前回のあらすじ
神崎「私にいい考えがある!」
牛尾「正気なんすか?」
アリス「正気なの?」
コブラ「(これの相手を平然と続けていた)海馬 瀬人は凄かったんだな……」
「さぁ、どうしたドン! 俺の挑戦を受けるザウルス!」
オベリスク・ブルー寮に挑発するかのような剣山の声が木霊するが、肝心のブルー生徒たちには困惑に近い表情を浮かべるものばかり――端的に言えば「なんだコイツ」な感情が勝り、中には冷ややかな視線すら向ける者すらいる有様だ。
とはいえ、2、3年生からすれば此度の剣山の行動は――此処までアグレッシブではなかっただろうが――過去の己を見るが如く馴染み深い光景であろう。
しかし、それらとは毛色の違う視線が一つ。
『クリー、クリリー』
「へへっ、そうだな! イエローにはイキのいい1年が入学となれば、ちょっと試しに――」
「やめんか馬鹿者! 騒ぎに火をつけてどうする! 貴様もフォースになった以上、アカデミアの規範となれ!」
「俺は倫理委員会の方に連絡を入れて来る」
「頼むぞ、三沢。俺はこの馬鹿が余計なことをせんように――って、行くなと言っとろうが!」
そうして、この手の騒ぎが望むところな節のある十代の好奇心の爆走に振り回される万丈目の普段の光景が流れる最中、三沢が連絡の為に駆け足で立ち去っていく。
『馬鹿だ馬鹿だと他の言葉を知らないのか、こいつは』
「えぇー、だってさー」
「でもも、だってもあるか!」
やがて引き下がる様子を見せない十代は万丈目を誘導するように目線を剣山の方へ向ければ――
「誰もかかってこない気ドン? オベリスク・ブルーは腰抜けの集まりザウルスか?」
「なら僕が相手になるよ――確か、剣山って言ったっけ? 僕は
「ようやくザウルスか。なら、犠牲者第一号はお前だドン!」
何処か学生帽のようにも見える角刈りの青年「
「アイツらやる気みたいだぜ?」
「なっ!? 全く、どいつもこいつも! デュエル馬鹿は1人で十分だと言うのに……!!」
十代の指摘に頭を痛める他ない万丈目だが、このまま放置する訳にもいかないゆえに十代を腕で制した後、問題の収束を図るべく駆けだす羽目となる。
「場所は此処で構わないか?」
「当然だドン! 2戦目が控えてるザウルス!!」
「やめろ、1年」
「……誰だドン?」
「万丈目先輩……」
そうして、デュエルディスクを手に一触即発だった剣山と空野の間に割って入る万丈目へ、対照的な反応を見せる両者。
「いいか良く聞け。入学したての貴様らには馴染みが薄いかもしれんが、アカデミアでは規則として他の寮生とのハンデ抜きのデュエルは認められていない」
かくして剣山たちの行動の問題性の指摘を続ける万丈目だが――
「そして、そのハンデを定めるのは教員方だ。つまらん校則違反で降格したくなかったら、大人しく矛を収めろ」
「なにを言うのかと思えば規則だのなんだの――ダッサいドン! 男なら挑まれた勝負は正面から受けるべきザウルス!」
「僕も同感です。僕たちオベリスク・ブルーを此処まで虚仮にされて黙って帰せと?」
万丈目の忠言は、剣山たちにとってお気に召さなかった様子。男には退けぬ時があるのだと言わんばかりだ。
「全くバカバカしい……野生児か貴様ら? そんな蛮族染みた思想を現代に持ち込むな」
「恐竜さんの生きた野生をバカにするなドン!!」
「……『竜王』の名も落ちたものですね」
やがて、強情な1年坊主たちへ呆れた様子を見せる万丈目へ、謎の怒りと失望の混ざった視線が向けられるが、そんな感情論以下の代物が万丈目の心に響くことはない。
ゆえに、万丈目は強引にでも話を収束させようとするが――
「きょ、恐竜? まぁ、良い。くだら――」
「――いい加減にしろよ、空野! 万丈目さんに向かってなんて口の利き方だ!!」
そんな3人の元、茶髪のとげとげヘアーの1年が強い口調を以て乱入を果たす。
「……ハァ、お前には関係ないだろ、五階堂」
彼の名は「
「おい1年坊、急にな――」
「関係なくない! まず万丈目さんに無礼を詫びろ!!」
「ええーい! 割り込んでくるなうっとうしい!!」
ゆえに、尊敬する
かくして、問題の収束どころか更なる波乱を呼び混沌とし始める状況へ、周囲から「今年の1年(色んな意味で)ヤベェな」な視線と共に万丈目へ無言のエールが贈られるが――
「――じゃあ、みんなでデュエルしようぜ!」
そんな混沌とした空間に、十代は躊躇なく飛び込んだ。
「……はぁ? なに言ってるドン? 今、その話をしてるとこザウルス」
「これ以上、話をややこしくするな十代! 煽るような真似は止せ!」
ただ、剣山と万丈目の言う通り、十代の主張は今の状況では若干ズレた代物だ。更に「デュエルを止めたい」万丈目からすれば逆境な程である。
「いや、だからさ『俺たちブルーみんなでデュエル』しようぜ!」
「……つまり、先輩は何が言いたいんですか?」
しかし、十代とて考えもなしに発言した訳ではない。その意を感じ取ったのか代表して空野が先を促せば――
「だって、そこのイエローの――剣山だっけ? そいつはオベリスク・ブルーの実力を自分の肌で感じたいから道場破りみたいなことしてんだよな?」
「……微妙に違うザウルスが、まぁ概ねそんな感じだドン」
「でも、万丈目の言う通り『別の寮とのデュエル』は色々校則があるからパッとは出来ないだろ?」
そうして、彼らを取り巻く現状をザックリ説明し終えた十代は、親指を立てつつ自信たっぷりに宣言した。
「ならさ! 俺たちオベリスク・ブルー同士でデュエルして、それを剣山に見て貰えば良いじゃん!」
そう、「剣山の凡その望み」は「剣山がデュエルしなくとも叶う」のだと。
「デュエルを見ればデュエリストの全部――ってのは俺たちには難しいけど、実力くらいなら分かるだろ!」
「…………それは確かに……そうザウルス?」
「……これなら校則を破る面倒も……ない」
やがて、剣山と空野が思いのほか現実的な落としどころに思案顔を見せるが、そんな彼らの胸の内をユベルが端的に語ってみせる。
『揺れてるみたいだね。まぁ、こいつらだって入学早々コブラに目を付けられるような状況は避けたいか』
そう、アカデミアの校長であるコブラの存在は、入学の挨拶の段階で剣山たちも知った顔だ。「凄い怖そう」のイメージと違わず非常に厳しい人物像である。
売り言葉に買い言葉で熱くなっていた頭が冷えれば、コブラからしかりを受けるリスクは無視できる程に彼らは豪胆ではない。
――こいつ、考えなしの発言かと思えば意外と理屈は通っている……
「よし十代。貴様の口車、乗ってやろう。それで相手はどうする?」
やがて万丈目も、そんな剣山たちの様子を遅ればせながらに察し、話に乗って見せるが――
「……? なに言ってんだよ万丈目。『ブルーみんな』って言っただろ? ちょっと早いけど新入生の歓迎会を始めちまおうぜ!」
「えっ?」
「1年はみんないるな! なら始めるぜ!」
天へと拳を突き上げた十代は、剣山たちを余所に周囲に向けて号令を飛ばす。
「――新入生歓迎デュエル大会だ!!」
かくして、十代の熱に当てられた周囲の全ブルー男子生徒(一部除く)が謎のテンションで応えて見せる光景が剣山たちを置き去りにしながら繰り広げられた。
そして、謎のお祭り騒ぎが始まった事実に万丈目は思う――「やはり、
「済まない、万丈目! 遅れた!」
「シニョール剣山! 喧嘩は止めるノーネ!」
「若気の至りじゃすまねぇから止めとけ――」
オベリスク・ブルー寮へと慌てた様子で飛び込んだ三沢・クロノス・牛尾が、一触即発な現場に駆け付ければ、其処に広がっているのは――
「《ホルスの黒炎竜 LV8》の効果! 魔法の発動を無効にし、破壊する!」
空野の背後で、白銀の装甲で覆われた巨大な翼竜が、その口より放つ炎を以てフィールドを焼き払い、
「《ギルフォード・ザ・レジェンド》は数多の武器を使いこなす達人! 墓地より5枚の装備以て、その力を見せよ!」
五階堂の隣で、角のある仮面で目元を隠した黒き鎧に身を包む大柄な戦士が、数多の武具をその身に装備し、
「この《
真っ先にゾンビ化されそうな生徒の元、棍棒を持つ赤い鬼が相手デュエリストを巻き込むように爆散し、
「無駄だ! 《ミラージュ・ドラゴン》がいる限り、相手はバトルフェイズに罠カードを発動できない! ゆえにこちらのモンスターの展開を止める術はない!」
ゴージャスなデュエルディスクに目がくらみ、死ぬ寸前までデュエルエナジーを吸い尽くされそうな生徒が繰り出した緑のたてがみを揺らす黄金の細く長い身体を持つドラゴンの周囲に次々とモンスターが立ち並び、
「来い、マイフェイバリットヒーロー!」
巨大なビル群が立ち並ぶ摩天楼の最中――
「――フレイム・ウィングマン!!」
十代のフェイバリットであるヒーローが片翼を広げ、その腕の竜の顎を
そんなモンスターたちが所狭しとぶつかり合う予想だにしない状況に三沢・クロノス・牛尾の3名は困惑の表情を浮かべる他ない。
「これは……」
「ど、どどどどうなってるノーネ!?」
「なんつーか、樺山先生に聞いてた話と違うみたいっすね」
だが、三沢だけは直ぐにこの舞台を作り出した人物を察し、情景共にクロノスと牛尾へ向き直った。
――全く……お前は何時だって俺の計算を容易く超えてくるな、十代。
「すみません、クロノス教諭、牛尾さん。どうやら俺の勘違いだったようです」
「そうナーノ? 確かに険悪な雰囲気ィーは、なさそうデスーネ」
「まぁ、問題が起きてねぇなら構わねぇさ。一応、見回らせて貰うけどな」
やがて、手を煩わせてしまったと頭を下げる三沢へ、クロノスと牛尾が往々に対応する中、それを目にとめた十代が駆け寄り告げる。
「おっ、クロノス教諭じゃん! 悪ぃけど色々あったから歓迎会、ちょっと早めに始めさせて貰ってるぜ!」
「そ、それは別に構わないノーネ。歓迎会の主役は1年生たちだカーラ、ワタクシたち教師に気を使わなくても良イーノ」
「そっか。サンキュー!」
「デモデーモ、何があったか説明――」
「あっ! おーい、剣山ー!」
やがて、軽い謝罪を問題ないと流したクロノスが十代から詳細を聞こうとするも、当人は話は終わったとばかりにデュエルを観戦している剣山の元へ駆けだす始末。
「――って、行っちゃったノーネ……」
「まぁ、他の奴らに聞いて擦り合わせりゃ良いでしょ」
とはいえ、牛尾の言う通り1人2人に事情を聞いて終わる話でもない為、順番が前後する程度の問題だと2人は各々の職務を全うすることとなった。
かくして、オベリスク・ブルー同士のデュエルが1戦、また1戦と終わると同時に新たに開始される光景を観戦していた剣山の背へ声をかける十代。
「どうだ、剣山! 俺たちオベリスク・ブルーも捨てたもんじゃないだろ?」
十代の言う通り、これだけ現在進行形でデュエルを見れば、オベリスク・ブルーの実力は剣山に伝わっていることだろう。
「まぁ、剣山も『自分は負けてねぇ!』って思ってるかもだけどさ――筆記とかでダメだとブルーに上がれなかったりするし……あー、なんて言えば良いんだろ?」
しかし、「デュエルで強ければ無条件にブルー」という訳でも「ない」ゆえに、十代は自らも苦労した「その辺りの問題」を提示しつつ、上手い言葉を探しながら告げる。
「こう、あんまり喧嘩腰? じゃなくてぶつかり合いばっかりじゃなくて? えーと……」
「……なんで」
「ん?」
「なんで、態々こんなことしたドン?」
だが、そんな十代の言葉は剣山からの当然の問いかけに遮られた。
なにせ、デュエルを直に見て多くのブルー1年生と見比べて己が特段劣っている印象はない剣山でも、十代の実力が自分より優れていたことは分かる。
なら、こんな大規模な祭り染みた面倒を起こさずとも、十代が剣山をハンデデュエルで倒して「お前はブルーに相応しい実力がない」と突き付けることも出来た。
いや、其方の方が遥かに簡単だっただろう。十代からすれば、剣山は「自分たちに喧嘩を売って来た無礼者」同然なのだから「生意気だ」とぶっ飛ばしてしまえば良かったのだと。
しかし、そんな剣山へ十代は不思議そうに返す。
「なんでって、剣山はオベリスク・ブルーになりたいんだろ? なら、俺たちは未来のクラスメイト――つまり仲間じゃん!」
そう、剣山と十代は見ている世界が違い過ぎた。
「そりゃぁ競い合うんだから、ぶつかったりするけど俺たちはライバルだけど敵じゃないんだぜ?」
片や己のカリスマを磨く為に相手を踏み台にしようとした男と、ただ楽しく切磋琢磨できる仲間を求めていた男。
「なら仲間同士罵り合うんじゃなくてさ、ちゃんと定期試験で先生たちに『
十代の言葉が一つ、また一つと届く度に剣山は己の小ささを自覚せざるを得なかった。ゆえに――
「そっちの方がスカッとしそうだし!」
「……ニキ……」
「……?」
「――アニキと呼ばせて欲しいドン!!」
「えっ?」
剣山は、この
「俺はアニキの元でなら本当の強さを学べるザウルス! いや、学ばせて欲しいドン!」
過去の剣山は腕っぷしの強さとデュエルの技量ゆえに他者に「兄貴分」と慕われた男である。しかし同時に窮地の際に己を慕っていた筈の弟分たちが逃げ出す歪な関係性ばかりだった。
それを剣山自身は「己のカリスマが足りないゆえ」だと考えアカデミアの門を叩いたが、十代と接してそれが思い違いであると至る。
なにせ殆ど喧嘩を売りに来た同然だった剣山と、売り言葉に買い言葉で衝突必死だったオベリスク・ブルーの生徒たち――その双方の意を汲みつつ、この場を収めて見せたのだ。
そう、本当の強さは直接的な力ではない――そう教えられた気がした剣山。
ゆえに、剣山は懇願する。
「い、いや、そんなこと急に言われても……つーか、これ前もあった気がす――」
「頼むドン! 是非とも、この俺! ティラノ剣山をよろしくザウルス、アニキ!」
『随分、調子の良い奴だな……』
とはいえ、十代からすれば180度急変した剣山の態度へは困惑が強い。更に謎のデジャヴすら覚える。
やがて、もう誰も剣山のことなど眼中になくデュエル大会を全力で楽しんでいるゆえ、助け船のない十代は困った表情を浮かべるが――
「十代、そろそろ彼にはイエロー寮に戻ってもらわ――どうした?」
「おい、今度は何の騒ぎだ」
「ちょ、丁度良いところに――てか助けてくれ~」
三沢と万丈目の合流に「救いの手」だとばかりに2人へ手を伸ばす十代。
「アニキの生きざまを是非とも間近で学ばせて欲しいドン!」
「ああ、そういうことか」
「全く、次から次へと騒がしい奴だな……」
やがて、剣山が任侠映画よろしくビシッと頭を下げて懇願する姿に凡そを察した三沢と万丈目は――
「確か剣山だったな? 十代に弟子入りしたいというが、フォースの立場上、『特別扱い』とも受け取られかねない行為は不要な軋轢を生――」
「放っておけ、十代。この手の輩を一々相手しては、つけあがるだけだ」
「アンタに頼んでる訳じゃないザウルス!」
「お、落ち着けよ剣山」
『ハァ、面倒事の塊みたいな奴だね、こいつは』
それぞれ助言を贈ろうとするが、剣山は万丈目の「相手するだけ無駄」ともバッサリ切るような発言に噛みつく他ない。軽い気持ちではなく本気なのだと。
そんな中、三沢は剣山の肩をグッと掴みながら強めの口調で相手の意識を向けさせる。
「聞くんだ、剣山」
「な、なんだドン?」
「十代の弟分になりたいのなら、まずは『弟分に相応しい』と周囲に認めさせるだけの材料を用意するべきじゃないか?」
「おー、確かにそうザウルス! アンタは話が分かるドン!」
「
「成程――なら待っててくれだドン! 十代のアニキ!」
「お、おう、頑張ってなー」
そうして、三沢のもっともらしい言葉に納得した剣山は拳を握って十代へ誓いを立てた後、「こうしちゃいられない」とばかりにラー・イエロー寮へと駆け出していった。
やがて、そんな剣山を力なく見送った十代は疲れた様子で感謝を告げる。
「……サンキュー、助かったぜ三沢」
「いや、それは構わないんだが……時間稼ぎにしかならないぞ」
「フン、これを機に貴様もあしらい方を覚えておけ」
とはいえ、万丈目の言う通り十代は早いところ「
此処で少しばかり時間は進み、剣山が戻ったラー・イエロー寮にて1年生への歓迎会が始まった頃――
「はーはっはっはー! 新入生諸君! よく来たっスね! 困った事があればこのボク!丸藤 翔を頼ってくれて良いっスよ!」
翔は意気揚々と先輩風を吹かせていた。少し前までは退学に怯える日々だったゆえ、自分たちの背を追う立場の後輩を見て気が大きくなっているのが見て取れる。
「いや、丸藤。俺らも昇格したばっかで、あんま変わ――」
「――わー! わー! なんでもないからね! (よ、余計なこと言わないでよ、慕谷くん!)」
しかし、そんな翔のメッキも背後の慕谷の発言によって呆気なくはがれ落ちた。正直、新入生と実質ラー・イエロー1年生状態の翔たちは先輩風を吹かせている場合ではない。
とはいえ、そんな風に誘われる者もいた。
「ならオレの疑問もアンタが答えてくれるザウルス?」
「任せてよ! って、ザウルス? ……ひっ!」
「なに隠れてるドン?」
「(なんか怖そうな人が来ちゃったよ、慕谷くん!)」
「(だからって、俺を盾にするな!)」
だが、先輩風に誘われた剣山の
「そこのキミ! オカルトに興味は――なんでもないです」
――3年の先輩、逃げやがったっス!?
「なにコソコソ話してるドン! 頼れって言ったのはアンタらザウルス!」
「あわわ、どうしよう!?」
「お、俺は言ってないぞ!?」
「ズ、ズルいっス! 1人で逃げる気っスか!?」
「どこに行く気ザウ――」
やがて、
己より大柄な男に思わず警戒する剣山。
「……誰だドン?」
「え、えっと僕は2年の大原って言うんだ。よ、よろしくね」
「先輩だったザウルスか、これは失礼したドン――オレはティラノ剣山ザウルス! よろしく頼むドン!」
「う、うん、剣山くんだね。そ、それで疑問って言ってたよね? ど、どうしたの?」
だが、体格の割に臆病さを滲ませながらも己へ温和に応対する大原の姿に、剣山は頼る先を変えれば――
「(慕谷! 丸藤! 今のうちにこっち来い!)」
「(取巻!)」
少し離れた場所から手招きする取巻の姿に、慌てて逃げ寄る翔たちを余所に剣山は大原へと目的を語っていた。
「オレはオベリスク・ブルーを目指してるザウルス! だから昇格する為の定期試験の日時と筆記の合格ラインを教えて欲しいドン!」
「が、学園での予定は、こ、公共スペースのカレンダーに書いてあるから、あ、後でメモしとくと良いよ。ひ、筆記の合格ラインは、い、一定じゃなくて小原く――僕の友達の方が詳しいから、しょ、紹介するね」
「大原先輩、何から何まで助かるザウルス」
「き、気にしないで。で、でも凄いね。にゅ、入学して直ぐなのに昇格を、も、目標にするなんて」
かくして相手の新入生として極めて常識的な問答に、大原も「誤解されやすい性質なのだろう」と剣山への認識を改めつつ和やかな対談が続く。
「当然だドン! オレは十代のアニキに相応しいデュエリストを目指してるザウルス!」
「ぬぁにぉ! 十代のアニキの弟分は僕っス!!」
と思われたが、先程の気の小ささを感じさせぬ勢いで食って掛かる声が剣山に向けられた。
「今度は誰ザウルス?」
「か、彼は僕のクラスメイトのし、慕谷くんだね」
そして剣山が唐突な乱入者に怪訝な視線を向ければ、そこにいるのは慕谷の姿。やがて、剣山は譲れぬ勝負を仕掛けられたと負けじと己の想いを語って見せるが――
「また先輩ザウルスか。でも、先輩だからって十代のアニキの弟分の座は譲れないドン!!」
「お、俺じゃないぞ!? 遊城の弟分とか興味ないし!」
「さっきと言ってること違うドン! この期に及んで誤魔化すなんて男らしくないザウルス!」
先とは打って変わって、首を横にブンブン振りながら真逆の言葉を並べる慕谷の言葉の軽さに剣山は怪訝に思いつつも不機嫌さを募らせていく。
己と同じ男の背を追う者の志の低さは流せるものではない。
「いや、ホントに興味な――って丸藤! いい加減、俺を盾にするのはやめろ!」
「丸藤? 後ろに誰かいるザウルスか?」
「か、彼も2年生でま、丸藤 翔くんだよ」
だが、真相は思ったよりも仕様もないものである。十代の弟分を目指す剣山に食って掛かったのは慕谷――ではなく、その背に隠れて叫んでいた翔だったのだ。
そんな情けなさすら見える翔の姿に剣山の中の闘志は大きくしぼんで行く他ない。
「……誰かの影に隠れるなんて情けない男だドン。そんな奴にアニキの弟分は相応しくないザウルス」
「ふぅんっ!」
「おべっ!?」
「慕谷!」
しかし、剣山の真っ当な言い分を前に翔は盾にしていた慕谷を横に押しのけ、プルプル震える膝を一歩前に出して胸を張る。
「ど、どうだ1年坊! これで文句ないだろ!」
「フッ、少しは男を見せたみたいだドン――でも知らないザウルスか? ラー・イエローじゃアニキの弟分には相応しくないドン!」
「キミだってラー・イエローじゃないっスか!」
「だから、次の試験で直ぐにオベリスク・ブルーに上がるザウルス!」
「簡単に言うなっス! 昇格するのはキミが考えてるより大変なんだよ!!」
「け、喧嘩はやめようよ、2人とも……」
そうして、お互いを一先ずライバルと定めた2人が皮算用染みた形でマウントを取り合う光景を大原がオロオロしながら止めようとする姿に、慕谷と取巻は先の借りを返す意味も込めて2人の間に割り込む――のは、剣山が怖いので無理な為、翔を抑えにかかる。
「落ち着けよ、丸藤。そもそも急にアニキだ弟分だって、どうしたよ? 遊城のファン第1号じゃなかったのか?」
「放してよ、慕谷くん! 僕は節度をもってアニキのファンやってるのに、
「お前はどの立ち位置なんだよ……」
「……完全に厄介なファンじゃん」
やがて、翔が中々に拗らせ始めている事実に困惑が勝った慕谷と取巻はお手上げとばかりに引け気味になる他ない。
「なら、どちらがアニキに相応しいか競争と行くドン!」
「望むところっス!」
かくして、ラー・イエローにて不思議なライバル関係が構築されていくが、彼ら以外のラー・イエローの生徒たちを含め、他の寮の歓迎会も大きなトラブルもなく無事に終えていくことだろう。
ゆえに、これからの彼らの学園生活が平穏無事に終わることを願いたい。
後日、歓迎ムードも終わったアカデミアのフォース用の教室にて、2年生となったフォース3人組の明日香、十代、万丈目は講師が来るまで前日の歓迎会の話題――剣山のアニキ騒動――で盛り上がっていた。
「ふふっ、大変だったのね」
「いやぁ~、人気者は辛いぜ」
「フン、所詮は表面的なものだ。フォースから降格すれば見向きもされんようになる」
「……そうね。私たちのフォース在籍はあくまで将来性を加味されてのものでしょうし」
「そっかー、俺たちもフォースだもんな――って、もう候補生じゃなくて、ちゃんとしたフォースになったならアレじゃん!」
「アレって?」
だが思い出したかのような唐突な十代の話題の転換に明日香が首を傾げれば――
「プロとデュエルできるんだよな! 良いな~、誰呼んで貰おっかなー!」
「ハンデは付くがな」
「確かにそうだけどオファーを受けてくれる相手だけだから、あんまり期待し過ぎちゃダメよ?」
十代の頭の中は凄いプロデュエリストたちとのデュエルに喜色の思いを馳せ始める。
『まぁ、神崎なら大抵の相手を呼んでこれそうだけど』
「…………うん、そうだな!」
「やっぱり、まだ神崎さんが苦手なのね……」
だが、ユベルの呟きについ難しい顔になった十代に明日香は苦笑を返す他ない。直感を重んじ突き進むタイプの十代に、アレコレ考えて細かに軌道修正するタイプの神崎はやはり相性が悪いのだろうと。
「辞められたらしいぞ」
「…………うん?」
『そういえば最近めっきり見なくなってたね。相変わらず、行動の読めない奴だ』
「え゛っ!? 神崎さん、辞めちゃったの!?」
「な、なんだ、急に!? 嫌っとる貴様からすれば喜ばしいことだろうに!?」
「なんで!?」
しかし、唐突に明かされた「神崎がアカデミアを去った」との情報に十代は面食らいながら情報源の万丈目へ詰め寄った。とはいえ、万丈目とて十全な情報を持っている訳ではない。
「俺が知る訳があるまい。ただ――雇われた身である以上、仕事が終われば去るのは自然なことだろう」
「そうね。卒業前に藤原先輩から聞いた話じゃ冬と春の長期休みの間に色々してたらしいし……その間に仕事を片付けちゃったのかもしれないわ」
『まぁ、良いじゃないか、十代。これで気を使う必要もなくなったんだから』
「そりゃ……そうだけどさ」
やがて、「アカデミアでの仕事が終わったからでは?」との極めて普通な理由に何処か納得を得られない十代が、喧嘩別れ染みた状態になった現実にやりきれなさを覚える中、勢いよく教室の扉を開く者がいた。
「みなさん姿勢を正しなさい! 講義の時間ですわよ!」
「胡蝶先輩! 神崎さん辞めたって話――」
「それは講師の方がお見えになっている今する話ではありませんことよ! わきまえなさい!」
そうして、フォース用の教室に現れた3年生の胡蝶の姿に十代が情報を求めるが封殺するも、その背後から恰幅のよい人物が胡蝶の叱責をやんわりとなだめ出る。
「構いませんよ、胡蝶くん。他に気になることがあると集中できなくなるものです」
「貴方は確か……」
「みなさんとは初めましてですね。私は『鮫島』、此処の元校長の人――と言えば覚えもあるかもしれませんが」
今回の講師こと鮫島は初めて顔を合わせる十代たちに名乗ってみせれば、彼の言葉通り十代は鮫島の顔に見覚えがあった。そう、それはテレビのニュースでチラと見た――
「それってクビになっちゃったって人だよな?」
「――十代!!」
「えっ? あっ、悪い――じゃなくて、ごめんなさい……」
「ははは、構いませんよ。私が力及ばずだったことは紛れもない事実です。ただ、キミの素直さは美徳ですが、それを流してくれる相手ばかりだとも限りませんので、気を付けた方が良いでしょう」
「あ、ありがとうございます」
スッゴイ失礼な第一印象を与えた十代だが、鮫島は好々爺よろしく朗らかに笑いつつも、ウィンクしながら人差し指を立てつつ一応の助言を以て、「これでこの件は終わり」と流して見せる。
やがて、ペコリと頭を下げた十代が望んでいるであろう情報を鮫島は開示した。
「よろしい。ちなみに神崎くんは『アカデミア』と『各企業』のパイプを繋げ終えたので、『水を通す』――つまり、企業側からより多くの賛同者を探しに学外にて活動しております」
「…………へぇー?」
「…………分からんのなら正直に『分からん』と言え」
「卒業後の進路先を探そうにも、此処は孤島です。交通アクセスの不便さは言わずもがなでしょう?」
どう見ても頭に疑問符が浮かんでいる十代へ、鮫島は順序だてて説明を続ける。とはいえ、そう難しい話ではない。
「ですので、欲しい生徒を進学先や企業側が引き抜く形式をコブラ校長は検討していたそうです」
そう、アカデミアの交通アクセスが最悪な問題に対し、逆に「24時間365日、凡そ常に生徒を集めておける場」と発想を逆転させたのだ。
「今は定期試験などの情報発信を積極的に行っていることで、生徒たちの能力はアカデミアにまで来なくとも把握できますから」
「……あー、はいはい、そういうことね」
「貴様、絶対に分かっとらんだろ……」
しかし、腕を組みつつしたり顔で「納得した感を出しているだけ」の十代へ、万丈目は頭痛をこらえるが――
『つまり今のアカデミアは定期試験の度に、世界中の企業へ面接を受けに行っているようなもんだよ』
「へー、そうなんだ――って、マジで!? 俺、世界中の企業に面接行ったことになってんの!?」
「ふふっ、ちゃんと分かってたのね」
「まぁ、凡そはその認識で問題ないでしょう。詳細な部分を語り始めればキリがありませんから――これで疑問は晴れたかな?」
そうして、ユベルからのザックリした説明におののく十代のリアクションに思わず苦笑する明日香。
そんな彼らの反応に鮫島も満足げだ。
「神崎さん、ホントに何やってたんだよ……」
『十代、気持ちは分からなくないけど、仮にもKCで幹部だったんだから、性格の方は切り離して考えた方が良いよ』
かくして、「神崎は学外でアカデミアに関する仕事中」との事実に十代は喧嘩別れの心配はなくなった為、一先ず悩みは晴れる――関係修復の目途は一切立っていない――が、胡蝶がパンと手を叩いて注目を集めた結果、問題は先送りとなる。
「では、遊城の疑問も晴れたことですし、鮫島先生にリスペクトの精神を教えて頂きますわ!!」
そう、授業の時間。今回のテーマは――「リスペクトデュエル」だァ!!
「……リスペクト? 確か、カイザーが良く言ってた奴だよな?」
『確か……2年生じゃ必修科目だったかな?』
「ええ、そうよ。2年生での必修科目になるわ」
「昨今のデュエルモンスターズ界では『強い
そうして、ふんわりした認識の十代へ、重要性を告げていく明日香と万丈目だが――
「幾らデュエルが強かろうと、協調性もなく自分本位な輩はいらぬ不和を生みかねん」
「海馬社長とか?」
「ば、馬鹿者!? 此処のオーナーを悪く言う奴があるか!」
『ふん、否定はしないんだね――いや……普通に出来ないか。KCって面倒な奴ばっかりだったし』
十代の爆弾発言に慌てて周囲を見回す万丈目。とはいえ、ユベルの言う通り「協調性」など海馬から一番遠い代物だろう。
「でも、リスペクトかー、なんか大変そうだなー」
「フン、相変わらず随分と他人事だな。デュエル以外に興味を持てんのか貴様は」
「万丈目くん、キミは十代く――遊城くんへの物言いが少々乱暴に見受けられます。親しき中にも礼儀あり、相手の厚意を前提にしたコミュニケーションは感心しませんよ?」
「っ!?」
だが、此処で万丈目のキツイ物言いに鮫島から注意が入る。傍から見ただけの鮫島からでも、万丈目の物言いは十代にだけ厳しいように思えるのだろう。実際その通りだが。
「ぷっ、怒られてやんのー!」
「き、貴様が普段からシャンとしていれば俺も余計なことを言わずに済むんだ!!」
しかし、十代の軽口にリスペクトの教えで後れを取っているような感覚になってしまったのか、反射的に乱暴な言葉で噛みついてしまう万丈目。
「こらこら、喧嘩は――」
「およしなさい!! 心の発露たる感情を制せぬデュエリストに未来はありませんことよ!!」
「ッ!」
しかし、その2人の口喧嘩は胡蝶の発言によって即座に制された。直ぐに冷静さを失うデュエリストなど愚の骨頂である。
そうして、2人が口喧嘩を止めた光景に仲裁が一歩遅れた鮫島も続く。
「ええ、怒りは――」
「怒りに身を任せたデュエルで、全力が出せると思っているのなら恥を知りなさい! 心にデュエリストとしての熱を灯せども、思考まで火にくべれば待っているのは敗北でしてよ!!」
「胡蝶先輩……」
『こいつ、意外とまともなこと言えたんだな』
その前に、胡蝶が十代と万丈目を厳しく注意する。かつて、亮が己に背中で教えてくれた亮のリスペクトの教えを今度は己が伝える番なのだと。
「そう、感情に流さ――」
「感情をコントロールしろと言っている訳ではありませんわ!! 人は感情と共に生きる存在なのですから――が、感情に呑まれる輩など獣と変わりなくてよ!!」
そうして、直ぐに熱くなる十代と万丈目へ、デュエリストの先達として己が贈れる限りの教えを諭した胡蝶の姿へ十代たちは「ただのカイザー大好き人間じゃなかったんだな……」と人物評価への大幅な上方修正が入る。
だが、そんな彼らの間に教えを諭すどころか割っても入れなかった鮫島はポツリと呟いた。
「………………だ、そうです」
「さ、鮫島先生、どうか気を落とさずに」
言いたいことは全部言われてしまった寂しさに打ちのめされる鮫島の背へ、明日香は励ましの言葉を贈る他ない。
とはいえ、鮫島といえど本気で拗ねている訳ではない。
「いえいえ、むしろ嬉しく思っていますよ。強さを求める程におろそかにされがちなリスペクトの心を、こんなにも大事にしてくれているデュエリストがいるのですから」
なにせ、これは普通に喜ばしいことなのだ。
デュエルの強さだけでなく、人間としての心の強さ――そう、遊戯が持つような「優しさという強さ」へ目を向けるデュエリストが増えていけば、きっと未来は明るいものとなる。
ゆえに、嬉し涙が零れる気分で目頭を押さえた鮫島は背を向けて――
「では、私はこの辺で」
「――帰ろうとしないで!?」
一仕事終えた感じで帰ろうとしたが明日香に引き留められるも、これは鮫島の小粋なジョークだ。
「オホン、レディたるものが少々取り乱しましたわ。さぁ、鮫島先生、皆さんにリスペクトの教導を」
「………………フッ」
「あの……『殆ど言われちゃってどうしよう』なんて顔はやめてください」
そうして、胡蝶に促され講師としての腕を振るおうとした鮫島のニヒルな微笑みが明日香に誤解される中、「ちゃんと聞こう」と姿勢を正した十代と万丈目へ講義が始まる。
「冗談ですよ。2人とも、胡蝶さんの仰ったことは分かりましたか? では、それを踏まえて『実際、どういう心構えでいると良いのか』を一般的な事例を交えつつ――」
ところで、胡蝶の携帯端末からピピッとアラーム音が鳴った。さすれば、胡蝶は講義を離席する旨を伝えれば――
「失礼。時間ですわ。今日はこれから亮様の出演する番組を見る予定ですの」
「胡蝶先輩!?」
「カイザーが!?」
「えっ、なにそれ! 俺も見たい!」
「私も見たいですぞ!!」
「鮫島先生!?」
もはやリスペクトの講義どころではない
そうして、この場の誰もが――
しかし、その明日香でさえ「亮の出演する番組」への興味はある。
揺れ動くマインド。
やがて「全米リーグに来る新星! カイザー亮の歴史に迫る!」を仲良く見た一同だった。
ところと日にち変わって港にて、定期船から目元を仮面で隠した黒衣の大男が港で待つ校長と3名のアカデミア生徒――十代、万丈目、明日香――へ向けて意気揚々と名乗りを上げる。
「ふっふっふ、我が名はタイタン! 千年アイテムに選ばれし闇のデュエリスト!」
「闇のデュエリスト? ってなんだ、万丈目?」
「千年アイテムとやら――早い話が、いわくつきの品でも扱っているんだろう」
「そういえば、デュエルキングも似たような首飾りをつけていたわね……」
そうして掲げる黒衣の男ことタイタンが片手に掲げる千年パズルへと十代たちの視線が集まっていくが――
「そんなスゲェものを……やっぱセブンスターズって只者じゃないぜ!」
「同じ物なのか? 何やら怪しい光を放っているが……」
「……どこか不気味な鳴動も感じるわ」
十代たちは「光る! 鳴る! エア○アルぅ~!」でお馴染みの千年パズルの威容に何処か気圧されていた。
なにせ、かのデュエルキングも有していた代物となればデュエリストとして警戒せざるを得ない。偽物だが。
だが、此処で十代たちの監督役として同席していた唯一の大人ことコブラが、情報を知る者として当然の義務を果たさねばならない。
「キミの持つ千年パズルがエジプト考古学局に管理された本物だった場合、我々は一市民としてキミと言う窃盗犯を司法の場に突き出さねば――」
「――アイテムなぞ使ってんじゃねえ!!」
途端にタイタンの手によってガチャンと地面に叩きつけられ砕け散る(偽)千年パズル。まさにマインド・クラッシュものの衝撃。
「せ、千年アイテムが!?」
「フ、フゥン、貴様らなどぉ千年アイテムの力を使うまでもなぁい」
地面に電池や機械部品が転がる中、十代はかのデュエルキングと同種のアイテムの損失に悲痛な声を漏らすが、タイタンからすればそれどころではない。
国宝を盗んだ国際的な犯罪者にされる訳にはいかないのだ。とはいえ、千年パズルが偽物であることを知っているコブラからすれば興味のない部分ゆえ、話を進める。
「そうか。ではキミとデュエルするアカデミア教師だが――」
「きょ、教師!? 生徒が相手ではないのか!?」
「伝統の記述では『アカデミア側』としか明記されていない。アカデミアに籍を置く教員の参加も問題ない筈だが?」
――は、話が違ぅ……!? いや、教師の方が此方も変に配慮せずに済むぅ。
「で、ではぁ、その相手とやらをぉ呼んでも貰おぅかぁ」
やがて、依頼内容との差異に一瞬戸惑うタイタンだが、高名な人物の子供とデュエルして面倒事に発展しかねないリスクを思えば、許容できる範囲だ。
ゆえに、コブラの圧も相まってごねもせず対戦相手を促すタイタンの元に、1人のタイタンもよく知る人物が現れる。
「神崎と申します」
「神崎さん!?」
「か、神崎!? 海馬 瀬人にKCを追われた貴様が何故、アカデミアに!?」
「あの男、自主退職ではなくKCをクビになっていたのか……」
「……海馬オーナーとは馬が合わなそうだものね」
そうして、思わぬ相手の出現にタイタンと十代たちは面食らう中、神崎は己がこの場にいる理由を語る。
「人材発掘業の方が芳しくなかったので空白期間に教員資格を獲得し、この度アカデミア非正規教員に採用されました」
「なにが教員だ! 殆ど新人ではないか!」
「ちなみに担当はレッド寮です!」
すごく世知辛い話だった。タイタンの言う通り一般的に見れば、そのセカンドキャリアは下っ端同然である。
「おしゃべりは其処までにして貰おう」
「了解しました、コブラ校長!」
そうして、コブラの苦言にビシッとへつらう神崎の姿に、タイタンは物悲しさを覚えてならない。なにせ――
――かつては裏デュエル界の
まさに「これが、かつて
だが、そんなタイタンの感傷など気にも留めないコブラの声が響く。
「なんにせよ、彼も立派なアカデミアの(非正規)教員だ。七星門の鍵を守る門番の資格がある以上、なんの問題もない――そうだろう?」
そう、これこそが神崎の計画だ。
生徒を危険に晒す訳にはいかない以上、教師が前に出る――といっても、教師にだって帰りを待つ家族や大切な人がいる。彼らの安全とて軽視してはならない。
ゆえに、神崎は考えた。
「フゥン、良いだろぉぅ。裏方の人間に負ける私ではなぁい!」
「では尋常に――」
やがて、もう色々己の感慨を投げやったタイタンと、新たな社畜となった神崎は――
「 「 デュエル!! 」 」
デュエルディスクにデッキをセットし、デュエルを以て雌雄を決す。
そう、神崎の立てた作戦を
セブンスターズなんて、1人でみんなやっつけてやる!
である。バッッッッカみたいなこと考える奴がいたものね。
完璧な作戦が完成しちまったなアア~!!
これでノーベル賞は俺んモンだぜぇええぇえ!!
Q:五階堂 宝山って誰? 今作でのオベリスク・ブルーになれる実力者なの?
A:原作:万丈目を尊敬していたが、おジャマん丈目になった万丈目に失望し、デュエルを挑んだ後輩キャラ。
性格は、レッド生徒は見下すよくある「エリート思考拗らせ」くん。だがデュエル中「昔の貴方は――」と語りかけていることから、過去の万丈目を尊敬していた部分は本物の様子。
今作:尊敬する対象の万丈目が原作から変化した分、多少影響を受けている。
原作での使用デッキもコンセプトは結構しっかりしており、エースが倒されても即座に二の矢を出せている様子から、今作ではオベリスク・ブルーとさせて頂きました。
新入生の名ありオベリスク・ブルーが1人じゃ寂しいですし(メタ)
Q:空野 大悟って(以下略)
原作にて「お触れホルス」という当時でも結構なデッキで3年時の十代に挑んだ人。3年目の十代を後一歩まで追い込んだヤベェ実力者。
(魔法を使わないコンタクト融合の強みを見せる為の相手とか言ってはならない)