マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
スピリッツ・オブ・ファラオ「つーか(デッキ構築は)これが限界」







第287話 ミステイク

 

 

 

 振りぬかれた《スピリッツ・オブ・ファラオ》の剣を前に闇のデュエルによる実体化するダメージ――よりも想定外の一撃を前に一歩後退った神崎を余所に無情な機械音がデュエルディスクから鳴り響く。

 

 

神崎LP:600 → 0

 

 

 やがて神崎の敗北という結果だけが現実として横たわる中、剣を振り切った姿の《スピリッツ・オブ・ファラオ》がソリッドビジョンの枷から解き放たれるように消えていくと同時にアビドス三世は力尽きるように背中から地面に倒れた。

 

「ハハッ、勝った……! 余は勝ったぞ……!!」

 

 そして天へと突きあげた手の平を闇のデュエルから解き放たれ露わになった夜空へとかざし――

 

「これが勝利か……悪くない」

 

 空に浮かぶ月を掴むように握った拳を以て初めて手にした本当の勝利を噛み締めるアビドス三世は満ち足りた表情を浮かべている中、神崎は呆然と呟いた。

 

「負け……か」

 

――《Vivid(ビビッド) Tail(テール)》を《クリバビロン》ではなく、温存して《クリボーン》で蘇生した《クリボー》に使っていればあるいは……

 

 そんな神崎の脳裏に即座に己のプレイングへ頭が回るのは彼がデュエル脳なゆえか、それとも――

 

「まぁ構わないだろう」

 

――この場から一旦退けば良いだけの話。

 

 だが、すぐさま思考を打ち切った神崎は未だ立ち上がる様子を見せないアビドス三世へ歩み寄り手を差し出しながら魔力(ヘカ)によるマーキング(発信機)を図る。

 

「約束通り、この場は退きましょう」

 

「いや、構わん」

 

「……は?」

 

 しかし、そんな神崎の内心など知ってか知らずか神崎の手を取ったアビドス三世は勝者の特権とばかりに得た報酬を捨てて見せる。そう、今の彼には勝利の栄誉さえあれば良い。

 

「もとより今の余は魔力(ヘカ)を使い過ぎた身ゆえ、もはやこの世に留まり続けることは叶わん」

 

 何よりアビドス三世の身体には無茶を続けたツケが回って来た。

 

 《スピリッツ・オブ・ファラオ》の能力ありきとはいえ疑似的に大量の魔物(カー)を行使した事実――幾らデュエルの前に傷を癒されようとも、(バー)の疲弊までは無視できない。

 

「それにデュエルを通じ、其方のひととなりに信を置けるものも感じ取れた……そして、余の願いであった『正々堂々としたデュエル』も果たせたのだ――なれば、これ以上は過分であろう」

 

「カミューラを裏切ると?」

 

「フッ、そうではない。死力を尽くした余に残された時間など僅か……もはやカミューラにしてやれることなど何もないのだ」

 

 かくして、見方によれば神崎の言う通り「カミューラへの裏切り」とも取れかねない言動を並べるアビドス三世だが、晴れ晴れとした表情の当人の中では「やれるだけはやった」様子。

 

「なれば、その最後の時を其方と語らってみたいと思うのはそんなにおかしなことか?」

 

「……時間稼ぎですか?」

 

「ハハッ、全く困った男だ。なら、余の最後の時間稼ぎに付き合ってくれ――余の本当の勝利の、その栄誉として」

 

――(バー)の様子から嘘はない。魔力(ヘカ)が僅かな点も事実。

 

「語り合える程の時間が貴方に残っているようには見えませんが、それでも良ければ」

 

「それもそうだな。なら早速、聞かせて貰おう」

 

――アビドス三世はアテムのいる冥界に還る身、踏み込んだ話は出来ないが……あまり嘘を含めすぎるとアテムと会話された際に齟齬(そご)が出る。

 

 かくして、未だに疑念を拭いきれぬ神崎は冗談交じりに笑って勝者の特権を行使するアビドス三世への解答を思案する。

 

 仮にも闇のゲームの強制力がある中で「余計な情報は与えない」ことを念頭に置かねばならぬ神崎にはあからさまな偽証は叶わない。

 

 

「罠カード《もののけの巣くう祠》は何の為にデッキにあったのだ?」

 

 

「……は?」

 

 

 だが、そんな心配は無用だった。

 

 

 思わぬ問いかけに固まる神崎へアビドス三世は「説明不足か?」と感じたのか首を傾げながら続ける。

 

「む? 其方のデッキはクリボーを主にした物だろう? 中核たる魔法カード《ティンクル・ファイブスター》の為のレベル5を用意するだけなら《ジョーカーズ・ナイト》の方が扱いやすいと思ったのだが……」

 

 《ジョーカーズ・ナイト》――それはデッキの絵札の三騎士を墓地に送ることで手札から特殊召喚できるレベル5のモンスター。

 

 更には墓地の光属性・戦士族をデッキに戻すことで墓地から手札に回収することも出来るゆえ、神崎のクリボーデッキとの相性は悪くない。

 

 というより、使い切りの罠カードよりも半永久的に使えるこちらの方がデッキに適しているとすらアビドス三世は考えている。それゆえの疑問。

 

「よもや、余のデュエルでは出番がなかっただけでデッキにあったのか?」

 

「…………他に聞くべきことがあるのでは?」

 

「他?」

 

「仲間への私の対応を含め、幾らでもあるでしょう?」

 

 しかし、一般的に鑑みても神崎の言葉通りアビドス三世の話題のチョイスが謎すぎた。結果、逆に神崎の側から探られれば痛い腹の場所を明かし出す始末。

 

 神崎も混乱して――いや、かなり混乱している訳だが、聞かれても答えられる範囲に留めている辺りギリギリ取り繕えてはいるも、アビドス三世は気にした様子もなくあっけらかんと返す。

 

「それを聞いたとして、余に真意を確かめる術などないのだ。ならば、余がデュエルを通じて感じ取れた其方の心を信じたい――それでは答えにならぬか?」

 

 それは島ごと偽造して騙しにかかり、仲間(カミューラ)たちのトラウマになりかねない包囲網を敷いた相手を「信頼する」との言葉。

 

――…………正気か? それとも「仲間へ伝聞する術がない」以上は「自分が聞いても意味がない」と考えた?

 

 そんなものを信じられる程、神崎は素直でもなければお人よしでもないが――

 

「話を戻すが、絵札の騎士もデッキに入れねばならぬが繰り返し使える《ジョーカーズ・ナイト》の方が適しているようにも思えるのだが……」

 

――いや、デュエルのことしか考えてないな、これ。

 

 顎に手を当て真面目な顔で神崎のデッキコンセプトを思案するアビドス三世の姿が答えだった。

 

「どうした? 余の時間は残り僅かしか残されておらんぞ? 答えてくれぬか? 気になって仕方がないのだ」

 

「…………ハァ、引き損に成り得るカードは最低限にしたかったので」

 

「……? だが、其方のデッキは60枚だろう? 絵札の騎士の1枚や2枚、さしたる影響がないではないか」

 

「万全にデッキが回った状態でさえ、絵札の騎士を手札に抱えた際に能動的に墓地に送れず、役目を果たせないんですよ」

 

 やがて神崎は警戒している自分が馬鹿らしくなったのかポツポツと《ジョーカーズ・ナイト》の不採用理由を語りだす。

 

 とはいえ、答えは単純明快――引き(ドロー力)が強くない神崎は「引いたら手札で腐る(使い道がなくなる)カード」の採用を避けただけだ。

 

 だが、此処でアビドス三世が待ったをかける。

 

「それは盤面が空いていなければ使えぬ《もののけの巣くう祠》も同じではないのか?」

 

「罠カードは《クリブー》の効果に使えます。ブラフでセットしても良い。特殊召喚効果を持つアンデット族も無理やり召喚して《ティンクル・ファイブスター》の再展開の起点にしても良い」

 

 《もののけの巣くう祠》の発動条件に難のある部分を上げるアビドス三世だが、手札事故と友達レベルの神崎からすれば「その程度の問題(使うタイミング待ち)」は些事。

 

「ですが、絵札の騎士は『手札で抱えると』一切仕事が出来ない。召喚しても相手の破壊を待たなければならない」

 

――なにより手札事故した際に絵札の騎士を引くと詰みかねない。

 

「それが理由です」

 

「ふむ、手札で『必ず』腐る状況ゆえか……墓地に送るカードを用意しても、今度は『それ』が重くなる。合点がいった」

 

 やがて内心の一部を除いて語り終えた神崎の解答に対し、「そんな考え方もあるのか」とドロー強者(手札事故と無縁)っぷりを感じさせつつアビドス三世は納得を見せた。

 

 しかし、人差し指を一本立てたアビドス三世は体内に残る魔力(ヘカ)の枯渇の気配を感じつつ最後とばかりに追加で願いでる。

 

「余の残り時間も僅かだが――もう1つ構わぬか?」

 

「構いませんよ」

 

「余のデッキは、どうだった?」

 

――………………マジかよ。

 

 かくして相手の正気を疑い始める神崎を余所にアビドス三世は己のデッキの自慢のポイントを上げ始める。

 

 そこにいるのは威厳のある王でもなく、最強と担ぎ上げられたデュエリストでもない――ただ、普通にデュエル談義したい1人の人間の姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 そうして、時間稼ぎにもならない数分程度だったが、生前からの部下たちが膝をついて迎えに来るまでアビドス三世は観光に来た外国人くらいのテンションで談義した後、満足気にあの世へ還っていく。

 

 

 その王の旅路の最後を見送る神崎の胸中はまさに宇宙に漂う猫のよう。

 

 

 そう、まさに未知の経験であった。

 

 

 

 

 

 

 ただ、そんな未知に思考が沈んでいた神崎の意識を引き裂くようにバリバリと風を切る音が空に響いた。

 

 そんな遥か遠方よりグングンと急接近する小さな影を視界にとらえた神崎は内心で小さく舌を打つ。

 

――これは……下手を打ったか? いや、情報さえ届ければ問題ないか。

 

 やがて個人を特定されるレベルで視認された相手が相手なだけに常識的な範囲で行動しなければならない神崎へ空の音の正体である軍用ヘリより拡声器と思しきけたたましい声が届く。

 

「Freeze!」

 

「Hands up!」

 

「Put your hands behind your back!」

 

 なんらかの警告染みた異国の言葉の連続を前に神崎は手の平を隠すように両手を上げながら携帯端末を密かに操作する。

 

「Raise your hands!」

 

「Hold it!」

 

「I'll shoot if you move!」

 

「Freeze!」

 

 だが、その所作を咎めるような異国の言葉が投げかけられるも、神崎は素知らぬ顔で両の手を相手の指示に従うように頭の後ろに持っていって見せれば――

 

 

 

 発砲音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 此処でところと時間が変わって本物のアカデミアのデュエル場にて観客席の十代たちが見守る中、響みどりがセブンスターズ(偽)とのデュエルに勤しんでいた。その相手は――

 

「セブンスターズの1人! 佐竹サマがサイバー流仕込みのデュエルを教えてやるぜ! ターンエンドだ!」

 

佐竹LP:4000 手札2

《ジェムナイト・プリズムオーラ》守1400

伏せ×3

《ブリリアント・フュージョン》

VS

響みどりLP:4000 手札5

 

 大口の割には1度ばかり融合召喚し、宝石の散りばめられた白銀の騎士を呼び出しただけでターンを終えた箒頭の男、佐竹。

 

 伏せカードが3枚あるとはいえ、傍から見ればそこまで脅威には見えない。

 

「では私のターン、ドローです」

 

「その瞬間、リバースカードオープン! 罠カード《百雷(ひゃくらい)のサンダー・ドラゴン》!」

 

 しかし、響みどりが手札の1枚を手にかけたと同時に佐竹が天へと腕をかざせば落雷がフィールドに轟いた。

 

「こいつの効果でオレは墓地の雷族1体――《ジェムナイト・アンバー》を復活させ、墓地の同名モンスターを可能な限り連鎖復活!!」

 

 そしてバチバチと紫電を漏らす大地から2対のイエローの琥珀が出現すると同時に砕け散り、琥珀の内から宝石を接ぎ木したかのような人型の鎧が現れる。

 

 やがて2体の《ジェムナイト・アンバー》は手の平の宝玉から光る刃を生成し、鏡合わせのように揃った所作で敵対者である響みどりに刃を向けた。

 

《ジェムナイト・アンバー》守備表示 ×2

星4 地属性 雷族

攻1600 守1400

 

 

「だけど、前のターンに融合したモンスターも攻撃力が0だからパワー不足だぜ!」

 

 何時ものメンバーで見学している十代の宣言通り、大量展開したとはいえ佐竹の盤面は固い訳ではないが――

 

「この2体の通常モンスターをリリースし発動だ! 永続罠《暴君の自暴自棄》!!」

 

「ぼ、《暴君の自暴自棄》だと!?」

 

「知ってるのか、万丈目!?」

 

「あのカードがフィールドに存在する限り、お互いに効果モンスターを特殊召喚はおろか召喚すら叶わなくなるカードだ!」

 

 思わぬカードの発動に万丈目は宝石の騎士(ジェムナイト・アンバー)を砕いた王の怒りの声が木霊するフィールドへ瞠目してみせる。

 

「最近は強力な効果モンスターを主体にする方が多いですわ! ゆえに大抵のデュエリストにとって鬼門となるカードでしてよ!!」

 

『サイバー流はカイザーみたいなヤツばっかりだと思ったら、こんな変わり種もいるんだね』

 

 なにせ、胡蝶が説明を引き継いだ通り大半のデッキのキラー(必殺)カードとなり得る1枚――アカデミア教員の実力を身をもって知る生徒たちからしても致命的な相性の悪さは察して余りある。

 

 やがてユベルの興味なさげな視線を余所に困ったように眉をひそめた響みどりは手をかけていたカードとは別のカードを手にデュエルディスクに差し込んだ。

 

「む、厄介ね……魔法カード《カード・アドバンス》を発動して、デッキの上から5枚の順番を操作し、アドバンス召喚権利を+1」

 

 さすれば、何処からともなく竜の咆哮が木霊し響みどりのフィールドへ追い風となって吹きすさぶ中――

 

「魔法カード《名推理》発動。デッキの上からモンスターが出るまで墓地へ送り、貴方が選んだレベルなら墓地へ、それ以外なら特殊召喚します」

 

「なら、レベル8を選ぶぜ!」

 

 響みどりのデッキトップが光り輝くと共にめくられていき、次々と墓地へ送られていく。

 

「デッキの3番目がモンスターの《堕天使ルシフェル》ですが特殊召喚ができないモンスター――墓地に送られます」

 

「ハン、どっちみちそいつは『効果モンスター』! 《暴君の自暴自棄》がある限り、どうせ特殊召喚は出来ねぇぜ!」

 

「《堕天使イシュタム》の効果で手札の『堕天使』1枚を墓地に送って2枚ドロー。魔法カード《堕天使の追放》を発動してデッキから『堕天使』カード1枚を手札に」

 

 そうして佐竹が己の策に嵌った相手のもがく姿にご満悦な様子で指さすが、響みどりの背後より四枚の黒翼を持つ妖艶な褐色肌の堕天使が天へと飛び立ち、次々と新たなカードが舞い込んでいる様子を見るに堪えた様子はない。

 

「モンスターをセットし、そのカードをリリースして、モンスターを裏側守備表示でアドバンスセット――最後にカードを1枚セットしてターンエンドです」

 

 

佐竹LP:4000 手札2

《ジェムナイト・プリズムオーラ》守1400

伏せ×1

《暴君の自暴自棄》

《ブリリアント・フュージョン》

VS

響みどりLP:4000 手札1

裏側守備表示のモンスター×1

伏せ×1

 

 

 しかし、アレコレした割りには響みどりのデッキの代名詞である漆黒の翼が降り立つこともなく、防御に回ったというには些か以上に頼りない盤面でターンを終えた恩師の姿に十代は思わず己のことのように歯嚙みする。

 

「くっ、響先生の【堕天使】デッキは全部効果モンスター……通常モンスターがいないんじゃ碌に動けないぜ」

 

『なんとか《暴君の自暴自棄》の抜け道を狙ってモンスターをセットしてるみたいだけど、守りをモンスター1体に頼り切るのは不安だろうさ』

 

「でも、あの効果は自身にも及ぶ筈よ……佐竹さん? が使う【ジェムナイト】の融合体は『効果モンスター』ばかりなのに、どうする気かしら?」

 

「天上院くんの言う通りだ。今回のセブンスターズは自分で自分の首を絞めているようなものだぞ……鮫島教諭、あの門下生はどのくらいの実力なのですか?」

 

 とはいえ明日香の言う通り盤面程に響みどりが絶望的な訳ではない。

 

 なにせ永続罠《暴君の自暴自棄》の効果は「お互いに及ぶ」のだ。ゆえに同意を見せた万丈目が佐竹のデュエルスタイルに疑問を呈すれば――

 

「佐竹くんたちは私がアカデミアを去り、サイバー流道場に戻ってからの門下生です。ですが、とても向上心に溢れておりますよ」

 

「そうだゾ! オレたちは今までとは違うんだゾ!」

 

「見せてやれ、佐竹ー! 進化したオレたちの! そしてお前の力をー!」

 

 鮫島は新たな門下生となった佐竹の持つポテンシャルの評価に留めるばかり。

 

 だが、代わりに骨塚や高井戸が大人げなく対抗心を剥き出しに答えて見せた――とはいえ、彼らと鮫島の師弟関係は1、2年程度なのだが。

 

 

 此処で一応「誰、こいつら(骨塚・佐竹・高井戸)!?」とお思いの方々へ注釈すると、骨塚たちは原作のペガサス島にてキースの舎弟っぽい立場の(後に切り捨てられる)3人衆のことである。

 

 

 そんなこんなでエリート高校の生徒に謎の対抗心を燃やす新たな鮫島の門弟たちを余所に佐竹はドローしたカードを起点に動き出す。

 

 魔法カード《七星の宝刀》で《ジェムナイト・プリズムオーラ》を除外して2枚ドローし、

 

 魔法カード《闇の誘惑》で2枚ドローしながら除外した《雷電龍-サンダー・ドラゴン》の効果で《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を手札に加えていく。

 

「手札の《サンダー・ドラゴン》の効果! 手札の自身を墓地に送り、同名モンスターを2枚まで手札に加える!」

 

 かくして雷の龍たちの雄たけびが響き続ける佐竹の背後に、蛇のように長い身体を持つ緑の雷龍が半透明に浮かび上がれば――

 

「フィールド魔法《フュージョンゲート》発動! 2体の《サンダードラゴン》を除外し、融合召喚!!」

 

 その2つの影は異次元の渦より混ざり合い、その体表を毒々しい桃色に変貌させつつ頭部に2つ目の大口を開かせ牙を覗かせる。

 

「雷鳴と共に轟け! 《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》!!」

 

 そして最後に一際大きな落雷が響けば、その紫電の先より一本角の伸びる二対の頭部こと双頭を伸ばす毒々しい桃色の雷龍が鳥のような足で大地を踏みしめ現れた。

 

《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》攻撃表示

星7 光属性 雷族

攻2800 守2100

 

 しかし此処で十代は驚愕の声を漏らす。なにせ――

 

「融合モンスターを!? 《暴君の自暴自棄》がある限り効果モンスターは特殊召喚できないんじゃ!?」

 

「お勉強が足りないゾ! アレは『効果を持たない』融合モンスター! ゆえに『効果モンスターではない』んだゾ!!」

 

「っ!? 俺のマッドボールマンみたいな感じか!」

 

「いえ、遊城くんのマッドボールマンは『効果モンスター』ですよ」

 

「えっ!?」

 

「だが、逆を言えば『融合素材を除外してしまった』以上、これ以上の展開はない! 響教諭の守備モンスターで十分凌ぎ切れる!」

 

 やがて骨塚と鮫島により「デュエルのルールは複雑そうに見えて複雑だぜ!」の極致を未だに突きつけられる十代を余所に万丈目が力強くフラグ発言を設置。

 

「『サンダー・ドラゴン使い』の佐竹サマを舐めるなよォ! 魔法カード《(サンダー・)(ドラゴン)(・フュー)(ジョン)》!!」

 

 さすれば佐竹の雄たけびに応えるように天より雷雲が鳴り響き――

 

「除外された《サンダー・ドラゴン》2体をデッキに戻し、融合召喚!! 来たれ、《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》!!」

 

 雷雲を切り裂き2体目の《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》が咆哮と共に翼を広げて宙を舞う。

 

《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》攻撃表示

攻2800 守2100

 

「2体目だと!?」

 

「まだだァ! 手札の《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》の効果! 自身を捨て墓地の《サンダー・ドラゴン》を回収! そして《サンダー・ドラゴン》の効果! 同名2体を手札に!!」

 

 エースの連続召喚におののく万丈目を余所に、佐竹が手札の2本角の獣のような青き雷龍を繰り出せば、墓地より大地を砕き《サンダー・ドラゴン》の1体が佐竹の手札に舞い戻る。

 

 そして先のように、その姿を2つの幻影へと分身させれば――

 

「また融合素材が2枚揃った!?」

 

「ということは――」

 

「フィールド魔法《フュージョン・ゲート》の効果により再び、2体を除外融合!! 舞い降りろ! オレの最強にして究極のドラゴン!」

 

 フィールドの《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》が共鳴するように雄たけびを上げれば雷雲が一際巨大なイカヅチを放ち始めた。

 

「――《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》!!」

 

 さすれば、天より新たなイカヅチとなって3体目の《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》が大地を砕きながら降り立つ。

 

 その双頭の頭を揺らす巨大なる龍が3体並ぶ姿はまさに圧巻。

 

《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)

攻2800

 

「1ターンに三連続の融合……だと!?」

 

One(ワン) Turn(ターン) Three(スリー) Twin()-Headed() Thunder() Dragon()……だゾ」

 

「長い長い」

 

 よもやの3連続融合におののく万丈目へ、骨塚たちのアホなやり取りを余所に佐竹は力強く叫ぶ。

 

「見たか! オレこそが真の『サンダー・ドラゴン使い』!! 『サンダー・ドラゴンの申し子』!!」

 

 そう、己こそが雷龍たちが相応しい担い手なのだと。断じてどこかの社長の弟ではないのだと。

 

「でも、佐竹の奴、さっきから謎のアピール続けて……一体どうしたんだゾ?」

 

「いや、夢でモクバ副社長がサンダー・ドラゴンを我が物のように使う光景を見たらしいんだよ……ほら、『リンス』だか『リンク』だか、うなされてたヤツ」

 

「……訳が分からないゾ」

 

 とはいえ、残念ながら佐竹の魂の叫びは付き合いの長い骨塚たちにも分からない。

 

 

 ゆえに軽く解説すれば――

 

 《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》は原作アニメのバトルシティのレアカード登録画面でアンティ指定――つまりフェイバリット指定していた佐竹の相棒たるカード。

 

 なのだが、当の《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》たちがゲームアプリたる「デュエルリンクス」のDSODワールドでモクバ様のデッキに設定されている現実。

 

 つまり、ただでさえ絶望的な佐竹のデュエルリンクス参戦は一層絶望的になったのである! ……まぁ(ほぼモブやし)エエか。

 

 

 閑話休題。

 

 

 そんな電波を受け取った訳ではないが、魂から響く謎の焦りからなる自己アピールに猛る佐竹へ、鮫島は温和な口調でいさめて見せる。

 

「佐竹くん、自負を持つのは構いませんが、過信に変わりかねない程になってはいけませんよ。それは心の隙となって油断に繋がります」

 

「そ、そうだった! オレはクリーンでグレートなデュエリストに生まれ変わったんだった! ご指導ありがとうございます! 鮫島師範!」

 

 かくして、まだ浅いながらも確かな師弟関係を感じさせる2人とその友人たち。

 

 

 そう、お察しの通り本物の学園に送り込む「偽のセブンスターズの人員」は、鮫島ことサイバー流から都合を付けて貰っていたのだ!

 

 何故、骨塚たちがサイバー流に所属するようになったかといえば、骨塚の中の人がサイバー流の関係者(丸藤 翔)だったり、佐竹が使う《サンダー・ドラゴン》と《サイバー・ドラゴン》の名前が似ているなんて安易な理由では断じてないことを此処に記しておこう。

 

 誰得な話過ぎて語られることはないだろうが――

 

 サイバー流の師範代として、迷えるデュエリストたちに手を差し伸べる活動を始めた鮫島と、将来への道に迷いを抱えていた骨塚たちと縁が繋がった――的なメモリーがあるのだ。

 

 

 デュエルに戻ろう。

 

 

「永続魔法《一族の結束》を発動し、バトル! 《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》の三連撃を受けろ! 轟雷のツイン・ボルテーション!!」

 

「ですがセットしていたのは《堕天使アムドゥシアス》――その守備力は2800で互角。突破は叶いません」

 

 《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》が2つの頭から姿を現さぬ相手へイカズチのブレスを放つが、その雷撃が直撃すると同時に漆黒の翼で身を守る持つユニコーンたる《堕天使アムドゥシアス》の姿を照らし出す。

 

 だが、響みどりの言葉に反し、《堕天使アムドゥシアス》が盾とした翼がピシリ、ピシリとひび割れ始めた。

 

《堕天使アムドゥシアス》裏側守備表示 → 表側守備表示

星6 闇属性 天使族

攻1800 守2800

 

「無駄だぜ! 永続魔法《一族の結束》により俺の《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》たちの攻撃力は800アップしてるんだからよォ!」

 

 なにせ墓地に眠る同胞たちの力を糧に《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》たちの身体は紫電を帯び、放ったイカズチのブレスもより激しさを増していく。

 

《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》×3

攻2800 → 攻3600

 

「アイツ、龍なのにドラゴン族じゃないのか!?」

 

「ややこしいが全て雷族のようだな」

 

「拙いわ! これじゃあ残り2連撃を凌ぎ切れない!」

 

 雷煙が吹き荒れる響みどりのフィールドへ向けて明日香の悲痛な声が響くと同時に、黒き翼の砕ける音が響く。

 

 

 だが、そんな中で響みどりが天に掲げた指をパチンと鳴らした。

 

 

 さすれば、パラパラと砕けたように舞い散る漆黒の羽吹雪が逆巻いた先より傷一つない《堕天使アムドゥシアス》がいななきを上げながら前足を上げて見せる。

 

「なんだと!?」

 

「アムドゥシアスが破壊される筈だゾ!?」

 

「手札の《堕天使テスカトリポカ》は破壊される『堕天使』の身代わりとなれます」

 

 やがて驚く佐竹と骨塚の前に、《堕天使アムドゥシアス》を庇うように立つ漆黒の装甲を持つ人型の堕天使が嘲笑するように逆立った紫色の髪を直して見せる。

 

 だが、その身体は先の雷撃により大きく損壊しているが健在を示すように《堕天使アムドゥシアス》が喉を鳴らせば、満足したように消えていった。

 

「くっ!?」

 

「よっしゃぁ! これで、このターンは大丈夫だぜ!」

 

「たとえ苦手なデッキとデュエルすることになっても、動き方一つで思いのほかアッサリ状況を打開することも往々にしてあります。大切なのはデュエルの流れの中に隠れるさざ波を――隙を見逃さないことが大切なんですよ」

 

『鮫島の言う通りだよ、十代。マティマティカとのデュエルだって、ちゃんと慎重に動けばもっと楽に勝ててた筈だ』

 

「でもさ鮫島先生、隙のない相手だったらどうすりゃ良いんだ?」

 

 計算外に歯嚙みする佐竹の様子を一例に鮫島が講義を見せる中、ユベルからの苦言に十代が思わず問いかければ、鮫島は己の顎に手を当て茶目っ気を含んだわざとらしい仕草で返す。

 

「おや? それは響先生が既に実演されていたのですが……」

 

「えっ!?」

 

「ハハハ! トップエリートって言っても大したことないゾ!」

 

「では、骨塚くん――遊城くんに説明を」

 

「えぇっ!? えーと……(た、高井戸……分かるゾ?)」

 

「ハン! 分かる――訳ねぇだろ!!」

 

「では皆さんで一緒に考えてみましょう。互いに意見を出し合えば、ひらめきの種になるやもしれません」

 

「わ、分かったゾ……」

 

 そうして、お勉強が足りないノーネと言われかねない組がヒソヒソと意見交換し始める中、十代も万丈目を頼れば――

 

「よし、じゃあ万丈目たちも――って、みんな分かってたりする?」

 

「当然だ」

 

 流石に答えを知っている面々には頼れぬ現実が横たわる中、戦況は激変し始めていた。

 

「だが、所詮はその場しのぎ!! 残りの《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》たちの連続攻撃は止められねぇ!!」

 

「――って、それどころじゃねぇ!?」

 

「流石は鮫島教諭が手ずから鍛えられたセブンスターズたち――生半可な実力ではないな」

 

「デッキ相性があるとはいえ、教員の中でも上位の実力の響先生がこうも手古摺るなんて……」

 

「追撃し! ダイレクトアタックだ! 《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》たち!!」

 

 フォース1年生たちの尊敬の混じった眼差しを背に残る2体の《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》を嗾ける佐竹だが、此処で再び響みどりがパチンと指が鳴らせば――

 

「その攻撃時、アムドゥシアスの効果。ライフを1000払い、墓地の『堕天使』魔法・罠1枚をデッキに戻し、その効果を得る――罠カード《背徳の堕天使》の効果適用」

 

響みどりLP:4000 → 3000

 

 《堕天使アムドゥシアス》が黒翼を広げれば天より光が差し込み、掲げた一本角へと力が宿る。

 

「貴方のフィールドのカードを1枚破壊します。当然、選ぶのは――」

 

「チィッ!? 《暴君の自暴自棄》が!?」

 

 《堕天使アムドゥシアス》のいななきと共に一本角から放たれた黒い光の刃は《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》たちを素通りし、佐竹のフィールドに突き刺さり爆散。王の断末魔が木霊する。

 

「よし! これで響先生もモンスターが呼べるぜ!」

 

「だけど、まだ佐竹には3体の攻撃力3000オーバーの《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》たちが残ってるゾ!」

 

「モンスターを呼ばれる前にお陀仏だぜ!」

 

「任せときな! 攻撃続行だ! 《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》!」

 

 そうして響みどりのデッキを縛る暴君の無法(永続罠の効果)が解き放たれた事実に歓声を上げる十代だが、骨塚と高井戸の言う通り新たな堕天使たちが舞い降りる前に本丸を落とせば良いだけだ。

 

 ゆえに《堕天使アムドゥシアス》を蹴散らし、最後の《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》を進軍させる佐竹に三度「パチン」と天へ掲げた響みどりの指の鳴る音が響いた。

 

「罠カード《死魂(ネクロ・)融合(フュージョン)》発動。墓地の3体の『堕天使』を裏側除外し、融合召喚を行います」

 

 さすれば今の今まで雷雲が立ち込め続けていた空が真っ二つに割れ、禍々しいまでの光がお互いのフィールドを照らし出す。

 

「今こそ天を地に落とせ」

 

 その光の先より球体状に包まれた黒き十の翼がほどかれていく。

 

「黎明の堕天使」

 

 黒翼の庇護が解き放たれ、その身を覆う漆黒の鎧が垣間見えただけで大気の温度は熱を失い、

 

 携えられた漆黒の大盾と、獲物を探すように脈動する血脈の這う長剣が黒翼の鞘より解放されるだけで周囲の重圧は増し、

 

「ルシフェル」

 

 やがて十の翼を広げ、長い白髪を風に揺らす儚げな青年が頭上へ赤き天輪を浮かべ空にたゆたう。

 

 その冷たい瞳が空の支配者である筈の《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》たちを見下ろしていた。

 

《黎明の堕天使ルシフェル》攻撃表示

星12 闇属性 天使族

攻4000 守4000

 

「こ、攻撃力……4000……!?」

 

――いや、ビビるな! 俺の手札には《雷源龍-サンダー・ドラゴン》がいる! こいつの効果で《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》を更にパワーアップ(攻撃力を500強化)させれば問題ねぇ!

 

 天に座す絶対者たる《黎明の堕天使ルシフェル》からの重圧へ見上げることしか叶わない佐竹は一歩後ずさるも脳内で立ち向かう術を模索し、一筋の光明を見出すが――

 

「《堕天使ルシフェル》を融合素材とした黎明の堕天使の効果――融合召喚時、相手フィールドの全てのカードを破壊します」

 

 しかし、響みどりが頭上に手を掲げて指を鳴らす所作に合わせて《黎明の堕天使ルシフェル》が天へと剣を掲げれば――

 

「なっ!?」

 

 

黎明(ダウン)の鎮魂歌(・レクイエム)

 

 

 パチンと響みどりの指を鳴らす音を合図に天より黒き閃光が世界を照らせば、《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》たちの身体は抵抗すら許されぬようにボロボロと崩れるように消えていく。

 

 

 そうして、一瞬にして更地になった己のフィールドを前に佐竹は、骨塚たちと共に呆然と言葉を零す他ない。

 

 

「馬鹿……な……!?」

 

 

「佐竹の雷龍たちが一瞬で……」

 

 

「こ、これが企業デュエル無敗の女王†漆黒の翼†の実力なんだゾ……!?」

 

 

「ぶっ」

 

 

「なにそれ! カックイイー!」

 

 

 そんな中で響みどりは顔を背けて噴き出した――のだが、そんな恩師の変化に気づかぬ十代はシンプルに凄そうな呼び名にテンションを上げるばかり。

 

 

「そういえば響先生の元の勤め先はKCだったわね」

 

「プロネームのようなものだろう。有名になれば、1つや2つ出てくるものだ」

 

「流石は、あの魑魅魍魎(ちみもうりょう)が蔓延るKCを生き抜いた女傑だゾ……」

 

「む、むむ昔の話です」

 

 明日香たちが恩師の過去を思い出す中、恐ろし気に冷や汗を拭う骨塚を遠回しに黙らせようとする急にそっぽを向きつつ開いた手で顔を隠した響みどりだが――

 

「流石、漆黒の翼だぜ!」

 

「 や め な さ い 」

 

 無邪気に若かりし頃の古傷(黒歴史)を抉る十代の純真さに思わず満足町風の制止を要請するも、効果は望み薄だろう。

 

「くっ、たとえ†漆黒の翼†が相手だろうともオレにはコイツが残ってる! カードを1枚セットしてターンエンドだ!!」

 

――たとえ攻撃力4000だろうと、罠カード《百雷のサンダー・ドラゴン》で3体の《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》が復活する! こいつらで凌いで次のターンにパワーアップした《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》の一撃を食らわせてやるぜ!

 

 とはいえ、響みどりの過去のアレコレはデュエルを再開した佐竹の一発逆転をかけた伏せカードを前に観客の意識もやや其方に逸れ始めていく。

 

 

 そのことに安堵したように息を吐いた響みどりはデッキからカードを引いた後、手癖で指を鳴らして効果発動を宣言。

 

「なら私のターン、ドロー! ルシフェルの効果――ライフを1000払い墓地の【堕天使】1体を、テスカトリポカを特殊召喚!」

 

響みどりLP:3000 → 2000

 

 《黎明の堕天使ルシフェル》が長剣で手の平を斬り、滴る血が大地を濡らせば墓地こと地獄より《堕天使テスカトリポカ》が這い出し、損傷の治った身体で飛翔。

 

そして、王の慈悲を前に腕と翼で臣下の礼を取った。

 

《堕天使テスカトリポカ》

星9 闇属性 天使族

攻2800 守2100

 

 

 ただ、此処で十代は一つばかり気になった様子で鮫島に問いかけた。

 

「なぁなぁ、鮫島先生! 響先生の指鳴らすのって理由あるのか?」

 

「あれはルーティーンの一種でしょう。己のリズムを整える為に、ああいった所作を行う方も珍しくはありません」

 

 それは「なんでカードの発動の度に指を鳴らすのだろう」とのある種の当然の疑問に鮫島は私見を述べるが――

 

 本当のところは原作の響みどりが登場する漫画版GXでも明かされてはおらず、謎に包まれている部分だ。

 

 作中でも誰も言及していない部分されていないが、唯一ハッキリしていることもある。

 

「へぇー、なんかカッコイイからとかじゃないんだな!」

 

「ブッ、ゲフンゲフン――私のターン!! ドロー!!」

 

 十代の言う通り、なんかカッコイイ所作だよね。

 

 

 

 最後に後のデュエル経過は永続罠《暴君の自暴自棄》を失った佐竹が堕天使の猛攻を止めきれず、響みどりは勝利するのだが――

 

 

 舞い降りる堕天使たちの黒翼から零れた羽の舞うフィールドに佇む響みどりの姿はまさしく「漆黒の翼」と呼ばれるに相応しいものだったと記しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回も(偽の)セブンスターズに勝利した知らせを受けた後、コブラは校長室にて神妙な表情で呟いた。

 

「やはり定時連絡は完全に途絶えた……か」

 

――仕損じたな、神崎。

 

 神崎からの連絡が途絶えただけでなく、コブラ側からのコールにすら応答しない。何か問題が起きたことは明白。

 

「佐藤、最後の連絡はキミに当てた『それ』だけかね?」

 

「はい、『貴方が対処し』とまで」

 

「私ではなく、キミに――連絡相手を精査する暇すらなかったのか、それとも『キミである必要があった』のか判断に困るところだ。キミはどう思う?」

 

「それがサッパリです。私には彼の考えていることは分かりかねますよ」

 

 そうして明らかに途中で送信されたメッセージを前に、神崎の意図と状況を推し量るコブラだが、佐藤の方はさじを投げたようにお手上げと両手を上げるばかり。

 

「だが、『其方で』ではなく『貴方が』と記した以上、誰か『特定の人物に対処させるつもりだった』ことは確かだ。何か気が付いたことがあれば直ぐに知らせてくれ」

 

「…………随分と無茶を仰る」

 

「無茶でも何でもやらねばならん。未だ事件性すらない状況では司法すら頼れん……戦力だけは過剰な程に用意があるのが幸いか」

 

「方針が決まれば知らせてください」

 

 やがて状況が状況なだけに顔に影を浮かべる佐藤だが、コブラが受話器に手をかける姿に「邪魔をしては悪い」とばかりに退室すれば――

 

「ああ、分かった。オブライエン、私だ――ああ、警戒してくれ。最悪の事態が想定される――其方は問題ない。人員は既に準備済みだ。ただ、念のためキミの息子にも動いて欲しい」

 

 佐藤へ生返事をしながらコブラはかつては戦場を共にした相手へ、事態の収束への協力を願い出る。

 

 その後は手持ち戦力をより増強すべく要請したり、今の警戒態勢を一段引き上げた警備の為の指示を出したりと忙しく動き出す。

 

 

「なんだ、なにか気づい――キミか。なんの用かね?」

 

 

 だが、そんな中で予想外の客人が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 またまた数日が過ぎた頃、学園に近づく不審な小型船を発見したアカデミア側は招かれざる客人が島の港に上がった途端に刺客を差し向けた。

 

「 「 アカデミア用務員が1人! 学園の門番! 迷宮兄弟!! 」 」

 

 それは左右を固める何時もの中華風の恰好ではなく用務員の恰好をした迷宮兄弟だったり、

 

「アカデミア用務員が1人! 神の担い手! レアハンター!」

 

 中央で膝をついて両手を広げる用務員の恰好をしたことで爬虫類っぽい目しか残らず、原作の面影が皆無なエクゾ使いの(元)グールズだったり、

 

「アカデミア用務員が1人! 否! 高貴なる者! ジーク・ロイド!」

 

 センターを陣取るも、用務員の恰好を「気品に欠ける」と拒否し、貴族風の恰好のまま偽名を名乗る(元)シュレイダーの長兄だったり、

 

「アカデミア用務員が1人! サイキッカー! ピート・コパーマイン!」

 

「アカデミア用務員が1人! 猛き血の眷属! ティラ・ムーク!」

 

 此方も用務員の恰好を拒否し、普段のパンクな格好の男とゴシックドレスの女が各々左右の両翼にて斜めに天を指差すカード・プロフェッサーたちだったり

 

「ア、アカデミア用務員が1人! き、北森です!」

 

 一番後ろで両の手を伸ばし、我の強い面々のポーズに統一感を持たせようと奮闘する北森だったり、

 

「……アモンだ」

 

 その謎陣形に一切関与するなく少し離れたところでメガネの位置を直すアモンを含めた――

 

 

「 「 「 我らアカデミア用務員北部7人衆!! 」 」 」

 

 

 用務員という適当な理由でアカデミアに滞在するデュエリストたちの渾身の合体決めポーズ(1名不参加)を前に、侵入者ことタニヤはイロモノを見るかのような視線で返した。

 

 

「8人いるように見えるが?」

 

 その胸中は「コイツら、ツッコミ待ちか?」と言ったところ。

 

「ちょっと坊や。折角決めたんだからポーズ取りなさいよ」

 

「ニャハハ、少年ノリ悪ーい」

 

「アモンよ、気にすることはない。私の気品を前にして委縮するのは必然だとも」

 

 だが、用務員7人衆(8名)の中の用務員の正装ことツナギを着ることすら拒否した優雅組のティラ・ムーク、ピート・コパーマイン、ジーク・ロイド(偽名)の3名は最年少なアモンをイジるのに忙しい。

 

「安心なされよ、我らはタッグデュエル専門」

 

「然り。其方(そなた)らセブンスターズ側にタッグデュエリストがいた際の人員である」

 

「……そうか。だが、まずは名乗られたのなら名乗り返さねばなるまい」

 

 しかし、2人で動作をシンクロさせながら一歩前に出た迷宮兄弟からの説明に一先ず納得することにしたタニヤは「其方(そなた)」呼びや「いる筈のないタッグデュエリスト」への備えから神崎より情報が渡っていないことを察し――

 

「私はセブンスターズの1人! アマゾネスの戦士、『タニヤ』!」

 

 タニヤは注目を集めるように声を張って名乗りをみせつつ挑発を入れる。

 

「さぁ、鍵の守り手たちよ! 我が歩みを止めてみせるが良い!!」

 

「フン、では一番槍の栄誉はお前たちにくれてやろう」

 

 さすれば、己が最後の砦と認識しているジークはタニヤの実力を測る意味合いも込めて出番を譲れば――

 

「ならば神を従える私が終わら――」

 

「では僕が」

 

「 「 待たれよ! アモン殿は最後の砦と聞いておる! 先鋒は任せられん!! 」 」

 

 手柄が欲しいエクゾ使いの(元)グールズがデュエルディスクを構えようとした瞬間にアモンが前に出たと同時に、迷宮兄弟にまとめて制される。

 

「こんな坊やが大将だなんて――そんな実力者なのかしら?」

 

「お嬢さん、デュエリストに年齢を問うなどナンセンスだよ」

 

「アモンくんはス、スッゴク強いですよ!」

 

 出鼻を挫かれ無言で固まるエクゾ使いを余所に、ティラ・ムークへマウントを取るジークと頑張って場を収めようとする北森。

 

 そんなやいのやいのする用務員’sたちの中、エクゾ使いはテイク2を敢行する。

 

「オホン、では神を従える私が終――」

 

「ニャハハ、じゃあ、おねぇさんが決めて良いよ~?」

 

「フン、まとまりのない奴らだ。あの坊やが無理なら……そうだな」

 

「ならば今こそ、神を従える私の力を――」

 

 のだが、ピート・コパーマインの提案に乗ったタニヤの姿に手柄がどうしても欲しいエクゾ使いは相手が食いつきそうな単語を選び賢明に自己アピールするが――

 

「お待ちを――どうか、この役目。私に譲っては頂けませんか?」

 

「また増えるのか……」

 

 なんかいつの間にか増えた9人目こと鮫島の姿に、流石にゲンナリし始めるタニヤ。

 

 しかし、そんな鮫島の行動をジークはかつてのように鼻で嗤って見せる。

 

「誰かと思えば……いつぞやの道場主かね。学園で失脚した汚名を雪ぎたいようだが今は下がりたまえ。キミの手に余る事態だ」

 

「いいえ、私が前に出ねばならなかった……もっと早くからこうするべきだったのです」

 

 だが、鮫島の瞳に宿る確固たる意志の力を垣間見たジークは懐から棒状の鍵を放り投げた。

 

「…………フッ、何を言っても無駄なようだ。ならば、この私の鍵(参加券)を受け取りたまえ」

 

「感謝します」

 

 鮫島が空中で掴んで見せた「それ」はセブンスターズが求める幻魔を封じる7つの鍵の1つ(偽物)。

 

「(えっ? アレって勝手に渡して良いものなの?)」

 

「(良いんじゃな~い? 責任云々はあの人が負うんだろうし、ニャハハ)」

 

 とはいえ、偽物とは知らぬティラ・ムークやピート・コパーマインからすれば「なにやってんだ、この没落貴族」とコソコソ話す他ない。

 

「わ、我が神の力を――」

 

「話は済んだようだな。好みではないが致し方あるまい――戦士よ、名を聞こう」

 

「サイバー流、師範代――鮫島!! 参る!!」

 

 やがて、エクゾ使いの言葉を打ち切ったタニヤは鍵の守り手どころか鍵すら興味などなかったが、鮫島からの名乗りを聞けば此処に来て初めて獰猛に笑みを浮かべる。

 

「ほう、かのカイザーの師か……良き闘志だ! 申し分ない!!」

 

 最後の最後で己の望む大当たりを引いたかもしれない、と。

 

 

「 「 デュエル!! 」 」

 

 

 その気迫のままに幕を開くデュエルの行く末は果たして――

 

 






鮫島「――(初めから)こうすれば良かったのです!!」




Q:佐竹ってサンダー・ドラゴン使いなの?

A:アニメDMでのバトルシティ編にて(エクゾ使いのグールズのPC情報から)
佐竹のアンティカードに《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》が指定されております。
(ただ、当時は素の《サンダー・ドラゴン》のみの時代なので【融合】デッキでしょうけど)



~今作の佐竹のデッキ~

リメイクされた【サンダー・ドラゴン】融合体ではなく、《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》を主軸にするべく
《暴君の自暴自棄》を絡めた【非効果雷族】とも言うべきデッキ。

デッキ融合のある【ジェムナイト】の雷族を出張させて素早く墓地に通常モンスターの雷族を溜め、《百雷のサンダー・ドラゴン》で複数蘇生して《暴君の自暴自棄》の発動コストを賄う。

後は《暴君の自暴自棄》の影響化で動きの鈍った相手を《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》の連続融合で押し切ろう。

《百雷のサンダー・ドラゴン》を含め、各種【サンダー・ドラゴン】のサポートのお陰で《双頭の(サンダー)(・ドラゴン)》が倒されてもリカバリーは非常に容易なのが頼もしい。

(ただ、普通にNewサンダー・ドラゴン融合体ガンガン使った方が強いのは密に密に)


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