない」事実が突き付けられるのだ。

 

 それゆえか、十代の胸の内に燻る淀みは最後まで晴れることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ところ変わってアメリカの地の何処かの高層ビルの屋上にて、携帯片手の神崎は――

 

――今頃、フォース候補生の話が出てる頃……三沢くんの件による遊城くんへの影響は大丈夫だろう。遊城くんは、その辺りサッパリしている性質ですし。

 

 実像と少々ズレた認識を抱きながら携帯の向こう側の相手へ困ったように返事をする。

 

「はい――はい、申し訳ございません。噂の女性に関しては存じて――ええ、はい、関わるつもりはありませんので、別口で――はい――ですから――」

 

――光の結社の問題もクリアされている以上、三沢くんが拗らせる心配もないだろうし、問題があればコブラさんも何かしら手を打つ筈。うん、この件は何もしなくて良いな。

 

 やがて、原作から様変わりしたアカデミアの様子を直に確認しただけに、そちら方面(闇落ち問題など)を完全に安心しきっている様子。

 

 そうして、神崎は携帯ごしにペコペコと頭を下げた後に通話を終えるが、終えた途端にすぐさま新たなコール音が響き、応対する羽目になるも――

 

「これはこれは、お久しぶ―――その件でしたら――KCの仕業? それは誤解ですよ。海馬社長は――――いえ、私にとってもう古巣ですから手の出しようも――なんでもオカルトに結びつけるのは悪手で――」

 

――今の一番の問題は黒田くんの存在。年齢的にアカデミア中等部を舞台にしたスピンオフ作品とみるのが自然だが……敵役云々どころか事件の影も形もないんだよな。

 

 しかし、先の通話と似たような依頼だったのか神崎の表情にげんなりしたものが混ざる中、彼の脳裏は別の仕事をこなしだす。

 

 それが個性的過ぎるダーク黒田こと、黒田 夜魅の存在――彼の原作での立ち位置である。

 

 ダーク黒田は、3DSのゲーム作品に始まり、純粋なカードゲーム遊びを題材にしたコミック「OCGストラクチャーズ」というシリーズに登場しているが、連載時期的に残念ながら神崎は知らない部分だ。

 

――何周年かの祝いの際に公式が出した単発回か? それとも題材が平和な学園モノだったりするのか? いや、だが……あの遊戯王だぞ?

 

 とはいえ、そんな平和な世界観だとは神崎は夢にも思っていない。なにせ遊戯王シリーズは――

 

 世界を真っ白に染めるとの理想の元、軍事国家の衛星兵器の所持者を洗脳して、地球を吹っ飛ばそうとする教祖がいたり、

 

 新世界の神になる過程で、この世を冥界こと地獄に変えようとする超官がいたり、

 

 魂の昇華を突き詰める存在を作ったは良いものの、そいつの暴走を止める方法を考えていなかったせいで、結果的に別の世界が滅ぶ要因を量産しまくった原因の癖に謎の被害者ムーヴする奴らがいたり、

 

 4人に分かれた娘を元に戻すべく、成功するかどうかも分からない計画で、結果的に万単位の殺戮を生じさせたイカレ親父がいたり、

 

 自分たちが犯罪行為をしてまで生み出した失敗作を処分する為に、世界中に届く電子パルス爆弾的なもので文明を石器時代レベルまで破壊しようとするテロリストがいたり、

 

 

 と、まさに世紀末も真っ青なカオスな面々(一例)がいるのが遊戯王ワールドである。警戒し過ぎることはない。

 

 そうした重圧ゆえか、幾らか連続するコール音をようやくさばき終えた神崎は大きくため息を吐いた。

 

「ハァ……ようやく終わった。新体制のアカデミアが情報発信に積極的になった弊害がこんなところに――」

 

 なにせ、今までの――いや、最近の神崎への依頼の大半は似たような内容なのである。

 

 原因も判明しているが、神崎にどうこう出来る部分ではない為、ほとぼりが冷めるのを待つ他ないゆえに「いつまで続くのか?」と感じぬ筈の疲労が見える表情だ。

 

 だが、またもや響いたコール音に――

 

「――はい、此方『紹介屋』。噂の女性の件なら、他を当たって――」

 

『セラです。近くにいますね? 急を要します。今すぐ――』

 

 先んじて断りの文面を述べる神崎へ、有無を言わせぬセラからの要請が語られた。

 

『――では、詳しいことは現地で』

 

 やがて矢継ぎ早にザックリした要件を伝え、即ブツリと切れた通信を前に神崎は内心で懐かしい感覚に襲われながらも、裏路地目がけて高層ビルの屋上からピョンと飛び降りる。

 

――セラさん…………なんだか、海馬社長に似てきたな。

 

 そして僅かな浮遊感を感じる最中、強くたくましい子になったセラへと神崎は複雑な心境を抱く。

 

 なにせ、セラたちの世界(プラナ世界)での生活を結果的に神崎が吹っ飛ばしてしまった過去ゆえの今である。

 

 セラの企業人としての成長(が童実野町の独裁者に似てきた現状)を喜べば良いのか悔やめば良いのか神崎には分からなかった。

 

 ただ、ディーヴァ(お兄ちゃん)はキレて良いと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 此処で、時間は少し巻き戻る。

 

 神崎が高層ビルの屋上で連続してコールする携帯と格闘している頃、とあるオーディション会場にてセラは助っ人として召集された(ということになっている)相手へ挨拶を贈れば――

 

「初めまして、真崎さん。本日、担当させて頂くことになった『藍神 セラ』と申します」

 

「『真崎 杏子』よ。よろしくね! 私のことは『杏子』で構わないわ」

 

「では、私の方も『セラ』で構いません」

 

 その件の相手こと杏子は笑顔と握手で返し、友好的な姿勢を見せる。

 

 そう、これは神崎がBIG5の大瀧(ペンギンの人)に頼んだ杏子の夢の舞台であるミュージカル「ブラック・マジシャン・ガール~賢者の宝石~」の舞台裏に触れる件だ。

 

「今回、真崎さんには私たちが『劇団の舞台裏』を紹介する映像取得の際に、ダンスに携わる人間の目線で何か気づいたことがあった際にアドバイスして頂きたく依頼させて頂きました」

 

「うん、出来る限り頑張るから、何でも言ってね!」

 

 そうして、セラは早速とばかりに杏子へ用意された「それらしい理由(仕事)」を語る中、なにも知らない杏子は「任せてくれ」とばかりに小柄なセラへ目線を合わせるように屈んで親指を立てる。

 

「では、早速リハーサルの際にダンスを披露して頂くことになるかもしれません。劇団員の方々が少々遅れるとの連絡もありましたので」

 

「…………こんな大きな劇団なのに、私で大丈夫かな」

 

「安心してください。大まかな流れの際に動線への注意点を測りたいだけ――申し訳ありません。貴方の技量を必要としないような物言いを――」

 

 しかし、憧れのステージの舞台裏を間近にしてか委縮する杏子へセラはあえて無礼にも取られかねない物言いをしつつ、直ぐに謝罪してみせれば――

 

「ううん、気にしないで! 私は駆け出しダンサーみたいなものだから! でも根性だけは負けてないつもり! だから、本当に何でも言ってね!」

 

 年下に気を使わせた状況に、人の良い杏子はすぐさま落としていた気を引き上げ、ガッツを見せる姿にセラは頼るように小さく微笑みながら会釈した後、己への背後へ声をかけた。

 

「はい、その際はお願いします――百済木、そちらの進捗状況は?」

 

「――テメェらァ!!」

 

「KCの方と回線繋がりました!」

 

「『移動式ソリッドビジョンシステム』との同期、オールクリアっす!」

 

「撮影機材も問題ありません!」

 

「此処でも、例の女の情報探してるっぽいです!」

 

 さすれば、黒服+サングラスに身を包んだ百済木の檄の元、百済木軍団員の各々が現状を端的に語っていき――

 

「――よぉし! 姉御、いつでも行けますぜ!!」

 

「では、KCにいる兄さ――ディーヴァの準備が済むには少し時間がかかります。オーディションが開かれるとの話がありますので、まずは其方を収めておきましょう」

 

――百済木くんたち、KCで働いてたのね……

 

 そうして、指示を飛ばすセラに付き従う百済木たちを杏子は「意外な組み合わせ」となんとも言えない表情を見せる最中にも、彼らは仕事に励む。

 

「了解です、姉御!! ――テメェらァ!!」

 

「撮影機材の方は、そのまま流用可能です!」

 

「開催時間も、こっちの進捗に影響しないっす!」

 

「オーディションの試験官に欠員が出た話が!!」

 

「このまま遅れると、スケジュール被るかもです!」

 

「ほぉう、相手さんのトラブルかぁ……こいつぁチャンスだぜェ!」

 

 だが、此処で軍団員の報告を聞いた百済木が顎に拳を置きながらニヤリと悪そうな顔を見せた。

 

「姉御! デュエリストの都合をつけちゃぁ貰えませんか! 世の中、持ちつ持たれつ―――撮れ高ァ交渉してきますぜ!!」

 

「確認を取ります。少し待ちなさい」

 

「――あざっス!!」

 

 そして、交渉材料を上司(セラ)へ願うべく90度腰を曲げて頭を下げた百済木の姿が残る中、懐から携帯を取り出したセラが電話した先は――

 

「モクバ、今近場にKCのデュエリストはいる?」

 

『えっ? どうしたんだ? なにかトラブルでもあったのか?』

 

「ううん、大したことじゃないの。実は――」

 

 直属の上司でもあり、副社長でもあるモクバの元。やがて事情を説明し、幾つか言葉がやり取りされた後、通話を終えたセラへ百済木は駆け寄った。

 

「どうでしたか、姉御!!」

 

「KCで用意することは叶いませんでした」

 

 しかし、結果は残念なもの。

 

 KCもアメリカに支社があるとはいえ、地理的な距離は無視できない。多少の時間的猶予があれば別だろうが「殆ど今すぐ」に近い状況では流石に無理筋である。

 

「えーと、私がやろうか?」

 

「ありがとうございます、杏子。ですが、この手の試験官はデュエルの勝利ではなく、主に立ち回りを求められるのです。お気持ちだけ頂かせて貰います」

 

 やがて、おずおずと多少デュエルの心得がある杏子が手を上げるが、セラはやんわり断りを入れる他ない。「ただ、デュエルする()()」ならそこいらの歩いている人間でも出来る話だ。

 

「ううん、気にしないで! でも、どうしよっか……」

 

「恐らく、近くに便利な相手がいるでしょうから其方を使います」

 

 そうして、困ったように顎に指を当てて悩む杏子を余所に、セラは携帯にいつぞやの番号をプッシュし始めていく。

 

 

 

 かくして、話は高層ビルの屋上から飛び降りたおっさんの元へと戻るのだ。

 

 

「遅かったですね」

 

「申し訳ない。急なご依頼だとの話だというのに」

 

 そして、連絡から少し待てば「大急ぎで走ってきました」な様相を演出して来た神崎の姿を視界にとらえた杏子は、意外な人物だと内心で驚きを見せる。

 

――セラが言ってた「便利な相手」って、神崎さんのことだったのね……ホントにKC辞めちゃってたんだ。

 

 なにせ、「KCを辞めた」との話は海馬経由で遊戯たちから聞いていたものの実際に電話1本で呼び出される姿を見るまでにわかには信じられなかったのだから。

 

「遅れたフリを謝罪なさるのなら、仕事の方で便宜をお願いします――依頼内容は、お伝えした通りです」

 

 だが、当のセラは神崎がこの場の近くでスタンバってただろうことは想像に難くない。

 

 元プラナであり、遊戯の重要性を知るセラからすれば、今回の杏子の話も「その一環である」ことが手に取るように分かるのだろう。

 

「合否に関する採点は向こう側で行われますので、貴方なら可能ですね?」

 

「その件ですが少々難しく、別のアプローチを――」

 

「海馬社長に確認を取ったところ、可能との話をしておられたのですが……受けて頂けますよね?」

 

 だが、率先してデュエルしたがらない神崎の性ゆえか難色を見せる神崎へ、セラは言外に「海馬 瀬人を嘘つき呼ばわりする気か?」との圧力をかける。

 

 神崎が海馬へ異常なまでに警戒心を持っていることも、またセラもよく知るところだ。

 

「ですが多少、腕に覚えはあるとはいえ、今回のような件を期待されても困るのですが……」

 

 とはいえ、神崎にも言い分はある。彼は「ミュージカル」などの芸術系統の良し悪しはハッキリ言ってよく分かっていない部分だ。

 

「問題ありません。貴方は舞台装置の立場ですから」

 

――つまり、採点を担当する試験官が観客の立場……

 

「後、これを」

 

「これは……黒衣(くろこ)?」

 

「試験官は、これを着るそうです。主役である相手を立てるような立ち回りをお願いします」

 

――平たくまとめれば、デュエルの中で相手の展開を促しつつ、サンドバッグに徹する。

 

 しかし、歌舞伎でお馴染み「観客から見えない立ち位置」の黒衣(くろこ)の衣装を手渡されれば、神崎も己の役割を察してみせる。そう――

 

「つまり『接待デュエル』のようなものですか」

 

 接待デュエル――それはジャパニーズおもてなし(O・MO・TE・NA・SI)の世界で進化したデュエル。

 

 如何にして相手に気持ちよくデュエルさせるかを突き詰め続ける者たちを、海馬 瀬人は「デュエリストの風上にも置けん馬の骨共」と呼んだ。

 

 

 

 神崎の超得意分野である。

 

 

 

 

 やがて、黒衣(くろこ)に身を包み歌舞伎の補助員状態になった神崎は、インカムからの指示に従い夢を目指す者たちの登竜門ことサンドバッグに徹し始めれば――

 

『その調子で頑張ってください』

 

「了解しました」

 

――正直、相手の展開速度に合わせる以外は普通にデュエルしているだけだが……本当に問題ないのだろうか? 専門外なだけに不安だ。

 

 神崎の内心の不安を余所に、1人、また1人とオーディションのデュエルを終えていく中、入室した新たなチャレンジャーの姿に神崎はピタリと固まる。

 

 その視線の先には、持参したラジカセを地面に置く――赤いシャツでキメた焼いた浅黒い肌にドレッドへアーの男の姿が気合の入った声で宣誓した。

 

「音源はこれをお願いしゃぁっす!!」

 

――ス、ステップジョニー!?

 

 DMマイナー過ぎるポジ――ステップジョニー参戦。

 

 





グッバイ三沢




Q:三沢の進退を十代が気にし過ぎじゃね?

A;原作との人間関係の変化によるものです。原作と今作での十代からの印象を比べると――

人物   原作  →  今作
万丈目:ライバル → リベンジしたいライバル
三沢:他寮の友人 → 入学時からの親しい友人
明日香:他寮の友人 → オベリスク・ブルー1年の頼れるリーダー
亮:頼りになる先輩 → 雲の上の存在

校長:話の分かる人(鮫島) → 凄く厳しい人(コブラ)

今話で名前の出たメインの面々はこんな具合です。

原作では翔や隼人、レッド落ちした万丈目サンダーで分散していた十代の友人関係が凝縮された? イメージが近いかもしれません(多分)


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