マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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エックスVSアクター ダイジェスト版です

数の少なめなアクターのデュエルだったので前後編版にしたかったのですが

互いの攻防が良い感じに仕上がらなかったので断念

さらに、いつもとは違う構成(順番?)になっております



前回のあらすじ
プロってみんな濃い面々ばっかりだね(白目)




第78話 イライラする時は――ミルクでも貰おうか

 

 

 誰もいない一室でグールズの首領、マリクは苛立たし気にテーブルを叩き、テーブルの上にあったグラスが僅かに揺れた。

 

「くそっ! 何故《オベリスクの巨神兵》の所持者が見つからない!」

 

 マリクの目的である名もなきファラオへの復讐には三幻神を名もなきファラオではなく、マリクが手中に収めることも含まれている。

 

 だが三幻神の1枚である《オベリスクの巨神兵》だけはマリクの姉、イシズによってこのバトルシティに参加している何者かに託されていたのだが、一向に《オベリスクの巨神兵》がデュエルにて使用される気配がない。

 

 一度使用されれば《オベリスクの巨神兵》の圧倒的な力ゆえに所持者など直ぐに判明するというのに。

 

「海馬 瀬人が所持しているのかとも思ったが、使う気配もない……ブラフだったのか?」

 

 海馬がTVスタッフのカメラに向けて宣言した神のカードの存在を匂わせるような発言から海馬が所持者だと睨んでいたマリク。だが海馬が使用した痕跡は未だにない。

 

 

 ゆえにグールズ側を混乱させる狙いなのかとマリクは考えるが、今現在確証に至る情報はない。

 

「それにパズルカードの集まりも悪い……」

 

 オベリスクの所持者が誰であれ、本戦に勝ち上がる程の実力者と見ているマリクは、リシドと共に本戦へと歩を進める為にパズルカードを求めていたが――

 

 リシドから一般の参加者からパズルカードを得るのは厳しいとの報告があったことが頭をよぎる。

 

 グールズにかけられた報酬の金額ゆえにハンターたちは文字通り血眼になってグールズたちを付け狙っていた――どちらが犯罪者なのか忘れてしまいそうなほどに。

 

 よってグールズの構成員を見かけた先からハンターたちが群がってくるゆえに、大通りなどの目立つ場所でデュエルをすれば、すぐさま彼らの餌食となる。

 

 そのあまりの数にリシドの指揮下で動く「パンドラ」や「人形」などの高い実力を持つレアハンターでさえ潰されかねない。

 

 

 ゆえに可能な限り散らばってひっそりとデュエルするしかない実情だった。

 

 

 そのありようがマリクの過去の墓守の里での地下暮らしを思い出させ、苛立ちがさらに募る。

 

「人質も一向に得られそうもない――奴め……あそこまで人員を回したというのに失敗するとは!」

 

 負けたエクゾディア使いのレアハンターに罰を与えたマリクだったが、それでも苛立ちは収まりそうもなかった。

 

「しかし、オベリスクの使い手は本当にこの大会に参加しているのか? 本戦に上がれば神の所持者と自ずとぶつかると思ったが……」

 

 最悪の場合はこのバトルシティで優勝しても《オベリスクの巨神兵》のみが集まらない可能性も出てきた。

 

 そうなればマリクの名もなきファラオへの復讐は不完全なものとなる。

 

「くっ! この童実野町に来てから何もかもが上手くいかない!!」

 

 墓守の里から出た後にグールズを結成した今の今までマリクを止められるものは誰一人いなかった――千年ロッドの力でマリクは全てを意のままに動かしてきた。

 

 

 だが逆を言えば「千年ロッド」がなければマリクは年相応の感情をコントロール出来ない青年に過ぎない。

 

 そしてこのバトルシティは「千年ロッドの力」を「いかに活用させないか」を念頭に罠を張り巡らせている――マリクが上手くことを運べないのも無理はない。

 

 

 しかし、それはマリクが復讐を諦める理由になりはしなかった。

 

 己の復讐は正当なものであり、そのためなら何をしても構わないのだと――そんな考えは崩れない。

 

「姉さんは一体誰に託した? グールズを捕らえる為のこの大会を主催したKCの関係者と考えるのが自然だが……」

 

 そのマリクの認識が一体どれだけの人間の人生を狂わせたのかなど、マリクは気にもしない――いや、気付いてすらいない。

 

「海馬 瀬人は使う様子がない……オカルト課とかいう部署にもデュエリストはいるが、まさか雇った方のデュエリストに秘密裏に渡しているのか?」

 

 考察を重ねるマリク。

 

 だが何を考えようともマリクに用意されたレールは「マリクが本戦に上がる」――それだけだ。

 

 袋小路に陥ったマリクは苛立たし気にテーブルの上のグラスを手で薙ぎ払い壁に叩きつける。

 

「何故だ……何故神の力を振るおうとしない!!」

 

 圧倒的な神の力――それを一度手にすれば振るいたいと思うのは人の性。

 

 にも関わらず《オベリスクの巨神兵》の所持者は使う気配を見せない。

 

 まるで残り2枚の三幻神の力を振るうマリクを嘲笑うかのように。

 

「くっ……今はリシドからの吉報を待つしかないか……」

 

 そう何とか感情の高ぶりを抑えたマリクは、倒れ込むように椅子に座り込む。

 

 そんなマリクの姿を、床に転がる砕けたグラスがただ映していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 童実野町を通信機片手に走り回るペガサスミニオンの一人、リッチーはようやく目的の人物を発見する。

 

「おー、いたいた。月行、デプレ。夜行のヤツは無事だ」

 

 ゆえに一安心だと通信機越しに目的の人物が無事であることを仲間に伝えつつ通信を終え、その後ろ姿に近づき声をかける

 

「夜行、通信にもでねぇで何やってんだよ」

 

 だが件の相手、夜行はリッチーに見向きもせずに倒したグールズの構成員の一人の前でブツブツと何やら呟いているばかりだ。

 

「ペガサス様ァ……私はまた一人、貴方のデュエルモンスターズを汚す賊めを排除しましたよぉ……」

 

 危ない薬をキメてしまったような恍惚な表情で夜行は己の世界にトリップしていた――その夜行の顔には狂気が垣間見える。

 

 だがリッチーは「またいつもの病気か」とため息を吐きつつ夜行を現実に引き戻すべくやる気なさげに言葉をかける。

 

「おーい、戻ってこーい。色々状況が変わったぞー」

 

 そうしてしばらく声をかけ続けると夜行はその表情がいつものモノへと戻る――同一人物なのか疑問に思える豹変ぶりだ。

 

「リッチー! 見てくれ! 私はペガサス様の為に――」

 

 そして己が戦果を自慢するように語りだすが――

 

「あー分かった。分かった。きっとペガサス様も『助かる』って思ってくださってるよー」

 

 いちいち付き合っていてもいられないゆえにリッチーは適当に相槌を打つ。

 

「そうだろう! そうだろう!」

 

 そんな適当な相槌にも関わらず夜行は誇らしげだ。この時点でリッチーは全てを丸投げしたい思いに駆られるが、グッと堪える。

 

「はぁ……それよりも通信に出ろよ。情報共有出来ねぇだろ……それに何かあったかもって心配したぞ?」

 

 夜行の実力は知ってはいても定時連絡すらなかった為、グールズの対処と並行して夜行の足取りも追う羽目になったリッチー。

 

 万が一を考え、童実野町を必死に走り回っていたゆえに今のリッチーには安堵が大きかった。

 

「えっ? あっ、電源を入れ忘れていたようですね」

 

 のだが、夜行のあまりの不注意さに頬が引きつるリッチー。しかし一度深く深呼吸して気持ちを整える――大事ではなかったのだからそれでいいじゃないか、と。

 

「…………なら情報共有な。デプレが武藤 遊戯との協力を取り付けたってよ。それにグールズの首領、マリクの痕跡が――」

 

 そう説明するリッチーだったが、その先の言葉は続けられなかった。

 

「武藤 遊戯ッ!? ペガサス様が一目置くデュエリスゥトォ!!」

 

 夜行の病 気(重すぎる家族愛)の再発である。

 

「おーい、聞いてんのかー」

 

「妬ましいィ……妬ましいィ! ペガサス様にあれ程のご期待を頂くとは!」

 

 リッチーの言葉も届かず、感情のままに叫ぶ夜行の右目は見開き、左目は半開きである――普通に不気味だ。

 

「夜行落ち着け、今回の俺らの目的はグールズだけだ」

 

 だが夜行に言葉が届かずともリッチーは呼びかけることを止めはしない。面倒に感じつつも家族なのだ。

 

 それにこんな夜行の醜態を人様にさらす訳にはいかなかった。

 

 しかしそんなリッチーの尽力も空しく、夜行は身体を仰け反り、天に向かって演説するかの如く叫ぶ。

 

「だが私は昔の私ではなぁい!!」

 

 過去に夜行は「月行の劣化コピー」と蔑まれていたことがコンプレックスだった。

 

 だがそんな夜行の心情を神崎から聞いたペガサスからの言葉――それがあれば夜行はずっと戦っていける、らしい。

 

 夜行が何と闘っているのかは不明だが。

 

「ペガサス様は私に可能性を感じていてくださった! そのご期待は武藤 遊戯のそれよりも遥かに上回る!」

 

 なお「遊戯より期待値は上」といったニュアンスの言葉をペガサスから贈られた訳ではない。

 

 

 未だ現実に戻らぬ夜行の姿にリッチーは何度目か分からない溜息を吐いた。

 

「はぁ……月行……お前はいつもコイツをどうやってコントロールしてんだ……」

 

 そしてここにはいない夜行の双子の実兄、月行の姿を思い起こす。もっとも夜行と付き合いの長い月行なら、と。

 

 

 だが過去に思いを巡らすも――

 

 引っ込み思案気味だった夜行がこうも感情を吐露するようになったのは決闘者の王国(デュエリストキングダム)の準備をI2社の一員として行っていた頃だ。

 

 当初はこれ程までに酷くはなく、酷くなってきたのは決闘者の王国(デュエリストキングダム)が終わった後辺り、

 

 そう、月行が「自分の殻を破る」等と言って奇行に走り始めた頃だ。

 

 そして言葉数がそこまで多くないデプレに頼る訳にも行かず、自然と月行・夜行の双子の行動を抑える役は自然とリッチーに集まり――

 

「いや、大体コイツの対処してるの俺だな……月行も最近は『自身の殻を破る』とか言っておかしな行動多いし……」

 

 そうしてリッチーは気付いた――自身が常識人枠。またの名を「苦労人ポジション」にいることに。

 

「あれ? 段々腹立ってきたぞ?」

 

 そしてリッチーはその怒りを手刀に込めて未だトリップしたままの夜行の頭に振り下ろす。

 

「見ていてくださいペガサス様!! この私が必ずや――ブッ!! 何をするんですか、リッチー!!」

 

 突然に降って湧いた軽い痛みと共に頭を押さえる夜行。いうほど痛みは感じていない模様――その表情から驚きの方が大きいことが窺える。

 

 だがリッチーは「今後はこれで行くか」などと思いつつ逸れに逸れた話を戻しにかかる。

 

「こっちのセリフだ、バカ――っと、どこまで話したっけ?」

 

「武藤 遊戯との協力関係が築けたと聞きましたが?」

 

 先程のリッチーの話を思い出す夜行。夜行とてペガサスミニオン内で月行と共にI2の後継者候補として名高いデュエリスト。

 

 精神性がアレなところがあるとはいえ頭の回転が遅い訳ではない。

 

「ああ、それとグールズの総帥のマリクの痕跡が完全に途絶えた。だから今のところ手がかりがねぇ」

 

「どう動きますか?」

 

 思ったよりも重大な案件に夜行の瞳は鋭くなる――リッチーからすれば普段からこれならだいぶ楽なのだが、といった思いが大きい。

 

「月行が調べたところによるとマリクは『三幻神』を揃えようとしてるらしい」

 

「ペガサス様の三幻神を!? そんな暴挙は許されません! かくなる上は――ブヘッ! い、痛い……」

 

 今後の方針を伝えようとした矢先の夜行の豹変をリッチーは手刀で黙らせつつ、話を進める。

 

「んで、今所在が不明なのは『オベリスクの巨神兵』だけだ――ペガサス様が預けた『イシズ』っていう考古学者は既に誰かに託しちまったらしい」

 

 確認を取るかのようなリッチーの物言い――その情報は夜行、そしてペガサスミニオンは周知の事実。

 

「だが『オベリスクの巨神兵』を持ってる奴は不明。しかし使い手に選ばれる程だ。かなり強い奴の筈、本戦に出場できる程のな」

 

 ならば話は簡単だった。

 

「だから俺らも本戦を目指すことになった。だからグールズからパズルカードも集めるぞ」

 

「しかし、グールズは『レアハンター』と呼ばれる人間しかパズルカードを持っていないようですが……」

 

 夜行は言外に「一般の参加者のパズルカード」を狙うのかとリッチーに問いただす。

 

「まぁグールズの連中の参加枠はそう多くねぇだろうしな――だが俺らもある程度知られてっから一般の参加者には避けられる。だからグールズから集めんのが確実だろ」

 

 リッチーは純粋に大会を楽しむデュエリストたちを邪魔は出来ないと返す――本戦枠を奪い合うようなことを避けたかっただけにその表情は暗い。

 

「んじゃ 報告は終わりだ。次からはちゃんと通信でろよ」

 

 そういって踵を返して立ち去るリッチーの背に、夜行は今思い出したといわんばかりに口を開く。

 

「あっ! そうだリッチー。私からも報告が」

 

「ん? 何だ?」

 

 そんなゲンナリしたリッチーの反応に夜行は明日の献立を話すかのような気軽さで答える。

 

役者(アクター)もこの大会に参加しているようです」

 

「へっ?」

 

 リッチーからすればかなりの情報を。

 

「かなり前に一瞬見ただけでしたが驚きましたね。表には全く顔を出さないのに」

 

 そう軽い面持ちで続ける夜行の姿にリッチーは拳をプルプルと震わせる。

 

「そ、そういうことは――」

 

「えっ?」

 

「そういうことは早めに連絡しろやぁああああああ!!」

 

 本日三度目の手刀が夜行の頭を打ち抜いた。

 

「ヘブシッ! さっきから痛いじゃないですかリッチー!」

 

 今日一番のダメージに頭を押さえる夜行。

 

 

 だがリッチーの怒りは当然だ。

 

 その情報を通信機で連絡しておけば夜行は通信機の電源をOFFにしていたことに気付け、今のように態々探す必要性もなかったのだから。

 

 そして手刀を振り下ろしたリッチーは肩を震わせながら苛立つように地面を蹴る。

 

「クソッ! 明らかにグールズと関係ねぇ動き見せる奴が多いと思ったらそういうことかよ!!」

 

「リ、リッチー?」

 

「どこのバカがあんな面倒事の塊みたいな奴呼んだんだ!」

 

 珍しいリッチーの怒り方に戸惑う夜行。とりあえずは当たり障りのない答えを返す。

 

「何故です? 彼は凄腕のデュエリストなのでしょう? 心強いではないですか」

 

「実力云々じゃねぇよ! アイツをぶっ倒して名を上げようって連中がどんだけいると思ってんだ!」

 

 そう「役者(アクター)」の名は裏では知名度だけは無駄にある。

 

 何故なら「デュエルモンスターズ」が生まれた時期から名が上がり、今の今まで無敗を誇ってきたのだから。

 

 なおその実態は圧倒的強者とのデュエルを避けつつ、相手の弱点を突きまくって重ねたものだが。

 

 

 だが無敗と聞けば敗北の土を付けたくなるのがデュエリスト。ゆえに役者(アクター)は無駄に狙われている為、諍いの種だ。

 

「今までは居所を掴ませねぇからデカい問題にならなかったってのに……」

 

 そうして頭を抱えるリッチー。

 

 そんなリッチーの肩に手を置き夜行はいつもとは逆の立場に新鮮さを感じながら励ます。

 

「大袈裟ですよ、リッチー。今はデュエルモンスターズの危機――デュエリストたちもそのようなことにかまけなどしませんよ」

 

「いや、他の奴らが俺ら……いや、お前レベルでペガサス様に心酔してる訳じゃねぇからな?」

 

 だがリッチーから出たある意味当然の言葉に夜行は狼狽する。

 

「!? バ、バカな!? デュエルモンスターズ、ひいてはペガサス様なくしてデュエリストは成り立たないというのに!?」

 

 あながち間違った認識ではないが、何事にも限度はある。全国のデュエリストが夜行のような狂信するなど逆に恐ろしい世界だ。

 

「大体アイツは『表とは関わらない』がスタンスじゃねぇのかよ! なんでこんな表の大会に出てんだ!」

 

 狼狽する夜行を置いておき、嘆くリッチー。現段階では事態の収拾を図る人間はいない。

 

 ゆえに狼狽していた夜行は何とか精神を立て直し、リッチーを抑えにかかる。

 

「それはグールズの首領、マリクを確実に仕留める為では? KCも本気ということでしょう」

 

「だったらこの大会に参加する意味はねぇだろ! 本戦会場の近くで待ち伏せしてぶっ倒せばいいだけの話だ!」

 

 リッチーの揺れるママママインドは中々収まらない。夜行は振り回されるばかり――いつもと立場が逆だ。

 

「落ち着いてください、らしくありませんよ。さすがに大会参加者にその対応はKCとてする訳には行きません」

 

「いや、そうだが! あぁ~何でこう面倒事ってのは立て続けに起こるんだよ……」

 

 そう強く言葉を放つ夜行の姿にリッチーも落ち着きを見せる――というよりも「誰のせいだと思ってんだ」と言わんばかりの目で夜行を見やるリッチー。

 

「ですが面倒事だと、腐っている訳にもいきません! ――リッチー! ペガサス様の為にも頑張りましょう!!」

 

 しかしその視線に気付かない夜行は、リッチーを元気付けようとガッツポーズを取って拳を握るが――

 

「いや、お前もその面倒事の一つだよッ!!」

 

 そんなリッチーの魂の叫びが周囲に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな噂の住人役者(アクター)は――

 

 プロデュエリスト、エックスとのデュエルに興じていた。

 

 エックスの半狂乱するような声が響く。

 

「これで貴方のデッキは0!! 貴方のデッキとの信頼も無意味なものとなりましたぁ!!」

 

 そのエックスの言葉通りアクターのデッキはエックスのデッキ破壊により既に0。

 

 エックスは興奮を隠しきれないように語る。

 

「出来ればこのターンで終わらせて差し上げたかったのですが――貴方が発動した《ドロール&(アンド)ロックバード》の効果によりそれも叶いません」

 

 アクターの隣には頭から兎のような長い耳が伸びる子供が立ち、その首飾りを持つ腕に、白と青の色の鳥が羽を広げ、その子供と共にエックスを見つめていた。

 

 

 その《ドロール&(アンド)ロックバード》の効果は相手がドローフェイズ以外でデッキからカードを加えた際に、手札を自身の墓地に送ることで、そのターンのみ、お互いがデッキからカードを手札に加えることを封じる効果。

 

 それゆえにエックスの手札に存在する、アクターにドローを強要させるカードはこのターン効果を発揮しない。だが――

 

「で・す・が、甘ーい!! どのみち次の貴方のターンにドローが出来ず敗北が決定するのですから!! 私はこれでターンエンド!!」

 

 根本的な解決にはなっていなかった。アクターに残されたターンはないに等しい。

 

 

 しかしアクターの内心にあるのは安堵。それはエックスのデッキは「情報通り」だったゆえに。

 

――やっとデッキを破壊してくれたか。

 

 そう内心で準備は整ったと考えるアクター。

 

 しかしデュエリストの中には無意にカードを墓地に送ることを嫌うものも多いので、その認識はいらぬ諍いを生みかねない。

 

 だが、アクターにとってその手のデュエリストの認識は理解の外だった。

 

 

 そしてアクターは己が3枚のリバースカードの1枚に手をかざす――「止められると泥仕合になるな」と思いながら。

 

「そのエンドフェイズ時にリバースカードオープン」

 

「おや? 最後の悪あがきですかぁ?」

 

 エックスはカードとの絆と言うべきデッキを破壊されたにも関わらず微動だにしないアクターを楽し気に見ている――残念ながらアクターとデッキとの間に絆などはないのだが。

 

 そして明らかになるカードは――

 

「罠カード《残骸爆破》」

 

 アクターの頭上に巨大な岩が山のように浮かぶ。

 

 そのあまりの数に《ドロール&(アンド)ロックバード》はつい空を見上げている。

 

「自分の墓地にカードが30枚以上ある為、相手に3000ポイントのダメージを与える」

 

 そしてエックス目掛けて殺到する大岩の群れ。

 

「なっ! ぬぅぁああああああ!!」

 

エックスLP:4000 → 1000

 

 3000ポイント分の大岩の衝撃にエックスは衝撃で吹き飛び、両足が地面を擦る。

 

 だが思わぬ反撃にもエックスは笑う。何がそんなに楽しいのかと聞かれんばかりに笑う。

 

「フフフ、やはり私のデッキもリサーチ済みというわけですか! にも関わらず――ハハハッ!! やはり私の目に狂いはなかったぁ!」

 

 エックスはデッキ破壊を好むデュエリストだ。

 

 相手のデッキとの信頼を破壊することが楽しくてしょうがない。

 

 その他者をあざけ笑う姿勢に周囲のプロから蛇蝎のごとく嫌われようともエックスはそのスタイルを止めはしなかった。

 

 そして数多のデュエリストのデッキと信頼を砕いてきたゆえにエックスには分かる――アクターがデッキになんの愛着も持っていないことに。

 

「2枚目のリバースカードオープン」

 

 破壊されたデッキを前に何の感情も見せずにデュエルを続けるアクターの姿にエックスは矢継ぎ早に言葉を並べる。

 

「『デッキとの信頼』などと語る愚か者ではないのですね! 『カードとの絆』や『信頼』なんて不確かなものに頼らない!! それこそがデュエリストとして本来有るべき、す・が・た!!」

 

 そんなエックスの主張など聞いていないような様子でアクターは仕留めにかかる。

 

「自分のライフが3000以下である時、ライフを1000払い、罠カード《闇よりの罠》を発動」

 

アクターLP:3000 → 2000

 

 地面がひび割れ、そこからカードが現れる。

 

「そう! デュエリストは己が力のみで戦うべきだ! 見えもしない不確かなものに縋る紛い物如きが『デュエリスト』を名乗るべきじゃなぁい!!」

 

 何の返答も返さないアクターなど意に介さずエックスは己が主張を語り続ける――何かリアクション取ってやれよ……

 

「貴方も私と同じなのでしょう! 世に蔓延る紛い物共に『デュエリスト』のあるべき姿を示し! 導いているのでしょう!! 私は貴方の『同志』と言っても差し支えはない!!」

 

 エックスの主張を余所に地面から現れたカードは先ほど発動された《残骸爆破》。

 

「罠カード《闇よりの罠》の効果により《闇よりの罠》以外の罠カードを選択。このカードの効果を選択した罠カードの効果と同じ効果とする。その後、選択したカードを除外する――罠カード《残骸爆破》を選択」

 

 再びアクターの頭上に山ほどの大岩が浮かび上がる。エックスの残り1000のライフを消し飛ばさんが為に。

 

 そんな絶体絶命な状況に陥ってもなおエックスは高笑いを上げる。今日は最高の一日だと。

 

「フフフ、ハハハ、アーハッハッハー!! 最高だ! 最高ですよ、貴方は!」

 

「よって罠カード《残骸爆破》の効果で3000ポイントのダメージを与える」

 

 だがそのエックスの一切合切を無視し、再び大岩の群れがエックスに殺到した。

 

「私は貴方の理解者足りえがぁああああああああ!!」

 

エックスLP:1000 → 0

 

 その衝撃に身構えていなかったゆえに吹き飛ばされるエックス。だがその姿は最後まで楽し気だった。

 

 

 そんなエックスの姿を視界に収めたアクターは内心思う。

 

――ちょっと何言ってるか分からないです。

 

 アクターこと神崎には本当に何を言っているのかが分からなかった。「原作ではこんなデュエリストだったのだろうか?」と自身の記憶に疑問を持つ程に。

 

 

 だがこれ以上考えても詮無き事とアクターは先ほどの《残骸爆破》の衝撃で舞い上がったエックスのパズルカードを空中で掴みとる。

 

――何か色々言ってたが……撤収しよう。

 

 そうしてエックスを一瞥し、立ち去ろうと踵を返すアクター。

 

 

 だが背後で誰かが足を止める音にアクターは背を向けたまま立ち止まる。

 

――この圧倒的な(バー)は!?

 

 つい先程に身をもって実感したばかりの力強い(バー)の波動にアクターの脳内は「何故」の文字で埋め尽くされるばかりだ。

 

「…………やっと、見つけたぜ!」

 

 そう息を切らせながらアクターの背に向かって言い放つ遊戯の声に籠る闘志にアクターの思考は止まる。

 

 

 有り体にいってアクターは「死」を覚悟した。

 

 

 






デッキ破壊するエックスと
《残骸爆破》狙いでエックスと一緒になって自分のデッキを破壊するアクター。

一度は形にしてみましたが攻防もへったくれもない状態の絵面が地味すぎるので止む無くダイジェスト版に……

さらに最後のリバースカード《局地的大ハリケーン》を繰り返し使って
アクターの手札・墓地の存在するカードを延々とデッキに戻し、

エックスのデッキが尽きるまで
エックスにアクターのデッキを破壊させるルートも作りましたが

地味すぎる絵面が更に地味になる+デュエルが長引いてしまう点から
此方のルートも止む無く断念――デュエル描写って難しい。



~今作のエックスが相手のデッキとの信頼を破壊する行為に喜びを感じる訳~
エックスが「相手のデッキとの信頼を破壊すること」に喜びを見出しているので

「デッキとデュエリストの間に信頼関係がある」ことを知っていることになります。

初期のレベッカのような「カードとの信頼関係? バカバカしいわ!」と思ってもおかしくないにも関わらずに、です。

ですが、エックスが自身のデッキと信頼関係を築いているようには思えません――あくまで相手を絶望させる道具のような印象を受けました。


それらの点から

己が持つデュエリストの力ではなく、カードの心や絆、信頼などといった「不確かなもの」に縋るデュエリストを嫌悪しているのではないかと考えました。


そして「カードとの信頼関係0」のアクターのデュエルをエックスが知った結果、

デュエリストは「己が力のみで戦いぬくべき存在」という強い認識が生まれました。

つまり、カードの心や絆やら信頼などに縋るエックス視点では「紛い物のデュエリスト」。

ゆえにデッキとの信頼などをデッキ破壊により引き裂き、デュエリストとしてのあるべき姿に導いているというスタンスです。

ですが――
大半のデュエリストがデッキとの信頼を破壊された影響で「デュエルの情熱を失い、二度とそのデッキを手にしなくなる」といった具合に、望んだ成果は得られていない。

ゆえに壁にぶち当たっていたエックスが初心を確かめる意味も込めて今話のアクターとのデュエルをエックスは心待ちにしていた。

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