マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

46 / 289


表の遊戯VSレベッカ 後編です

前回のあらすじ
アーサー「《千年の盾》……いい響きじゃないか(でもデッキに入っていない)」

千年の盾「《キャノン・ソルジャー》はチャンプに使われてたってのに、なんで俺は!」

魔導雑貨商人「きっとボクの効果で墓地に送られたと思うよ?」

名推理「デッキ構築的に入ってるわけないで――」

シャドウ・グール「……(そっと口をふさぐ)」





第46話 最高に高めたフィールで最強の力を示すぜ!

 

 

 遊戯とレベッカのデュエルを見ていた双六はそのデュエルを通じて確信に迫る。

 

「やはりそうじゃったか! レベッカ! オマエさんはアーサーの――」

 

「やっと気づいた? 私の名前はレベッカ・ホプキンス! かつて大切にしていたブルーアイズをあなたに盗まれたアーサー・ホプキンスの孫よ!!」

 

 双六の話を遮るようにレベッカが自身の正体を明かす。

 

「キミはじいちゃんの親友の孫だったのか……」

 

「そうよ! 覚悟しなさい! ド・ロ・ボ・ウさん!」

 

「じいちゃんは人のカードを盗んだりしない!」

 

 祖父を泥棒扱いされ強く弁解する遊戯だが――

 

「ノー! 盗んだの! 私、絶対に許さないんだから!」

 

 当然レベッカはまともに取り合わない。

 

 

 だが双六はヒステリーを起こすレベッカに静かに語りかける。

 

「友達の話をさせてくれんかね?」

 

「どうせただの言い訳でしょ? 聞きたくないわ!」

 

「いや、君に聞いて欲しいんじゃ……あれは今から数年前、儂がエジプトに行った時のこと――」

 

 双六は「聞きたくない」と突っぱねたレベッカを気にせず話し始める――親友の想いを知って欲しいがゆえに……

 

 

 双六がアーサーと知り合ったのはエジプトの市場のレアなカードの噂を聞きつけてやってきたときであった。

 

 砂漠という過酷な環境ゆえに参っていた双六を助けてくれたアーサー。

 

 そして交流していくうちに双六は考古学者でもあったアーサーの異端視されていた学説を知って意気投合し、しばらく2人で行動を共にしていたのだが――

 

 

 そこで杏子がなるほどと思い至る。

 

「そのホプキンス教授から《青眼の白龍》のカードを貰ったのね?」

 

「ああ、そうじゃ」

 

「嘘よ!」

 

 だがレベッカは信じない。

 

「いや、本当なんじゃ! レベッカ、実はそこで遺跡の調査中に落盤事故が起きての、その時に残りの水を賭けてアーサーとデュエルしたんじゃ!」

 

 その過去のデュエルに思いをはせた双六はレベッカに様々な情報を開示する。

 

「そうじゃ! そのデュエル! アーサーに教わったんじゃな? キミのデュエルはそのときの――」

 

 続けて話す双六だがレベッカは次々と出てくる新しい情報に頭が追い付いても、心がそれに追い付かない。

 

「やめてよ! もうそんな話聞きたくない! アンタの言ってることが本当だって証拠はどこにもないんだから!」

 

「おい! 待てよ! じいさんの話はまだ終わってねぇだろうがよ!」

 

 一方的に話を終わらせようとしたレベッカに城之内が噛み付くが――

 

「いや続けさせてみよう」

 

 それは他ならぬ双六の手によって止められる。デュエリストならばデュエルを通して分かり合えるはずだと。

 

「「えっ?」」

 

 疑問に思う杏子と本田に「そうだな」と同意を見せる城之内と牛尾。

 

「なによ! 自分で中断しといて偉そうに!」

 

 レベッカの憤慨を余所に遊戯は双六とアーサーの間に起こった真相に気付き始めていた。

 

「ならボクのターンだ! ドロー! ボクは墓地の《超戦士の魂》を除外してデッキから《宵闇の騎士》を手札に加える!」

 

 墓地の《超戦士の魂》が光を放ち白く染まり、その鎧を纏った白き少年騎士が遊戯の手札に導かれる。

 

「その戦法は海馬とのデュエルの時の!」

 

 ペガサス島での大会は世界的に放送されていたゆえにレベッカも当然そのカードが使用された海馬とのデュエルも見ていた――大会には諸事情により参加できなかったが。

 

「じゃあ次の手も分かるよね? ボクは魔法カード《儀式の下準備》を発動! デッキから儀式魔法《カオスの儀式》を選び、さらにそこにカード名が記された儀式モンスター《カオス・ソルジャー》――その2枚のカードを手札に加える!」

 

 いつものように《儀式の供物》が黒い羽根を羽ばたかせ2枚のカードを咥え、遊戯の頭に止まる。

 

「行くよ! レベッカ! ボクは儀式魔法《カオスの儀式》を発動! レベルの合計が8以上になるようカードをリリースし儀式召喚だ!」

 

 海馬のデュエルの時と同じ剣と盾が配置された祭壇が現れ、両脇の壺に炎が灯る。

 

「手札のレベル4の《宵闇の騎士》と《開闢の騎士》をリリースして儀式召喚! 白き光と黒き闇よ! 混沌(カオス)となりてその剣に宿れ! 《カオス・ソルジャー》降臨!!」

 

 白き騎士と黒き騎士が剣を合わせ、『混沌(カオス)』を生み出す。

 

 その空間から2つの力を漲らせ《カオス・ソルジャー》が降臨した。

 

《カオス・ソルジャー》

星8 地属性 戦士族

攻3000 守2500

 

「クッ、エースの1体のお出ましって訳ね……」

 

「まずは《カオス・ソルジャー》の儀式素材にされた《宵闇の騎士》の効果を発動! 1ターンに1度、相手の手札をランダムに1枚! 次のキミのエンドフェイズまで裏側表示で除外する! 時空突刃(じくうとっぱ)ッ!!」

 

 半身に構えた《カオス・ソルジャー》の突きの一撃から衝撃波が発生しレベッカの手札の1枚を打ち抜く。

 

「私の手札を! もう! 面倒な効果ね!」

 

「まだまだ行くよ! 《カオス・ソルジャー》の儀式素材にされた《宵闇の騎士》と《開闢の騎士》の効果を発動! 1ターンに1度、レベッカ! キミのモンスター1体を除外する! 2体の騎士のそれぞれの効果で混沌帝龍と《ライトレイ ディアボロス》を除外だ! 次元斬一閃!!」

 

 居合切りの構えから放たれた斬撃を《ライトレイ ディアボロス》が小指の痛みで蹲る《混沌帝龍 -終焉の使者-》を盾にして防ぐも、その着弾点から次元が切り裂かれ周囲のもの全てを呑み込まんとうねりを上げる。

 

 とっさに《混沌帝龍 -終焉の使者-》を足場に距離を取ろうとした《ライトレイ ディアボロス》だが、既にこと切れた《混沌帝龍 -終焉の使者-》の腕が《ライトレイ ディアボロス》を掴んでおり、その企みは次元の歪みの中へと共に消えた。

 

「私のモンスターをよくも!」

 

「さぁバトルだ! まずは《デーモンの召喚》で1体目の《ライトロード・ビースト ウォルフ》を攻撃! 魔降雷!」

 

 ハルバードを掲げ突き進む《ライトロード・ビースト ウォルフ》。

 

 だが掲げたハルバードに《デーモンの召喚》の雷が落ち、立ったまま黒く焦げ力尽きた――その意図なきキメポーズは中々である。

 

レベッカLP:4000 → 3600

 

「次は頼むよ《カオス・ソルジャー》! 2体目の《ライトロード・ビースト ウォルフ》を攻撃だ! カオス・ブレード!!」

 

 《カオス・ソルジャー》の上段からの一閃をハルバードで受け流す《ライトロード・ビースト ウォルフ》。

 

 そして砕けたハルバードを捨て、鍵爪の一撃を放つが《カオス・ソルジャー》の盾に阻まれ、その一呼吸の間に横の一閃により地に沈む《ライトロード・ビースト ウォルフ》。

 

レベッカLP:3600 → 2700

 

「またやられちゃったわね……」

 

 《ライトロード・ビースト ウォルフ》はあと1体残ってはいるが、すぐにいなくなるだろうとレベッカはため息を吐く――折角並べたのに、と。

 

「儀式召喚の素材となった《開闢の騎士》のさらなる効果を発動! 戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った時にもう1度だけ続けて攻撃だ! 3体目の《ライトロード・ビースト ウォルフ》にもどいてもらうよ!」

 

 《カオス・ソルジャー》の背後から強襲した《ライトロード・ビースト ウォルフ》だが振り向きもせず鞭のように撓らせた剣の一閃がその首を落とす。

 

レベッカLP:2700 → 1800

 

「でも攻撃はここまで! 残念だったわね!」

 

 レベッカの言うとおり遊戯の残りの手札は1枚、レベッカのフィールドを一掃してもこれ以上の追撃は望めなかった。

 

「ボクはこれでターンエンドだよ」

 

 いまだダイレクトアタックを許さないレベッカの実力に地力の高さを垣間見る遊戯。

 

「私のターン、だ・け・ど! 折角フィールド一杯に並べたのに全滅させられるなんて――キ~! 悔しいわ~!」

 

 まるで駄々をこねるように悔しがるレベッカ。

 

「さすがデュエリストキングダムであそこまで戦いぬいただけのことはあるわ……ドロー! !?」

 

 だがしばらくすると落ち着いたのかドローフェイズの通常ドローをしデュエルを進めるが、ドローしたカードを見たレベッカの目が見開かれる。

 

「グレイト! ファンタスティック! やったよ! テリーちゃん! ブラボー! ブラボー!」

 

 クマのぬいぐるみ、テリーちゃんの手を取りその場で喜びのあまりクルクルと回るレベッカ――余程いいカードを引いたらしい。

 

 周囲の「なんだ? アイツ……」とでも言いたげな視線は「ああ、こういう子なんだな」へとシフトする。

 

「ブイ! 勝った 勝った! 引きの強さも才能の内ってことね!」

 

「……レベッカ」

 

「もう! わかってるわよ! まずは魔法カード《鳳凰神の羽根》を発動よ! 手札を1枚捨てて私の墓地の《死者蘇生》をデッキトップに戻すわ」

 

 そよ風と共に炎のように赤い羽根がヒラヒラとレベッカのデッキの上に落ちる。

 

「そして~~《ファントム・オブ・カオス》を召喚!」

 

 地面に黒い泥が現れ渦を巻く。

 

《ファントム・オブ・カオス》

星4 闇属性 悪魔族

攻 0 守 0

 

「フフフッ! さっそく《ファントム・オブ・カオス》の効果を発動させてもらうわ! この子は私の墓地の効果モンスターを除外して、その名前と攻撃力・効果を得るわ!」

 

「キミの墓地には沢山のカードが!」

 

 カードの効果によってレベッカの墓地に送られたカードの枚数は多い。

 

 その中に《カオス・ソルジャー》を超える攻撃力か除去できる効果を持ったモンスターがいないとは考え難かった。

 

「私は墓地の《天魔神 ノーレラス》を除外よ! さぁその姿を写し身へと変えなさい!」

 

 黒い渦状の《ファントム・オブ・カオス》がせり上がり、ドクロの頭をもった足の無い黒い悪魔へと姿を変え、その背の翼を羽ばたかせる。

 

 その悪魔には所々に包帯らしきものが巻かれ、胴体から黒いモヤが出ているが、その全身は《ファントム・オブ・カオス》の渦と同じく黒ずんでいた。

 

《ファントム・オブ・カオス》 → 《天魔神 ノーレラス》

攻 0 → 攻2400

 

「フフン! スゴイでしょ! ――もっともこのターンの終わりに元に戻っちゃうし、戦闘ダメージは与えられないけどね」

 

 レベッカの言うとおり《天魔神 ノーレラス》となった《ファントム・オブ・カオス》の身体は少しずつではあるが崩れ始めていた。

 

「でも! そんなことは関係ないのよ! この子にはとっておきがあるんだから! その効果を見せてあげる! 1000ライフを払う事で、お互いの手札とフィールド上のカードを全て墓地へ送っちゃうのよ! そしてその後で私はカードを1枚ドローするわ!」

 

レベッカLP:1800 → 800

 

 《天魔神 ノーレラス》となった《ファントム・オブ・カオス》から黒い霧が噴出し、全てを呑み込まんと脈動する。

 

 黒い霧を《デーモンの召喚》は雷撃で《カオス・ソルジャー》は剣で薙ぎ払うが、手応えはない。そして最後は周囲一面に広がった黒い霧に呑み込まれていった。

 

 収束する黒い霧から小さな光がレベッカの手元に宿る。

 

「これでアナタは文字通り丸裸! そして今ドローした私の手札にあるのは――」

 

 遊戯を挑発するようにもったいぶるレベッカに遊戯が答えを返す。そのカードは《鳳凰神の羽根》でデッキの一番上に戻った――

 

「《死者蘇生》だね」

 

「大・正・解!! 魔法カード《死者蘇生》を発動! 私が蘇生するのは――《シャドウ・グール》!!」

 

 レベッカの影からスルリと這い出てきたのは赤い球体が体の至る所についた緑色の異形。

 

 2本の腕の爪をこすり合わせ4本の脚で立ち、顔に付いたいくつもの赤い球体が遊戯を捉える。

 

《シャドウ・グール》

星5 闇属性 アンデット族

攻1600 守1300

 

「レベル5で攻撃力1600……」

 

 遊戯の何かあると警戒する視線に《シャドウ・グール》は腕を広げる構えを見せ威嚇する。

 

「当然よ! 《シャドウ・グール》ちゃんは私の墓地のモンスター1体に付き攻撃力が100アップするんだから!」

 

「キミの墓地には沢山のカード……このための戦術だったんだね」

 

「今更気づいても、もう遅いわ! 私の墓地のモンスターは合計24体! よって攻撃力が2400アップ!!」

 

《シャドウ・グール》

攻1600 → 攻4000

 

「攻撃力4000だとぉ! 海馬のブルーアイズより上じゃねぇか!」

 

 そのパワーに思わず驚きを見せる城之内だったが、遊戯は悲しそうに問いかける。

 

「……レベッカ」

 

「何よ?」

 

「デュエルに大切なのはカードを信じる心なんだ。パワーを上げるためだけにモンスターを墓地送りにしていくなんてひどすぎないか?」

 

 遊戯はレベッカの墓地送りの戦術を否定している訳ではない。

 

 カードを仲間と考える遊戯にとって墓地に送られたカードに敬意のないレベッカの姿勢は悲しいものだった。

 

「バカじゃないの!? 『デュエルはハート』なんて言ってる間は甘ちゃんよ! どんな手段を使ってでも勝つのがデュエリストってものよ!」

 

 だがレベッカも昔からこうだった訳ではない。今のように考えるきっかけとなったのは過去のプロ入りの時に遡る。

 

 

 レベッカは過去に周囲から天才だと称えられ、その期待と共にプロ入りを果たした。

 

 最初は問題なく勝てていた。だがリーグを駆け上がるにつれてその勝ち星は減っていき、そして周囲からの関心は薄れた――プロの世界は子供には早かったのだと。

 

 やがてレベッカはこう考えるようになった。

 

――勝たなければ誰も自身を見てはくれない。大好きな家族(祖父)ですら。

 

 そうしてレベッカには周囲はおろか祖父、アーサーの声すら聞こえなくなっていった。

 

 

 だがそんなレベッカにも転機が訪れる――テレビで観戦した決闘者の王国(デュエリストキングダム)での《青眼の白龍》の活躍。

 

 レベッカの祖父、アーサーはこれを好機だと思った。

 

 双六との友情のエピソード。そこから「カードの心」を教えることができれば孫を暗闇から救って上げられると考えた。

 

 しかしそのアーサーの言葉は正しく届かず、今こうしてレベッカはデュエルに挑んでいる。

 

 もはや今のレベッカの瞳は何も正しく映せてはいない。

 

「このタクティクスもおじいちゃんから教わったんだから! それにモンスターなんてしょせん兵器か生贄でしかないでしょ!」

 

 そんなレベッカの言葉に《シャドウ・グール》の肩が僅かに動いたように見えるのは気のせいなのか。

 

「これで止めよ! 《シャドウ・グール》でダイレクトアタック! ティアーズ・オブ・セメタリー!!」

 

 マスターの命に4本の脚で音もなく遊戯に迫り爪を振るう《シャドウ・グール》。

 

 だが、その爪は紫色のクリボーを切り裂いた。

 

 紫色のクリボーがズルリと半分に割れる様に慌てる《クリボー》と、すぐさまその両脇を抑えにかかる《サクリボー》と《クリボール》。

 

「今度はいったい何なの!」

 

 突如現れた「クリボー」たちにレベッカに止めを刺せなかったことに苛立つ。だが遊戯はその怒りをなだめるようにタネを明かし始める。

 

「ボクはそのダイレクトアタック時に墓地の《クリボーン》と《クリアクリボー》の2体の効果を発動させてもらったよ!」

 

 《シャドウ・グール》に真っ二つに切り裂かれた《クリアクリボー》から影が蠢く。抑える「クリボー」たちはその姿に目を反らす――直視したくないようだ。

 

「まず墓地の《クリボーン》の効果でダイレクトアタックの時にボクの墓地の『クリボー』モンスターを任意の数だけ特殊召喚したんだ」

 

「その効果で《クリボー》と《クリボール》、《サクリボー》を呼んだのね……」

 

《クリボー》

星1 闇属性 悪魔族

攻 300 守 200

 

《クリボール》

星1 闇属性 悪魔族

攻 300 守 200

 

《サクリボー》

星1 闇属性 悪魔族

攻 300 守 200

 

「そうだよ。そして《クリアクリボー》の効果も発動してボクはデッキからカードを1枚ドローする。そのカードが――」

 

「モンスターだったら特殊召喚して攻撃対象をそのモンスターに移し替えるんでしょ? 海馬瀬人とのデュエルで見せてもらってるわ。でも苦し紛れね! 今の《シャドウ・グール》ちゃんを超えるモンスターなんていないわ!」

 

 遊戯の説明を遮るようにレベッカは付け足す。

 

「じゃあ行くよ! ドロー! ボクが引いたのは――」

 

 《クリアクリボー》の両脇を押す力が強すぎたのか《クリアクリボー》の中身がチューブのように押し出され、《クリボール》と《サクリボー》が互いの頭をぶつけ目を回す。

 

 押し出されたのは背にカタパルトが装着された機械的な亀。足から空気を掃き出し宙をホバリングする。

 

《カタパルト・タートル》

星5 水属性 水族

攻1000 守2000

 

「モンスターカード《カタパルト・タートル》! よってこのモンスターが攻撃を代わりに受ける!」

 

 《シャドウ・グール》は《カタパルト・タートル》の影に潜り装甲の薄い腹の部分を貫いた。

 

 回路のショートにより大爆発を起こす《カタパルト・タートル》をしり目にレベッカの元へと影を伝って帰還する《シャドウ・グール》。

 

 周りの「クリボー」たちは爆風に吹き飛ばされぬよう地面にへばり付いている――《サクリボー》の鋭い爪を他の「クリボー」たちが羨ましそうに見ていた。

 

「モンスターが残っちゃったわ……その子たちで私の攻撃を防いでいる間に攻撃の駒を揃えようってわけね! でもムダよ ムダムダ!」

 

 互いの手札は今現在0である。ここから勝負が長引くと考えるギャラリーを余所にレベッカには勝算があった。

 

「私のエンドフェイズに前のターンにアナタの使った《宵闇の騎士》の効果であのカードが手札に戻ってくるもの! それさえあれば次の私のターンで決まりよ! ターンエンド!」

 

 そのエンド宣言と共にデュエルディスクから1枚のカードがレベッカの手札に加えられ、それを見たレベッカはニヤリと笑う。

 

 もうすぐで、この勝利で全てが戻ってくるのだと。

 

 

 そんなレベッカを悲しそうに見つめる遊戯はデッキに手をかける。

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

「どう? イイカードは来たのかな~?」

 

 そんなレベッカの煽るような言葉も今の遊戯には届かない。

 

――じいちゃん、ボクなんとなくわかってきたよ。遺跡の中でのデュエルが最後にどうなったのか。

 

 遊戯はアーサーと双六の一件の真実に近づいていた。

 

「ちょっと! レディーをいつまで待たせる気? ハリーアップ 遊戯!」

 

 感慨に耽る遊戯を急かすレベッカ。

 

「ボクは《クリボール》と《サクリボー》をリリースしてアドバンス召喚! 来て! ボクの相棒たる最上級魔術師! 《ブラック・マジシャン》!」

 

 《クリボール》と《サクリボー》が互いの手を天にかざし、回転しながら上昇していく。

 

 回転数を上げ黒い竜巻となった地点に魔術師の影が映り、その竜巻が収まると《ブラック・マジシャン》が腕を組み佇んでいた。

 

《ブラック・マジシャン》

星7 闇属性 魔法使い族

攻2500 守2100

 

「攻撃表示? プレイミスね! 今なら守備表示にしてもいいわよ!」

 

 攻撃力4000となった《シャドウ・グール》の前に攻撃力2500の《ブラック・マジシャン》を攻撃表示で呼び出すのは愚策だとレベッカは指摘するが――

 

「リリースされた《サクリボー》の効果で1枚ドロー」

 

 遊戯はプレイを続け、引いたカードを見る。

 

 

 

 そして過去の双六のようにデッキの上に手を置き宣言した。

 

「――サレンダーだ。キミの勝ちだよ、レベッカ」

 

 サレンダー。

 

 それは自身からデュエルの敗北を認める行為。

 

「「えぇ~!?」」

 

 敗北が濃厚な状態でも最後までデュエルを続けると思っていたギャラリーの驚きの声が部屋に全体に響く。

 

 

 だが遊戯の顔はこれでよかったのだと満足気だった。

 

 






シャドウ・グール「墓地で発動する効果? 自分の攻撃力が下がっちゃうんで採用してないです」

混沌帝龍「火力とブルーアイズと同じ攻・守をアピールして喰い込みました!」

ライトレイ・ディアボロス「ライトロードと響きが似ている点をアピールしました!」

千年の盾「なるほど……」φ(・_・”)メモメモ



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。