マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
さよなら、天さん……




第42話 得たもの、失ったもの

 

 

――「また」死にたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――キミ ノ イノチ ヲ モラウヨ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 KCの神崎の仕事部屋で乃亜は書類片手にため息を吐く――端的に言ってヒマだった。

 

 ギースから送られてきた「グールズ」の末端の人間は警察組織への引き渡しが済んでおり、正式採用型のデュエルディスクも後は海馬瀬人のGOサインを待つのみ。

 

 ツバインシュタイン博士の研究も乃亜側から事務的な介入が必要なことはない。

 

 その他諸々の通常業務も先程終えてしまい乃亜はとにかくヒマだった――思わず椅子に座ったまま足をブラブラさせる程に。

 

 

「本当にやることがない――優秀すぎるのも考え物だね」

 

 自画自賛しつつ嗤う乃亜だがツッコミを入れるであろう牛尾も新人の教導に行っている。

 

 返ってくる言葉はない。

 

 

「ならもう一度此処(オカルト課)のどこかを見て回るとするとしよう」

 

 椅子からよっと飛び降りそう決めた乃亜。

 

 入社時に神崎に一通り案内されていたがそんなことは構わずどこに行くのかを考え始める――寂しいわけでは決してない。

 

 

「研究所――却下。博士が騒がしい。

 

 他の業務をしているデュエリストたちの様子を見に行く――却下。デュエルを挑まれる。僕のデッキがまだ完全には出来ていない。

 

 瀬人に会いに行く――却下。まだその時じゃない。

 

 外出する――却下。この時間帯だと補導される。この前も――とやめよう。思い出すだけで腹立たしい」

 

――僕? 学校はどうしたの?

 

 そう尋ねた親切なお巡りさんに交番まで連行されジュースを渡され子ども扱いされまくった後、保護者として迎えに来た神崎に連れられてKCに帰った屈辱を乃亜は忘れたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうこう悩んだ乃亜は今現在KCの訓練室を上階から見下ろしていた――自身も一応新人だったことを思い出し新人訓練を見ておこうと立ち寄ったのである。

 

 

 そしてその様子を見た乃亜は牛尾に言葉を選ぶように問いかける。

 

「これが新人研修かい? しかし随分と――原始的な方法だね」

 

 眼下には死に物狂いで走る羽蛾と竜崎――そして追い回すデュエルロボ・プロトタイプ。

 

 文字通り「必死」な姿だ。

 

「いや俺もそう思うけどよぉ……だが現に効果は出てるからなぁ――ほら、あとちょっとだ! 頑張りなー!」

 

 その乃亜の何とも言えぬ表情に牛尾は同意を示しつつ2人に檄を飛ばす。

 

 それに対し「鬼! 悪魔!」などと叫ぶ羽蛾と竜崎だが訓練当初に比べれば見違える程に動けていた。

 

 そして2人の健康状態をモニターしているデュエルロボ・プロトタイプは「まだ元気」と判断し手元の無意味に回転するチェーンソーのようなモノを振りかぶる。

 

 ちなみに当たっても怪我をするものではない安心設計である――ただ恐怖を際立たせるためのモノだ。

 

 恐怖に耐性を付けることもデュエリストに必要なことである。

 

「あんだけ叫ぶ元気がありゃあ、もうしばらくは大丈夫そうだな……そういや乃亜、オメェはこの訓練受けたのかよ?」

 

 

 この拷門――ではなく訓練は神崎にスカウトされたデュエリストが皆受けてきた洗礼とも言えるモノである。

 

 ゆえに外見年齢の低い乃亜も受けたのかと疑問に思う牛尾――実施されたのなら絵面が完全に虐待である。

 

 

「いや、受けていないよ。僕の出自は少々特殊でね」

 

 肩をすくめて否定する乃亜。

 

 そんな乃亜を見て牛尾はあることを思い出す。

 

「あ~そういやツバインシュタイン博士が『人類の限界』がどうこう言ってたな――その辺の都合が関係してんのか?」

 

 

 牛尾は詳しく知らないことだが乃亜の身体は普通の人間とは少し違う。

 

 デュエルエナジーを馴染ませた肉体ゆえに常人よりも肉体的な性能が優れていた。

 

 

「まあそんなところさ」

 

 乃亜ははぐらかすように肯定するに留めた。

 

 そうこうしていると眼下の竜崎と羽蛾が前のめりに倒れ伏し、ゴロリと仰向けに姿勢を変えた――限界のようだ。

 

「そろそろアイツらも限界みたいだな……じゃ! ちょっくら行ってくるわ。分からねぇことがあったら呼んでくれや」

 

 牛尾は訓練のマニュアル片手に2人の元へ向かう前に立ち止まり自身の通信機を指さす。

 

「心配せずとも君の助けなど僕には不要さ」

 

「…………ヘイヘイそうでしたね」

 

 そんな乃亜のつれない言葉に内心で「可愛げのねぇ奴だ」と思いながら牛尾はマニュアルをパラパラとめくりながら2人の元へ向かった。

 

「そうだ。一つ確認しておきたいんだが――」

 

 だが乃亜の言葉に牛尾は足を止める。

 

「ん? どうしたよ」

 

「大したことじゃあないさ。ただ――いつも『留守』はこれ程長いのかい?」

 

「そういや、そうだな……こんなになげぇのは久々かもな」

 

 そんな牛尾の回答に乃亜は表面的に納得を見せつつ考える。

 

――君は一体何がしたいんだい? 神崎……

 

 それなりに関わりがあっても相手の全容が目的が、その姿が乃亜には見えてこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある神殿のような建物の天井から人影が降り立つ。

 

「ふむ、もぬけの殻といったところか……」

 

 その影の正体はギース。ある任務のため秘密裏に行動していた。

 

「だが極最近まで使われていたようだな、慌てて出ていった様相だ」

 

 ここはグールズのアジトの一つ。

 

 

 ギースの請け負った任務はグールズの生きた情報を集めること。

 

 グールズのトップは「偽造カード」を大量に製造しているため、嘆く精霊の声を頼りに追っていくものだった。

 

 それは精霊の声を聞くことができるギースにしか出来ない任務。

 

 

 そうして手がかりを探し調査するギースはある部屋に倒れた人物を発見する。黒いローブのような服装から察するにグールズの構成員のようだ。

 

「罠…………ではなさそうだな」

 

 警戒を緩めず倒れた男のようすを確認する。

 

 そしてその男の焼けただれた姿に眉をひそめた。

 

「酷いな、『見せしめ』か?」

 

 組織の意に従わないものを仲間の前で焼いて反抗心を削いだのかと考えるギース。

 

 グールズという組織の悪辣さにギースの義憤の心が声を上げる。だが――

 

「!? まだ微かに息がある!」

 

 辛うじて命を繋ぎ止めていた倒れた男――死んでいないだけとも言える状態であった。

 

 ギースはすぐさま自身のデッキケースからカードを取り出し精霊との交信を図る。

 

 

 精霊の姿が見え、そして対話が出来るギースの裏ワザ――カードを通じての精霊との交信である。

 

 早い話がカードを通信機替わりに使えるといったものである。自身が「縁」を結んだ精霊に限定されるが。

 

 

「…………頼めるか? そうか、いや構わない。無理を言ってしまったようだな……」

 

 だが何やら精霊の力は借りることができない様子。

 

 ならばとギースはすぐさま別の手段を講じる――今は一刻を争う事態だ。

 

 懐からカードを取り出したギースはそのカードに力を込めるように念を送る。

 

 すると虚空から緑の瓶が現れた。

 

 その中身をすぐさま倒れた男に振りかけるギース。青い液体が倒れた男を癒す。

 

 その瓶と青色の液体の正体は魔法カード《ブルー・ポーション》。

 

 サイコパワーによるカードの実体化である。他にもよりライフを回復するカードはあるが今のギースのサイコパワーではこれが限度である。当然――

 

「クッ! これだけでは厳しいか……」

 

 癒されたのは極僅か。命を繋ぐことすらできているか怪しい。

 

 ギースは再び《ブルー・ポーション》を実体化させ治癒を続ける――だがギースのサイコパワーはそこまで強くない。

 

 実体化を続けるにつれギースの顔色も悪くなっていく。

 

 任務の打ち切りを決断したギースは治癒を続けながら通信機を取り出し声を張り上げる。

 

「私だ! 至急このポイントまで救護班を頼む! かなり危険な状態だ!」

 

 通信機越しの了承の意を聞き、ギースはカードに力を込め続ける。

 

 

 互いにそう長く持ちそうにない。

 

 

 精神力を消耗する中、ギースは先程精霊に告げられた言葉を思い出す。

 

――強い力に阻まれている。私の力ではどうにもできない。

 

 ギースはある存在を感じずにはいられない。

 

「クッ! コイツは一体『なに』に焼かれたんだ!」

 

 人の身ではどうにもならない存在を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めた神崎の視界に広がるのは粉砕機の破片と大量の血痕が残る地下工場。

 

 その手にはクリスタルのようなカケラと赤い宝玉――アヌビスが所持していた闇のアイテム「光のピラミッド」の残骸である――何時の間にか手に取っていたようだ。

 

 そんな神崎を見下ろす《不死王リッチー》。

 

 《不死王リッチー》は冥界の王の敗北と賭け金の清算を終えていることを告げたあとに煙のように消えていった。そして闇のゲームの空間が解除されていく。

 

 それを確認した神崎は拳を握りしめ噛み締める。

 

「…………生きている……まだ生きていられる……」

 

 生の実感を。

 

 地下工場に響く小さな笑い声――今回、想定外のことは起こったが想定以上のものを手に入れた結果に笑みが零れる。

 

 

 しばらく感慨に耽っていた神崎だが強く自覚する――己の身に流れる力の奔流。そして「全能感」。

 

 

 それは冥界の王の力。

 

 

 だが神崎がそれに溺れることはない――それは「『力』とは何かを知っているため」などではない。

 

 何故なら神崎は知っているのだ。

 

 「冥界の王」などと大層な名を持ち、大きな力を持っていたとしても「選ばれし真のデュエリスト」の前では無力なのだと――選ばれし真のデュエリスト怖ええ。

 

 

 気を取り直し、身体に表だった異変が無いことを確認した神崎は早速今得た力を振るうことを試みる。

 

 冥界の王の力が反逆することはないと想定しつつも万が一を考え冥界の王が弱っている内に試しておく算段のようだ。

 

 

 そして力を行使すると神崎の腕がその内側でなにかが暴れるように脈動する。

 

 冥界の王から奪った知識を参照しつつ、神崎はその手を地面にかざす――その指先から黒い光が落ちた。

 

 地面に落ちた黒い光は泥のように広がる。そしてその中から這い出る黒い泥に包まれた人影。

 

 そしてその人影から泥が落ちていくとその人影の正体が露わになった。

 

「グッ! こ、これは一体……」

 

「おはよう、アヌビス」

 

 先程《冥帝エレボス》の瘴気に呑み込まれたアヌビスである――だがその瞳は黒く染まり、両の目から涙が落ちるようなマーカーのようなものが浮かび上がる。

 

「どういうつもりだ……」

 

 神崎を憎らしげに睨むアヌビス――アヌビスの中に既に冥界の王の力はない。

 

 文字通り根こそぎ奪われた現状で自身を呼び戻す意味がアヌビスには分からなかった。

 

 

「私が貴方を呼び戻したのは裏側を知る協力者を欲したゆえです」

 

 裏側――それはオカルトの負の部分。

 

 古代エジプトの闇の歴史について正確に把握しているものは少ない。

 

 かといって全てを明かすことは危険であり、さらに真意を伝えずに関わらせるのは悪手であった――不確定要素が多すぎることが問題である。

 

 ゆえにアヌビスのような古代エジプトの闇の歴史に精通する存在は貴重であった。

 

「……協力者だと? ふざけたことを――今の貴様なら我をどうするも自在であろう」

 

 アヌビスは力なく嗤う。

 

 「冥界の王」の力を奪われ、なおかつ自身の全てを相手に握られている状況で「協力」を求めることなど何を言っているのだと。

 

 そんなことをせず「力」を使い「支配」し「命令」すればよいのだと。

 

 

 だが神崎はそれは良くないと人差し指を立て自論を述べる――あくまで建前になるが。

 

「あくまで私の自論ですが、極端な一方的な関係はどこかに歪みをもたらします。長い目で見ればそれはあまり私には好ましくない」

 

 実際は遊戯たちにアヌビスに「命令」したと認識されるのが頂けなかった――それは彼らが嫌う「非道」な行いなのだから。

 

 しかしその言葉をアヌビスはくだらないと笑う。

 

「我が貴様に協力するだと? 貴様が我にした仕打ちを考えればありえぬことがわからぬか!」

 

 アヌビスの野望を砕き、力を奪い、存在すら奪われた。このありさまで自発的に協力できる筈もない。

 

「もちろん『対価』も用意します。」

 

 だが幸いにもエサはあった。

 

「ふん、『対価』だと? 我を納得させられるだけのものが――」

 

 

 

 

 

 

 

「神官『アクナディン』に復讐したくはないですか?」

 

 

「――あるわけ……何を言っている? 既にアクナディンは――」

 

 「神官アクナディン」――アヌビスの上司に当たり、彼の計画によりアヌビスを生きたままミイラにされる苦しみを味わわせた憎き存在。

 

 だが彼はアヌビスのように現世に蘇ってなどいない――その肉体はと言う注釈がつくが。

 

 

「――『死んでいる』ですか? 貴方は知らないようですね」

 

 

 確かに闇に落ちたアクナディンの肉体は既に消滅している。

 

 だがその魂は「原作」にてアテムが道連れの形で千年パズルの中に封印したことが判明している。

 

 仮にいなかったとしても冥界から引き摺り出す手段はなくはない。

 

 

「貴様、何を知っている……」

 

 アヌビスの瞳に憎悪の炎が灯る――喰いついた。

 

「お教えしても構いませんが、復讐のタイミングはこちらで決めさせて頂くことになります。それでも構いませんか?」

 

 今すぐに千年パズルをどうこうする気は神崎にはない――わざわざ虎の尾を踏む気など彼にはなかった。

 

 言外に今すぐ復讐を行わせる気などないことを察するアヌビス。

 

 だが選択肢が提示されていても拒否すれば闇の中へ逆戻り――あってないようなものだ。

 

「…………いいだろう。貴様に使われてやる」

 

 アヌビスは苦虫を噛み潰したような面持ちで決断した。

 

「では今後ともよろしくおねがいします」

 

 神崎はいつもの営業スマイルでアヌビスを歓迎し、握手するように手を伸ばす。

 

「では契約の証としてコレを――そして『対価』は折を見て」

 

 そしてその掌が脈動し1枚のカードが肉を押しのけ這い出てくる。

 

 訝しげにそのカードを手に取ったアヌビス。するとその右腕に「猿」のような痣が浮かび溶けるように消えていった。

 

「!? なんだこのカードは?」

 

 カードに描かれていたのは黒いサルのような巨人――黄色いラインが全身に張り巡らされている。

 

「それは今の貴方がこの世に留まるためのモノです。大事になさることをお勧めしますよ」

 

 そのカードは《地縛神 Cusillu》――そう、アヌビスはダークシグナーとして再び現世に舞い戻っていた。

 

「どこまでも貴様の掌か――それで我に何をさせる気だ……」

 

 その『地縛神』のカードはアヌビスのデッキを阻害するようなカードではない――あらかじめ用意していたようにすらアヌビスには感じられた。

 

「そうですね……まずは――」

 

 思いのほか話がスムーズに進んだと考える神崎は考える素振りを見せる。

 

 そんな姿にアヌビスはどんな無理難題を――「非道」なことを命じられるか気が気ではない。

 

 

 

 

 

 

 そして――

 

 

 

 

 

 

 

「――現世を謳歌してきてください」

 

 そんな神崎の依頼?を聞いたアヌビスの顔は鳩が豆鉄砲を食ったように酷く面喰らったものだった。

 

 

 

 







『おれは人間をやめたぞ!』  遊戯──ッ!!


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