マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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遊戯VSキース 後編のハズでしたが

長くなりそうだったので一旦切り上げました――中編になります

2話でデュエルを纏めきれなかった……


前回のあらすじ
アテム氏、記憶がなくとも歴戦のディアハの経験は色あせない……

キースさんマジ鉄壁




第30話 過去に縛られた者たち

 僅か1ターンの攻防で自身のフィールドを遊戯に焼け野原にされたキース。

 

 だがその心に動揺はない――この程度の危機などキースは幾度となく味わってきたのだから。

 

「――やるじゃねぇか……だが俺様もこのまま終わるわけにはいかねぇのさ! 俺様のターン! ドロー! まずは3枚目の永続魔法《補給部隊》を発動!」

 

 このデュエルで手札のアドバンテージをもたらしてきたカードが三度発動される。

 

「そして俺は魔法カード《オーバーロード・フュージョン》を発動! 自分フィールド上もしくは墓地のモンスターを除外し機械族・闇属性の融合モンスターを融合召喚する!」

 

「墓地にはあのカードが既に!」

 

 親友の城之内を沈めたカードを呼ぶ準備は既に整っていた。

 

「俺様は墓地の《ブローバック・ドラゴン》と融合素材モンスター1体の代わりにできる《融合呪印生物-闇》を除外し融合召喚! 刃向う奴を銃弾の雨に沈めな! 機械龍の最終形態! 《ガトリング・ドラゴン》!!」

 

 《ブローバック・ドラゴン》に《融合呪印生物-闇》が絡みつき、その身体を変質させていく。

 

 そして現れるは遊戯の親友、城之内を沈めた3つ首の機械龍。その頭のガトリング砲が獲物を探しフラフラと彷徨う。

 

《ガトリング・ドラゴン》

星8 闇属性 機械族

攻2600 守1200

 

「さらに《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を通常召喚!」

 

 ジェット機のようなマシンがキースのフィールドでホバリングする。

 

《強化支援メカ・ヘビーウェポン》

星3 闇属性 機械族

攻 500 守 500

 

「《強化支援メカ・ヘビーウェポン》の効果を発動! コイツを自分フィールドの機械族モンスター1体――《ガトリング・ドラゴン》に装備し攻守を500ポイントアップ!」

 

 《強化支援メカ・ヘビーウェポン》が変形し《ガトリング・ドラゴン》の背中に取り付きドッキングし《ガトリング・ドラゴン》の身体を包む。

 

《ガトリング・ドラゴン》

攻2600 守1200

攻3100 守1700

 

「そして《ガトリング・ドラゴン》の効果を発動! コイントスを3回行い表が出た数だけ、フィールド上のモンスターを破壊する!」

 

 キースの予期せぬ宣言に遊戯は思わず叫ぶ。

 

「なっ! 無謀だぜ! 2枚以上表が出れば《ガトリング・ドラゴン》まで!!」

 

 遊戯の言うとおり無謀である。

 

 

 《ガトリング・ドラゴン》の効果はコインの表の数だけモンスターを「破壊しなければならない」効果である。

 

 だが今互いのフィールド上のモンスターは遊戯の《マジシャン・オブ・ブラックカオス》とキースの《ガトリング・ドラゴン》のみ――

 

 もしコインが2枚以上表になれば破壊されるモンスターは遊戯の《マジシャン・オブ・ブラックカオス》だけに留まらずキースの《ガトリング・ドラゴン》まで及ぶ。

 

 

 ゆえにキースの決断はリスクが高すぎたかに思われた。

 

「俺様のデュエリストの勘が囁くのさ――攻めの手を休めるなってなぁ! だが心配には及ばねぇ! 《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を装備したモンスターが破壊されるとき代わりにコイツを破壊できるからなぁ!」

 

「なんだとっ!」

 

 何時の間にやらこのギャンブルにはリスクがほとんどない状態となっていた。

 

「さぁ、運命のコイントスだ! 《ガトリング・ドラゴン》!」

 

 

 そして《ガトリング・ドラゴン》の2()つの頭が火を噴いた。

 

 《マジシャン・オブ・ブラックカオス》は降り注ぐ弾丸に撃たれた反動で体は揺れ、続く弾丸を受け続け死のダンスを踊り続ける。

 

 《ガトリング・ドラゴン》の方を向いた頭も銃弾の雨を降らせるが《強化支援メカ・ヘビーウェポン》に守られ破壊はまぬがれる。

 

「チッ! 運が良すぎたな……だが《ガトリング・ドラゴン》は《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を代わりに破壊することで無傷だ!」

 

 役目を終え《ガトリング・ドラゴン》からボロボロと落ちていく《強化支援メカ・ヘビーウェポン》――だが道は開けた。

 

《ガトリング・ドラゴン》

攻3100 守1700

攻2600 守1200

 

「そして《マジシャン・オブ・ブラックカオス》……撃破! そしてバトル! 《ガトリング・ドラゴン》でダイレクトアタック! ホイール・オブ・クラッシュッ!!!」

 

 倒れ伏す《マジシャン・オブ・ブラックカオス》の横を《ガトリング・ドラゴン》が横切り遊戯を引き潰さんとホイールを回す。

 

 

「そうはさせないぜ! 俺は墓地の《ネクロ・ガードナー》を除外し相手の攻撃を1度だけ無効にする!」

 

 遊戯に迫る《ガトリング・ドラゴン》を赤い肩当てをした白い長髪の鎧戦士が受け止め、そのまま《ガトリング・ドラゴン》を押し返した。

 

「決められなかったか……俺様はカードを3枚セットしてターンエンドだ!」

 

 遊戯は先程のターンキースのフィールドをまっさらにしたにも拘らず、すぐさま立て直したキースに全米チャンプの底力を垣間見る。

 

 

 遊戯は自身のデュエリストとしての魂に火が灯り続けているこの状況に高揚を隠せない――世界は広いのだと。

 

「俺のターン! ドロー! まず魔法カード《マジック・プランター》を発動! 俺のフィールド上の表側の永続罠《蘇りし魂》を墓地へ送り2枚ドローッ!!」

 

 《デーモンの召喚》を蘇生したフィールドの《蘇りし魂》が茨に包まれ沼地へ沈み、沼地から2枚のカードが浮かんでくる。

 

「これならっ! 魔法カード《シャッフル・リボーン》を発動! 自分フィールドにモンスターがいない時、俺の墓地からモンスターを1体特殊召喚する! 蘇れ! 《クィーンズ・ナイト》!」

 

 大地が割れ、そこからカードが飛び散り《クィーンズ・ナイト》が浮かび上がる。

 

 だがその身体は所々にひび割れのようなものが入っており、《クィーンズ・ナイト》は苦しげに膝をついた。

 

《クィーンズ・ナイト》

星4 光属性 戦士族

攻1500 守1600

 

「確かソイツで蘇生されたモンスターは効果が無効化されエンドフェイズに除外されるはずだ――さぁ、どう動きやがる!」

 

「もちろん仲間の力を合わせるのさ! 《キングス・ナイト》を召喚! そして効果発動!」

 

 金の紅い鎧を纏った絵札の三騎士が最年長、《キングス・ナイト》が己の剣を《クィーンズ・ナイト》の隣でそっと手を貸す。

 

《キングス・ナイト》

星4 光属性 戦士族

攻1600 守1400

 

「俺のフィールドに《クィーンズ・ナイト》が存在する時にこのカードが召喚に成功した時! デッキから《ジャックス・ナイト》1体を特殊召喚する! 今こそ集え! 絵札の三騎士よ!」

 

 《クィーンズ・ナイト》と《キングス・ナイト》の剣が交差し光の道を創りだす。

 

 そこから現れる青い鎧を纏った絵札の三騎士がリーダー《ジャックス・ナイト》が遊戯のフィールドに降り立ち、2人の剣と己の剣を重ねた。

 

《ジャックス・ナイト》

星5 光属性 戦士族

攻1900 守1000

 

「そして今! 絵札の三騎士を束ねる! 魔法カード《置換融合》を発動! その効果により俺のフィールドのモンスターのみで融合召喚を行う!」

 

 絵札の三騎士が天に向かって剣を重ね合わせ眩い光を放つ。

 

「絵札の三騎士よ! その力を重ね天位騎士を呼び覚ませ! 融合召喚――」

 

 光の輝きはさらに増し、三騎士を包んでいく。だが――

 

 

 

「させるかよぉ! 罠カード《無力の証明》を発動!」

 

 《ガトリング・ドラゴン》がその場で旋回し、大竜巻となって周囲に暴風が吹きすさび、絵札の三騎士の光を打ち消す。

 

「こいつは俺様のフィールド上にレベル7以上のモンスターがいる時、テメェのフィールド上のレベル5以下のモンスターを全て破壊する!」

 

「なんだと! 俺のモンスターは全てレベル5以下……だ」

 

 《ガトリング・ドラゴン》の発生させた大竜巻は地面に剣を突き立てその場で互いに支え合いながら踏ん張る絵札の三騎士を轢き進むように呑み込む。

 

 大竜巻の中に消えた絵札の三騎士の断末魔のような声と共に3本の剣が地面に突き刺さった。

 

「これで《置換融合》は不発だ! 《無力の証明》を発動するターン、俺様のモンスターは攻撃できねぇが……今はテメェのターンだ、関係はねぇ」

 

「くっ……なら! 俺は魔法カード《龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)》を発動!」

 

 遊戯のフィールドに龍の装飾がなされた鏡が現れる。

 

 その鏡には《カース・オブ・ドラゴン》と《暗黒騎士ガイアロード》の姿が映し出されていた。

 

「その効果により俺のフィールド・墓地からドラゴン族の融合素材モンスターを除外し融合召喚を行うぜ! 俺は墓地の《カース・オブ・ドラゴン》と《暗黒騎士ガイアロード》を除外し融合召喚!」

 

 鏡の中の《カース・オブ・ドラゴン》に《暗黒騎士ガイアロード》が「よっこらせ」と腰を掛ける。

 

(あま)翔ける龍騎士よ! 閃光の一撃を放て! 来いっ! 《天翔の竜騎士ガイア》!!」

 

 鏡を砕き現れたのは新たな力を得た《カース・オブ・ドラゴン》――《獄炎のカース・オブ・ドラゴン》に乗った暗黒騎士の姿。

 

《天翔の竜騎士ガイア》

星7 風属性 ドラゴン族

攻2600 守2100

 

「そして《天翔の竜騎士ガイア》の効果を発動! コイツが特殊召喚に成功した時、自分のデッキ・墓地から《螺旋槍殺(スパイラル・シェイバー)》1枚を選んで手札に加える! そして今手札に加えた永続魔法《螺旋槍殺(スパイラル・シェイバー)》を発動!」

 

 《天翔の竜騎士ガイア》の2双の突撃槍の先端部から風が渦巻き突撃槍全体を包み込む。

 

「だがソイツの攻撃力は《ガトリング・ドラゴン》と同じ2600! 相打ちが限界だぜ、どうするよ!」

 

「今に分かるさ! バトル! 《天翔の竜騎士ガイア》で《ガトリング・ドラゴン》を攻撃!」

 

「なら迎え撃ちな! 《ガトリング・ドラゴン》!」

 

 空の敵を撃つべく狙撃ポイントへ向かって疾走する《ガトリング・ドラゴン》。

 

「させないぜ! 《天翔の竜騎士ガイア》は自身の攻撃宣言時、バトルするモンスターの表示形式を変更できる! ヘル・バーニング!!」

 

 《天翔の竜騎士ガイア》の竜――《獄炎のカース・オブ・ドラゴン》がブレスを放ち大地を焼く。

 

 焼け焦げた大地は脆くなり《ガトリング・ドラゴン》の車輪の歩みを妨げる。

 

 《ガトリング・ドラゴン》には防御するしか手立てはない。

 

「だが守備表示になったことで俺様へのダメージはねぇ!」

 

 キースの残りのライフはたった100。

 

 一度の戦闘で吹き飛ぶ数値だが守備表示ではダメージは()()()には発生しない。

 

「それはどうかな? 永続魔法《螺旋槍殺》の効果で《暗黒騎士ガイア》、《疾風の暗黒騎士ガイア》、《竜騎士ガイア》は貫通効果を与える!」

 

 《ガトリング・ドラゴン》の守備力は1200。

 

 《天翔の竜騎士ガイア》の攻撃力2600に貫通効果が加わればキースへのダメージは1400――残りのライフを削り切るには十分な数値だ。

 

 だが指定のモンスターは遊戯の場にいない。

 

「だがテメェのフィールドには――まさか!」

 

 そしてキースは思い出す、1回戦で戦った孔雀舞の使用したカード群を。

 

「そのまさかさっ! 《天翔の竜騎士ガイア》はフィールドでは《竜騎士ガイア》として扱う! 貫け! 螺旋槍殺(スパイラル・シェイバー)!!」

 

 《天翔の竜騎士ガイア》の突撃槍から風の弾丸が《ガトリング・ドラゴン》を襲う。

 

 迎撃に銃弾の雨を天に向けて放つ《ガトリング・ドラゴン》だが、《天翔の竜騎士ガイア》がいる高度まで届かず文字通り銃弾の雨となって降り注ぐ。

 

 その銃弾の雨を突き進み迫った風の弾丸が《ガトリング・ドラゴン》を貫通し、キースを打ち抜かんと迫る。

 

「そう簡単に通すかよっ! 罠カード《攻撃の無敵化》を発動! コイツの2つの効果から1つを選び発動する!」

 

 その2つの効果は

 フィールド上のモンスター1体をこのバトルフェイズ中、戦闘及びカードの効果では破壊されない――モンスターを守る効果。

 

 このバトルフェイズ中、自身への戦闘ダメージを0にする――デュエリストを守る効果。

 

 

 《ガトリング・ドラゴン》は咆哮のような機械音を上げる――キースに「俺は平気だ」と言わんばかりに……

 

 キースはそんな《ガトリング・ドラゴン》の姿を目に焼き付けつつ宣言した。

 

「俺様が選ぶのはこのバトルフェイズ中、自身への戦闘ダメージを0にする効果だ!」

 

 キースの前に張られたバリアが風の弾丸の軌道を僅かにずらし、キースの足元の地面を抉る。

 

「そして俺様のフィールドのモンスターが破壊されたことで永続魔法《補給部隊》の効果で1枚ドロー!」

 

「これも防がれたか!」

 

「防ぐだけじゃねぇさ! さらに俺様はもう1枚のリバースカードをオープン! 罠カード《時の機械-タイム・マシーン》!」

 

 キースのフィールドに柩のようにも見える時を巡る機械が煙と共に降り立つ。

 

「コイツの効果で自分または相手のモンスター1体が戦闘で破壊され墓地へ送られた時、破壊された時のコントローラーのフィールドに同じ表示形式で呼び戻すぜ!」

 

 その扉が「ギギッ」という音と共に開かれ――

 

「その狂気を再構築しな! 帰還せよ! 究極の機械龍! 《ガトリング・ドラゴン》!!」

 

 傷一つない《ガトリング・ドラゴン》がホイールを唸らせながら飛び出しキースを庇うように立ち塞がる。

 

《ガトリング・ドラゴン》

星8 闇属性 機械族

攻2600 守1200

 

 キースのモンスターは途切れない――追い詰めている筈の遊戯は自身が追い詰められているような思いに囚われる。

 

「俺は墓地の《シャッフル・リボーン》を除外し効果を発動、俺のフィールドのカード1枚――永続魔法《螺旋槍殺》をデッキに戻してシャッフルし、1枚ドロー!」

 

 今の遊戯に次のターン《天翔の竜騎士ガイア》を守れる目算はなかった――故に新たな手を打つためにカードをドローする。

 

「カードを2枚セットしてターンエンド。そして《シャッフル・リボーン》のドロー効果を使ったエンドフェイズに、俺の手札を1枚除外するが、その手札はない」

 

 ターンを終えた遊戯は今まで味わったことのない感覚に見舞われる――それが何かは相棒たる表の遊戯にも分からない。

 

 

 

「なら俺様のターンだ。ドロー! まずは《ガトリング・ドラゴン》の効果を発動! コイントスを3回行い表が出た数だけ、フィールド上のモンスターを破壊する!」

 

 《ガトリング・ドラゴン》の3つの頭が音を立てて起動する。

 

「やはり使ってくるか!」

 

 今度は《強化支援メカ・ヘビーウェポン》のような保険もない――だが遊戯は確信に近い思いがあった。

 

 キース・ハワードはここで手を緩めるような男ではない、と。

 

「頼むぜ! 《ガトリング・ドラゴン》!」

 

 そして《ガトリング・ドラゴン》の3()つの頭が火を噴いた。

 

 《ガトリング・ドラゴン》は自身に銃弾を撃ち込み、壊れた部品を飛び散らせ己の重さを軽くする。

 

 そして重さが減ったことで助走速度を高め、残り僅かな命の炎を燃やし跳躍。

 

 《天翔の竜騎士ガイア》を射程距離に捉え、無事に残しておいた最後の頭が火を噴いた。

 

「これで互いのフィールドは空だ……だが俺様のフィールドのモンスターが破壊されたことで永続魔法《補給部隊》の効果で1枚ドロー」

 

 地面に落ち、砕け散る《ガトリング・ドラゴン》と大地に伏す《天翔の竜騎士ガイア》。

 

「だがその最後は無駄にはしねぇ! 魔法カード《終わりの始まり》を発動するぜ。コイツは俺様の墓地に闇属性モンスターが7体以上存在する場合に発動できる――テメェの最初のターンの《手札抹殺》のお蔭で数は十分に足りているからなぁ!!」

 

 フィールドに広がる巨大で複雑怪奇な魔法陣が組み上がっていく。

 

「そして俺様の墓地の闇属性モンスター《ガトリング・ドラゴン》・《メカ・ハンター》・《スロットマシーンAM-7》・《振り子刃の拷問機械》・《タイム・イーター》の5体をゲームから除外しデッキから3枚ドローするが――」

 

 魔法陣の5つの地点に呑みこまれていく5体のモンスターたち、そしてすべての贄を呑みこむ。

 

「さらにソイツにチェーンして速攻魔法《連続魔法》を発動! コイツは自身が通常魔法発動時に発動でき、手札を全て捨て――と言っても1枚しかねぇが、このカードの効果をその通常魔法の効果と同じにする!」

 

 贄を呑み込む魔法陣の真上に全く同じもう一つの魔法陣が現れた。

 

「そしてチェーンは逆処理を進めるぜ! まずは《終わりの始まり》と同じ効果となった《連続魔法》の効果で3枚ドロー!」

 

 宙に浮く魔法陣が黒い光を放ちキースの手元に集まる。

 

「そして《終わりの始まり》の効果でさらに3枚ドロー!」

 

 《ガトリング・ドラゴン》の破壊によって《補給部隊》を通して得た1枚のドローが多くの手札となる。

 

「ククッ! いいカードが舞い込んだぜ。魔法カード《死者蘇生》を発動し墓地のモンスター1体を特殊召喚! さあ、仇討といこうじゃねぇか! 《リボルバー・ドラゴン》!」

 

 呼び出されるのはキースが長らく連れ添った相棒たるカード。

 

 その相棒が黒いボディを唸らせキースのもとに現れる。

 

《リボルバー・ドラゴン》

星7 闇属性 機械族

攻2600 守2200

 

「バトル! 《リボルバー・ドラゴン》でダイレクトアタック!!」

 

 《リボルバー・ドラゴン》が遊戯にその銃口を向けるが――

 

「させないぜ! 永続罠《蘇りし魂》を発動し墓地の通常モンスターを守備表示で呼び戻すぜ! 死の淵より舞い戻れ! 《ブラック・マジシャン》!」

 

 地面に魔法陣が描かれ、そこから片膝をついた《ブラック・マジシャン》が現れ、遊戯に忠を示し、腕を交差させ守りの構えを取る。

 

《ブラック・マジシャン》

星7 闇属性 魔法使い族

攻2500 守2100

 

「なら《ブラック・マジシャン》を攻撃するぜ! ガン・キャノン・ショット!!」

 

 《リボルバー・ドラゴン》の3発の銃弾が守備表示の《ブラック・マジシャン》を狙い火を噴くが――

 

 銃弾と《ブラック・マジシャン》の間に割って入る小さな影が現れる。

 

「やらせはしないぜ! 俺は自分のモンスターが戦闘で破壊される場合、代わりに墓地の《サクリボー》を除外する!」

 

 その影の正体、《サクリボー》が《リボルバー・ドラゴン》の銃弾をその小さな身体で代わりに受け止め、「クリィイイ」と断末魔を上げ爆散する。

 

 空には親指を立てた《サクリボー》が幻視される。

 

「これも防がれたか……だが――」

 

 中々遊戯のライフは削られない――しかしキースはこれで良いと思案する。

 

――これでヤツの墓地で発動する類のカードは使い切ったはずだ……

 

 いよいよ遊戯にも後がなくなってきた。

 

「俺様はバトルを終了し、《リボルバー・ドラゴン》の効果発動! 対象はテメェの相棒だ! ロシアン・ルーレット!!」

 

 《リボルバー・ドラゴン》の頭と両手の回転式拳銃のリボルバーが回転を始める。

 

「だったらその効果にチェーンして罠カード《闇霊術-「欲」》を発動! 効果はアンタも知っての通りだ。俺は闇属性の《ブラック・マジシャン》をリリースしてカードを2枚ドローするぜ!」

 

 「欲」の文字が遊戯のフィールドに浮かび上がる。

 

「だがアンタが手札から魔法カードを見せればこの効果は無効にできるが――どうする?」

 

 相棒たるカードを捧げた効果、遊戯は出来れば発動させたいが――

 

「……クッ、俺様は魔法カードを見せねぇ」

 

 キースの手札に魔法カードはないようだ――それとも手札を見せることを嫌ったのか……

 

 そして《リボルバー・ドラゴン》の効果が発動するが「カチッ」とした音が響くだけで銃弾は発射されない――ハズレだ。

 

「不発だった、か……俺様はカードを3枚セットしてターンエンドだ」

 

 キースはターンを終えつつ遊戯を視界に入れる。

 

 

 

 今のキースはこのデュエルを通して武藤遊戯というデュエリストがどんな人間かを見極め始めていた。

 

――上手くは言えねぇが――2人いるな……二重人格って奴か?

 

 医者ではないキースはそう言った精神疾患は詳しくないが己のデュエリストの経験がそう強く確信させた。

 

 




キース氏デュエルで遊戯の正体に迫るッ!


しかし、リシドの正体を見破った城之内のように

デュエリストは何故デュエルしただけで色々と分かるのか……


次回、遂に決着!?




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