前回のあらすじ
誰だ……コイツは!?
幻術か?
イヤ……幻術じゃない……!
十代!?
また幻術なのか……!?
カミューラから思わずといった具合で零れた第六感に確信を得た発言を前に、十代は浮かべていた歪んだ笑みを止めて肩をすくめてみせる。
「あーあ、やっぱバレちまったか。折角、手札確認されても良いようにHEROは厳選したってのに、これじゃ意味ないぜ」
その悪戯が見つかってしまったような表情と仕草だけを見れば、皆が知る十代そのもの。
しかし、「バレちゃった」との発言から「この十代」が何者かによる変装であることは明白――ゆえに、カミューラは内心の焦りが表層に出たように剥き出しの苛立ちを見せた。
――くっ、どうりで儀式場が起動しない筈……!
「随分とふざけた真似してくれるじゃない……!」
「いや、死ぬかもしれねぇ鉄火場って分かり切ってんだから生徒は安全圏に置くに決まってんじゃん」
「ど、どういうことだ、十代!? いや、貴様は十代じゃないのか!?」
「本物の遊城くんは何処にいったの!?」
だが、ケラケラと腹を抱えて笑う十代らしい仕草から、十代らしくない発言が飛び出す姿に状況から置いてけぼりだった万丈目たちが再起動するが――
「あっ、悪ぃな2人とも――でも安心してくれよ。この闇のデュエルが終わったら直ぐ避難してくれれば大丈夫だからさ!」
「それで納得できる訳が――」
「納得なんて求めてねぇんだ、万丈目。これは『上からの命令』なんだ。分かるよな?」
「くっ……」
「……万丈目くん、此処は指示に従うべきよ」
言外に「詳しくは言えないから黙って指示に従え」との十代からの一段低い声色に、凡その背景を察した万丈目たちは黙する道を選ぶ他ない。
そんな万丈目たちの姿に満足した十代――いや、偽十代はカミューラへ休戦を提案してみせる。
「よし! んじゃあ話は戻るけど……カミューラ! こっちはアンタたちの要望を叶える準備があるんだってさ! だから、闇のデュエルは適当に終わらせて協力し――」
「――黙りなさい!!」
「えぇー、もう平和的に行こうぜー」
「ふざけないで! 人間を信用するなんて冗談じゃない! 人間共が私たちに何をして来たのか忘れたようね!」
残念ながらカミューラに人間の提案を受ける選択肢などない。信じるには迫害の歴史が少々重すぎた。それに加えて、眼前の偽十代が己を騙そうとした事実を思えば首も縦には振れまい。
「でも、幻魔の計画は人間から持ち掛けられてんじゃん」
「煩い! 大体、いつまでその恰好でいるつもり! 正体を現しなさい! 目ざわりなのよ!!」
「口調の方はどうにもなんねぇんだけどな……つーか、なんで変装、解かなきゃいけねぇんだ?」
「ハァ!?」
やがて幼稚な口喧嘩に発展しかねなかった話題がカミューラの「素顔も見せない相手の話など――」との真っ当な方向に進もうとする中、偽十代は不思議そうに首を傾げてみせた。
そして、言葉を探すように宙に視線を彷徨わせた偽十代はポンと手を叩いて問いかける。
「うーん、どう説明すっかな……そうだ! 話は変わるけど俺たちの提案を受けないってんなら、アンタどうするつもりなんだ?」
「決まってるじゃない。アンタを倒して、本物の遊城 十代を探しにいくだけよ」
「どうやって?」
「……なにが言いたいの?」
「ん~、だってアンタが俺の正体を見破ったのって『ユベルの有無』だろ? 外見や仕草からバレた訳じゃねぇんだから、『次に会った十代』が『本物か否かの判別』って無理じゃん」
実際問題、偽十代の言う通り「変装技術そのもの」は「カミューラも見破れてはいない」のだ。
だが、その的外れな指摘をカミューラは実際に口を裂けさせながら嘲笑う。
「アはハ! 馬鹿じゃないの! 解決策はアンタが言ってるじゃない! そんなの『ユベルの有無』を確認すれば良――」
「本物に持たせなかったら?」
「――ッ!」
「分かっただろ? もう、アンタらの計画って瓦解してんだよ。計画に必須な遊城 十代を探しようがないんだからさ」
そう、カミューラは「本物と偽物の区別がつけられない」ことを自ら示してしまっているのだ。
とはいえ、実際にデュエルすれば僅かな違和感から判断がつくやもしれないが、逐一デュエルしていては本物に辿り着く前にカミューラが捕まる方が早いだろう。
「大体、本物が『遊城 十代の姿』をしている保証すらねぇんだし、全人類の中から探し出せんの? しかも俺たちから逃げながらさ」
やがて偽十代が先程の本物らしい仕草から、らしからぬ心底馬鹿にするような表情を見せつつ己の胸に手を当てて続ける。
「それに『俺が本物の可能性』だってあるんだぜ?」
そんなあり得ない可能性すら、今のカミューラは否定できないのだと。
「まっ、俺なら本物は外国のアカデミアにでも短期留学させるって話を盛りつつ、変装させて海馬 瀬人の周辺に置いとくけどな」
「くっ……!!」
――神崎がアカデミアに1年近く関わったのは、こいつらに施す変装と演技の質を上げる為……!
そうして、カミューラは己のおかれた最悪な状況を理解し始めるが――
――私たちがカイザーの卒業までは動かないと確信した上で、最低でも1年以上を準備に費やした……!
残念ながらカミューラの予想とは異なり、神崎が今回の計画を発案・実行に移したのはカイザーの卒業後である。
オカルトの力があれば、某「一晩でやってくれました」なトンデモムーブすら可能なのだ。
閑話休題。
――変装を解かないのは使い捨てにする必要があるから? それを嫌って……いえ、もうそんなことは問題じゃない……!
もはやカミューラは「偽物の十代の正体」なんて論じている場合ではない。今は退路のない作戦に「本物の十代の居場所の捜索」なんて手間が付随した。
孤島にいると仮定しても島全土となれば、流石に探すには骨が折れる。
「本物の遊城 十代の居場所は何処?」
「言う訳ないじゃん」
「つまり、知ってはいるのね?」
「はぁ、せっかくチャンスを与えてやったのに頑固な奴だな――大体、仮に俺から聞き出したところで『そこにいる十代が本物かどうか』はお前じゃ『判別できない』って言ってんだろ?」
しかし偽十代は未だに諦めないカミューラにわざとらしくため息を吐きながら呆れてみせる。
実質的に計画が実行不可能な事実に対し、明確な解決方法を持っていない身であることを理解していないのかと。
足掻かなければ死ぬのなら分からなくもない行動だが、「要望を叶える準備がある」と示しているのだから、大人しく其方に縋って欲しいものであろう。
だが、そんな偽十代の呆れ顔へカミューラは強気な笑みを浮かべて返した。
「ライフが風前の灯火なのに随分と余裕ね。アンタが誰だかは知らないけど、遊城 十代に擬態したデッキじゃ本来の力は出せない――そうでしょう?」
「げっ、バレてる」
「そう、この闇のデュエルでアンタの命は私が握っているも同然なのよ? アンタが喋らないんなら、他の奴から聞き出すまで。だけど――」
なにせ、カミューラの計画が幾ら破綻しかけとはいえ「そんなことは関係なく」「闇のデュエルは止められない」のだ。
「――他の奴らはアンタ程に口が固いのかしら?」
ゆえに、偽十代を脅しにかかるカミューラ。
偽十代の口ぶりから「他にも偽物がいる」ことは察せられる。つまり情報源は決して少なくない。
「うーん、どうだろうなー」
「闇のデュエルで負けたアンタには世にも恐ろしいペナルティがくだるけど、私なら助けてあげられる。だから知っていることを吐きなさい」
「いや、そもそも俺、本物の場所知らねぇんだけど……」
「なら有益な情報を出すのね。私の仲間からの確認が取れ次第、助けてあげるわ。だけど、騙そうって話なら……その末路くらい想像つくわよね?」
「うへぇー、ガチで命の獲り合い続けんのかよ……もうやめようぜ? なっ?」
やがて腕を組んで悩む仕草を見せる偽十代は、辟易とした様相を見せる他ない。何が悲しくて命のやり取りを続けなければならないのか。
「聞く気はないわ。そうやってアンタがアレコレ煩いのは『私が降伏しないと不都合』だから。今はそれだけ分かれば十分よ! デュエルに戻るわ!!」
しかし、退く気はないカミューラは一旦、取引を打ち切って情報を出し易くするべく闇のデュエルで痛めつける方向へとシフト。生徒でないことが判明したのなら、多少手荒にしても問題はあるまい。
そうしてデュエルに戻れば、今はカミューラのメインフェイズ1に――
「《ユベル》がいないのなら、そのまま叩き潰してあげる! 《ヴァンパイアジェネシス》の効果! 《冥帝エレボス》を墓地に送り、蘇りなさい! 《ヴァンパイア・ロード》!!」
《ヴァンパイアジェネシス》がカミューラの手札を生命エネルギーへと変換し、握り潰して己の血を混ぜれば、滴り落ちた血より《ヴァンパイア・ロード》が形作られていく。
《ヴァンパイア・ロード》攻撃表示
星5 闇属性 アンデット族
攻2000 守1500
「バトル!! 《ヴァンパイアジェネシス》でサンダー・ジャイアントを攻撃! ヘルビシャス・ブラッド!!」
「――うぁぁあぁッ!!」
瘴気の嵐と変貌した《ヴァンパイアジェネシス》が《
偽十代LP:1000 → 400
「2枚の永続魔法《ヴァンパイアの領域》と装備魔法《アームド・チェンジャー》の効果により、ライフの回復と墓地から《冥帝エレボス》を手札に!!」
闇のデュエルにより現実となったダメージに膝をつく十代を余所に、身体を元に戻した《ヴァンパイアジェネシス》の手の平に《
カミューラLP:5600 → 6200 → 6800
「これでトドメよ! 《ヴァンパイア・ロード》でダイレクトアタック!! 暗黒の使徒!!」
そして、がら空きの偽十代へ《ヴァンパイア・ロード》が翻したマントから影のコウモリが弾丸の如く放たれた。
が、そのコウモリは偽十代を怖がるように《ヴァンパイア・ロード》の元へ踵を返し、主の周囲を飛び回るばかりで攻撃に転じない。
「どうしたの! ダイレクトアタックよ!!」
「無駄だぜ! 罠カード《立ちはだかる強敵》を発動していた! このターン、お前が攻撃できるのは倒されたサンダー・ジャイアントだけさ!」
「くっ……つまり、これ以上の攻撃は初めから出来ないって訳ね、生意気!」
とはいえ、タネを明かせば単純なもの。散って行った《
「なら魔法カード《トレード・イン》発動! レベル8の《冥帝エレボス》を墓地に送り、2枚ドロー! カードを1枚セットしてターンエンドよ!!」
カミューラLP:6800 手札2
《ヴァンパイアジェネシス》攻3000(装)
《ヴァンパイア・グリムゾン》攻2000
《ヴァンパイア・ロード》攻2000
伏せ×1
《アームド・チェンジャー》(装)
《ヴァンパイアの領域》×2
VS
偽十代LP:400 手札2
《未来融合-フューチャー・フュージョン》
フィールド魔法《摩天楼 -スカイスクレイパー-》
やがて忌々しげにターンを終えたカミューラへ向けて、偽十代はオーバーな仕草で嗤って見せる。
「あっれ~? 俺なんて簡単に倒せるんじゃなかったっけ?」
「……アンタのターンよ」
「なぁ、言われっぱなしで嫌にならない? だって惨めだもんな」
「――アンタのターンよ!!」
「おー、怖――じゃぁ、俺のターン、ドロー! このスタンバイフェイズに永続魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》の効果でNEWヒーローが降り立つぜ!!」
それは「本来の実力は出せない」と評したカミューラの言葉を上げつらうものだったが、響いた怒声に大きく肩をすくめた偽十代はデュエルに戻れば、摩天楼のビル群にサーチライトが照らされた。
「来いッ! 俺の新たな力! 《
その光に照らされるのは全身が赤きアーマーのヒーロー。その姿は灼熱の太陽のように輝き、風でたなびく空色のマントは青空の如し。
《
星7 光属性 戦士族
攻2500 守1200
「サンライザーの効果でデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に! 此処で魔法カード《ヒーローの遺産》発動! 墓地のサンダー・ジャイアントとランパートガンナーをエクストラデッキに戻し3枚ドロー!!」
やがて散って行ったヒーローたちの装備が担い手を求め、宙に浮かび上がれば――
「来た来たァ! 魔法カード《E-エマージェンシーコール》と魔法カード《
その担い手に選ばれた摩天楼に集ったヒーローの影が次々と摩天楼のライトの間を潜り抜ける。
「またまたNEWヒーローのご登場だ! 魔法カード《融合》! 2体のHEROの力を合わせ、舞い降りろ! 幻影のヒーロー!!」
さすれば、特殊繊維の布で蜘蛛のように摩天楼のビル群の隙間を飛び交う漆黒のヒーローが偽十代の元に降り立った。
「――《
その黒い拘束服のようなヒーロースーツから伸びる6本の腰布が風にたなびき、腕を組む姿は何処か「蜘蛛」を思わせる。
《
星8 闇属性 戦士族
攻2800 守2100
「
――案の定、エクストラデッキは偽装する気は皆無みたいね……いえ、相手のエクストラデッキを確認するようなカードは少数。負けられない私は採用する余地がないと踏んだ……!
「此処で魔法カード《ミラクル・フュージョン》発動! 墓地のフェザーマンとバーストレディを除外し、ミラクルフュージョン!!」
カミューラの独白を余所に、偽十代の連続融合は止まらないことを示すように摩天楼のビル群に疾風が吹き荒れ始める。
「舞い上がれ! 《
その疾風より黒きローブを風に揺らしながら現れたのは、幾重もの黄金のリングが全身に奔る淡い緑のアーマーを身に纏う風のヒーローが、両肩より噴出した風を操り宙に浮かぶ。
《
星8 風属性 戦士族
攻2800 守2200
「
「なんですって!?」
やがて《
《ヴァンパイアジェネシス》
攻3000 → 攻1500
《ヴァンパイア・ロード》+《ヴァンパイア・グリムゾン》
攻2000 → 攻1000
「それだけじゃない! サンライザーがいる限り、俺のHEROたちはエレメントの力を得る! 属性×200ポイントパワーアップだ!」
更に《
《
攻2500 → 攻3100
《
攻2800 → 攻3400
「まだまだァ! 容赦のない俺はこんなもんじゃないぜ! アドレイションの効果! 他のHERO1体の攻撃力分、相手のステータスをダウンだ! ヴィジョン・アドレイト!!」
《
《ヴァンパイジェネシス》
攻1500 → 攻 0
「バトル!! 徹底的にやってやるぜ! アドレイションで――」
「そのメインフェイズ終了時、墓地の《ヴァンパイアの幽鬼》を除外し効果発動! ライフを500払いヴァンパイアをアドバンス召喚する!!」
だが、摩天楼のビル群を駆け抜け敵陣に飛び込もうとしたヒーローたちの前に、《ヴァンパイアの幽鬼》の亡霊が夜空に赤い月を昇らせた。
カミューラLP:6800 → 6300
「このタイミングで!?」
「ジェネシスとロードの血を得て降臨せよ! 《
その赤い月の光に2体のヴァンパイアは血となって混ざり合い、その血脈より現れるは白き法衣に身を包むウェーブがかった白髪のヴァンパイア。
青年とすら見まがう若々しい姿に反し、胸部と両肩を覆う黒き鎧から伸びるマントを揺らし佇む姿だけで、高貴なる身分であることが窺える老獪さすら感じさせる。
《
星8 闇属性 アンデット族
攻2800 守2100
「召喚した《
《
《
星4 地属性 戦士族
攻 800 守2000
「ならバトル続行! アドレイションで《ヴァンパイア・グリムゾン》を攻撃! アンビション・サンクションズ!!」
「うあぁぁあぁッ!!」
《
カミューラLP:6300 → 3900
「これで身代わり効果は消えた!
更に《
「ヒーローがバトルする攻撃宣言時、相手フィールドのカード1枚を破壊する! クレイマンを破壊!!」
「くっ……! でも、ヒーローの壁はまだ1体残る!」
「だとしても
「くぅうぅッ!!」
さすれば、竜巻によって拡散された光が散弾のように飛来し、己の血で形成した三又の槍で切り払い切れなかった《
カミューラLP:3900 → 3300
「最後にサンライザーの攻撃でクレイマンを破壊だ!」
「だとしても守備表示ならダメージはないわ!」
「でも、これでアンタのヴァンパイア共は一掃したぜ! まっ、俺も鬼じゃないから、これ以上ボコボコにされたくなかったら諦めて降参するんだな! カードを1枚セットしてターンエンド!」
――仕留めきれなかったか。
やがて、最後に残った《
カミューラLP:3300 手札1
伏せ×1
《ヴァンパイアの領域》×2
VS
偽十代LP:400 手札2
《
《
《
《未来融合-フューチャー・フュージョン》
フィールド魔法《摩天楼 -スカイスクレイパー-》
「フン、相変わらず減らず口ばかり……私のターン! 2枚ドロー!」
――くっ、こんな奴に「このカード」を使うことになるなんて……!
そんな勢いに乗る偽十代へ、カミューラは口惜しそうに吐き捨てる。
幾ら《天声の服従》の効果が不発に終わってしまったとはいえ、「使い慣れた自分のデッキですらない相手」へ闇のカードを使わねばならない程に追い詰められた事実は失態であろう。
――でも、そうやって調子に乗っていれば良いわ。「このカード」があれば確実に貴方は自ら膝を折る……
だが、カミューラは内心で嘲笑う。
偽十代は「カミューラの計画の完遂は不可能」と判断しているようだがカミューラからすれば「闇のカード」で多少脅してやれば命惜しさに情報を得ることなど容易い。
状況の悪化は認めざるを得ないが、まだまだ挽回は可能だとほくそ笑む――いや、ほくそ笑もうとした。
「どうしたよ! 良いカードが引けなかったのか? それとも今更ライフコストが重くなったとか? なんせ2000ポイントも無駄にしちまったもんなぁ」
固まって動かないカミューラへ、痺れを切らしたであろう偽十代の挑発が飛ぶが、カミューラはそれどころではない。
そう、カミューラが仲間に「絶対に勝てるカード」と豪語した闇のカードには「一つだけ弱点がある」のだ。
――こいつ、自ら膝を折るの? 万が一にでも保身に走られれば……2人との約束を反故にする訳には……でも、だからって今の手札じゃ……
「本当に役に立つカードだって思うんなら使ってみれば? それとも怖い? 自分の手に負えないかもしれないもんなぁ――へへっ、ようは此処に来てビビってんだ」
思考の渦にはまり黙したまま動かないカミューラへ精神攻撃のつもりなのか偽十代は言いたい放題続けてる中――
「それとも此処に来てカードが信じられなくなったとか? ハハッ! だとしたらアンタは、まさにクズで役立たずの負け犬だな!」
「……少しばかり盤面を取り戻したからって、随分と饒舌ね」
――こんなクズが相手じゃ、このカードの確実性は薄れる……なら!!
カミューラの持つ闇のカードの弱点――それは、我が身可愛さに平然と他人を見捨てる輩には効果的でないのだ。
「魔法カード《強欲で金満な壺》を発動し、2枚ドロー!」
――よし、これなら「あのカード」を使わずに済む!
「《ヴァンパイアの領域》を墓地に送り、墓地の《ヴァンパイアの使い魔》の効果で自身を復活! 更に500のライフを払いデッキの『ヴァンパイア』1体を手札に!」
カミューラLP:3300 → 2800
やがてぶっ壊れた壺の中から出たカードを手に、フィールドの一部を血に呑み込ませたカミューラは《ヴァンパイアの使い魔》に己の血を対価として新たなる血族を手札に求め――
《ヴァンパイアの使い魔》攻撃表示
星1 闇属性 アンデット族
攻 500 守 0
「《ヴァンパイアの使い魔》をリリースして《ヴァンパイア・ロード》をアドバンス召喚!!」
血を得た《ヴァンパイアの使い魔》が集いに集えば、その影より三度《ヴァンパイア・ロード》が顕現を果たす。
《ヴァンパイア・ロード》攻撃表示
星5 闇属性 アンデット族
攻2000 守1500
「此処で装備魔法《再臨の帝王》を発動! 墓地の《冥帝エレボス》を復活し、このカードを装備!」
大地より死者の血肉と骨によって巨大な玉座が形作られれば、そこへ闇が堕ち、黒き重鎧をまとった巨躯が腰を下ろす。
二本角の兜より退屈そうに眼下を見下ろす眼差しを前に、ヴァンパイアたちは忌々しそうな視線を向ければ――
《冥帝エレボス》攻撃表示
星8 闇属性 アンデット族
攻2800 守1000
「そして《再臨の帝王》を装備したモンスターは2体分のアドバンス召喚の贄となれる! 2体分の贄となった《冥帝エレボス》をリリースし、アドバンス召喚!!」
その玉座の天より透き通るような歌声が響けば、気分を良くした《冥帝エレボス》はその身を闇へと変貌させ、冥府へ還ってゆく。
「降臨せよ! 《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》!!」
そうして、天より小さな翼で滑空するように舞い降りるのは、弱点である筈の十字をあしらった紺の修道服にも似た格好のヴァンパイアの姫君が、ストレートの白髪を噛むような仕草と共に蠱惑的な笑みを浮かべていた。
《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》攻撃表示
星7 闇属性 アンデット族
攻2000 守2000
「おいおい、そいつらじゃ攻撃力が足りないぜ!」
「召喚した《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》の効果! このカードより攻撃力の勝る相手モンスター1体を下僕とし、装備する!」
「やべっ!?」
「我が血族に忠誠を誓いなさい! サンライザー!」
微笑を浮かべる《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》の赤い瞳に魅入られたようにフラフラと歩み寄った《
「その攻撃力分、パワーアップ! そしてサンライザーが消えた今、ヒーロー共はパワーダウンよ!!」
やがて跪く《
《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》
攻2000 → 攻4500
《
攻3400 → 攻2800
「バトル! 《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》でトドメよ!!」
かくして、かつての仲間を前に闘志が鈍るヒーローたちが攻撃に移れない中、《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》に言われるがままに《
その煙が晴れた先には、闇色の刃に傷だらけになった《
「罠カード《攻撃の無敵化》! このターン、俺はバトルダメージを受けない!!」
いや、余波から偽十代を守るように《
「チッ、しぶとい坊やね……でも罠カード《アームズ・コール》により装備魔法《アームド・チェンジャー》を装備していたことで効果発動! 墓地の《ヴァンパイアジェネシス》を手札に加える!」
「だけど、《ヴァンパイア・ロード》じゃ俺の
「ふふっ、構わないわ。そのカードは融合した後は唯の置物、大した脅威じゃないもの」
やがて盾として使い物にならなくなった《
「《ヴァンパイア・ロード》を除外し、手札の《ヴァンパイアジェネシス》が再臨!」
だが、《
《ヴァンパイアジェネシス》攻撃表示
星8 闇属性 アンデット族
攻3000 守2100
「そして墓地の《冥帝エレボス》の効果! 手札の『帝王』カードを墓地に送り、自身を手札に加える」
「ってことは、まさか!?」
「そう! 当然、《ヴァンパイアジェネシス》の効果を発動! 《冥帝エレボス》を墓地に送り、《ヴァンパイア・グリムゾン》が復活!!」
更に《ヴァンパイアジェネシス》は己の転生に献身した眷属たちに報いるべく、己の血を以て大地に陣を敷き、仲間たる《ヴァンパイア・グリムゾン》を復活させ――
《ヴァンパイア・グリムゾン》攻撃表示
星5 闇属性 アンデット族
攻2000 守1400
「あハはハはッ! これで再び私のヴァンパイアたちは不死と復活の力を得た!」
口を裂けさせて笑うカミューラと共に、集った同胞たちに高笑いを上げる《ヴァンパイアジェネシス》。
そして、共に血族の栄華を喜ぶヴァンパイアたち。
「坊やが前のターン攻めきれなかった様子を見るに、今の手札に突破口となるカードがないんじゃないかしら! ターンエンド!!」
そう、これでカミューラの盤面は綺麗に元通り――どころか、単純なパワーだけなら今まで以上である。
更に、カミューラの推察も間違ってはいなかった。
カミューラLP:2800 手札1
《ヴァンパイアジェネシス》攻3000
《ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア》攻2000 → 攻4500(装×2)
《ヴァンパイア・グリムゾン》攻2000
《ヴァンパイアの領域》
《
《アームド・チェンジャー》(装)
VS
偽十代LP:400 手札2
《
フィールド魔法《摩天楼 -スカイスクレイパー-》
今、偽十代の手札にあるのは状況を打破するどころか、文字通り「使えないカード」である。状況さえ揃えば良いカードなのだが、今は完全な死に札だ。
ゆえに、このドローで全てをひっくり返す他ない。
「へへっ、ピンチこそヒーローの日常ってな! このドローで奇跡を起こすまでさ! 俺のターン! ドロー!!」
やがて、最後は十代らしくデッキを信じて奇跡のドローにかけた偽十代。
――二手ほど足りないか。
「魔法カード《闇の量産工場》発動! 墓地から2体のクレイマンを手札に!! そしてクレイマンを通常召喚!!」
内心で冷徹に戦況を察した偽十代が最後に繰り出したのは、《
いつもは守りの構えを取ることが多いせいか、今回は深呼吸するように軽く息を吐いて肩をコキコキ慣らした後、腕を軽く回してヤル気を見せていた。
《
星4 地属性 戦士族
攻 800 守2000
「クレイマンを攻撃表示で?」
その不審なプレイングにカミューラの中で警戒心が上がるも、真意が見えない。
永続魔法《切り裂かれし闇》でドローを狙える状況でもない以上、アタッカー向きではない《
「俺は装備魔法《
「こ、攻撃力2000ポイントアップですって!?」
――拙い! 《
だが、天より光と共にゆっくりと舞い降りる黄金仕立ての持ち手から伸びる透き通る刀身までもが美しい剣の姿よりカミューラの脳裏に最悪の可能性が過る。
しかし、そんな最中に《
《ヴァンパイアジェネシス》は一瞬、警戒するも《
《ヴァンパイアジェネシス》
攻3000 → 攻5000
「……? これは一体なんの真似かしら?」
「バトルだ! クレイマンで《ヴァンパイアジェネシス》を攻撃! クレイ・ナックル!!」
「っ! 何を企んでるかは知らないけど返り討ちになさい! 《ヴァンパイアジェネシス》! ヘルビシャス・ブラッド!!」
勝利の道を自らドブに捨てるようなプレイングをカミューラが不可解に思う間もなく、拍手する《
普段、放つことが滅多にない《
なんて、ことはなく普段の己を瘴気の嵐と化す技を止めた《ヴァンパイアジェネシス》が振り下ろした《
刃の破片が周囲を舞う中、至高の一品の破損に《ヴァンパイアジェネシス》の顔が驚愕に彩られる中――
「くぅうううぅう!! 装備魔法《
「なっ!?」
その刃の破片が偽十代とカミューラに雨霰と突き刺さった。
「 「 うわぁぁぁぁああぁあぁあ!! 」 」
偽十代LP:400 → 0
カミューラLP:2800 → 0
詳細は次回と言ったな――悪ぃ、入り切らなかった。
この度タタミブトン様より支援絵を頂きました。感激……! 感激の嵐……!
https://img.syosetu.org/img/user/421147/109772.png
クリボーとのツーショットです。お互い素直になれていない感じがエエっすねぇ……
~今作のカミューラのデッキ~
彼女のエースたる《ヴァンパイアジェネシス》主軸の【ヴァンパイア】デッキ。
《ヴァンパイアジェネシス》のコストの為に《冥帝エレボス》と『帝王』カードでサポートしている部分以外は一般的な【ヴァンパイア】デッキに近い。
後は《ヴァンパイアジェネシス》のコスト回収用の《アームド・チェンジャー》の為に装備魔法が多めなくらいが特徴か。
~偽十代のデッキ~
手札破壊された際に正体が発覚しないようにする為、メインデッキのHEROは通常モンスターしか採用していない。
なおエクストラデッキは「見せる用の十代のHERO融合体」が数枚あるだけで、他は全て汎用的なHERO融合体で構成されている。
後は、カミューラの「例のカード」を警戒して引き分け狙いの《