アイエエエエ! 遊戯!? 遊戯ナンデ!?
満足気に顔を歪めて倒れ伏すエックスを一瞥した遊戯はアクターの背を見つめる。
遊戯がアクターの元に辿り着いたのは偶然だった。それは――
一度はアクターを見失った遊戯だったが、その後も童実野町を走り回りアクターを探し回っていた。
そんな中で突然響いた轟音を聞きつけ、その音の先に向かったゆえである。
その轟音の正体はアクターの使った罠カード《残骸爆破》のソリッドビジョンの効果ダメージによるもの――つまりアクターが呼び寄せたようなものだ。
遊戯を折角撒いたというのに間抜けな話である。
やがて遊戯はアクターに歩を進めようとするが――
「動くな」
何の感情も籠っていない機械によって加工されたアクターの声が届く。
「……なんだと?」
動きを止め、訝し気にアクターを見やる遊戯。
だがアクターからすれば遊戯が近づこうと動きを見せた為に「来ないでください! お願いしますッ!」とのアクターこと神崎の内心が部分的に声として漏れ出たものだった。
しかしながらその言葉はもの凄く印象が悪い。
遊戯の警戒の色が強まっていくのを感じ取るアクター。アクターこと神崎は全てを投げ出したい思いで一杯だった。
とはいえ出した言葉を戻すことは出来ない。
ゆえにアクターこと神崎はここから「いい感じの言葉」を選び、遊戯から味方認定を貰う必要がある。
「これは警告だ。『武藤 遊戯』」
考える時間がない中で頑張って捻りだした「秘密裏に動いている味方感」を出したアクターの言葉も――
「何が言いたい……」
遊戯の警戒を解くには至らない。寧ろ真意を確かめようとアクターへの視線が鋭くなっている。
だが、アクターは「これ以上語ることはない」とばかりに無言で返す。だが内心は――
――いや、何言ってんだろう。
神崎の頭は思う様に働いていなかった。
結果的に遊戯にマイナス印象を与えてしまった事実にアクターは内心でさらに慌てふためく。
遊戯が明確に動き出す前にこのマイナス印象から味方認定を貰えるまで挽回しなければならないが――無理だと思う。
そうこうしている内に再度、動きを見せようとする遊戯。悲しいことにアクターが考える時間はなかった。
「これで最後だ――良いんだな? 『武藤 遊戯』」
もはやアクターこと神崎には念押し程度の言葉しか出てこない。
悪戯な風がこれ見よがしにアクターの衣装をはためかせ、その腕のデュエルディスクを遊戯に見せつける。
これでどうにもならなければアクターに取れるのは「顔見せ」・「土下座」・「敵前逃亡」くらいなものである――碌な選択肢がねぇ。
しかし遊戯は次の動きを見せない。否、動けない。
それは遊戯の放つデュエリストの闘志ともいえるプレッシャーにアクターが何の反応も見せないこと、そしてアクターの言葉の真意を感じ取ったゆえに。
なおアクターが「デュエリスト」の定義から大分外れている為、デュエリストの闘志なんてものは感じ取れないのだが、まぁそれは置いておこう。
そして遊戯の感じ取ったアクターの言葉の真意。それは――
――奴は
そんなことはない。
態々「武藤 遊戯」とフルネームで呼んだことを「名もなきファラオ」である自身ではなく、相棒である元々の身体の所有者、「武藤 遊戯」に警告をしたと遊戯は受け取ったようだ。
フルネームで呼ぶのは「
しかしそうとは知らぬ遊戯は動けない――「お前の都合に相棒を危険に巻き込むのか」と突き付けられているに等しいゆえに。
そうして動きを見せぬ遊戯の姿を背中越しに感じ取ったアクターはこれなら「このままフェードアウト出来るのでは?」と希望を持ち始める。
両者の間に互いを牽制し合う静かな緊張感が流れるが――
――もう一人のボク! ボクのことは気にしないで! 彼は多分何か知っている!!
そんな表の遊戯の覚悟の籠った内心での声に遊戯は僅かに躊躇するも、その覚悟に報いんとデュエルディスクを装着した腕を振り上げる。
アクターも「やはり無理か」と考えつつ、先ほどの3つの選択肢を全て実行に移し、それらが全て不発になっても速やかにデュエルに移行できるように「普通のデュエルなら死なない筈」と自己暗示を始めるが――
その遊戯の腕は何者かによって掴み取られた。
そこにいるのは緑の長髪の青年。
「
「アンタはペガサスと一緒にいた――」
その青年は遊戯も面識があった。
「『天馬 月行』と申します。デプレから話は聞いていますよ」
そう遊戯に笑いかける月行だったが、突如として発生した暴風が遊戯と月行の目を眩ませる。
その暴風はアクターが目にも止まらぬ速さで手を団扇のように扇ぎ、その常識外れなデュエルマッスルを以て起こしたもの――いや、何やってんだアンタ。
やがて風が収まり、遊戯と月行が目を開ける頃には既にアクターの姿はない。全力で逃亡した後だ。
「――奴は!?」
そう言いながら周囲に目を向ける遊戯に月行は遊戯の腕を放しつつ返す。
「既にこの場から去ったようです。我々と闘う理由がありませんから」
「天馬は――」
その月行の言葉に何か情報を持っているのではと詰め寄る遊戯。
「『月行』で構いませんよ」
「月行は奴を知っているのか!?」
そんな遊戯の姿に過去にペガサスへ同じように問い詰めた自身の姿を重ねる月行。
「ええ、ある程度デュエルの世界に耳を傾ければ自然と知るデュエリストですから」
しかし月行も遊戯に話せることは決して多くない。出回っているアクターの情報が少なすぎるのだ。
「ですが彼に『名』はありません。我々が『
「名前がない? それに
「……『何者か』と問われると答えに困りますね」
遊戯の問いに困ったように頬をかく月行。その問いに正確に答えられる人間を月行は知らない。
「『デュエルモンスターズの創成期からその存在を轟かせる裏世界の凄腕デュエリスト』といったところでしょうか?」
ゆえに断片的な事実から組み立てられた人物像を話すしかなかった。
「裏世界の?」
当然そんな情報では遊戯に理解が得られる筈もない。
「ええ、その正体から目的に至るまで一切が不明です――『KCのオカルト課に所属している』――その一点を除いて」
「オカルト課……確か牛尾が務めている部署だったな……」
何とか人物像を読み取ろうとする遊戯。だがさすがに情報が少なすぎる為か、その表情は晴れない。
「今の彼の目的は恐らく『グールズの首領、マリク』の始末――要は止めることです。何者かに依頼されたのでしょう」
「――つまり味方だと?」
そう言葉にする遊戯だが、その表情は「味方」と認めているようにはとても見えない。
そんな遊戯の姿に溜息を吐くように月行は忠告する。
「どうでしょうね……あくまで私の見解ですが、彼とは関わらないことをお勧めします」
だがその一方で己のデュエリストとしての未来を案ずるなら
何故ならデュエルモンスターズの最初期から今までの間に、アクターとデュエルしたデュエリストの中に大成したものは誰一人としていないのだから。
「ペガサス様も仰っていました――彼はあまりに『異端』だと」
裏の王者という名の光を求めた者たちを闇へと誘う奈落。
光あれと、希望あれと生み出されたデュエルモンスターズにおいてペガサスが名指しで「異端」だと断ぜられる唯一の存在であった。
そんな月行の言葉に遊戯の背に嫌な汗が流れる――対峙することになった場合の最悪の未来の可能性が遊戯の脳裏をよぎった。
なお実際は大成しそうな強者の可能性のある相手とのデュエルを避けてきただけなので、遊戯がデュエルすれば恐ろしい程あっさり倒せる――ゆえにいらぬ心配なのだが真実は闇の中である。
そうして遊戯がまだ見えぬ闇とのファーストコンタクトを済ませた頃、とある童実野町の路地裏で雇われハンターとグールズの構成員と思しき人影が対峙していた。
雇われハンターのフィールドには――
白い体毛を持った人狼の獣戦士の異形の4本腕の爪が獲物を求め、ギャリギャリと音を立てて擦られ、
《ジェネティック・ワーウルフ》
星4 地属性 獣戦士族
攻2000 守 100
赤い軽鎧を纏った2体の《ミノタウルス》が《ジェネティック・ワーウルフ》を挟むように陣取り斧を構える。
《ミノタウルス》×2
星4 地属性 獣戦士族
攻1700 守1000
一方のグールズ構成員にモンスターはおらず、リバースカードを伏せて己のターンを終えたようだ。
その時、雇われハンターこと、カードプロフェッサーの一人、テッド・バニアスは相手のエンドフェイズ時に声を上げる。
「アンタのエンド時に2枚のリバースカードを発動させて貰うぜ!」
そんなテッド・バニアスの宣言と共にフィールドの獣戦士たちは雄叫びを上げた。
「永続罠《ビーストライザー》を2枚発動!! コイツの効果で1ターンに1度! 俺のフィールドの獣族・獣戦士族を1体除外して、他の獣族・獣戦士族に除外したモンスターの元々の攻撃力を加える!!」
その説明に《ジェネティック・ワーウルフ》は犬歯をむき出しにし、グルルと唸り声を上げ始めた。
「俺は2枚の永続罠《ビーストライザー》のそれぞれの効果で2体の獣戦士族、《ミノタウルス》を除外し、その攻撃力を同じく獣戦士族、《ジェネティック・ワーウルフ》に加える!!」
2体の《ミノタウルス》をその4本の腕で掴み上げる《ジェネティック・ワーウルフ》。
「さぁ! 《ジェネティック・ワーウルフ》! 存分に喰らいな!!」
そして《ジェネティック・ワーウルフ》は2体の《ミノタウルス》に喰らいつく。
《ミノタウルス》を喰らう度に《ジェネティック・ワーウルフ》の身体はより禍々しく、より巨大に変貌していく。
やがて全てを喰らい終えた《ジェネティック・ワーウルフ》は倍以上の体格となり、その4本の腕は鎧のような鱗に覆われ、丸太のような足で地面を踏みしめ、伸びたたてがみが獅子を思わせる形相と化し、天に轟く咆哮を上げる。
《ジェネティック・ワーウルフ》
攻2000 → 攻3700 → 攻5400
一気に攻撃力5000オーバーのモンスターを生み出したテッド・バニアスは良い調子だと笑う。
「へへッ! 俺のターンだ! ドロー!! 俺は手札を1枚捨てて装備魔法《
異次元のゲートからコロリと落ちてくるヘルメットを被った小さな兎。
その転がった先は禍々しく変貌を遂げた《ジェネティック・ワーウルフ》の頭の上だ。
それに気付き足をガクガクと震わせる《レスキューラビット》。
《レスキューラビット》
星4 地属性 獣族
攻 300 守 100
「そして効果を発動!! 自身を除外してデッキからレベル4以下の同名の通常モンスター2体を呼び出す! さぁ来なっ!! 2体の《ベイオウルフ》!!」
頭の上で膝を震わせる《レスキューラビット》を煩わしく思った《ジェネティック・ワーウルフ》が頭を振ると、そのまま落下する《レスキューラビット》。
だが《レスキューラビット》はトランシーバーを器用に前足で起動させ、助けを呼ぶ。
その助けとして2体のオオカミの頭を持つ人狼が現れ、互いにその斧と木の盾を交差させ、《レスキューラビット》を受け止めた。
《ベイオウルフ》×2
星4 地属性 獣戦士族
攻1650 守1000
「コイツの効果で呼び出したモンスターはこのターンの終わりに破壊されちまうが――俺には関係ないねっ!!」
1体の《ベイオウルフ》の斧の持ち手に「今晩の晩飯」と言わんばかりに括りつけられた《レスキューラビット》の涙を流す姿が哀愁を誘う。
「俺のフィールドの永続魔法《
丸い炎が揺らりと灯の光を放つ――いい感じに焼けそうな火加減だ。何がとは言わないが。
「《ベイオウルフ》の1体をリリースしアドバンス召喚!! 現れろ! 野生の力持ちし賢者! 《ミノケンサテュロス》!!」
もう1体の《ベイオウルフ》が光と消え、そこから頭部に牛の角を生やし、立派な顎髭を携えた獣人のケンタウロスがその大斧を携え、馬の下半身の蹄で地面を蹴る。
《ミノケンサテュロス》
星6 地属性 獣戦士族
攻1800 守1000
「だが《ミノケンサテュロス》は効果モンスター! よって俺のフィールドの永続魔法《絶対魔法禁止区域》の『効果モンスター以外は魔法効果を受けない』耐性は発生しねぇ」
テッド・バニアスのモンスターを覆っていた半透明のバリアから弾かれる《ミノケンサテュロス》。
「代わりに《
代わりにその大斧に炎を纏わせ、太陽に掲げる。
《ミノケンサテュロス》
攻1800 → 攻1900
「だがコイツが攻撃する訳でもないがな!! 《ミノケンサテュロス》の効果発動! 自身をリリースする事で、俺のデッキから獣戦士族・レベル4の通常モンスター2体を呼び出すぜ!」
そして太陽にその身を捧げるかの如く天に跳躍する《ミノケンサテュロス》。
「今度はコイツだ!! 現れろ2体の《
そして天から降り立つのは青いナックルガードに軽装の防具を付けた2頭の黒毛の大熊。
その2頭の大熊が2体で対になるように上腕二頭筋を見せつけるポーズを取る。
《
星4 地属性 獣戦士族
攻1900 守1500
「さらに魔法カード《馬の骨の対価》で《ベイオウルフ》を墓地に送り2枚ドロー!!」
残った《レスキューラビット》を斧に括りつけた《ベイオウルフ》が鍋片手にどこかへと去っていく。
《レスキューラビット》がジタバタと暴れたが、やがて静かになると小さな骨がテッド・バニアスの足元に転がった。
「ここで俺のフィールドの『
2体の《
そこから黄色い近未来的なチャリオットに乗ったゴリラが黄色い盾と黒い棍棒片手にフィールド内を疾走する。
《
星5 地属性 獣族
攻2500 守1400
「まだまだ行くぜ!! 2体目の《レスキューラビット》を召喚!」
腹を膨らませお腹一杯の様子で現れた《レスキューラビット》。フィールドまで運んでくれた《ベイオウルフ》に手を振りつつ、ゴロンと寝転んだまま相手を見やる。
《レスキューラビット》
星4 地属性 獣族
攻 300 守 100
「コイツの効果を発動と行きてぇところだが、1ターン1回限りでな――だからコイツを使うぜ!! 速攻魔法《
様々な動物の鳴き声が響き渡り始める。
「俺のフィールドの元々の種族が獣族・獣戦士族・鳥獣族の表側表示モンスター1体を墓地に送り、その元々の種族が同じモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する!!」
その鳴き声に向かって《レスキューラビット》は駆け出し――
「俺が墓地に送るのは獣族の《レスキューラビット》!! そしてエクストラデッキから呼び出すのはコイツだ!! ビースト・チャンピオン!! 《マスター・オブ・
戻って来たのは片目に大きな切り傷のある緑の毛並みを持った巨大なコアラ。
赤いシューズとグローブに紫のベストを纏い、腹部のカンガルーのようなポケットには青いケースなどが仕舞われている。
《マスター・オブ・
星9 地属性 獣族
攻4200 守3700
「もっとも《
無理を押して来た為、古傷が痛むのか片膝を突く《マスター・オブ・
「だがこっからどうなるかテメェにも分かるよな?」
禍々しい姿となった《ジェネティック・ワーウルフ》がフィールドの2体の獣族モンスターを見やる。
しかし操られ自意識のないグールズ構成員は何も答えない。
「再び2枚の永続罠《ビーストライザー》の効果を発動!! 今度除外するのは獣族の《
そして先のターンの焼き増しと言わんばかりに《ジェネティック・ワーウルフ》は大口を開け、《
「そして《ジェネティック・ワーウルフ》にその力は受け継がれる! さぁ喰って、喰って、喰らいつくせ!!」
そして全てを平らげた《ジェネティック・ワーウルフ》は禍々しく巨大に変化していた身体を更なる異形へと変貌させていく。
そして現れたのは阿修羅のような6本の剛腕を持ち、その足はケンタウロスのように四足となるも、その力強さはその比ではない程に逞しい。
そして獅子のような顔はより鋭利な牙が生え、そこから地獄の底まで響くような音の暴力ともいえる咆哮を上げる。
《ジェネティック・ワーウルフ》
攻5400 → 攻7900 → 攻12100
「ハハハハハ!! テメェのフィールドの永続魔法《暗黒の扉》の効果でモンスター1体でしか攻撃できなくても、テメェの1000ぽっちのライフを削るには十分過ぎるぜ!!」
ズシン、ズシンと地響きを鳴らし、グールズ構成員を見やる《ジェネティック・ワーウルフ》。
「さぁ攻撃だぁ! 叩き潰してやりなっ!! 《ジェネティック・ワーウルフ》!!」
そのテッド・バニアスの宣言と共に、雄叫びを上げながら全てをなぎ倒す勢いで《ジェネティック・ワーウルフ》は駆けるが――
グールズ構成員に伏せられたカードが発動されている。
それは永続罠《サイバー・シャドー・ガードナー》。
相手のメインフェイズに発動でき、そのカードをモンスター扱いで自分フィールドに攻撃表示で特殊召喚する効果を持つ。
ゆえにグールズ構成員を守るように立ち塞がる人型の黒い金属のロボット。
足部分は頼りなさげに細いが、その上半身を覆う、剣の鎧にも、機械仕掛けの翼にも見えるパーツが鈍く光る。
どうやら攻撃表示で特殊召喚されたようだ。
《サイバー・シャドー・ガードナー》
星4 地属性 機械族
攻 ? 守 ?
「構うことはねぇ! 《ジェネティック・ワーウルフ》!! そのままやっちまいなっ!!」
しかし《サイバー・シャドー・ガードナー》の機械仕掛けの身体が巨大で禍々しい異形に変貌した《ジェネティック・ワーウルフ》に合わせるように変化する。
それはまるで合わせ鏡のように。
《サイバー・シャドー・ガードナー》
攻 ? 守 ?
↓
攻12100 守100
それは永続罠《サイバー・シャドー・ガードナー》のもう一つの効果――相手の攻撃宣言時にこのカードを攻撃したモンスターと同じ攻撃力・守備力を得る効果。
つまり、あらゆるモンスターと相打ちに出来る能力。
さらにグールズ構成員のフィールドの永続罠《宮廷のしきたり》によって永続罠は破壊されない為、永続罠でもある《サイバー・シャドー・ガードナー》は無敵の盾となり、矛となる。
「なぁに!?」
永続罠《ビーストライザー》を攻撃宣言後であるダメージステップ時に発動しておけばとテッド・バニアスは後悔――
「なぁんてなぁ!! 想定内に決まってんだろっ!!」
などしない。
相手のセットカードを確かめる為に、ワザワザ大きく動き、隙を晒すことで《サイバー・シャドー・ガードナー》を「攻撃表示」で引き釣りだしたのだから。
「俺の地属性・通常モンスターが戦闘するダメージステップ時に手札の《ジェム・マーチャント》を墓地に送り効果発動!!」
円錐形を逆にしたものに身体を顔まで収め、その上に魔女のような縁の広い帽子を被った《ジェム・マーチャント》。
その円錐形から伸びる両腕で帽子の縁を掴み。黄色く光る丸い目が変貌を遂げた《ジェネティック・ワーウルフ》だったものを捉えた。
「その地属性、通常モンスターの攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップする!!」
すると《ジェム・マーチャント》はその鉱石の身体をトランスフォームし、《ジェネティック・ワーウルフ》の鎧となってその身を覆う。
《ジェネティック・ワーウルフ》
攻12100 → 攻13100
そして変貌を遂げた巨体で《サイバー・シャドー・ガードナー》をなぎ倒した《ジェネティック・ワーウルフ》は、飛び散る金属の破片も気にせずにそのままグールズ構成員を撥ね飛ばした。
グールズ構成員LP:1000 → 0
その攻撃の衝撃により、反応らしい反応を見せずに地面に転がるグールズ構成員。
そしてピクリとも動かないその姿にいい加減に慣れつつあるテッド・バニアスはそのグールズの構成員からパズルカードを拝借する。
「パズルカードは1枚だけかよ……しけてんな。まぁ、持ってるだけマシか」
マイコ・カトウの思惑に乗ったテッド・バニアスはパズルカードを集めていたが、これが恐ろしい程に集まらなかった。
折角グールズを倒してもパズルカードを持っていないことがザラにあったのである。
「あ~~さてと、これで終わりか。大したことねぇ相手とは言え、連戦は堪えんなぁ」
今倒したグールズの構成員で何人目なのだったかと詮無き事を考えながら伸びをして、凝った肩を回すテッド・バニアス。だがふと声がかかる。
「お見事ね、テッド。KCの回収班の人はもう来ているから後は任せましょうか」
その声の主カードプロフェッサーのご意見番ことマイコ・カトウ。特注品の携帯電話を片手に車椅子を器用にテッド・バニアスの元へと進める。
「了ォ解――なぁ、ばあさん。パズルカードはこんなもんでいいんじゃねぇか? あんまりノンビリしてっとパズルカードが取引材料にならねぇかもしれねぇし」
さすがにテッド・バニアスも大したことのない相手ばかりで精神的に疲れてきたのか、その姿に覇気はない。
「そうだねぇ……予定よりも集まりは悪かったけど、まぁ大丈夫でしょう」
そのテッド・バニアスの言葉にしばし考え込むマイコ・カトウだったが、そろそろ頃合いかと動き始めることを決めた模様。
なら善は急げだとテッド・バニアスはマイコ・カトウの車椅子を押しながら、辛気臭い路地裏から出ようと進み始める。
「しっかし、ばあさんの戦いたい相手っつっても、この広い童実野町からどうやって探すんだ? ん? ばあさん?」
そして世間話のように尋ねたテッド・バニアスだったが、車椅子に乗るマイコ・カトウの返答はなく、手元の携帯電話と通話中の様子。
「いえ、こっちの話よ。ええ、分かったわ……情報ありがとう。フフッ、相変わらず仕事が早いわね――報酬は少しサービスしとくわ」
そう笑いながら通話相手とのやり取りを終えたマイコ・カトウの姿にテッド・バニアスは遠い目をしつつ言葉を零す。
「あー成程、何もかも、ばあさんの掌ってワケかよ」
「そんなことはないわ。今回は色々イレギュラーも多かった――まぁ、でも何かと目立つ彼は早々隠れたりは出来ないし、それにそもそも隠れ潜むタイプじゃないもの」
そんなマイコ・カトウの謙遜を話半分でテッド・バニアスは聞き流し、向かうべき先を訪ねる。
「じゃぁ、情報のあるとこに向かえばいいのか?」
「ええ、お願いね、テッド。私はデュエルに備えて少し集中させてもらうとするわ」
そういって目を閉じたマイコ・カトウを余所にテッド・バニアスは提示された地点へと車椅子を押し始める。
老兵の牙が今、向かうべき獲物に向けて放たれた。
今回の役者と遊戯の会合は顔見せだけです――ここで一戦交えるとご期待されていた方々には何だか申し訳ない。
そしてテッド・バニアス――使用カードOCG化0枚(´;ω;`)ブワッ
だから作者は頑張った! 頑張ったけど……(´・ω・`)ショボーン
ジェネティック・ワーウルフ「未OCGカードの『アサルト・リオン』に似てるからと採用されたけど、最上級モンスターじゃなくて下級なんですけど……」
ビーストライザー「未OCGカードの『薬食い』に似てるって言われました。自分は魔法じゃなくて永続罠なんですけどねぇ……」
ジェム・マーチャント「未OCGカードの『スピード・ジャガー』の攻撃力倍増効果に似てるって――無理やりじゃね? 俺、ジャガー感0なんですけど!?」
ベイオウルフ「……未OCGカードの『スパイク・ライノセラス』に似てるって言われ――似てねぇよ! 俺、『サイ』じゃなくて『オオカミ』だよ!! 『肩が良い感じに似てパワフル』ってどんな理由だよ!!」
ライノタウルス「サイなら俺じゃダメだったんですか?――『属性と通常モンスターじゃないのがダメ』っすか……そうっすか……」
こんな感じに(白目)