マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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レベッカVS海馬 ダイジェスト版です


前回のあらすじ
デュエルしないなら、その腕はいらないよね?



第82話 カードの貴公子――えっ? 「貴公子」!?

 多くの大会に出ていた海馬を知るレベッカはその海馬の実力を知っている筈だった。しかし今のレベッカは、それは勘違いだったと思わざるえない。

 

 

 海馬のフィールドに佇む絶対的な力の象徴である三首の白き竜がレベッカを圧殺せんが如きプレッシャーを放っている。

 

青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)

星12 光属性ドラゴン族

攻4500 守3800

 

 

 その《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》のプレッシャーにレベッカと共に晒されているのは――

 

 レベッカの相棒たる影の鬼、《シャドウ・グール》がその体中の赤い複眼で《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》を見据え、

 

《シャドウ・グール》

星5 闇属性 アンデット族

攻1600 守1300

攻3200

 

 逆立った髪に黒のマントに黒いレーシングスーツのような装備で身を包んだヒーロー、《異次元エスパー・スター・ロビン》がその手の鞭をしならせ、いつでも動けるように構える。

 

 その目元だけを隠す仮面、いわゆるベネチアンマスク越しに覚悟の籠った視線を見せていた。

 

《異次元エスパー・スター・ロビン》

星10 光属性 戦士族

攻3000 守1500

 

 さらに遊戯から託された混沌(カオス)の戦士の左半身から白いオーラが噴き出し、その左手の盾に守りの力を与え、右半身から黒いオーラが吹き出しその右手の剣に全てを切り裂く力が籠る。

 

《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》

星8 闇属性 戦士族

攻3000 守2500

 

 そのレベッカ同様に闘志を昂らせるレベッカの3体のモンスターの姿に海馬は満足気に言い放つ。

 

「ふぅん……辛うじて俺のアルティメットの攻撃を防いだか……俺はカードを2枚伏せてターンエンド!! さぁ! 貴様の最後の足掻きを見せてみるがいい!!」

 

 そんな海馬の姿にレベッカは思う――成長しているのは自身だけではないのだと。

 

 今のレベッカには祖父、アーサーの《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》が海馬の元でその力を発揮している姿がよく分かる。

 

 《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》が海馬を(あるじ)と認めているのだと。

 

 ゆえに既にレベッカの目的である「相応しいかどうかを確認する」は果たされたと言っても過言ではない。

 

 

 しかし、だからといって「はい、そうですか」と負けてやるつもりなどレベッカにはなかった。

 

「なら、いくらでも見せて上げるわ!! 私のターン! ドロー!! よしっ! 私は《カオス・ネクロマンサー》を召喚!!」

 

 笑みが彫られた仮面をつけた、死霊使いがボロボロの赤いマントを揺らしながら、不気味な笑い声と共に宙に浮かぶ――そこには本来ある筈の足がない。

 

《カオス・ネクロマンサー》

星1 闇属性 悪魔族

攻 0 守 0

 

「攻撃力0のモンスターだと?」

 

「ふふん! この子を甘く見て貰っちゃ困るわ! この子の攻撃力は私の墓地のモンスターの数×300ポイントよ!! 私の墓地のモンスターは16体!! よってその攻撃力は4800!!」

 

 《カオス・ネクロマンサー》の指先から伸びる細い糸が地面に伸び、地面から糸に絡め取られた亡者が引き上げられる――その数は16体。

 

 その亡者たちの軽快なステップと呻き声のようなコーラスに《カオス・ネクロマンサー》はケラケラと笑う。

 

《カオス・ネクロマンサー》

攻 0 → 攻4800

 

「これでアルティメットはお仕舞ね!! さぁ行きなさい!!《カオス・ネクロマンサー》!! ネクロ・フェスティバル!!」

 

 亡者たちが《カオス・ネクロマンサー》に操られ、マンモスを形作るよう組み上げられた後、《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》にフラフラと進みだす。

 

 その亡者たちが通った大地は黒ずんだ泥のようなものがポコポコと噴出している。

 

「ならばリバースカードオープン!! 速攻魔法《融合解除》を発動!!」

 

 亡者たちを躱す様に飛翔し、空で再び光を放つ《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》。

 

「これにより俺はアルティメットをエクストラデッキに戻し、その融合素材である3体のブルーアイズを帰還させる!! 今、現れるがいい! 3体の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》!!」

 

 光が収まった後には3体の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》が空を舞っていた。

 

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》×3

星8 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

 しかし、その3体の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》は――

 

「3体とも攻撃表示ですって!?」

 

 全て攻撃表示――守備表示で特殊召喚すればダメージも防げるにも関わらずに、だ。

 

 それゆえにレベッカの顔に険しくなる――海馬の考えが読めない。

 

「くっ……何で……でもここで止まる訳にはいかないわ!! 《カオス・ネクロマンサー》!! そのままブルーアイズを攻撃なさい!!」

 

 3体の内の1体の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》にマンモススタイルで突っ込む亡者たち。

 

 煩わしそうに亡者たちを払った《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》だが亡者特有の瘴気がその白き身体を蝕み、白き竜は地に落ちた。

 

「くっ……許せ、ブルーアイズ……!」

 

海馬LP:5800 → 4000

 

「次よ! 《シャドウ・グール》で2体目のブルーアイズを攻撃! ティアーズ・オブ・セメタリー!!」

 

 空を舞う《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》に出来た僅かな影を伝いその背後を取った《シャドウ・グール》はその爪で《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の翼を切り裂く。

 

 そして落下する《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》よりも一足先に影の中を移動し、地上に戻った《シャドウ・グール》はその竜の落下の速度を利用し、容易く首を刈り取った。

 

「ちぃっ!!」

 

海馬LP:4000 → 3800

 

「《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》で3体目の最後のブルーアイズを攻撃よ!!」

 

 かつての遊戯とのデュエルを思わせるカオス・ソルジャーの派生カードと《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の一騎打ち。

 

 剣の一振りからエネルギー波を放つ《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》と、滅びのブレスを飛ばす《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》。

 

 両者の力は拮抗を見せる。

 

「ふぅん、相打ち狙いか……」

 

 だがその海馬の言葉にレベッカは声を上げる。

 

「そんな訳ないじゃない! 私は墓地の罠カード《スキル・サクセサー》を除外して私のフィールドのモンスター1体の攻撃力を800アップさせるわ! 当・然! カオスソルジャーの攻撃力をアップ!!」

 

 《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》のエネルギー波に赤い光が籠り、《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の滅びのブレスをジリジリと押し上げる。

 

《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》

攻3000 → 攻3800

 

「これでブルーアイズと言えど敵じゃない! 切り伏せなさい! カオス・ソルジャー!! カオス・フォース・ブレードッ!!」

 

 やがて《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》の雄叫びと共に、剣から発せられる力が《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の滅びのブレスを断ち切り、その竜の身体を真っ二つに切り裂いた。

 

海馬LP:3800 → 3000

 

「くっ、おのれ……姿形は違うとはいえ、再びそのカードに俺のブルーアイズを!!」

 

 その《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》が切り裂かれる姿はかつての遊戯とのデュエルでの敗北を彷彿とさせ、海馬の苛立ちが募る。

 

「そんなこと言っている場合かしら! 《異次元エスパー・スター・ロビン》でダイレクトアタック!! これで止めよ!! ビック・リパンチ!!」

 

 《異次元エスパー・スター・ロビン》の手に持つ鞭がその腕の周りを高速回転し、その力を乗せた拳が海馬を目掛けて振るわれる。

 

 

 その海馬の残りライフは3000――文字通り《異次元エスパー・スター・ロビン》のこの拳がフィニッシュブローとなりうる。

 

 

 だがレベッカは「止め」と言いつつも、海馬がそう簡単にその攻撃を通してくれる等とは思わない。

 

 そのレベッカの予想は正しかった。

 

「ソイツは通さんッ! そのダイレクトアタック時に永続罠《クリスタル・アバター》を発動!!」

 

 《異次元エスパー・スター・ロビン》の拳を遮るように現れる巨大なクリスタル。

 

「コイツは俺のライフが攻撃モンスター以下のときに発動出来る永続罠!! その効果によりこのカードはモンスターゾーンに特殊召喚される!!」

 

 戸惑う《異次元エスパー・スター・ロビン》を余所にそのクリスタルは音を立てて展開する。

 

 やがて現れたのは人型の形に似た水晶の戦士。だがその腕はブレードのような流線型を描き、身体の至る個所には鎧のようにカットされた水晶が配置されている。

 

《クリスタル・アバター》

星4 光属性 戦士族

攻 ? 守 0

 

「トラップモンスター!? で、でも私の《異次元エスパー・スター・ロビン》は攻撃力3000!! 生半可なモンスターじゃ――」

 

 そう考察するレベッカを余所に《クリスタル・アバター》に光が灯り、乱反射する。

 

「ふぅん、コイツの攻撃力は俺の今のライフと同じになる!! よって《クリスタル・アバター》の攻撃力は俺のライフと同じ3000!!」

 

 その光は海馬のライフの光。よって《クリスタル・アバター》は海馬のライフの力を得て、蒼き光をその身に宿し、その真の力を開放する。

 

《クリスタル・アバター》

攻 ? → 攻3000

 

 その攻撃値は《異次元エスパー・スター・ロビン》と同じ数値。

 

「なっ!? これじゃぁ相打ちになっちゃう!! 《異次元エスパー・スター・ロビン》の攻撃をキャンセル――」

 

 《異次元エスパー・スター・ロビン》の身を案じ、撤退を促すレベッカだったが――

 

「無駄だァ! 《クリスタル・アバター》が特殊召喚された段階でそのモンスターは《クリスタル・アバター》と強制的にバトルする!!」

 

 《異次元エスパー・スター・ロビン》は《クリスタル・アバター》の水晶の輝きに吸い込まれるように拳を構え、殴りかかる。

 

「でも逆に言えば、折角呼んだそのカードもいなくなるわ! 私の有利は変わらない!」

 

 止められないと悟ったレベッカは「せめて」と、そう強気に返す。

 

 しかし海馬の狙いはその先にこそあった。

 

「いいや! 貴様はこれで終わりだ!! 《クリスタル・アバター》の効果で特殊召喚したこのカードが戦闘で破壊されたダメージ計算後!! このカードの攻撃力分のダメージを貴様に与える!!」

 

 《異次元エスパー・スター・ロビン》が拳を向ける《クリスタル・アバター》の水晶の身体に映るのはレベッカ自身。

 

 そのことに気付いた《異次元エスパー・スター・ロビン》が止まろうとするも、その拳は吸い込まれる様に引き寄せられ、止められない。

 

「これじゃあ残りライフは2000の私は!! 海馬はこれを狙ってブルーアイズを攻撃表示に!?」

 

 海馬は己のライフをあえて削ることで《クリスタル・アバター》の発動条件を満たした。

 

 それはレベッカの《カオス・ネクロマンサー》や墓地の《スキルサクセサー》も読んでいたということに等しい。

 

「ふぅん、当然だ……さぁ! 俺の勝利の為に砕け散るがいい! そして己が勝ち取った勝利を誇れ!! 《クリスタル・アバター》!!」

 

 《異次元エスパー・スター・ロビン》の拳が《クリスタル・アバター》が繰り出した拳と交錯し、互いに届くその僅か前にレベッカの声が響く。

 

「まだ私は終わらないわ!! 私は墓地の罠カード《ダメージ・ダイエット》を除外して私がこのターン受ける効果ダメージを半分に!!」

 

 《異次元エスパー・スター・ロビン》と《クリスタル・アバター》の拳はクロスカウンターのようにすれ違い、その両者を打ち抜く。

 

 一方の《異次元エスパー・スター・ロビン》は殴り飛ばされ、吹き飛ばされるも、足を地面に擦り踏ん張りを見せる。

 

 もう一方の《クリスタル・アバター》は殴り砕かれ、そのクリスタルの身体の破片がレベッカを襲いかかった。

 

「ぐぅううううううう!!」

 

レベッカLP:2000 → 500

 

 だがそのレベッカの前には《異次元エスパー・スター・ロビン》は両の腕を広げ、立ち塞がっており、その身体の至る個所にレベッカ目掛けて飛び散ったクリスタルの破片の半分程が突き刺さっている。

 

「自身の効果でフィールドに特殊召喚され破壊された《異次元エスパー・スター・ロビン》はフィールドを離れたとき除外されるわ……」

 

 少しでもレベッカを守れた安堵からゆっくりとその場で倒れる《異次元エスパー・スター・ロビン》。

 

「ほう……防いだか、だが先程とは立場が逆転したな……」

 

 その姿に海馬は満足気に頬を吊り上げつつ、ライフ差が大きく広がった事実にレベッカを挑発する――お前はこれで終わりなのか、と。

 

「……そうかしら? 貴方のフィールドにモンスターはいないようだけど?」

 

 その海馬の挑発にまだまだ勝負は終わっていないと返すレベッカ。ライフが引き放されたとはいえ、今の今まで海馬を守り続けていた《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》たちの姿はない。

 

「私はこれでターンエンドよ!!」

 

 まだ戦える――そう自身を鼓舞するレベッカの姿に、レベッカのフィールドの《シャドウ・グール》は威嚇するように爪を上げ、

 

 《カオス・ネクロマンサー》は亡者たちに敬礼を取らせ、

 

 《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》は盾を構えレベッカを庇うように立ち、剣を海馬に向ける。

 

 

「ふぅん、ほざいていろ――俺のターン! ドロォオオオオ!!」

 

 そうギラリと眼光を光らせた海馬は己がデッキから力の限りカードを引き抜き、来るべきカードが来たと、ニヤリと笑う。

 

「俺は装備魔法《光の導き》を発動!!」

 

 海馬のフィールドに光の粒子が溢れていく。

 

「このカードは自分フィールドに《光の導き》が存在せず、俺の墓地に『ブルーアイズ』モンスターが3体以上存在するとき、その内の1体の効果を無効にして特殊召喚する!!」

 

 その光の粒子は竜の形をかたどっていき――

 

「勝利の為に舞い戻れ!! 《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》!!」

 

 白き竜が翼を広げ、雄々しく羽ばたく。

 

 その青き瞳はレベッカを静かに見つめていた。

 

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)

星8 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「こうも簡単にブルーアイズを!! でも、さすがのブルーアイズでも今の私の布陣を突破するには攻撃力が足りないわ!!」

 

 《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》と視線を交錯させたレベッカの言葉など気にもせず、海馬はカードをデュエルディスクに差し込んだ。

 

「足りないのならば上げればいいだけだ!! 魔法カード《フォース》を発動!! このターンの終わりまでモンスター1体の攻撃力を半減させ、その数値分もう1体のモンスターの攻撃力をアップさせる!!」

 

 海馬とレベッカのフィールドの境目から黒い腕が影のようにヌルリと這い出る。

 

「この効果で貴様の《カオス・ネクロマンサー》の攻撃力を半減させ、俺のブルーアイズの糧とする!!」

 

 その黒い腕に貫かれた《カオス・ネクロマンサー》から魂のようなエネルギー体が抜き取られ、力が入らない《カオス・ネクロマンサー》は草臥れたかのように地面に蹲る。

 

《カオス・ネクロマンサー》

攻4800 → 攻2400

 

 その黒い腕が持つエネルギー体が《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》に放たれ、その白き身体がより強靭な輝きを見せた。

 

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)

攻3000 → 攻5400

 

「これで今度こそ終わりだ! 過去の屈辱を晴らすがいいブルーアイズ!! カオス・ソルジャーを攻撃! 滅びのバースト・ストリィイイイイムッ!!」

 

 その強靭さを増した身体から滅びのブレスが《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》から放たれ《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》を襲う。

 

「そう簡単にやらせはしないわ!! 私は墓地の《ネクロ・ガードナー》を除外して効果を発動!! このターンの相手の攻撃を1度だけ無効に!!」

 

 赤い大きな肩の鎧に赤い仮面、手足を鋼の手甲で覆った《ネクロ・ガードナー》が白い長髪を揺らし、その《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の滅びのブレスを決死の覚悟で受け止めた。

 

 やがて《ネクロ・ガードナー》は滅びのブレスの前に散っていったが、その想いは《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》を守り抜く。

 

「これでブルーアイズの攻撃は私のモンスターたちには届かないわ! それにこのターンの終わりに《フォース》の効果も切れる!!」

 

 そのレベッカの言葉の通り、《フォース》の効果が切れれば《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の攻撃力も元の3000に戻る為、レベッカのフィールドのモンスターの攻撃を防ぐ手立ては海馬にはない。

 

 だが今の海馬にそんなもの(防ぐ手立て)は必要なかった。

 

「甘いな! 装備魔法《光の導き》には装備したモンスター以外が攻撃出来ないデメリットを持つ代わりに――俺の墓地の『ブルーアイズ』モンスターの数まで攻撃できる!!」

 

 《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の身体から光の粒子が吹き荒れ、再びその口元に滅びのブレスがチャージされていく。

 

「連続攻撃能力ですって!? 貴方の墓地の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》は2枚! つまり後1度の攻撃が出来るのね……」

 

 その追撃が通ればレベッカの残り僅かなライフは消し飛ぶだろう――届けば。

 

「――でも甘いのはそっちよ! 私の墓地には《ネクロ・ガードナー》が後2体いる! この意味が分からない貴方じゃないでしょう!!」

 

 そう、未だレベッカの守りの手は残されている。その程度の連撃では海馬の攻撃は届かない。

 

 しかし海馬はそんなレベッカの想定を獰猛に笑う。

 

「言った筈だ! 『これで終わり』だと!!」

 

「無理よ! 後1度の攻撃で、そんなことできる筈ないわ!」

 

 その海馬の自信溢れる姿に、レベッカは僅かに後退る――己の守りは突破される筈はないのだと。

 

「俺の墓地の《白き霊龍》は『ブルーアイズ』モンスターとして扱う!! よって俺の墓地のブルーアイズは5体だ!!」

 

「なんですって!?」

 

 その海馬の言葉にレベッカはその目を大きく見開く――海馬の墓地の《白き霊龍》の数は3体。

 

「さぁブルーアイズよ! 今度こそあのカードを蹴散らせ!! 滅びのバースト・ストリィイイイイムッ!! ニレンダァ!!」

 

 再び発射される滅びのブレス。

 

「わ、私は墓地の2枚目の《ネクロ・ガードナー》を除外して、攻撃を無効に!!」

 

 しかし2体目の《ネクロ・ガードナー》が立ちふさがり、そのブレスを防ぐも――

 

「サンレンダァ!」

 

 すぐさま新たな滅びのブレスが《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》を目掛けて放たれる。

 

「最後の《ネクロ・ガードナー》を除外して、防ぐ!」

 

 三度現れた《ネクロ・ガードナー》がその身をとして守りに入るが――

 

「ヨンレンダァ!!」

 

 4発目の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》を防ぐ余力は《ネクロ・ガードナー》たちには残されていない。

 

「まだよ! 墓地の《タスケルトン》を除外して、その攻撃を無効!」

 

 だが黒い子ブタが己の全身骨格を飛ばし、《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の注意を引き、そのブレスを己の身で受け止める。

 

「――グォレンダァ!!」

 

 しかし《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の滅びのブレスの連撃の最後の一撃が《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》に襲い掛かる。

 

 散っていった者たちの想いを胸にブレスを盾で防ぎ、剣で切り込む《カオス・ソルジャー -宵闇(よいやみ)の使者-》だったが、その圧倒的なまでの滅びの力に、最後は散っていった者たちの後を追うように消えていった。

 

 やがてその余波がレベッカを襲う。

 

「くぅうううぁあああああ!!」

 

レベッカLP:500 → 0

 

 姿形は違えど「カオス・ソルジャー」に対して雪辱を果たした《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》は天に向けて咆哮を放つ。

 

「フフフ……ハハハ……ワーハッハッハッハー!!!!」

 

 さらにその竜の咆哮に同調するように海馬は盛大に己が勝利に笑う。

 

 そして周囲に《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の咆哮と海馬の高笑いの共鳴が響き渡った。

 

 




青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)+海馬「 「フフフ……ハハハ……ワーハッハッハッハー!!!!」 」

〇ロロ軍曹「……こ、これは!! 『人』と『竜』の種族的な声量の違いを感じさせぬ、何とも力強くも繊細な共鳴ッ……!! 我輩……感激であります!!」


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