マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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次はバトルシティ編だと言ったな……あれは嘘だ!

しばらくはバトルシティ編に向けてのお話です

前回のあらすじ
決闘者の王国編 完!

デュエリスト2名様、ご招待~
どこにって? 直ぐに分かるさ……



DM編 第4章 幕間 力を欲する者たち
第37話 それぞれの一歩


 ペガサス島での大会も終わり、全米チャンプとのデュエルの一件から遊戯たちに詰め寄る影も鳴りを潜めた今日この頃、童実野町の一角にある武藤双六が経営する小さなゲームショップ「亀のゲーム屋」に勢いよく入店する影があった。

 

「いらっしゃい――なんじゃ、城之内か、遊戯なら出かけておるぞ。待つんじゃったら最近入荷したワシの友人が家族で作った新しいゲームがあってな、どうじゃワシと一緒に――」

 

 孫の親友でもある顔馴染みである城之内の来店に双六は新しいゲームに誘うが――

 

「いや、今日は遊戯に用があってきたわけじゃねえんだ――じいさん、アンタに頼みがある」

 

 そう切り出した城之内の目は真摯に双六を見据えており、ただならぬ様相が垣間見えた。

 

「ん? 儂に? どうやら深刻な話のようじゃな……それでどうしたんじゃ?」

 

 城之内がここまで緊迫した状況での「頼み」に身構えた双六。そんな双六に城之内は勢いよく頭を下げ、絞り出すように言い切った。

 

「俺を、俺をデュエリストとして一から鍛え直してくれ!」

 

 双六は城之内のデュエルの師として教えていたが、それはペガサス島での大会の前に教えるべき点は教えきっている。

 

 城之内もそのことは分かっている筈のことゆえに双六は思わず尋ねた。

 

「急にどうしたんじゃ? 儂は基礎的なことは教え終えた。後はそれを磨いていくだけじゃと伝えたじゃろ?」

 

 そのことは城之内も痛い程よく分かっていた。だが止まれなかった。

 

「俺はあの大会で気付いた! 思い知らされたんだ! 今のままじゃいけねぇって――俺には足りねぇもんが多すぎる!」

 

 彼は光に魅せられていた。

 

「ねぇ頭振り絞って考えた! だけど今の俺にはどうすれば遊戯たちがいるところに辿り着けんのかがこれっぽっちも分かんねぇんだ!」

 

 城之内がペガサス島での大会を――いわゆる一流のデュエリストの戦いを肌で感じ取ったがゆえの焦り、同年代の遊戯や海馬はそのステージで戦っているにも関わらず自身は真の意味でそのステージにはいない。

 

 そんな城之内を双六は眩しいものを見るかのように目を細める――過去の自身に重ねたのかもしれない。

 

――迷える若人に道を指し示すのも儂ら「大人」の仕事かの?

 

「……頼む」

 

「頭を上げるんじゃ、城之内……今の儂がどこまで伝えられるか分からんが、やれるだけのことはしよう」

 

 その双六の言葉に顔を上げる城之内。

 

「じいさん……」

 

「前のときのようにはいかんぞ、もっと厳しくなるぞい! さぁデッキは持ったな城之内!」

 

「ああ!」

 

 こうして城之内は師、双六と共にデュエリストとして高め合う――親友(とも)と肩を並べる為に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある研究室の一室、オレンジ色の幻想的なエネルギーが巨大な容器の中で浮かぶ中、ツバインシュタイン博士がなんらかの機械に情報を入力している。

 

 そして確認を終えると顔を上げ、依頼主に旨を伝える。

 

「フム、よし。Mr.神崎、準備が完了しました。これでいつでも起動できます。…………しかし、これ程のデュエルエナジーをいったいどこから集めたのですか?」

 

 準備ができたことを神崎に伝えつつもツバインシュタイン博士はこれほど大量のデュエルエナジーをどう集めたのかが気になってしょうがない。

 

――デュエルエナジー

 それは「遊戯王GX」にて使用されたデュエリスト同士がデュエルした際に発生する未知のエネルギーである。

 

 そのエネルギーは多種多様な目的で使用可能であるとツバインシュタイン博士が解き明かしたが、それと同時に致命的な欠点も露わになった。

 

 それは「大量に用意することが難しい」ことである。

 

 普通のデュエリストにデュエルさせても大した量が得られないにもかかわらずデュエリストを疲弊させ、無理に多くとればデュエリストを潰しかねない実情があった。

 

 だがこれ程の量を集めたというのにデュエリストが潰れたなどの話は一切ない。

 

「Mr.神崎、貴方の秘密主義を私はどうこう言うつもりはありませんが、容易に集められる手段があるのなら私の方にも回してもらえませんか? 決して損はさせません。必ず結果を出しますので――」

 

 そう言ってツバインシュタイン博士は「星型の窪みがついた腕輪」を片手に頭を下げる。

 

「秘密主義だなんて……ただツバインシュタイン博士がこのエネルギーを発見した段階で薄く、広く回収しただけです。ですので、いきなりこれだけの量が取れたわけではありませんよ」

 

「そうだったのですか。それならば仕方ありませんな…………ハァ」

 

 当然嘘である。

 

 薄く広く回収したのは本当だが、一度で大量に取れた件は少し嘘が入っていた。

 

 様々な調査の結果、デュエルエナジーは何でもない普通のデュエルの際にも微量ながら発生し空気中に霧散していることが判明したため、神崎はどうせ霧散するならば、と全国的に配置されるデュエルリングにデュエルエナジーを回収する機構を取り付けた。

 

 なおその機構を取り付けさせた神崎も気付いていないが、ソリッドビジョンがやたらと自由に動き回っているのもコレが原因だったりする。

 

 デュエルエナジーによって精霊との親和性が高められた為であろう。

 

 

 そしてペガサスが開催した大会にもデュエルグローブにその機構を組み込み、コツコツ集めていたのだが、遊戯VS海馬、城之内VSキース、遊戯VSキース、ペガサスVSキースのデュエルにて大量のデュエルエナジーが回収されたのだ。

 

 さすがは伝説のデュエリストである。

 

「ですがある程度の貯蔵ができれば、ツバインシュタイン博士の研究用にも都合ができますので、今は彼の――乃亜の治療をお願いします」

 

 その話を聞きツバインシュタイン博士のテンションは一気に振り切れる――現金な爺さんだ。

 

「本当ですか! なんだか催促してしまったようで申し訳ない! それにこの少年の治療に関してなら御安心を! 今こそ研究の成果をご覧にできます! では――起動!」

 

 ハイテンションのまま起動レバーを引くツバインシュタイン博士。

 

 それと同時にデュエルエナジーが乃亜の眠るカプセルに送られ、カプセル内に幻想的な光が溢れる。

 

 そしてカプセルが開かれた。

 

 ゆっくりと起き上がり身体の調子を確かめるように動く乃亜、そして神崎たちの方へ向き挨拶する。

 

「こうして実際に顔を合わせるのは初めてだね――神崎、一応、初めましてと言っておこうかな?」

 

「こちらこそ初めまして乃亜。身体の調子はどうですか?」

 

「いや、特に問題はないよ」

 

「こちらでモニターしている分も問題ないようですぞ!」

 

 確かめるように返す乃亜と今回の施術の成功に自信を持って返すツバインシュタイン博士。

 

「そうですか。では、さっそくで悪いのですが君の今後について決めておきましょう。君自身はどうしたいですか? 希望があるなら可能な限り叶えます」

 

 その神崎の言葉に顎に手をあてて考え込む素振りを見せる乃亜。そして今決めたように話し始める。

 

「海馬乃亜のままで構わないさ、あとはそうだな…………君への借りを返すために、この優秀な僕が君に力を貸してあげるよ。それで構わないかい?」

 

 そして乃亜は僅かに不安を垣間見せながら自身の望みを告げる。

 

「それが君の望みなら私はそれを尊重します。さて海馬社長にどう説明したものか……バックストーリーをいくつか考えないといけませんね」

 

 神崎としては名を変え住む土地を変える雲隠れコースがオススメだったが、内密に動かれるよりはましだと了承をかえす。

 

「その辺りは任せるよ。フフッ、瀬人の驚く顔が目に浮かぶよ」

 

「それともう一つ――剛三郎殿とお会いするのはどうしますか?」

 

 乃亜は過去に剛三郎に認めてもらうことが一種の目標であったと知る故の神崎の問いだが――

 

「…………いや、今は止しておくよ。父さんにはキチンとした形で会いたいからね」

 

「そうですか。ではそのように」

 

 そんな神崎と乃亜のやり取りに、ツバインシュタイン博士は「これ私が聞いても大丈夫なんだろうか……」と心配しつつ、大丈夫だと自身に言い聞かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 KCの一室で2人のデュエリストが神崎を待っていた。

 

 なぜ2人並んで座って待っているのかというと、受付の人間が2人の見せた神崎の名刺を確認するとすぐさまこちらの部屋に案内され、「しばらくお待ちください」と言われたためである。

 

 そうして出された茶菓子を手に取りながらダイナソー竜崎がインセクター羽蛾に気さくに話しかける。

 

「まさかオマエも呼ばれとったとはなぁ~」

 

「一緒にするな! あくまで俺がメインでお前がオマケだろうさ!」

 

 おそらく同じ用件でここにいると勘付いた羽蛾は今のうちに力関係を決めておこうと竜崎に言葉のジャブをぶつけるが――

 

「おっ! この茶菓子旨いで! さすがは天下のKCやな。エエもんおいてるわ!」

 

「聞けよ!」

 

 暖簾に腕押しであった。

 

「そう言わんと食うてみぃ! メッチャ旨いで! いらんかったらワイがもらうで!」

 

「やるわけないだろ! まったく…………あっ、おいしい」

 

 そんなやり取りを続けていると、部屋の扉が開かれる――2人の待ち人が来た。

 

「おっ! 来はったか……ワイはダイナソー竜崎っちゅうもんで――」

 

 そのまま自己紹介を続けようとした竜崎は言葉は続けられなかった。

 

 2人がいる部屋に現れたのは筋骨隆々で髪の毛を逆立てた強面の男。端的にいって竜崎と羽蛾は怯んだ。

 

「私が神崎殿に代わり君たちに今回の契約について説明させてもらうギース・ハントだ。気軽にギースで構わない。では契約内容の説明に入らせてもらう――」

 

 自己紹介をして竜崎と羽蛾に契約内容の書かれた資料をそれぞれに渡し、説明に入ろうとするギースだが羽蛾がそれを遮る。

 

「ちょっと待てよ! 俺は神崎って奴に、言わ……れ、て……」

 

 ギースの強くなった眼光に言葉を続けられない羽蛾。だがギースは目頭を少し押さえてから羽蛾の疑問に答える。

 

「あの方は多忙な身だ。ゆえに代役として私がここにいる。それと……仮にも君の上司になる可能性のある方だ。呼び捨ては感心せんな」

 

「す、すみません!」

 

 思わず敬語になる羽蛾。

 

 そして話が一旦止まったチャンスを逃さずに竜崎が質問する。

 

「ちょっと待ってもらえまへんか? ワイはまだこの話に乗るときめたわけで、は――」

 

 次はお前か。とでも言いたげなギースの目力の強さに言葉尻が小さくなっていく竜崎。

そんな竜崎を安心させるかのようにギースは続ける。

 

「それならなおのこと説明を聞くと良い、契約内容をよく吟味した上で決めてもらって構わない。何も今すぐ答えをださなくてもいい――むろん早いに越したことはないのだが」

 

「そ、そでっか……」

 

 竜崎はこのまま無理やり契約させられるものかと危惧していたためその言葉に一安心である。

 

「では契約内容の説明に入らせてもらう――」

 

 ギースからの契約内容の説明を神妙な顔持ちで聞く竜崎と羽蛾。2人はギースが怖いのか完全に委縮しており、借りてきた猫のような状態である。

 

 だが契約内容は悪いものではなかった。

 

 その後、大まかな説明が終わりギースは竜崎と羽蛾を交互に見やった。2人の背筋はピンと伸びる。

 

「――大まかな内容は以上だ。何か質問はあるかな?」

 

 その言葉にギースの眼光に委縮しながらも竜崎は質問を投げかける。

 

「言ってはった企業間での契約デュエル?とは別の業務なんですけど敵対デュエリストの摘発や捕縛って具体的にはどんなもんなんですか?」

 

「そうだな……最近では『グールズ』と言う組織を知っているか?」

 

 竜崎は埋没された記憶からその組織の噂を思い出す。

 

「……たしかレアカードの偽造や盗みやっとるけったいな連中でしたっけ」

 

「ああ、最近KCの方にその対策を願い出る声が出てきたため、そういった輩を相手どることが上げられるな。だが仮に入社したとしても君たちをそのまま送り出すことはないと思ってくれていい」

 

 実際にはKCではなく、被害をこうむった顧客が神崎に解決を願ったゆえだが、ギースは表向きの理由を竜崎たちに話した。

 

「要はデュエリストの風上にも置けんようなヤツを取っちめるってことでんな!」

 

「ああ、その認識で間違いはない」

 

 ギースの返答に理解を見せる竜崎。

 

 その竜崎の質問の返答の間に必要書類に記入を終えギースに差し出す羽蛾だが、ギースは思わず尋ねずにはいられない。

 

「即決してもらえるのはありがたいが、これは君の今後を左右するであろう決断だ。一応確認しておくが本当にかまわないのか?」

 

「ヒョヒョッ! 俺はそこにいるのとは違って考えた上で来ているのでかまいませんよ~」

 

 竜崎を視線に入れながら答えた羽蛾に竜崎は苛立ちつつ書類を書き進めていく。

 

「ギースはん、別に契約しても、後で契約解除してもエエんでっしゃろ?」

 

「問題はない。だがそう言った場合は事前に申し出る必要がある。その辺りは一般的な退職手続きとさして変わりはない」

 

 竜崎は最後の質問の返答を受けつつ、必要書類に記入を終えギースに差し出す。

 

「せやったらエエんや。よっしゃ! 書き終わりましたで!」

 

「ふむ、書類に不備はない。では今後ともよろしく頼む」

 

 そう言ってギースは竜崎と羽蛾に握手を交わし2人の契約の証とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、神崎は職場にて待ち人を待ちつつ新聞を眺めていた。

 

「『キース・ハワード氏の引退説が囁かれるも本人が否定』と――」

 

 そんな記事を読みつつ、その他の記事に目を向けると――

 

 偽造カードの製造での逮捕者やプロデュエリストの積み込み発覚によるプロ資格剥奪、各国のデュエル事情など、様々な「デュエル」について書かれた数々の記事。

 

 ちなみにこの新聞は「デュエル新聞」などではなく、「一般的な新聞」である――「この世界では」という注釈がつくが。

 

 過去の一般的な新聞を知っているだけにデュエル一色となっている今の新聞に神崎は違和感しかない。

 

 

 今日も今日とて世界は平常運転であった。

 

 

 その事実に若干目が死に出した神崎の耳に扉をノックする音が響く。

 

『ギースです。牛尾を連れてまいりました』

 

 神崎は新聞をしまいながら入室を促し、牛尾たちと対面する。そんな牛尾は緊張の中にいた。そして意を決して牛尾は尋ねる。

 

「で、今回はいったいどんな悪巧みの片棒を担ぎゃいいんですかい?」

 

 神崎は牛尾の「悪巧み」という発言にショックを受けつつ本題に入る。

 

「ならさっそく本題に入ります。牛尾君、新しく入った2人のデュエリストの教導を君に任せたい」

 

「新しく入った奴らって、たしか大会に出てた――なんちゃら竜崎となんとか羽蛾でしたっけ? なんでまた俺に? 新人の教導は俺の時みたいにギースの旦那がやるんじゃないんですかい?」

 

 牛尾は2人のデュエリストをアヤフヤながら思いだし、そういったことは先輩の領分だと返す。それにギースが答えた。

 

「私はしばらく忙しくなるからな、それにそろそろお前にも色々とこなせるようになってもらわなくては困る」

 

 ギースの「忙しくなる」ことを恐らく「グールズ」関連のことだろうと牛尾はあたりを付ける――最近活動が活発になっていると牛尾は耳にしていたゆえに。

 

「と、いう訳なんです。頼めますか?」

 

「そう言う訳なら構わねぇですけど、俺はあんまり教えるのは得意じゃねぇんですが……」

 

「それについては簡単ですよ。君の入社時にやった訓練をそのまま2人に施せばいい」

 

 まだ誰かを教える立場になったことのない牛尾は苦手意識を伝えるが、続いた神崎の言葉に頬が引きつる。

 

「ウ……ソでしょ、あんなギースの旦那みてぇなやり方じゃ下手したら潰れちゃいますぜ……」

 

 牛尾自身が受けたギースのスパルタという言葉が一体何なのか分からなくなった訓練に今はいない2人の身を案じるも、続くギースの言葉に理解が遅れる。

 

「なにを言っている牛尾? お前の教導のときも私はマニュアルに従ったに過ぎない。お前も同じようにマニュアルを使えば大きな問題はないはずだ」

 

「えっ、あれってマニュアルだったんですかい? ちなみに聞きますけどそのマニュアルって――」

 

――誰があんなもん作りやがったんだ!

 

 そう思った牛尾だがその答えは直ぐにわかることになる。

 

「私が作ったものになります」

 

「……そりゃそうですよね……わかりました。やれるだけはやってみます。けどその2人がどうなっても知りやせんぜ?」

 

「彼らなら大丈夫ですよ。一応手も打ってあります」

 

「ハァ~準備のいいこって、それじゃあ準備に取り掛からせてもらいますわ」

 

 そう言って心の中で2人のデュエリストに十字を切る牛尾。

 

 そしてもろもろの準備に取り掛かるため部屋を去っていった。

 

 

 

 

 

 牛尾が立ち去った後にギースは思わず神崎に尋ねる。

 

「お聞きしたいのですが、何故わざわざあの2人をスカウトなされたのですか?」

 

「おや、不服でしたか?」

 

 あの2人よりも城之内や遊戯といった者たちの方がギースには有益な人間に見えたゆえの言葉だったが神崎のいつもの笑顔に言葉が詰まる。

 

「いえ、そう言うわけでは……ですが私の見たところ、あまり期待できないかと……彼らは程度の差はあれど我欲が強すぎます」

 

「欲を持たない人間はいませんよ、ギース。それに彼らくらいの年齢ならあの程度は、平均的なものです」

 

 そう言った神崎の言葉の裏をギースは読み解く。

 

 

 ギースから見て我欲の強い2人だが、その欲の手綱を握り、鼻先にエサをぶら下げて置けば扱いやすい駒の出来上がりだ。

 

 だがギースは扱いやすい駒にしては神崎が手をかけすぎているとも考え、まだ何か思惑があるのかと思案する。

 

 

 

 当然、そんなギースの考えはただの深読みである。

 

 神崎が羽蛾と竜崎を迎え入れた理由は比較的高いドロー力と後のドーマとの戦いにて敵に回るのを防ぐ程度の目的しかない。

 

 

 

 思考の海に漂うギースを神崎の言葉が引き戻した。

 

「ではギース、『グールズ』に関してのことは頼みます」

 

「心得ております。しかし、墓守の隠れ里とやらの捜索は本当に打ち切ってしまってよろしかったのですか? あの考古学者を調べれば直に判明するかと……」

 

 これもギースには疑問だった。

 

 かなりの長期間にかけて捜索していただけに何らかの重要なものだと判断していたが、突然の捜索の打ち切り、やっと掴めた手がかりもその認識に拍車をかけるが――

 

「そのことについては『()()』かまいませんよ。今となっては必要のないことです」

 

 神崎の言葉にギースは全ての考えを水に流す。

 

「ハッ! 出過ぎたマネをして申し訳ありません」

 

「構いませんよ。――しかしギース。そんなに畏まらなくとも……」

 

「いえ、仕事上の上下関係はしっかりとしておかなければ部下に示しが尽きませんので、では失礼します」

 

 そう言ってキビキビと部屋を出るギースを見つつ神崎は胃を痛める。

 

 部下の忠誠心が重い……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャーディーは王国での遊戯のデュエルをテレビ中継で見たことから遊戯が千年パズルを持つことを知り、遊戯に接触していた。

 

 そしてシャーディーが持つ「千年錠」にてその心を読み解こうと試みたが、逆にファラオの片鱗を味わい、現実世界で再び遊戯の前に立った。

 

 そして遊戯にシャーディーは語りかける。

 

「これからオマエともう一人のオマエは千年パズルに秘められた三千年もの間封印された謎を解き明かさねばならない。それがパズルを解きし者の宿命だ」

 

 もう一人の遊戯についての話だと遊戯は感じ取るも、その言葉の真意が測れない。

 

「君は一体何者なの?」

 

「私の名はシャーディー――千年アイテムを監視する者。覚悟を決めたのなら近々開催される古代エジプト展に行くといい、そこに君たちの望む答えがある」

 

 そう言いながらその姿を煙のように消すシャーディー。

 

 後には伸ばされた遊戯の手が宙を凪いだ。

 

 

 

 

 

 そんな彼らを見ていた存在に2人は最後まで気付けなかった。

 




戦いは始まる前に終わらせよう!
乃亜編、消滅!! デッキマスターなんておらんかったんや……

ゆえにBIG5の皆さんは今日も元気にKCのために働いております


そして羽蛾および竜崎の漂白に挑戦! 匠の技が光る!
「この虫野郎!」なんて呼ばせない!



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