マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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城之内VS本田 後編です


前回のあらすじ
出たっ! 本田サンの「レアメタル」コンボだ!




第58話 フィニッシュブローは名誉の証

 しっかりと本田を見据えた城之内はデッキに手をかける。

 

「俺のターン! ド――」

 

「あっ! あれって噂の『デュエルディスク』じゃんっ! スゲー! 俺初めて見た!」

 

 だが言い切る前に子供の声が城之内の耳に入った。

 

「――ロー! って何だ? やけに人が集まってんな?」

 

 そして城之内は公園の周辺に人が集まっていることに気付く――どうやら観戦客のようだった。

 

 さらにその子供は友人と思しき少年に城之内を指さしながら声を上げる。

 

「それに見ろよ! あの人! 決闘者の王国(デュエリストキングダム)でベスト4の城之内 克也だぜ!」

 

「デュエルディスク持ってるからバトルシティにも参加するんだ! いいなー!」

 

 その子供の声に少年も感嘆の声を上げた。

 

 

 さらには――

 

「じいさんや、あっちの角刈りの子は誰だろうねぇ? アタシは見たことないんだけど……」

 

「ばあさんや、あの子は町工場んとこの本田のせがれじゃよ」

 

 老夫婦と思しき2人が本田を見つつ話しこむ。

 

 

 その他の観客もこのデュエルの行く末を見守り、そして話し込んでいた。

 

 思わぬお祭り騒ぎに城之内は首を傾げる。

 

「なんでこんなにギャラリーがいるんだ?」

 

 だがデュエリストレベル5以下だった本田にはこのお祭り騒ぎの訳が直ぐに理解できた。端的に言って――

 

「物珍しいんだろ――なにせこのデュエルディスクは最新型だからな」

 

 そう、まだこの時期ではデュエルディスクは珍しいものだ。

 

 

 基本的にソリッドビジョンは海馬ランドかテレビ越しでデュエルリングを傍から眺める人が大半なのだから。

 

 

 城之内は本田の答えに納得しつつ頭をかく。

 

「しっかし、こんなに見られてると緊張しちまうぜ……」

 

「何言ってんだよ、城之内。決闘者の王国(デュエリストキングダム)のときはもっと多かったじゃねぇか」

 

 だがそんな本田の当然の理屈にも城之内は軽く笑いつつ言葉を零す。

 

「いや~あの時は無我夢中でよ!」

 

「そうか――でもよぉ、プロ目指すんなら人の目にも慣れとかなきゃいけねんじゃねぇか?」

 

 城之内の最近できた夢「プロデュエリスト」。

 

 それを目指す以上、こういったもの(周囲の視線)は慣れておくべきとの本田の言葉に城之内は両手で自身の両頬を叩き気合を入れる。

 

「それもそうだな! ――よっしゃあ! デュエルを再開するぜ!」

 

 そうして気合を入れ直した城之内はドローしたカードを見てニイッと口を緩める。

 

「そんでもって俺はこのドローで《凡骨の意地》効果を発動! 通常ドロー時に引いたカードが通常モンスターだったとき追加でドローできる!」

 

 引いたのは当然――

 

「俺が引いたのは《マグネッツ1号》! 通常モンスターだ! 追加でドロー!」

 

 そして始まる《凡骨の意地》ブースト。

 

「ドローしたのは

通常モンスター《王座の守護者》! 追加でドロー!

通常モンスター《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》! 追加でドロー!

通常モンスター《格闘戦士アルティメーター》! 追加でドロー! 

通常モンスター《冥界の番人》! 追加でドロー!

通常モンスター《マグネッツ2号》! 追加でドロー! 

通常モンスター《魔物の狩人》! 追加でドロー!」

 

 

 遊戯たちの「言わんこっちゃない」な視線が本田に突き刺さる。

 

 

 だが当人の本田は対峙して初めてコレ(凡骨ドロー)の凄まじさが分かる。

 

 牛尾の言っていた「『引きの強さ』はデュエリストの実力に比例する」ことを本当の意味で感じとっていた。

 

「引いたのは通常モンスターじゃねぇ――だがメインフェイズで魔法カード《手札抹殺》を発動! 互いは手札を捨て、その分だけドローだ! だが本田! オメェの手札は0! 手札交換は俺だけだぜ!」

 

 城之内の師匠、双六との鍛錬の成果を見せる城之内に対し自分のことのように嬉しくなる本田。

 

「だが待ちな、城之内! その《手札抹殺》にチェーンして罠カード《補充要員》を発動!」

 

 だが本田とて負けるつもりは毛頭ない。

 

「コイツは俺の墓地にモンスターが5体以上いる時、その中から効果モンスター以外の攻撃力1500以下のモンスターを手札に加える!」

 

 大地にヒビが入り、そのヒビが広がり3つの影がそこから浮かび上がった。

 

「俺は《アクロバットモンキー》・《レアメタル・ソルジャー》・《レアメタル・レディ》を手札に加えるぜ!」

 

 《補充要員》のカードに描かれた3人のようにポーズを取る3体の機械族モンスター。

 

 そしてチェーンの逆処理が進み――

 

「これで俺の手札は3枚だ! そしてオメェの使った《手札抹殺》の効果で3枚捨てて、3枚ドロー!」

 

「クッ……結果的に本田の手札を増やす手助けになっちまったな……俺は8枚捨てて8枚ドローするぜ……」

 

 しまった、と頭を押さえる城之内の姿を本田は見つつ親友の頑張りが実っている事実に友として喜ぶ。

 

 そんな本田の心を知ってか知らずか城之内は新たに増えた手札で大きく動きにかかる。

 

「まずは魔法カード《闇の量産工場》を発動し墓地の通常モンスター2体――《冥界の番人》と《王座の守護者》を手札に加えるぜ!」

 

 ベルトコンベアに正座して乗る藍色の鎧の戦士と、向かい合う玉座に座った王妃。

 

 その《王座の守護者》の真っ直ぐな視線に《冥界の番人》は気まずさから目を逸らすも、そのまま城之内の手札まで流れていった。

 

「そして俺も魔法カード《融合》を発動! 手札の《冥界の番人》と《王座の守護者》を融合! その槍の一撃は魂をも貫くぜ! 融合召喚! 現れろ! 《魔導騎士ギルティア》!」

 

 2体のモンスターが渦となって一つに合わさり、魔導騎士を呼び覚ます。

 

 現れる澄んだ水色の槍を振るう緑と深い青で構成された衣服にすら魔力がこもる騎士。

 

《魔導騎士ギルティア》

星5 光属性 戦士族

攻1850 守1500

 

「さらに2枚目の魔法カード《闇の量産工場》を発動! 今度は《魔物の狩人》と《アックス・レイダー》を手札に!」

 

 再び動き出すベルトコンベア。

 

 再戦を誓う《アックス・レイダー》を余所に《魔物の狩人》はどこからか取り出した酒を取り出し1人で酒盛りに興じる。

 

 だが動くベルトコンベアに酔ったのか《魔物の狩人》は一足先に青い顔で口元を押さえながら城之内の手札に戻っていった。

 

「そして再び《アックス・レイダー》通常召喚!」

 

 前のターンの雪辱を果たすべく、斧をバトンのようにクルクルと回しながら着地する《アックス・レイダー》。

 

 その鎧の一部に嘔吐(おうと)物が見えるのは気のせいに違いない。

 

《アックス・レイダー》

星4 地属性 戦士族

攻1700 守1150

 

 僅かに距離を取った《炎の剣士》と《魔導騎士ギルティア》の姿もきっと気のせいだ。

 

「まだまだぁ! 3枚目の魔法カード《闇の量産工場》で墓地の《マグネッツ1号》と《冥界の番人》を手札に戻して――」

 

 三度現れるベルトコンベアに乗せられ共に正座しながら運ばれる《マグネッツ1号》と《冥界の番人》。

 

「――最後にコイツでパワーアップだ! 永続魔法《連合軍》を発動! これで俺のフィールドの戦士族は仲間の戦士族・魔法使い族1体につき200ポイントアップだ!」

 

 《連合軍》の効果により《アックス・レイダー》は斧を掲げ、《炎の剣士》も大剣を交わし《魔導騎士ギルティア》の槍も合わさった。

 

「そして俺のフィールドには戦士族モンスターが3体! よって600ポイントアップだぜ!」

 

 《炎の剣士》の炎が燃え盛っているのも、《魔導騎士ギルティア》の身体が魔力のバリアで覆われているのも《連合軍》の強化によるものに違いない。

 

《炎の剣士》

攻1800 → 攻2400

 

《魔導騎士ギルティア》

攻1850 → 攻2450

 

《アックス・レイダー》

攻1700 → 攻2300

 

「行っけー! 《魔導騎士ギルティア》! 《レアメタル・ナイト》を攻撃! ソウル・スピア!!」

 

 《魔導騎士ギルティア》の杖に魔力が集まり光の弾丸となって《レアメタル・ナイト》に放たれる。

 

「だったら2枚目の罠カード《ロケットハンド》を発動してもういっぺんパワーアップだ!」

 

 だが再び飛来した《ロケットハンド》が《レアメタル・ヴァルキリー》の時と同じように《レアメタル・ナイト》に装着された。

 

《レアメタル・ナイト》

攻1200 → 攻2000

 

「またソイツかっ! だがそれだけじゃぁ攻撃力が足りねぇぜ!」

 

 しかし《魔導騎士ギルティア》の放った魔法の弾丸は《レアメタル・ナイト》のアーマーに弾かれる。

 

「な、なんだ!」

 

 城之内の驚きと共に《魔導騎士ギルティア》も「魔法攻撃を無効化」されている光景に思わずたじろいだ。

 

「甘いぜ、城之内! 俺の《レアメタル・ナイト》にそんなチャチな攻撃は通じねぇ!」

 

 《レアメタル・ナイト》のアーマーがエネルギーに満ちたように光り輝く。

 

「《レアメタル・ナイト》はモンスターと戦闘するダメージステップ時、攻撃力が1000ポイントアップする!」

 

 するとそのエネルギーは《ロケットハンド》越しに両剣へと更なる力を与えた。

 

《レアメタル・ナイト》

攻2000 → 攻3000

 

 そして《魔導騎士ギルティア》の魔法攻撃など意に介さず突き進んだ《レアメタル・ナイト》は咄嗟にガードした《魔導騎士ギルティア》の杖ごと相手を両断する。

 

「実質攻撃力3000かよ……それじゃぁ今のコイツらじゃ突破出来ねぇぜ……永続罠《死力のタッグ・チェンジ》の効果でダメージを0にして手札の《魔物の狩人》を特殊召喚だ!」

 

 だが城之内のモンスターは途切れない。

 

 倒れた《魔導騎士ギルティア》を飛び越えた《魔物の狩人》がサーベルで自身の長い髭をペチペチと叩き《レアメタル・ナイト》を挑発する――その顔はどこかスッキリとしていた。

 

《魔物の狩人》

星4 地属性 戦士族

攻1500 守1200

 

「さらにモンスターが破壊されたことで永続魔法《補給部隊》の効果でドロー!」

 

 《魔導騎士ギルティア》の杖の宝玉を城之内に投げ渡す《補給部隊》の隊長ゴブリン。

 

 だがソリッドビジョンなので当然城之内は受け取れない。だがその想いは受け取れる。

 

 

「《レアメタル・ナイト》の戦闘終了時に攻撃力は元に戻るぜ」

 

 その本田の言葉と共に《レアメタル・ナイト》のアーマーの光が収まっていく。

 

《レアメタル・ナイト》

攻3000 → 攻2000

 

「だがこいつは防げるかっ! 《炎の剣士》で《メタル・ドラゴン》を破壊 闘気炎斬剣!」

 

 宙を疾走する《メタル・ドラゴン》に《炎の剣士》の大剣は届かない。ゆえに宙から一方的に火炎を吐く《メタル・ドラゴン》。

 

 だがその火炎は《炎の剣士》の大剣に集まり、炎の龍となって炎の剣士の一閃と共に《メタル・ドラゴン》を貫いた。

 

「ちぃっ! こいつは耐えるしかねぇな!」

 

本田LP:3200 → 2650

 

 燃え盛りながら地に落ちる《メタル・ドラゴン》を見つつ、本田はセットカードの1枚に目をやる――今はまだ「使い時」ではない。

 

「よしっ! あの時の借りは返したぜ! ――だがこれ以上の追撃も出来ねぇし、バトルを終了して魔法カード《蛮族の狂宴LV5》を発動だ!」

 

 今の城之内のモンスターでは実質の攻撃力3000の《レアメタル・ナイト》を突破することができないため、モンスターを展開することに専念する城之内。

 

「コイツで手札・墓地のレベル5戦士族を2体まで呼ぶぜ! 戻って来い! 墓地の《バーバリアン2号》と《魔導騎士ギルティア》!」

 

 今度は地面から全身を出せた《バーバリアン2号》が《バーバリアン1号》とハイタッチしようとするが、そこにいるのは《魔導騎士ギルティア》。

 

 思わず「誰!?」と《バーバリアン2号》は驚きつつもハイタッチを交わす。

 

《バーバリアン2号》

星5 地属性 戦士族

攻1800 守1500

 

《魔導騎士ギルティア》

星5 光属性 戦士族

攻1850 守1500

 

「戦士族モンスターが5体に増えたことで《連合軍》でのパワーアップが1000ポイントに上がるぜ!」

 

 城之内のフィールドに総勢5体の戦士族モンスターが並び立つ。

 

 《連合軍》の効果を最大限発揮できる状態に戦士たちはそれぞれの武器を掲げ雄叫びを上げた。

 

《炎の剣士》

攻1800 → 攻2800

 

《アックス・レイダー》

攻1700 → 攻2700

 

《魔物の狩人》

攻1500 → 攻2500

 

《バーバリアン2号》

攻1800 → 攻2800

 

《魔導騎士ギルティア》

攻1850 → 攻2850

 

「俺はカードを2枚セットしてターンエンドだ!」

 

 フィールド上のアドバンテージの差が広がってきている

 

 本田のプレイミスが響いてきた。

 

 

「なら俺のターン、ドロー! おっ!」

 

 だが自身のプレイミスに気付かない本田は引いたカードを見てニンマリと頬を緩める。

 

 良いカードが引けたようだ。

 

「まずはライフを800払って魔法カード《魔の試着部屋》をまたまた発動だぜ!」

 

本田LP:2650 → 1850

 

 再び本田の背後に現れる赤いカーテンのかけられたグロテスクな機械。

 

「デッキの上からカードを4枚めくって、その中のレベル3以下の通常モンスターを全て特殊召喚するぜ! デッキの上から4枚のカードの中で呼び出せるのはコイツらだ!」

 

 呼び出すのは本田の一番のお気に入りのカード。

 

「レベル2の――2体の《コマンダー》だ!」

 

 右肩にロケットランチャーを装着し、右手にバズーカ砲を持った本田と同じ角刈りの兵士が互いの腕を頭上で交差させポーズを取った。

 

《コマンダー》×2

星2 闇属性 機械族

攻 750 守 700

 

「そしてもう1回《融合》を発動だ! 同名機械族モンスターの《コマンダー》2体を素材に融合召喚! 呼吸を合わせ走り出せ! 《ペアサイクロイド》!」

 

 遠くから土煙と共に走ってきた、いわゆる2人乗り用の「タンデム自転車」にデフォルメされた目玉が付いた《ペアサイクロイド》が宙に飛び出す。

 

 その《ペアサイクロイド》に飛び乗る2体の《コマンダー》。

 

 その《コマンダー》たちの息を合わせた巧みな自転車捌きで横向きに止まり――静止後、2人合わせてキリッと城之内を見やった。

 

《ペアサイクロイド》

星5 地属性 機械族

攻1600 守1200

 

「バトルだ! 《ペアサイクロイド》はモンスターを飛び越えて城之内の元まで一っ飛び出来るぜ!」

 

 2体の《コマンダー》が《ペアサイクロイド》のペダルを全力で漕ぎ、城之内の5体の戦士たちの前で宙に跳躍する。

 

「行けっ! 《ペアサイクロイド》! 城之内のヤツにダイレクトアタック!!」

 

 そして跳躍中にバズーカ砲とミサイルランチャーを構える《ペアサイクロイド》に乗った《コマンダー》2体。

 

「だったら俺は――」

 

 そんな城之内の宣言も聞き流し本田はフィニッシュを決めるべくカードを発動させる。

 

「そしてダメージ計算時、リバースカードオープン! 速攻魔法《リミッター解除》! これで俺の機械族モンスターたちの攻撃力は2倍になる!」

 

 《リミッター解除》により電動アシストが解放された《ペアサイクロイド》が城之内に向けて超加速して突撃する。

 

《ペアサイクロイド》

攻1600 → 攻3200

 

 それゆえに銃器を使うためにハンドルから両手を離していた《コマンダー》は仰け反りながら足の力のみで振り落とされないように必死にしがみつく。

 

 銃器を手放さないその姿は兵士としての誇りなのか。

 

 そんな彼らを《レアメタル・ナイト》は全エネルギーを解放しつつ、他人事のように眺めていた。

 

《レアメタル・ナイト》

攻2000 → 攻4000

 

 そして《ペアサイクロイド》の攻撃力3200のダイレクトアタックが城之内を襲う。

 

 今の城之内の残りライフは2650――止めとなりうる一撃だ。

 

「このダイレクトアタックが通れば残りライフ2650の城之内君は!」

 

 それゆえに遊戯は心配の声を上げるが――

 

 

 

城之内LP:2650 → 1050

 

「危ねぇとこだったぜ……」

 

 城之内、倒れず。

 

「なんでだ!」

 

 仕留められなかった悔しさからか思わず声が出た本田。

 

 そんな本田に城之内は得意気に説明する。

 

「俺はお前の攻撃宣言時に罠カード《ダメージ・ダイエット》を発動しておいたのさ!」

 

「そ、そいつは! ――なんだっけ?」

 

 本田は攻撃を防がれたカードに驚くも、よくよく考えるとそのカードがどんな効果を持っているか知らないことに本田は気付く。

 

 そんな本田に何とも言えぬ視線を向けながら城之内は効果の説明を始めた。

 

「知らねぇのかよ……《ダメージ・ダイエット》の効果で俺はこのターン受けるあらゆるダメージが半分になるんだよ……」

 

 城之内の説明に納得を見せた本田はならばとデュエルを再開する。

 

「そうなのか――だったら《レアメタル・ナイト》で《魔導騎士ギルティア》を攻撃! オーバー・ツインブレード!!」

 

 限界を超えた速度で《魔導騎士ギルティア》へと疾走する《レアメタル・ナイト》。

 

「そしてモンスターとバトルする《レアメタル・ナイト》はダメージステップ時に攻撃力が1000ポイントアップ!」

 

 さらに加速する《レアメタル・ナイト》。

 

《レアメタル・ナイト》

攻4000 → 攻5000

 

 《魔導騎士ギルティア》は魔法攻撃は通じないと判断したゆえに槍を構え間合いの差でカウンターを狙う。

 

 そして《レアメタル・ナイト》の間合いの外から繰り出された《魔導騎士ギルティア》の槍だったが、《レアメタル・ナイト》の両剣の中央部が外れ双剣となりその片方の剣で槍を防いだ。

 

 そして槍を伝うようにそのまま剣を這わせ、もう一方の剣が《魔導騎士ギルティア》を切り裂く。

 

「《魔導騎士ギルティア》は破壊されちまうが、《死力のタッグ・チェンジ》の効果で手札の《冥界の番人》を特殊召喚! ダメージも0だぜ!」

 

 倒れ伏す《魔導騎士ギルティア》を支えるように受け止めた《冥界の番人》がそっとその亡骸を地面におく。

 

 そして口のようなものが付いた炎が猛る盾を《レアメタル・ナイト》に向け、剣を構えた。

 

《冥界の番人》

星4 地属性 戦士族

攻1000 守1200

 

「そして《連合軍》の効果でパワーアップだ!」

 

 同胞を倒された戦士の激情が戦士たちに力を与える。

 

《冥界の番人》

攻1000 → 攻2000

 

「そしてモンスターが破壊されたことで永続魔法《補給部隊》の効果でドロー!」

 

 《補給部隊》のゴブリンたちも戦士たちの熱気に当てられ雄叫びを上げながら職務を果たす。

 

 城之内のモンスターは5体のまま、本田は中々打ち崩せない布陣に焦りを見せる。

 

「《レアメタル・ナイト》のバトル終了時に攻撃力は元に戻るぜ!」

 

 双剣を元の両剣に戻す《レアメタル・ナイト》。

 

《レアメタル・ナイト》

攻5000 → 攻4000

 

「――それに、城之内! お前の手札に残ったレベル4以下の戦士族モンスターは前のターン手札に戻した《マグネッツ1号》くらいだろ?」

 

「うっ! ど、どうかな!」

 

 《死力のタッグ・チェンジ》は新たに呼び出すモンスターがいなければ戦闘ダメージを0にできない。

 

 その効果を知っての本田の誘導尋問染みた口車に分かりやすいリアクションを取る城之内。

 

「へへっ、そろそろ布陣が崩れて来たみたいだな! ――とはいえ、全然モンスターが減らねぇな……」

 

 だが城之内のモンスターは未だ5体――本田は内心で焦燥感にかられる。

 

「なら何度でも戦闘以外で破壊してやるっきゃねぇな! 俺は《レアメタル・ナイト》に装備された《ロケットハンド》のもう一つの効果を再び発動!」

 

 先程の焼き増しのように《レアメタル・ナイト》の手から発射される《ロケットハンド》。

 

「装備されたコイツを墓地に送ることでフィールドの表側のカード1枚を破壊するぜ! 俺は《バーバリアン2号》を破壊!」

 

 その《ロケットハンド》は《バーバリアン2号》へと向かう。

 

 《バーバリアン2号》はバットのように構えた棍棒で打ち返そうとするが、その棍棒は打ち砕かれ《ロケットハンド》はそのまま《バーバリアン2号》の身体にめり込みその体躯を吹き飛ばす。

 

「《ロケットハンド》の効果で《レアメタル・ナイト》の攻撃力は0になり表示形式も変更も出来なくなるが問題はねぇぜ!」

 

 《ロケットハンド》の発射にエネルギーを使い果たし膝を付く《レアメタル・ナイト》。

 

《レアメタル・ナイト》

攻4000 → 攻 0

 

 本田が《ロケットハンド》で狙うのはモンスターばかり――効果を勘違いしているようにも見える。

 

「またかよ……戦士族モンスターが減ったことで《連合軍》のパワーアップも弱まるぜ」

 

 仲間の戦士が減ったことで他の戦士たちは悲しみに暮れ攻撃力が下がる。

 

《炎の剣士》

攻2800 → 攻2600

 

《アックス・レイダー》

攻2700 → 攻2500

 

《魔物の狩人》

攻2500 → 攻2300

 

《冥界の番人》

攻2000 → 攻1800

 

「そして俺は《レアメタル・ナイト》のもう一つの効果を発動! コイツとエクストラデッキの《レアメタル・ヴァルキリー》と交換するぜ!」

 

「『対』になってるモンスターって訳か!」

 

「その通りだぜ! 交換召喚! レアメタルチェンジ! 舞い戻れ! 《レアメタル・ヴァルキリー》!」

 

 そして先程のターンの逆再生のように《レアメタル・ナイト》は《レアメタル・ヴァルキリー》へと交換する。

 

 だが腕を交差し、膝を付いた――守備表示で特殊召喚されたようだ。

 

《レアメタル・ヴァルキリー》

星6 地属性 機械族

攻1200 守 500

 

「さらに速攻魔法《融合解除》で《ペアサイクロイド》をエクストラデッキに戻し、その融合素材となった《コマンダー》2体を特殊召喚だぜ! コイツらも守備表示だ!」

 

 《ペアサイクロイド》から降りる2体の《コマンダー》。

 

 そのペアサイクロイドは何時の間にやらあった駐輪場に停め、盗難防止のためかキッチリとチェーンを巻いて確認する《コマンダー》の1体。

 

 そしてもう一体の《コマンダー》は早く来いと言わんばかりに本田の前で守備表示になりつつ手を振っていた。そしてもう一体も駆け足でそれにならう。

 

《コマンダー》×2

星2 闇属性 機械族

攻 750 守 700

 

「これで《リミッター解除》のターンの終わりに破壊されちまうデメリットも回避だぜ! 俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

 このデュエル中に初めて守備を固めた本田。

 

 ゆえにこれはチャンスだと城之内はデッキに置く指に力が入る。

 

「なら俺のターン! ドロー! 今引いたのは通常モンスター《メテオ・ドラゴン》! 《凡骨の意地》の効果で追加でドローだ!」

 

 すかさず《凡骨の意地》で手札を補強する城之内。

 

「そして引いたのは通常モンスター《サイバティック・ワイバーン》! 追加でドロー! ……これで追加ドローは終わりだぜ!」

 

 デッキが自身に応えてくれている感覚に絶好調だと城之内は勝負に出る。

 

「バトルだ! 《冥界の番人》と《魔物の狩人》、《アックス・レイダー》の3体で2体の《コマンダー》と《レアメタル・ヴァルキリー》をそれぞれ攻撃だ!」

 

 《冥界の番人》と《魔物の狩人》と《アックス・レイダー》がアイコンタクトしタイミングを合わせて「1体」の《コマンダー》を切り裂く。

 

 驚きに顔を合わせる《冥界の番人》と《魔物の狩人》と《アックス・レイダー》。

 

 

 互いに別々のモンスターを攻撃する手筈だったゆえにその動揺は大きい。

 

 

 もう1体の《コマンダー》は今のうちにと銃器を構えるが我に返った《冥界の番人》と《魔物の狩人》の息の合った剣に切り裂かれた。

 

 初めからそうすればよかったのに。

 

 

 ちなみに《アックス・レイダー》は《レアメタル・ヴァルキリー》の頭をその斧の柄で軽く打ち据えて倒していた。

 

「お次は《炎の剣士》でダイレクトアタック! これで止めだ! 闘気炎斬剣!」

 

 久々のフィニッシュブローにかなりテンションを上げながら大剣に炎を纏わせ振り被る《炎の剣士》だが――

 

「そうスンナリとは通さねぜ! 罠カード《逆さ眼鏡》!」

 

 《炎の剣士》の隣を通り抜ける眼鏡をかけた顔のようなものに手足の生えた藍色の謎生物。

 

 そしていつのまにやら《炎の剣士》に取り付けられた丸縁の眼鏡。

 

 謎生物はフィールドのモンスター全てに次々とその眼鏡を装着させていく。

 

「コイツの効果でフィールドの全ての表側モンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になるぜ!」

 

 眼鏡の度が強いせいかふらつく戦士たち。

 

《炎の剣士》

攻2600 → 攻1300

 

《アックス・レイダー》

攻2500 → 攻1250

 

《魔物の狩人》

攻2300 → 攻1150

 

《冥界の番人》

攻1800 → 攻900

 

 ふら付きながらも振り下ろされる《炎の剣士》の大剣は本田を打ち据える。

 

本田LP:1850 → 550

 

「くっ、だが凌ぎ切ったぜ!」

 

 そして城之内の4体のモンスターの猛攻を何とか防ぎ切った本田。

 

 

 しかし手札及びフィールドのカードは0。次のドローに全てが掛かっている。

 

 

 

 だがその本田の目に映るのは5()体目のモンスター(黒き竜)。その紅き瞳が本田を射抜く。

 

「へっ?」

 

 呆ける本田。

 

「俺は永続罠《正統なる血統》で墓地から《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を呼び出させてもらったぜ!」

 

 《逆さ眼鏡》の効果の後に呼び出された《真紅眼の黒竜》。

 

 ゆえにその攻撃力は万全の状態であると言わんばかりに《真紅眼の黒竜》は翼を広げ雄叫びを上げる。

 

《真紅眼の黒竜》

星7 闇属性 ドラゴン族

攻2400 守2000

 

「これで今度こそフィニッシュだ! 黒・炎・弾!」

 

 

 そんな城之内の宣言と共に本田はソリッドビジョンの炎の海に呑まれた。

 

「ぬ、ぬわぁあああ!!!」

 

本田LP:550 → 0

 

 

 






コマンダー「見たか? 俺たち(本田)の華麗な自転車捌きを!」



《レアメタル・ナイト》の
「このカードが相手モンスターに攻撃する場合はダメージステップ時に攻撃力が1000強化される」効果の裁定で

「相手モンスターに攻撃対象に選択された場合」は「調整中」でしたが


祝! 2017年6月26日に「適用される」とになりました!

やった! これでデュエルの際にトラブルのタネが無くなるぜ!


しかし15年以上経過したカードなのに今になってアンサーされるなんて……

もしかして忘れ去られていたのだろうか……


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