静香VS城之内 後編です
前回のあらすじ
静香「ここまでよ! お兄ちゃん! お兄ちゃんはこのターンで死んじゃうわ! エンジェル・フェニックス!!(顔芸)」
城之内「ぐうぁあああああああああッ! ぃわぁぁああああああく!!」
静香の思ってもみなかった猛攻を何とかしのぎ切った城之内。
「《ダメージ・ダイエット》がなきゃ、終わってたぜ……」
そう言って額の汗を拭いつつ城之内は静香に兄の贔屓目なしの賛辞を贈る。
「まさか此処まで強くなってるとはな! 兄として誇りに思うぜ!」
「お兄ちゃんに追いつきたくて頑張ったから!」
そんな静香のガッツポーズを視界に収めた本田は思わず叫ぶ。
「スゲェぜ! 静香ちゃーん! もう城之内のヤツを追い越してるぜー!」
「うるせぇぞ、本田ァ! こっからが本番だ! 本番!」
そんな本田の冗談半分の言葉に怒り半分で返す城之内。
「俺のターン、ドロー! 俺は魔法カード《名推理》を発動! 静香! 好きなレベルを選択してくれ!」
フィールドに星がルーレットのように回る。
「そして俺はデッキから通常召喚可能なモンスターが出るまでカードをめくって、そのモンスターが宣言されたレベルじゃないとき特殊召喚出来るぜ! めくったカードはそのまま墓地に行っちまうけどな!」
専用の構築をすれば大量の墓地アドバンテージを生み出す頼もしいカードだ。
しかし城之内のデッキにその手のギミックはない――ほとんどギャンブルカードのようなものである。
「そして宣言したレベルがもし当たりなら! そのまま墓地に送るぜ!」
「う~ん……それじゃぁレベル8!」
静香の宣言にフィールドでルーレットのように回る星が「8」を差す。
そして城之内のデッキから墓地にカードが送られていき、現れたモンスターは――
「ならカードを墓地に送って――残念だったな、静香! モンスターは《ガルーザス》! そのレベルは5だ!」
龍の獣人、《ガルーザス》が斧を片手にルーレットから跳躍しフィールドに着地する。
《ガルーザス》
星5 炎属性 獣戦士族
攻1800 守1500
「さらに《鉄の騎士 ギア・フリード》を召喚!」
その《ガルーザス》の隣に現れたのは全身を隙間なく黒い甲冑で覆った鉄の騎士。
その左右の腕にはそれぞれ剣と盾が黒い鎧と一体となっていた。
《鉄の騎士 ギア・フリード》
星4 地属性 戦士族
攻1800 守1600
モンスターを展開した城之内だが、その胸中に不安がよぎる。
――しっかし、静香のセットしたカードはなんだ? また《次元幽閉》みたいなカードだったら《ギルフォード・ザ・ライトニング》も失っちまうかもしれねぇ……
前のターン、いきなりエースの《
――いや、だからって攻撃せずに《アテナ》をそのままにしとけば俺はジリ貧だ—―ここは行くしかねぇ!
だがその弱気になった心に激を入れ、城之内は力強く決断する。
「バトル! 《ギルフォード・ザ・ライトニング》で《アテナ》に攻撃! ライトニング・クラッシュ・ソード!!」
《ギルフォード・ザ・ライトニング》の大剣の一線を左手に持つ盾で受け取め、その盾越しに右手の槍で迎撃しようとした《アテナ》。
だがその盾は《ギルフォード・ザ・ライトニング》の大剣の一撃に容易く砕け、その持ち主たる《アテナ》はそのまま切り伏せられた。
「でもフィールド魔法《天空の聖域》の効果で戦闘ダメージは0に!」
そんな静香の言葉にもダメージがなくとも厄介な効果を持つ《アテナ》を破壊出来たゆえに城之内はここぞとばかりに果敢に攻め込む。
「どんどん行くぜ! 《ガルーザス》で《コーリング・ノヴァ》を攻撃! ガルーザス・アックス・クラッシュ!!」
振りかぶった《ガルーザス》の斧がフヨフヨと浮かぶ《コーリング・ノヴァ》に振り下ろされその身体を真っ二つに切り裂く。
――《コーリング・ノヴァ》はコイツで最後の3体目! 攻撃力1500以下なら攻撃力1800の《鉄の騎士 ギア・フリード》の敵じゃねぇ!
その城之内の読み通り《コーリング・ノヴァ》から出てきたのは――
「でも戦闘で破壊された《コーリング・ノヴァ》の効果を発動! 私はデッキから《勝利の導き手フレイヤ》を攻撃表示で特殊召喚!」
黒と青色のチアリーディングの衣装を着て、両の手に桃色のポンポンを持った天使。
その手足には天使の輪が浮かび、動きに合わせて薄紫のショートの髪に付けられた花の髪飾りが揺れる。
《勝利の導き手フレイヤ》
星1 光属性 天使族
攻 100 守 100
「私のフィールドに《勝利の導き手フレイヤ》がいる限り、私の天使族モンスターの攻撃力・守備力は400ポイントアップ!!」
《勝利の導き手フレイヤ》の声援と共に聖なる力を漲らせる静香の天使たち。
《聖女ジャンヌ》
攻2800 守2000
↓
攻3200 守2400
《翼を織りなす者》
攻2750 守2400
↓
攻3150 守2800
《
攻2400 守1800
↓
攻2800 守2200
《勝利の導き手フレイヤ》
攻 100 守 100
↓
攻 500 守 500
「なっ! 《ギルフォード・ザ・ライトニング》の攻撃力を上回っただとぉ! ――だがそのまま次のターンまで放ってはおかないぜ!! ギア・フリードで《勝利の導き手フレイヤ》追撃だ! アイアン・スラッシュ!!」
《勝利の導き手フレイヤ》に向かって全身の鎧の重さを感じさせぬ速さで迫る《鉄の騎士 ギア・フリード》。
しかし、《勝利の導き手フレイヤ》の前に立ち塞がる《聖女ジャンヌ》が《鉄の騎士 ギア・フリード》の剣を己が剣で受け止め、
《
「な、なんだぁ!?」
「無駄だよ、お兄ちゃん! 《勝利の導き手フレイヤ》は自分以外の天使たちがいる限り、攻撃は届かないわ!!」
《鉄の騎士 ギア・フリード》は悔し気に踵を返し、城之内の元へ戻る。
「うっ、まずったぜ……ソイツを残しちまうとは……」
――厄介そうな《アテナ》は倒せたが、また厄介なモンスターが出てきちまったぜ……
上手く攻め込めない城之内に焦りが募る――あまりノンビリしていては先のターンのバーン効果のラッシュのような怒涛の攻めが来ることが目に見えているのだから。
「俺はカードを3枚伏せてターンエンドだ!」
相手の布陣を崩すことが出来なかったゆえに城之内は苦し気にターンを終えた。
そして未だ4体の天使族モンスターを擁する静香。
だが静香の瞳に警戒の色は消えはしない――赤毛な強面の師匠の「常に警戒を途切れさせるな」との言葉を思い出す。
――お兄ちゃんのライフは残り1500……でも私の手札は0……
しかし形状記憶合金ヘアーを持つリアルファイターな師匠の「攻撃こそ最大の攻撃だぜ! 相手に休む暇を与えるな!」と親指を立てる姿も思い出す。
――よしこのまま押し切っちゃおう!
そうして決心を固めた静香はデッキからカードをドローする。
「私のターン、ドロー! そして《
再び《
「今私がこのドローで
引いたのは《
引いたのは《心眼の女神》! 天使族だから更にドロー!」
しかしそのドローが止まったところを見るに次のカードは天使族ではなかった様子。
だが静香の「ガンガン行こうぜ!」な想いは止まらない
「バトル! フレイヤの加護を受けた《聖女ジャンヌ》で《ギルフォード・ザ・ライトニング》を攻撃!」
その静香の宣言に《勝利の導き手フレイヤ》の声援を受けた《聖女ジャンヌ》は己が剣を天に掲げると、その剣の先に続くように長大な光の剣が現れ、《ギルフォード・ザ・ライトニング》に振り下ろされる。
《ギルフォード・ザ・ライトニング》も自身の大剣でその長大な光の剣を受け止めるが質量が違い過ぎた――ゆえにいくら踏ん張ったとしても止めきれない。
腕が軋みを上げ、膝も震え始める《ギルフォード・ザ・ライトニング》。
「この攻撃が通れば城之内くんは!?」
そんな観客である御伽のフラグを建てるような言葉に早速そのフラグを回収すべく城之内はカードを発動させる。
「ト、
その効果は――
フィールドのモンスターをバトルフェイズの間、破壊から守る効果と
バトルフェイズの間、戦闘ダメージを受けなくなる効果
2つの効果を持つカードだ――もっとも今の城之内に選択肢などあってないようなものだが。
「俺は2つの効果からこのバトルフェイズでの戦闘ダメージを0にする効果を使うぜ!」
城之内の前に地面から透明な壁がせり上がる。
「それと永続罠《ラッキーパンチ》の効果のコイントスは――おぉ! 3つとも表だぜ! 俺は3枚ドロー!」
さらに3枚のコインが宙を舞い、3枚とも表を向いて落ちた。
「でもモンスターは破壊出来るわ!」
城之内の安全が確保されたことを見届けると共に《ギルフォード・ザ・ライトニング》の大剣は砕け散り《聖女ジャンヌ》の長大な光の斬撃に呑まれていった。
「次は《
手と一体化した黒剣を《
不審に思った《鉄の騎士ギアフリード》だったが、その身体は弾けた聖水に呑み込まれ沈む。
そして天を舞う本体の《
「最後に《翼を織りなす者》で《ガルーザス》を攻撃!」
天を舞う《翼を織りなす者》の羽の銃弾の雨を恐れず跳躍し、斧で羽を迎撃しながら突き進む《ガルーザス》。
だが《ガルーザス》の斧が《翼を織りなす者》に届く寸前に振るわれた《翼を織りなす者》の6枚の翼の攻撃を捌ききることが出来ず、その全身を翼によって切り刻まれ《ガルーザス》は地に落ちた。
しかし《攻撃の無敵化》によりダメージはない。
「また防がれちゃった……なら私は前のターンにセットしておいた2枚目の魔法カード《
「なっ! ブラフだったのか!! ――それにさっき公開した静香の手札にレベル7のモンスターはいなかった筈!!」
前のターン、城之内を迷わせた静香のリバースカードはあの状況では力を発揮しないブラフであったことに驚きを隠せない城之内。
良いように騙されていたことがショックの模様。
そんな城之内に静香ははにかみつつも、城之内の言葉の後半部分に答える。
「魔法カード《
《翼を織りなす者》が《
「この2枚のドローで引いた1枚は天使族の《
幾たびも《
「引いたのは《フェアリー・アーチャー》! 天使族! もう1枚ドロー!」
そしてドローを止めた静香は先ほど引いたカードを手に取り――
「私は墓地の光属性2枚、《アテナ》と《コーリング・ノヴァ》を除外して、手札から《
静香の顔を後ろからそっと抱き締める、白い半透明な天使が現れ、スッとフィールドの天使たちの元へ移動する。
《
星6 光属性 天使族
攻2000 守1800
「そして2体目の《フェアリー・アーチャー》を召喚!」
羽をパタパタと動かし弓を片手に現れた《フェアリー・アーチャー》。
《フェアリー・アーチャー》
星3 光属性 天使族
攻1400 守 600
「げぇっ! ソイツはやっぱり!!」
そう、城之内が察する通り、前のターンあわや2000のダメージを与えかけたカード。
「勿論《フェアリー・アーチャー》の効果を発動! 私の光属性モンスター1体につき400のダメージ!」
だがそんな城之内の心情なんて関係ねぇとばかりに弓を身体全体の力を使って引き絞る《フェアリー・アーチャー》。
「私のフィールドの光属性は5体! よって2000ポイントのダメージ!!」
静香は残りライフ1500の城之内をキッチリ仕留めにかかり、《フェアリー・アーチャー》の聖なる矢が城之内に向かって放たれた。
「おっと! これで終わりになんてさせねぇぜ! 俺は墓地の《ダメージ・ダイエット》を除外することで俺がこのターン受ける効果ダメージは半減!」
その聖なる矢は半透明な壁にぶつかり、威力が削がれる。そのお陰で2000のダメージが1000になった。
城之内LP:1500 → 500
「危ねぇとこだったが、これで大丈夫だな!」
「う~ん、これも防がれちゃった……私はカードを2枚伏せてターンエンド!」
仕留めきれなかった事実に城之内の実力を直に感じ取りデュエリストとして、そして妹として嬉しさがこみ上げる静香――自身の兄は己の自慢なのだと言いたげだ。
「俺のターン! ドロー! こっからだぜ!」
ライフ差はかなり開いたがここから巻き返すと息を巻く城之内。
「お兄ちゃんのドローフェイズに罠カード《ソーラーレイ》を発動!」
「へっ?」
だったが、このタイミングで発動された静香のカードに城之内は嫌な予感しかしない。
「このカードの効果で私のフィールドの表側の光属性モンスターの数×600ポイントのダメージを与えるの!」
5体の光属性のモンスターが天に光のエネルギーを放つ。そのエネルギーは虹色に輝き――
「私のフィールドの光属性モンスターは5体! よって3000ポイントのダメージ! えいっ!」
そんな力の抜けそうな掛け声とともに必殺のオーバーキルを城之内にかます妹、静香。
「ち、ち、ちょっとタンマァ! ソイツにチェーンして罠カード《ゴブリンのやりくり上手》を発動!」
そのあまりの必殺の力が込められた一撃っぷりに城之内は慌ててカードを発動させる。
城之内の隣に現れた赤色の丸い帽子を被ったゴブリンは慌てて弾道計算を始め――
「さらにチェーンして罠カード《
城之内の影から伸びた橙色のゴーストが城之内の手札に慌てて頭を突っ込む。
そうして次々に発動され、チェーンが組まれる城之内のカード。
「そんでもって最後に俺のフィールドの全ての罠を墓地に送って速攻魔法《非常食》も発動だ!」
城之内のフィールド全ての魔法・罠カード3枚が缶詰に変わった。
そうして最後のカードを発動し終えた城之内の姿に静香はこの場合はどうなるかを思い出しながら言葉を零す。
「えぇっと……確かこんな風にチェーンが組まれたときは……最後に発動されたカードから順番だったよね?」
「え~と……多分それであってるぜ!」
そんな頼りなさげな城之内の後押しに観客の牛尾は一応声をかける。
「多分じゃなくてちゃんとあってるぞー!」
その牛尾の声に城之内は「だよな!」と同調しつつチェーンの逆処理に移行した。
「ってことはだ! まずは俺の速攻魔法《非常食》の効果で墓地に送った《ゴブリンのやりくり上手》、《
城之内の隣の罠カード《ゴブリンのやりくり上手》のゴブリンが現れた《非常食》の缶詰3つを開け城之内のライフを回復させる。
城之内LP:500 → 3500
「永続罠《ラッキーパンチ》は破壊された訳じゃねぇからライフを失うこともねぇ!」
永続罠《ラッキーパンチ》のデメリットによるライフを6000失う効果は「破壊された」場合、《非常食》の効果で「墓地に送られた」のでダメージは発生しない。
城之内とてギャンブルカードによるデメリットに対する備えはしている。
「次も俺の罠カード《
次に慌てて城之内の手札に潜り込もうとしていた橙色のゴーストは時計に手足の生えた《時の魔術師》のカードを城之内の手札にそっと潜らせ、自身は影の中に逃げるように消えていった。
「ああ、もちろん墓地の《融合》もその効果で回収する!」
いつの間に墓地に《融合》が、と考える静香だったが、その答えは城之内が意気揚々と明かす。
「《名推理》の効果で墓地に落ちててラッキーだったぜ!」
そしてチェーンの逆処理が進み城之内の最後のカードの効果が処理される。
「そんで次は罠カード《ゴブリンのやりくり上手》の効果だな!」
ゴブリンがニヤリと笑って懐のブツを城之内に手渡すべく近づき――
「俺の墓地の《ゴブリンのやりくり上手》の枚数の+1枚の数だけデッキからドロー! そして手札の1枚をデッキの一番下に戻すぜ!」
だが発動した《ゴブリンのやりくり上手》は既に《非常食》の効果で墓地に送られている。
さらには残りの2枚の《ゴブリンのやりくり上手》も《名推理》の効果で墓地に送られていた。
「俺の墓地の《ゴブリンのやりくり上手》は3枚! よって4枚ドローして手札の1枚をデッキの一番下に!」
よって4枚ものドローが城之内に舞い込む。
城之内に大量のカードをもたらしたゴブリンは「今後とも御贔屓に」と言わんばかりニヒルに笑って帽子を軽く上げた後で立ち去り、
「最後に私の罠カード《ソーラーレイ》でお兄ちゃんに3000ポイントのダメージでいいのかな?」
天に集められた虹色の光が城之内を貫くように降り注いだ。
城之内LP:3500 → 500
「うぉおおお!! っとっと! ――おう! それで大丈夫だ!」
あわや敗北するところを何とか回避した城之内は「危ないところだった」と、何度目か分からぬため息を付く。
だがそんな城之内に静香は尊敬の眼差しを向けている。
「凄い、お兄ちゃん! 私の《ソーラーレイ》を読んでたんだ!」
「へっ?」
何のことだと、その顔に疑問符を浮かべる城之内。
そんな城之内の姿に静香は首を傾げながら説明し始める。
「えっ? だからドロー前に使った方が良いサーチカードを手札にあった《非常食》の回復効果と合わせる為に後で使った……だよね?」
先程城之内が発動した罠《
当然その効果はデッキにサーチすべきモンスターがいなければ発動出来ない為、ドローしたカードがその融合素材カードなら発動出来ない可能性もあった。
ゆえにドロー前に発動させるのがセオリー。
しかし静香の発動した罠《ソーラーレイ》の3000ポイントのダメージを防ぐには、あの時の城之内は《非常食》でライフを3000回復させるしかない。
しかしもしセオリー通りにドロー前に《
よってライフ2500となった城之内は3000のダメージを受け敗北していた。
そのことに思い至った城之内は慌てて口を開く。
「と、当然だぜ! ま、まぁ俺ほどのデュエリストになればそのくらい――」
あり得たかもしれないIFに辿り着いた城之内は冷や汗を流しつつ、胸を張る――心理的に弱気なところは見せられないデュエリストとしての本能。
まぁ多少は兄としての尊厳も混じってはいたがご愛敬だ。
「城之内のヤツ、忘れてたな」
「完全に忘れてたわね……」
しかし、先ほどの城之内の慌てっぷりをしっかり見ていた観客の杏子と本田は冷ややかな目線で城之内を見やる。
「な、なんだ! お前ら! その目は!」
そう言いながら観客の冷ややかな視線に抗議を入れる城之内――今は妹、静香の尊敬の視線が城之内には逆に辛い。
「お、俺は《時の魔術師》を召喚!」
この色んな意味で悪い流れを断ち切るべく現れたのは城之内の隠し玉、目覚まし時計に手足が生えた《時の魔術師》。
《時の魔術師》
星2 光属性 魔法使い族
攻 500 守 400
「そして《時の魔術師》の効果を使うぜ! タイム・ルーレット!!」
コイントスの裏表を当てる代わりに時の魔術師が持つ杖の先端のルーレットが回る。
当たれば相手のフィールドのモンスターを全て破壊し、
外れれば自分のフィールドのモンスターを全て破壊、さらに表側で破壊されたモンスターの攻撃力の合計の半分のダメージを受ける。
その矢印は「ドクロ」のマークを通り過ぎ「当」のマークで止まった。
「よっしゃ! 当たり!」
――かに思われたが、矢印がさらに進み「ドクロ」のマークでは矢印は止まる。
「えっ、ハズレ?」
そう、ハズレだ。
突如として開いた空の黒い大穴に吸い込まれていく《時の魔術師》。
マントをはためかせて吸い込まれる姿は何だかヒーローのようにも見える――だがその穴の先は終わりしかない。
そして表側で破壊されたモンスターは《時の魔術師》のみ、その攻撃力の半分のダメージが大穴から放たれ城之内を襲う。
「うぉおおおお!!」
城之内LP:500 → 250
城之内の精神的な乱れが出たようなギャンブルの結果。
「城之内ィー! もう後がねぇぞー! しっかりしろー!」
観客である本田も友として城之内に檄を飛ばす。
「まだだ! 装備魔法《やりすぎた埋葬》!!」
フィールドに「《時の魔術師》のお墓を建てるウラ」とでも言わんばかりに地面から生える石造りの墓標。
「こいつは手札のモンスターを1枚捨てて、捨てたモンスターのレベル以下の墓地のモンスターを蘇生させるカード!!」
だがその墓標は黒い人影によって黄金に塗装され、周囲に色取り取りの花が添えられる――もの凄く派手だ。
「俺は手札のレベル3! 《共闘するランドスターの剣士》を捨て、墓地の《時の魔術師》を復活!!」
その派手な墓標に「眠っている場合じゃねぇ!」と、地中から飛び出す《時の魔術師》。
《時の魔術師》
星2 光属性 魔法使い族
攻 500 守 400
「またギャンブルかよ城之内……」
そんな観客の本田の呟きに城之内は首を横に振る。
「いや、蘇生した《時の魔術師》は装備魔法《やりすぎた埋葬》が装備されてモンスター効果が無効になっちまう!」
《時の魔術師》は怒りのままその派手な墓標を杖で殴ろうとするが、その派手な墓標をもう一度見るとその派手な墓標の隣に腰掛けた。
じっくり見ると悪くないと判断したようだ。
「だが! 墓地の魔法カード《シャッフル・リボーン》を除外して、装備魔法《やりすぎた埋葬》をデッキに戻して1枚ドローするぜ!」
《やりすぎた埋葬》を気に入った《時の魔術師》の満足感を吹き飛ばす様にシャベルを持った骸骨が派手な墓標、《やりすぎた埋葬》を砕く。
「そのカードも《名推理》のときに!?」
その静香の言葉に城之内はガッツポーズを取りつつ返す――しかし上手くカードが墓地に落ちたものだ。
「おうよ! これで装備魔法《やりすぎた埋葬》は消えた! これで《時の魔術師》の効果が使えるぜ! もう1度頼む! タイム・ルーレット!!」
気に入った《やりすぎた埋葬》が砕けた喪失感を埋めるように《時の魔術師》はその杖のルーレットを回し始めた。
そしてルーレットの矢印が止まった先は「当」の文字――成功である。
「よっしゃぁ! 今度こそ当たりだぜ! 静香のフィールドのモンスターを全破壊だ!! タイム・マジック!!」
杖を天使たちに向ける《時の魔術師》のおもちゃのような瞳には破壊の愉悦が宿っている。
そして天使たちの時が加速され、最後に光の粒子となって消えていった。
これで静香のフィールドは空――フィールド魔法《天空の聖域》でのダメージ回避も適用されない。
「そんでもって墓地の《カーボネドン》を除外してデッキからレベル7以下のドラゴン族、《ベビードラゴン》を守備表示で特殊召喚だ!!」
《カーボネドン》が再び砕け、その内側から《ベビードラゴン》が飛び出した。
《ベビードラゴン》
星3 風属性 ドラゴン族
攻1200 守 700
「そして魔法カード《融合》を発動!! フィールドの《ベビードラゴン》と《時の魔術師》で融合召喚! 今こそ真の力を見せな! 《
《ベビードラゴン》が千年の年月を《時の魔術師》の力で重ね、その身体は大きく育ち、やがてドラゴンとしての威厳を身に纏う。
《
星7 風属性 ドラゴン族
攻2400 守2000
「バトルだ! 《
首を大きく反りながら息を吸い込んだ《
静香LP:4000 → 1600
「きゃぁ!!」
大きなダメージにたたらを踏む静香。
「よっし! やっとこさダメージが届いたぜ! 俺はカードを5枚伏せてターンエンド! エンド時に《シャッフル・リボーン》の効果で手札を除外するが、俺の手札は0! 関係ねぇ!」
常にギャンブル効果でリスクを背負ってでもフィールド及び手札の補充を怠らなかった城之内。
そのリスク度外視の強気なデュエルスタイルは確実に静香とのアドバンテージの差を取り返していた。
「凄い……お兄ちゃん……でも私だって負けない! 私のターン! ドロー!!」
その姿に静香は一人のデュエリストとして負けたくないとカードの剣を取る。
「私は3枚目の《
白い聖衣に天使の輪と翼を持った《聖女ジャンヌ》によく似た顔立ちの《
その引いたカード次第では返しの城之内のターンに成す術もなく敗北するが静香の瞳にそんな恐れなど見えはしない。
「私はライフを800払って装備魔法《再融合》を発動!」
静香の前の地面に光が渦巻く。
静香LP:1600 → 800
「その効果で墓地の融合モンスター1体を蘇生させる! 戻ってきて! 《聖女ジャンヌ》!!」
三度現れる《聖女ジャンヌ》。
その軽装の鎧には今までの攻防ゆえか多くの傷があり消耗が見えるが、その瞳の強き意思は折れはしない。
《聖女ジャンヌ》
星7 光属性 天使族
攻2800 守2000
「そして《心眼の女神》を召喚!」
フィールドに現れる額に第三の目を持つ緑のローブを纏った《心眼の女神》。その第三の瞳以外の目は固く閉じられている。
《心眼の女神》
星4 光属性 天使族
攻1200 守1000
たとえ城之内のフィールドに5枚のセットカードがあっても静香は恐れない――きっと兄、城之内も恐れないゆえに。
「バトル! 《聖女ジャンヌ》で《
《
そして《
《
その戦闘ダメージは僅かに400だが、今の城之内の250ポイントのライフを削るには十分であろう。
しかし煙の中から現れた城之内は未だ健在。
「そう簡単にはやられねぇぜ! 戦闘ダメージ計算時に罠カード《スピリット・フォース》を発動!」
城之内の身体を纏うように黄色のオーラが大気を揺らす。
「その戦闘でのダメージを0にして墓地の守備力1500以下の戦士族チューナーを手札に加えるぜ! 《共闘するランドスターの剣士》を手札に!」
城之内の背後からひょっこり顔を出した丸顔の《ランドスターの剣士》の仲間であり、瓜二つの姿を持つ《共闘するランドスターの剣士》が城之内の背をよじ登り手札に加わる。
「惜しかったな! 静香!」
城之内は互いにバチバチとぶつかり合うこのデュエルにデュエリストとしての高ぶりが抑えられない。
ギリギリで静香の攻撃を回避した緊張感などで城之内の心臓は早鐘のように鳴り響いていたが――
「『それはどうかな?』だよ、お兄ちゃん!!」
まだ静香の攻撃は終わってはいない――最後の一手が今切られる。
「これが私の最後の一手! 2枚目の速攻魔法《次元誘爆》を発動!」
「そ、そいつは!!」
このデュエルの最初の静香の攻撃時に発動されたカード――このカードが起点となって城之内のライフに大打撃を受けたのだから城之内は忘れることなど出来ないであろう。
「融合モンスター《聖女ジャンヌ》をエクストラデッキに戻して除外されたモンスターを2体まで特殊召喚!!」
《聖女ジャンヌ》が光に包まれる。
「天の加護を受けて、その身を栄転する! 現れて! 《
《聖女ジャンヌ》を包んだ光が収まると、そこに聖なる翼を広げる《聖女ジャンヌ》――否、《
その身は鎧ではなく白き聖衣に包まれ、帯のようなものが武具のように漂う。
《
星7 光属性 天使族
攻2800 守2000
そして城之内を苦しめた《アテナ》も再び舞い降り、槍を払う。
《アテナ》
星7 光属性 天使族
攻2600 守 800
天使族が特殊召喚されているが、《アテナ》と同じタイミングで特殊召喚されている為、《アテナ》のバーン効果は発動されない。
「俺の除外されているカードは1枚だけだ……《カーボネドン》を守備表示で特殊召喚するぜ!」
その呼び出された《カーボネドン》はフィールド・墓地・除外ゾーンを行き来しすぎた影響かその身体を過労でプルプル震わせる。
《カーボネドン》
星3 地属性 恐竜族
攻 800 守 600
「《心眼の女神》で《カーボネドン》を攻撃!!」
プルプルと過労で震える《カーボネドン》に向けて《心願の女神》が持つ莫大な全エネルギーが第三の目に集められ、この地球諸共《カーボネドン》を消し飛ばさん勢いで放たれる。
その莫大なエネルギーの放出によって《カーボネドン》は消し飛ぶも、その余波は留まることを知らずに城之内の近くで大爆発を起こした。
だが《カーボネドン》は守備表示である為、城之内に特にダメージはない。
「《
細身の光の剣を生み出し城之内に迫る《
「そうはさせねぇ!! 罠カード《奇跡の残照》! このターン戦闘で破壊されたモンスター1体を復活させる!! 俺が呼ぶのは当然、《
空の雲の隙間から光が零れ、そこから《
しかしその姿に静香は「ここだ」と力を込める。
「それを待ってたよ、お兄ちゃん!! 私はその効果にチェーンして永続罠《DNA改造手術》を発動! フィールドの全てのモンスターの種族は私が宣言した種族になる! 私が選ぶのは勿論! 『天使族』!!」
天の威光がフィールドに響き、《
チェーンは逆処理に進む、よって先に永続罠《DNA改造手術》の効果が適用され、その後で「特殊召喚」される《
つまり《アテナ》のバーン効果のトリガーとなる。
今の城之内の残りライフは僅か250、防がなければ城之内に未来はない。
「くっ! 罠カード《迷い風》を発動!!」
城之内の背後から吹きすさぶ黒い風が《
「特殊召喚された表側のモンスター1体の効果を無効にして攻撃力を半分にする!! これで《アテナ》の効果を封じるぜ!! そしてチェーンは逆処理され――」
咄嗟に《アテナ》は己が盾でその黒い風を受けるも、その黒い風は盾の表面を滑るように奔り《アテナ》を襲う。
その黒い風を受けた《アテナ》は苦し気に膝を付き、その槍を地面に突き刺し杖のように己が身体を何とか支えた。
《アテナ》
攻2600 → 攻1300
その次に永続罠《DNA改造手術》の効果が適用され――
「そして最後に罠カード《奇跡の残照》の効果で戻ってこい! 《
永続罠《DNA改造手術》の効果で天使族となった《
《
星7 風属性 ドラゴン族 → 天使族
攻2400 守2000
しかし祈りを捧げようが関係ないとばかりに《
切り裂かれた《
「《
破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけ、自分のライフポイントを回復するの!」
光の粒子となっている《
静香LP:800 → 3200
「《アテナ》で今度こそお兄ちゃんにダイレクトアタック! 頑張って《アテナ》!!」
《迷い風》の効果に《アテナ》は苦しみつつもその槍を構えて城之内を狙うが――
「まだ俺は終われねぇ! 罠カード《徴兵令》を発動!! その効果で静香のデッキの1番上のカードを1枚めくって、そのカードが通常召喚可能なモンスターだった場合、俺のフィールドに呼び出せるぜ!」
相手のモンスターを奪うことを可能にするカード――だが勿論早々のデメリットもある。
「それ以外だった場合は静香の手札に加えられるが、外れりゃどうせ俺は終わりだ! 関係ねぇ!!」
またしてもギャンブルだ――だが観客の本田たちに呆れの視線などない。この勝負の結果がどう転がるかに魅入っている。
「私のデッキの1番上のカードは――」
城之内のフィールドにUFOが墜落し、その煙を上げるUFOの中から出てきたのは宇宙服を着た、二頭身の小さな宇宙人。
周囲をキョロキョロ見渡し、近くの城之内の姿を見た後、考え込むように顎に手を当て、悩まし気に手の光線銃を向ける相手に悩む。
《イーバ》
星1 光属性 天使族
攻 500 守 200
「な、なんだぁ? 随分小っせえモンスターだな……守備表示だぜ!」
その城之内の宣言を聞き遂げたのか、城之内に小さく頷いた後でその場で三角座りで待機する《イーバ》。
「なら《アテナ》でそのまま《イーバ》を攻撃!!」
《アテナ》が槍で弱々し気に払うと共に、コロコロと転がり城之内のスネ辺りに後頭部をぶつけ目を回す《イーバ》。
「さらに《イーバ》が墓地に送られたとき、このカード以外の自分フィールド・墓地の光属性・天使族のモンスターを2体まで除外して、その数だけ私のデッキから《イーバ》以外の光属性・天使族・レベル2以下のモンスターを手札に加える!!」
後頭部を抑えながら城之内を涙目で見上げた《イーバ》は報復の為の仲間を呼ぶため、静香のデッキに駆けていった。
「私は墓地の《フェアリー・アーチャー》と《コーリング・ノヴァ》を除外して、同名カードは1枚だけだから……レベル1の《
白い棺桶に手の生えた《
白い毛玉に2つの触覚が生えた《ワタポン》もそれに続――
「そして《ワタポン》の効果発動! 《ワタポン》がカードの効果でデッキから手札に加わった場合、特殊召喚出来る! 来て! 《ワタポン》!!」
続かずにフィールドにその小さな身体を跳ねさせ、つぶらな瞳で城之内を見据える。
《ワタポン》
星1 光属性 天使族
攻 200 守 300
「バトルフェイズ中に特殊召喚された《ワタポン》はまだ攻撃出来る! お願い!」
城之内の元へポワーと飛んでいき、その腕に噛みつく《ワタポン》。
だが牙すら持たないにも関わらず懸命に噛みつく《ワタポン》の姿に小動物がじゃれついているように感じ、城之内はつい微笑ましくなる。
城之内LP:250 → 50
だがその城之内のライフは秒読みの為、微笑ましくなっている場合ではないが。
「あと少し……私はカードを1枚伏せてターンエンド!!」
「ちょーっと待ったぁ!! そのエンド時に罠カード《砂塵の大嵐》を発動! 静香の魔法・罠カードを2枚破壊する! 永続罠《DNA改造手術》とそのセットカードを破壊だぁ!!」
《DNA改造手術》と共に破壊されたのは城之内も良く知る「落とし穴」カードの一つ《奈落の落とし穴》。
放っておけば最初のターンの二の舞になっていただろう――だがこれで城之内を邪魔するカードはなくなった。
しかし静香のフィールドには天使たちが4体。
城之内の頼もしきモンスターたちはもはや0。
一度は空っぽになった静香のフィールドから1ターンでここまで逆転された事実に城之内の身体が震える。
恐怖などではない――強者とのデュエルが楽しくて仕方がない歓喜の震えだ。
「俺のターン!! ドロー!! 俺は墓地の《
墓地の《
「さらに墓地の《カーボネドン》を除外してレベル7以下のドラゴン族の通常モンスター、《
此度は何度目か分からぬと《カーボネドン》はフラフラしながら新たなドラゴンを呼び覚まし、そのまま倒れ伏す。
倒れ伏した先から燃え上がるように炎が立ち上り《
《
星7 闇属性 ドラゴン族
攻2400 守2000
「魔法カード《馬の骨の対価》で通常モンスターのレッドアイズを墓地に送って2枚ドロー!」
その《
「そんでもって墓地の装備魔法《神剣-フェニックスブレード》の効果で墓地の戦士族2体、《リトル・ウィンガード》と《鉄の騎士 ギア・フリード》を除外して《神剣-フェニックスブレード》を手札に!」
地面から散っていった戦士たちの思いを受け継ぎ、不死鳥を模した柄の剣が城之内の元に戻る。
「これで準備は出来たぜ! 魔法カード《手札抹殺》を発動! 互いに手札を全て捨て、捨てた枚数だけドローだぁ!!」
手札を入れ替えた両者、そして城之内は引いたカードと手札を見比べ勝ち筋を見出す。
しかしある条件が必要だった。
もし静香のデッキにあのカードがあった場合、返しのターンで城之内がやられる可能性が高い。
だが、だからどうしたと城之内の瞳に熱が灯る。
――兄の威厳とか関係ねぇ! デュエリストとして全力でぶつかってきた静香に! 全力を返さねぇでどうするよ!!
「行くぜ! 静香! 俺の全力全開を受け止めてみな!!」
「うん!!」
その闘志に全力で応える静香の姿に城之内は満足気だ。
「俺は魔法カード《死者蘇生》を発動!! 俺は墓地から《共闘するランドスターの剣士》を蘇生させるぜ!!」
《死者蘇生》の十字架より現れるのは丸い顔の小さな戦士、《共闘するランドスターの剣士》。
自身の剣を天に掲げ、凄んで見せるがファンシーな見た目のせいかいまいち威厳はでない。
《共闘するランドスターの剣士》
星3 地属性 戦士族
攻 500 守1200
「これが俺の最後の大博打だ!! 速攻魔法《地獄の暴走召喚》発動!!」
《共闘するランドスターの剣士》が剣を背中に仕舞い、どこからともなく取り出した角笛を吹く。
「俺のフィールドに攻撃力1500以下のモンスターが1体特殊召喚されたとき! その同名モンスターを俺の手札・デッキ・墓地から可能な限り攻撃表示で特殊召喚する!!」
その角笛の音は遥か遠くまで響き渡る大きな音を奏で――
「集まりな! 2体の《共闘するランドスターの剣士》!!」
その《共闘するランドスターの剣士》の呼びかけに応じた2体の《共闘するランドスターの剣士》がその戦士たちの列に加わり、最初の一人の仕草をマネて己が戦場を見据えた。
《共闘するランドスターの剣士》×2
星3 地属性 戦士族
攻 500 守1200
「だが相手は自分のフィールドのモンスターを1体選び、その同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から特殊召喚出来る! さぁ、静香! どいつを選ぶ!!」
「私が選ぶのは――」
これが城之内の最後の博打。
もし静香のデッキに《アテナ》か《
しかし城之内には根拠はなくとも確信があった――自分は次のターンまで持ちこたえられないと。
ゆえに静香の動向を祈るように見守る城之内。そして静香の選択は――
「《心眼の女神》を選んで、2枚目の《心眼の女神》を墓地から特殊召喚!」
だが静香のデッキに《アテナ》も《
フィールドの《ワタポン》も同じく1枚のみ、よって複数枚採用している《心眼の女神》が5体目の天使として静香のフィールドに降り立つ。
《心眼の女神》
星4 光属性 天使族
攻1200 守1000
そう、城之内は賭けに勝った。
「《共闘するランドスターの剣士》の効果で自身が表側で存在する限り、俺の戦士族モンスターの攻撃力は400アップ!」
3体の《共闘するランドスターの剣士》はそれぞれ剣を掲げ、互いの剣を合わせる。
「そして俺のフィールドには《共闘するランドスターの剣士》が3体!! よって1200ポイントアップ!!」
その《共闘するランドスターの剣士》の鼓舞によって戦士たちの力は引き上げられる。
《共闘するランドスターの剣士》×3
攻 500 → 攻1700
「さらに《
緑のマントを翻し現れるのは銀の甲冑に身を包んだ《
《共闘するランドスターの剣士》と共に剣を掲げて《
《
星3 地属性 戦士族
攻1000 守 700
↓
攻2200
「ダメ押しだ! 墓地の罠カード《スキル・サクセサー》を除外して《
《
《
攻2200 → 攻3000
「最後に魔法カード《
龍が形作られた縁を持つ鏡が宙に浮かぶ。
「俺のフィールド・墓地からモンスターを除外して融合召喚を行う!! 俺は墓地の《
その《
「融合召喚!! 隕石の如く舞い降りろ!! 《メテオ・ブラック・ドラゴン》!!」
やがて《
その全身には赤い文様が奔り、溢れんばかりの力が行き場を求めるように脈動していた。
《メテオ・ブラック・ドラゴン》
星8 炎属性 ドラゴン族
攻3500 守2000
「バトルだぁああ!! 3体の《共闘するランドスターの剣士》で《心眼の女神》2体と《ワタポン》を攻撃!!」
3体の《共闘するランドスターの剣士》が《心眼の女神》と《ワタポン》を剣の腹でペシッと叩く。
《ワタポン》はそのまま倒れ、第三の目を叩かれた《心眼の女神》はその目を押さえながら倒れた。
だが静香の天使族モンスターとの戦闘で発生するダメージはフィールド魔法《天空の聖域》の効果で0になる。
「《
疾風の如く迫る《
しかし後ろの弱った《アテナ》を気にして精細さを欠く《
そして弱々しく槍を構えて《
やがて剣を払い、鞘に納める《
そうして最後のモンスターが破壊されるのを尻目に静香はそっと城之内を眺める。
――ありがとう、お兄ちゃん……デュエルを始めたばかりとか、妹とか関係なく、手加減なしに全力でデュエルしてくれて……
「これで止めだぁあああ!! 《メテオ・ブラック・ドラゴン》でダイレクトアタック!! メテオ・ダイブッ!!」
宇宙まで飛び立たん勢いで上空に飛んだ《メテオ・ブラック・ドラゴン》は隕石のように静香を目掛けて疾走する。
そのドラゴンの強靭な身体そのものを砲弾とした《メテオ・ブラック・ドラゴン》の一撃が迫る中、その後ろに見える城之内の雄姿に静香はそっと笑みを作った。
――デュエルを通じてお兄ちゃんの見ている世界……ちゃんと伝わってきたよ……
静香LP:3200 → 0
他の光属性・天使族・レベル7たち――
イラストで静香デッキから追いやられた
《
《
折角、光属性・天使族・レベル7でイラストもこのデッキに良い感じに合うのになぁ……
ステータスは低くとも、バックが割れるだけでも良い仕事できるのに……
エラッタは……期待出来ないか(´・ω・`)ショボーン