マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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海馬VSデュエルロボ 前編です

前回のあらすじ
御伽に優しくとも厳しい世界

イシズ、不穏な未来に原作以上に警戒

相棒とアテムは仲良しやな~(白目) の3本でした。じゃん、けん、ポン! ウフフフ





第52話 その虚像は掴めない

 

 

 海馬瀬人は最新鋭のデュエルディスクを手に同じく最新型のデュエルロボと対峙していた。

 

 そしてモクバは海馬に元気一杯に告げる。

 

「兄サマ! こっちの準備はOKだぜ!」

 

「海馬社長、こちらも準備できておりますぞ!」

 

 そして遠足に行く前の子供の様にツバインシュタイン博士もそれに続いた。

 

 

 なぜ海馬の嫌うオカルト課のツバインシュタイン博士がここにいるのかというと――

 

 神崎がバトルシティに関する諸々を引き受ける上での対価として神のカードの力の測定を願ったからである――海馬もある条件を付けたしそれに了承した。

 

 

「デュエルを開始シマス。ヨロシイデスカ? 海馬社長」

 

「いつでもかかってくるがいい! 貴様がどこまでやれるか、見ものだな!」

 

 海馬は新しく生まれ変わったデュエルディスクと自身のデッキを構えた。

 

「「デュエル!!」」

 

 先行はデュエルロボ。

 

「ワタシの先攻デス、ドローしマス。ワタシは《天帝従騎イデア》を召喚シ、効果によりデッキから《冥帝従騎エイドス》を特殊召喚シマス」

 

 白い陣が現れ、そこに降り立ったのは白銀の従騎士《天帝従騎イデア》。

 

 《天帝従騎イデア》が隣を指し示すと、そこから黒い陣が現れ、漆黒の従騎士《冥帝従騎エイドス》が並ぶ。

 

《天帝従騎イデア》

星1 光属性 戦士族

攻 800 守1000

 

《冥帝従騎エイドス》

星2 闇属性 魔法使い族

攻 800 守1000

 

「さらに魔法カード《帝王の深怨》を発動。手札の攻2800・守1000の《爆炎帝テスタロス》を公開し、デッキより通常魔法《汎神の帝王》を手札に加えマス」

 

 《爆炎帝テスタロス》の炎がデュエルロボの手札に灯る。

 

「そして魔法カード《汎神の帝王》を発動シ、手札の《帝王の凍気》を捨てて2枚ドローデス」

 

 白き天空の帝と黒き幽冥の帝がデュエルロボの後ろに現れ、デッキに力を送り新たな力を呼び込んだ。

 

「墓地の《汎神の帝王》を除外し効果を発動デス。デッキから3枚の『帝王』魔法・罠を見せ、相手が選択した1枚を手札に加えマス」

 

 フィールド上に3枚の同じカードが浮かび上がる。

 

「これではどれを選ぼうとも変わらんな……その《帝王の烈旋》をさっさと手札に加えるがいい」

 

 デュエルロボの機械の腕が器用に3枚の内の1枚を手札に加え、残りをデッキに戻しシャッフルする。

 

「次に《進撃の帝王》、《帝王の開岩》の2枚の永続魔法を発動シマス」

 

 周囲に炎が上がり、大地は砕ける。

 

「《冥帝従騎エイドス》が召喚・特殊召喚しているため私は通常召喚とは別にアドバンス召喚を一度行えマス」

 

 《冥帝従騎エイドス》が腕を突き上げる。

 

「《天帝従騎イデア》と《冥帝従騎エイドス》をリリースして《爆炎帝テスタロス》をアドバンス召喚デス」

 

 2体の従騎士が火柱となって燃え上がり、爆発と共に赤土色の鎧が炎を纏いながら歩み出る。

 

 そのいでたちは爆炎の名に相応しく、その身から溢れる熱風が紺色のマントを揺らす。

 

《爆炎帝テスタロス》

星8 炎属性 炎族

攻2800 守1000

 

 そして《爆炎帝テスタロス》の手に炎が灯る。

 

「アドバンス召喚に成功したことデ、《爆炎帝テスタロス》の手札を墓地に送る効果を発動シ、

その効果にチェーンして、永続魔法《帝王の開岩》のサーチ効果を発動シ、

さらに、その効果にチェーンして、墓地に送られた《天帝従騎イデア》のサルベージ効果を発動シマス」

 

「随分と忙しないことだ……」

 

 幾重にも重ねられるチェーン処理に海馬は嘲笑とともに言い放つ――そこまでしなければデッキを回せないのかと。

 

「チェーンの逆順処理を行いマス。まず墓地に送られた《天帝従騎イデア》の効果により除外されている《汎神の帝王》を手札に加えマス」

 

 《天帝従騎イデア》から放たれた光の線が次元を突き抜けカードを手繰り寄せる。

 

「次に永続魔法《帝王の開岩》の効果によりデッキから《天帝アイテール》を手札に加えマス」

 

 割れた大地から白き帝が現れ、光となってデュエルロボの手札に加わり――

 

「最後に《爆炎帝テスタロス》の効果で海馬社長の手札を確認して1枚捨てマス」

 

「クッ、おのれ……」

 

 己が手札を晒す屈辱に苛立つ海馬。

 

 だがデュエルロボは淡々と墓地に送るカードを指し示す。

 

「では《混沌帝龍-終焉の使者-》を墓地に送りマス。そして墓地に送ったカードがモンスターだったため、そのレベル×200のダメージを与えマス」

 

 《爆炎帝テスタロス》の手から放たれた炎が海馬の手札を打ち抜き、その炎は《混沌帝龍-終焉の使者-》を形どり海馬を呑み込む。

 

海馬LP:4000 → 2400

 

「《混沌帝龍-終焉の使者-》のレベルは8つまりは1600のダメージか……攻撃が許されない先攻にも関わらずコレか――それでこそ俺の新たなデッキを試すに相応しい!」

 

 海馬の高ぶる感情を余所にデュエルロボは淡々とデュエルを進めていく。

 

「マダマダ行きマス海馬社長。ワタシは今手札に加えた《汎神の帝王》を発動シ、手札の《真源の帝王》を捨てて2枚ドローシマス。そしてフィールド魔法《真帝王領域》を発動シマス」

 

 《爆炎帝テスタロス》の後ろからせり上がるよう現れる厳かな玉座。

 

「これによりワタシのフィールドにのみアドバンス召喚シタ《爆炎帝テスタロス》が存在シ、ワタシのエクストラデッキにカードが存在しないため

海馬社長はエクストラデッキからの特殊召喚を封じられマス」

 

 《爆炎帝テスタロス》が手をかざすと空席の玉座から周囲を押しつぶすようなプレッシャーが放たれる。

 

「ほう、俺のアルティメットを封じにきたか……」

 

「さらに墓地の《真源の帝王》の効果を発動シマス。このカード以外の自分の墓地の『帝王』魔法・罠カード――《帝王の凍気》を除外しこのカードを通常モンスターとして守備表示で特殊召喚」

 

 白いヴェールで姿を隠したモンスターが現れ空席の玉座に腰を下ろす。

 

 そのシルエットから「帝」モンスターだと思われる。

 

《真源の帝王》

星5 光属性 天使族

攻1000 守2400

 

「そして手札から《雷帝家臣ミスラ》を特殊召喚シマス」

 

 小さなスパークと共に踊り子のようなアーマーを纏った家臣がクルリと横に一回転した後、王座に向かって跪く。

 

《雷帝家臣ミスラ》

星2 光属性 雷族

攻 800 守1000

 

「デスガその効果により海馬社長のフィールドに『家臣トークン』が守備表示で特殊召喚されマス」

 

 《雷帝家臣ミスラ》から漏れ出た電撃が海馬のフィールドに留まり人型となって腕を交差させ跪く。

 

『家臣トークン』

星1 光属性 雷族

攻 800 守1000

 

「カードを2枚伏せてターンエンドしマス。海馬社長のターンデス」

 

 3体のモンスターに魔法・罠ゾーンのカードが5枚。

 

 その布陣を見て海馬は思わず挑戦的な笑みを浮かべる――これならば楽しめそうだ、と。

 

「ふぅん、随分と長いターンだったな――それがただ無駄な時間をかけただけではないと思いたいものだ……俺のターン、ドロー!」

 

 自分フィールドの『家臣トークン』に視線を向けた海馬は手札のカードをすぐさまデュエルディスクに叩きつけるように差し込む。

 

「俺のフィールドに貴様のモンスターがいる場所などない! 魔法カード《ブラック・ホール》を発動! フィールドの全てのモンスターを破壊する! 貴様が並べたモンスター諸共消え去るがいい!!」

 

 フィールドの中央を起点にあらゆる存在を呑み高重力の空間が発生し、全てを呑みこまんとフィールドのモンスターを引き寄せる。

 

 ジリジリと《ブラック・ホール》に引き寄せられるモンスターだが《爆炎帝テスタロス》のみマントをはためかせながら悠然とした佇まいで君臨していた。

 

「永続魔法《進撃の帝王》の効果によりワタシのフィールドのアドバンス召喚したモンスターは効果の対象にならズ、効果では破壊されマセン」

 

 何故耐えられるか注釈を入れるデュエルロボ。

 

「ほう、耐えるか……だが――」

 

 海馬もマントをはためかせながら満足げに呟く。

 

「――他の3体には消えてもらうぞ!!」

 

 海馬のフィールドの1体とデュエルロボのフィールドの2体のモンスターが地面に踏ん張りきれずに宙を舞う。だが――

 

「サセマセン。《ブラック・ホール》にチェーンして手札の《天帝アイテール》の効果を発動しマス」

 

 《真源の帝王》はその白いヴェールから黄金の杖を宙に投げ出す。

 

「その効果にヨリ相手メインフェイズに自分の墓地の『帝王』魔法・罠カード1枚を除外してこのカードをアドバンス召喚しマス。ワタシは墓地の《帝王の深怨》を除外」

 

 黄金の杖から放たれる光が《真源の帝王》のヴェールと《雷帝家臣ミスラ》を包み込み引き寄せる。

 

「《真源の帝王》と《雷帝家臣ミスラ》をリリースし、《天帝アイテール》をアドバンス召喚」

 

 光の粒子となった《雷帝家臣ミスラ》が黄金の杖に宿り、その杖は《真源の帝王》のヴェールを突き抜けその玉座に座る帝王の元へと返る。

 

 そしてその杖でヴェールを払い姿を見せたのは女性的な姿をした白き帝王。

 

 左手で杖を掲げその威光を示す。

 

《天帝アイテール》

星8 光属性 天使族

攻2800 守1000

 

「これによりワタシのフィールドのモンスターは全てアドバンス召喚されたモンスターとなりまシタ。よって《進撃の帝王》に守られ、《ブラック・ホール》で破壊されるのは海馬社長のモンスターのみデス」

 

 『家臣トークン』が懸命に手足をバタつかせるも、最終的に一人さびしく《ブラック・ホール》に呑み込まれていく。

 

 役目を終えた《ブラック・ホール》は収束していった。

 

「上手く躱したものだ」

 

「アリガトウゴザイマス。そしてアドバンス召喚に成功したことデ、《天帝アイテール》の効果を発動シマス」

 

 今回はチェーン2でアドバンス召喚されたため、《帝王の開岩》のサーチ効果はタイミングを逃す。コンマイ語……難解すぎる。

 

 海馬の称賛にデュエルロボは機械的に礼を言いつつもデュエルの手を休めることはない。

 

 現れた新たな「帝」。

 

「次はそいつか……」

 

 海馬は相手の出方を待つ。

 

「《天帝アイテール》の効果にヨリ、手札・デッキから『帝王』魔法・罠カード2種類を墓地へ送ることで、デッキから攻撃力2400以上・守備力1000のモンスター1体を特殊召喚しマス」

 

 《天帝アイテール》が杖を地面に向けるとそこから光が溢れ、何者かを形取る。

 

「ワタシはデッキから2枚目の《帝王の深怨》と2枚目の《帝王の凍気》を墓地に送り《光帝クライス》を特殊召喚しマス。ただしこの効果で呼び出されたモンスターはエンドフェイズに持ち主の手札に戻りマス」

 

 その光は黄金の輝きを放つ光の帝を生み出す。

 

 そして《光帝クライス》は両の手を掲げ《天帝アイテール》に呼び出して頂いた栄誉に喜びを表す。

 

《光帝クライス》

星6 光属性 戦士族

攻2400 守1000

 

「エンドフェイズか……まさかと思うが、この俺が貴様のターンまでその程度のモンスターを生かしておくと思っているのか!」

 

「その心配には及びまセン海馬社長。ワタシは《光帝クライス》の効果を発動しマス」

 

 《光帝クライス》に《天帝アイテール》からの勅命が下される。

 

「このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、フィールドのカードを2枚まで破壊し、破壊された枚数分だけそのカードのコントローラーはデッキからドローできマス」

 

 《光帝クライス》は敬愛を仰ぐ《天帝アイテール》のためどんな障害をも排除する意気込みでその両拳を打ち合わせる。

 

「ワタシはワタシのセットカードと《光帝クライス》を破壊しマス。その効果にチェーンしてそのセットカード――速攻魔法《帝王の烈旋》を発動しマス」

 

 告げられた言葉の意味を理解するのに時間を要する《光帝クライス》。

 

 《帝王の烈旋》により吹きすさぶ風が哀愁を誘うが――

 

 

 今の《光帝クライス》にあるのは歓喜。

 

 敬愛する存在(天帝アイテール)の為に死ねると大仰な仕草でその名誉に酔いしれる。

 

 そして自身の持つエネルギーを爆発させ周囲に幻想的な煌めく光を散りばめる――どうかその心に残って欲しい、そんな思いを込めて……

 

「破壊された2枚のカードのコントローラーはワタシ――よってその枚数分2枚ドローしマス」

 

 散りばめられた光はデュエルロボの手札に加わった。

 

 

 海馬のターンにも関わらず展開されるデュエルロボの「帝」たちにモニター室のモクバはどこか不安げだ。

 

 そんなモクバを安心させるように海馬は力強くカードを発動させる。

 

「ならば俺は速攻魔法《魔力の泉》を発動! その効果により貴様のフィールドの表側表示の魔法・罠カードの数だけドローし、俺のフィールドの表側表示の魔法・罠カードの数だけ手札を捨てる!」

 

 ボコッと地面から生えてきた天使と思しき木像の根元から魔力の籠った水が溢れ出す。

 

「貴様のフィールドの表側の魔法・罠カードは3枚! そして俺のフィールドには《魔力の泉》のみ! よって3枚ドローし、手札を1枚捨てる!」

 

 その水は瞬く間に広がり《進撃の帝王》、《帝王の開岩》、《真帝王領域》にラインを繋ぎ魔力を作用させる。

 

 そして海馬の手札に潤いとなるドローを与えつつ、貢物の如く海馬は1枚の手札を墓地へと送る。

 

 すると水面に落ちた白い石が薄く発光する。

 

「今、墓地に送った《伝説の白石》の効果でデッキから《青眼の白龍》を手札に加える!」

 

 《魔力の泉》の水が引いていくのに合わせ《伝説の白石》から半透明な《青眼の白龍》が水しぶきを上げながら海馬の手札へ飛び立った。

 

「さらに魔法カード《トレード・イン》を発動し手札のレベル8《青眼の白龍》を墓地に送り2枚ドロー!」

 

 海馬の背後に現れた《青眼の白龍》はその身を粒子に変えデッキに光を灯す。

 

「まだだ! 俺は魔法カード《調和の宝札》を発動! これにより手札の攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーである2枚目の《伝説の白石》を捨て、2枚ドロー!!」

 

 《伝説の白石》にヒビが入り、そこから再び《青眼の白龍》が海馬を一瞥してから手札に加わる――その顔はまた墓地に送られるのかと言いたげだ。

 

「再び《伝説の白石》が墓地に送られたことでデッキから2枚目の《青眼の白龍》を手札に!」

 

 こうしてハンデス効果とカードの無駄撃ちをさせられ心許なかった海馬の手札が怒涛のドローラッシュで初期手札を超えるまでに膨れ上がる。

 

 

 そして海馬は不敵に笑う――攻め込むつもりのようだ。

 

「そして俺のフィールドにモンスターが存在しない時! 魔法カード《予想 GUY(ガイ)》を発動! それによりデッキから通常モンスターを呼び出す! 現れろ! 《ブラッド・ヴォルス》!!」

 

 フィールドに放電が奔り、悪逆の限りを尽くした魔獣人が多くの血を吸った斧を振りかぶり今宵の獲物は誰だと言わんばかりに下卑た笑いを浮かべる。

 

 だが並び立つ2体の「帝王」の前に思わず笑みは止まり冷や汗が流れた。

 

《ブラッド・ヴォルス》

星4 闇属性 獣戦士族

攻1900 守1200

 

「さらに魔法カード《ワン・フォー・ワン》発動! 手札のモンスター《太古の白石(ホワイト・オブ・エンシェント)》を捨て、デッキよりレベル1のモンスターを特殊召喚する! 来るがいい! 3体目の《伝説の白石》!!」

 

 《太古の白石》が光と共にひび割れ、その中から《伝説の白石》が飛び出し《ブラッド・ヴォルス》の足元に転がる。

 

《伝説の白石》

星1 光属性 ドラゴン族

攻 300 守 250

 

「これで準備は整った――俺は《ブラッド・ヴォルス》と《伝説の白石》をリリースしアドバンス召喚! その白き威光で敵を粉砕しろ! 《青眼の白龍》!!」

 

 《ブラッド・ヴォルス》が《伝説の白石》を手に天へと捧げると《伝説の白石》が周囲を光で覆いつくす。

 

 そして《伝説の白石》は砕け、そこから《青眼の白龍》が悠然と翼を広げた。

 

《青眼の白龍》

星8 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「そして三度《伝説の白石》が墓地に送られたことでデッキから3枚目の《青眼の白龍》を手札に加える!」

 

 砕けた《伝説の白石》からスッっと残り火のような光が漏れ、そこから最後の半透明の《青眼の白龍》が海馬のフィールドの《青眼の白龍》とすれ違いながら海馬の手札に加わる。

 

 

 アドバンス召喚された《青眼の白龍》の存在は《真帝王領域》の力の波動を緩和させた。

 

「これで貴様の《真帝王領域》のエクストラ封じも解けた……だが手を緩めるつもりはない!」

 

 《真帝王領域》のエクストラデッキからの召喚を封じるためには自身のフィールドにのみアドバンス召喚したモンスターが存在する必要がある。

 

 互いのフィールドにアドバンス召喚したモンスターが並び立つこの状況ではその効果は発生しない。

 

 だがデュエルロボは沈黙を保つ。

 

「俺はさらに魔法カード《死者蘇生》を発動し 墓地よりモンスターを蘇生させる! 並び立てぇ! 白き威光よっ! 我が元に降り立つがいい! 蘇れ! 《青眼の白龍》!!」

 

 天から伸びる十字架が光を放ち《青眼の白龍》の傍に照らされ、《青眼の白龍》の咆哮に呼応するかのようにその姿を揺らす。

 

 そして光が収束し、2体目の《青眼の白龍》がもう1体目の咆哮に共鳴するかのように雄叫びを上げた。

 

《青眼の白龍》2体目

星8 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「バトルだ! ブルーアイズで《天帝アイテール》を攻撃!! 滅びの――」

 

 《青眼の白龍》の一撃が《真帝王領域》の玉座に座る《天帝アイテール》を目がけて放たれる。だが――

 

「永続罠《連撃の帝王》を発動しマス。これによりワタシはメインフェイズ及びバトルフェイズにアドバンス召喚を1度、行えマス」

 

 その白き滅びの一撃の前に《爆炎帝テスタロス》が《天帝アイテール》を守護するように立ち塞がった。

 

「だが貴様が何を呼ぼうとも俺のブルーアイズは止まらん!」

 

「イエ止まりマス。ワタシは先程発動していた速攻魔法《帝王の烈旋》の効果にヨリ

海馬社長の攻撃宣言なされタ《青眼の白龍》をリリースしマス」

 

「なにぃ!」

 

 デュエルロボは《光帝クライス》によって破壊される前に発動していたカードの効果を温存していたのだ。

 

「ワタシは海馬社長の攻撃宣言した《青眼の白龍》とワタシの《爆炎帝テスタロス》をリリースし《冥帝エレボス》をアドバンス召喚しマス」

 

 《青眼の白龍》の滅びのブレスに身を投じた《爆炎帝テスタロス》は己が命を燃やし天まで届く業火となって《青眼の白龍》諸共自身を包む。

 

 

 するとその業火の中から腕を一蹴させ《冥帝エレボス》が炎燃え盛る地獄のような場所から悠然と《天帝アイテール》が座す玉座に歩み寄る。

 

 そして《天帝アイテール》と並び立つように瘴気が固まり玉座が生まれ《冥帝エレボス》はそこに腰かけた。

 

《冥帝エレボス》

星8 闇属性 アンデット族

攻2800 守1000

 

「だがもう一体の《青眼の白龍》の攻撃力には及ばん!」

 

 ならばもう一体で――

 

 そう考えた海馬の思考を遮るようにデュエルロボの声が響く。

 

「アドバンス召喚に成功したことデ、《冥帝エレボス》の効果を発動シ、

その効果にチェーンして、永続魔法《帝王の開岩》のサーチ効果を発動シマス」

 

「ふぅん、随分とワンパターンなことだな」

 

 その姿に海馬は既に見飽きたと言わんばかりの態度だ。

 

「チェーンの逆順処理を行いマス。

まずは《帝王の開岩》の効果によりデッキから《怨邪帝ガイウス》を手札に加えマス」

 

 割れた大地から怨嗟の声と共に黒き帝が現れ、邪気となってデュエルロボの手札に加わり――

 

「そしてアドバンス召喚に成功した《冥帝エレボス》の効果にヨリ、

手札・デッキから『帝王』魔法・罠カード2種類を墓地へ送り、

相手の手札・フィールド・墓地の中からカード1枚をデッキに戻しマス」

 

「なんだとっ!」

 

 《冥帝エレボス》が頬杖を突きながら、もう片方の手に瘴気を収束させる。

 

「ワタシはデッキから2枚目の《帝王の開岩》と3枚目の《帝王の凍気》を墓地に送り、残った《青眼の白龍》をデッキに戻しマス」

 

 収束した瘴気は《冥帝エレボス》の手から放たれ《青眼の白龍》を呑み込まんと襲い掛かる。

 

 宙を舞い、ブレスを放ち抵抗を見せる《青眼の白龍》。

 

 だが瘴気に足を掴まれ動きが止まり、その隙に《青眼の白龍》の全身を瘴気が覆い尽くす。

 

 そして瘴気が消えた後、海馬の誇る白き龍の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 管制室でデュエルの様子をモニターしていたモクバは震える声でツバインシュタイン博士に確認を取る。

 

「今……兄サマのターン……だよ、な……」

 

 海馬のターンにも関わらず次々と現れる「帝」。

 

 その光景にモクバは青ざめる。

 

「そうですぞ。いやぁしかし凄まじい数値ですな!」

 

 だがツバインシュタイン博士はモクバの動揺など見向きもせずに機械が計測した数値に釘付けだ。

 

「一体何なんだよアイツは! いくら最新型のデェエルロボの性能をMAXにしたとしても兄サマを相手に――」

 

 動揺を見せるモクバにツバインシュタイン博士は今思い出したように機材から顔を上げる。だがその視線は計器の数値に釘付けだ。

 

「ふむ、そういえばモクバ様は御存じでなかったですな」

 

「何か知ってるのか! 博士!」

 

 縋るように尋ねるモクバ。だがツバインシュタイン博士はどこ吹く風だ。

 

「知っているも何も――あれは海馬社長の命を受け『あるデュエリストのデュエルデータ』を私がデュエルロボに入力しそのデッキを再現させたものです」

 

 そう、海馬が神のカードの力を計測する条件として提示したのは神崎が全ての情報を握る「とあるデュエリストのデュエルデータ」。

 

 

 今海馬と対峙するデッキはそのデータを元にデュエルロボがデッキを再現したものである。

 

 喜ぶべきか悲しむべきか判断し難いことに「本来の使用者」よりも確実に強い――本来の使用者は初手で此処までの展開は早々出来ない。

 

 生まれてまだ間もないロボットにドロー力が負けている悲しい現実がそこにはあった。

 

「一体誰なんだよ! あれだけの実力で無名なわけないだろ!」

 

 モクバの知識に「帝」を従えるデュエリストの姿はない。

 

「私も本名など知りませんよ。各々好き勝手に呼んでいますし」

 

「な、なんだよそれ……」

 

 名などに意味はないとでも言いたげな在り方。それは歪であるとモクバは思う。

 

「え~と、たしか――『帝』・『龍王』・『探究者』・『魔鏡』・『影』・『煉獄』・『召喚師』・『鎧龍王』・『不死者』・『炎神』・『光牙』・『餓鬼』にそれと――」

 

 聞いたことのある「名」を端から呪文のように唱えていくツバインシュタイン博士の言葉を遮りながらモクバは思わず声を荒げる。

 

「なんでそんなに呼び名が多いんだよ!」

 

 モクバの当然の疑問にこれまで計器から目を離さなかったツバインシュタイン博士はモクバを見やり、そして生徒に教え諭すように語りだす。

 

「それはですな、一般的なデュエリストのデッキは大体1つ、もしくは2つ、多くても4~6と言ったところでしょうか?」

 

 呼び名の話の筈が急にデッキの個数の話を始めるツバインシュタイン博士。モクバにはその意図が読めない。

 

 

 上述されたように複数のデッキを持つデュエリストは決して多くはない。

 

 カードの値段による経済的な面もあるが、カードに対する思い入れから自身が持ち歩ける程度の数に自然となるものだ。

 

「己の『魂』とも言うべき『デッキ』、そう数を用意できるものではありません――ですが彼の場合はその『デッキ』が『魂』になりえなかった」

 

「!? 呼び名が多いのって!」

 

 モクバの瞳に理解の色が見える。ツバインシュタイン博士は満足気だ。

 

「そう、全て彼の使う数多のデッキを指し示しているだけです。そのどれも彼自身を指し示している訳ではないのですよ」

 

 

 実際の所は「名称不明の方が『強キャラ感』が出るのでは?」と言った大したことのない理由である。

 

 

「でもそんなに沢山名前があるんじゃどう呼んだらいいんだよ……ちなみに博士は何て呼んでるんだ?」

 

 ツバインシュタイン博士のマイペースに説明する姿から若干落ち着きを取り戻したモクバはツバインシュタイン博士がどう呼ぶのかを問いかけた。

 

「私ですか? 私はペガサス会長が最近になって名付けたものが一番しっくりきましたね。ああ、と納得できました」

 

「……それって?」

 

 恐る恐る答えを待つモクバにツバインシュタイン博士は過去を懐かしむように語りだす。

 

「彼にとって数多のデッキはその一面に過ぎず、本質に在らず。

 

そしてまるで多くの役を演じ変えるかのような数々のデッキと

 

本人の感情なき在り方への皮肉も込めてこう呼んだそうです

 

 

 

 

 

 

 

 

――『役者(アクター)』と」

 

 

 






やっと「謎のデュエリスト(笑)」から卒業ッ!



実は名づけたのはシンディアだったりする舞台裏ァ!

ペガサス「彼はとても色んなデッキを使い分るのデース!」

シンディア「まぁ! まるで役者さんみたいね」

ペガサス「役者(アクター)! ピッタリデース! ですがそんな彼にも一つだけ演じきれないものがありマース……」

シンディア「それって?」

ペガサス「それは貴方――シンディアの美しさデース(キリッ)」


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