マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
今作で脱退が相次ぎ10名まで数を落としたカードプロフェッサー

しかし、その内の4名は任務そっちのけでフィーバーしていた!?



第84話 彼にとっての「普通」のデュエル

 先行はマイコ・カトウ。

 

「私の先行ね。ドロー」

 

 引いた手札を見つつ、牽制の意味合いも込めて穏やかに笑う。

 

「あらあら、中々いい手札。私は手札のモンスターを捨てて、魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動。その効果でデッキからレベル1の――《森の聖獣 ユニフォリア》を特殊召喚するわ」

 

 フィールドを駆け回るのは新緑の草々を身体に生い茂らせるユニコーン。

 

 やがてマイコ・カトウに寄りそうように立ち止まる。

 

《森の聖獣 ユニフォリア》

星1 地属性 獣族

攻 700 守 500

 

 そんなマイコ・カトウの最初に呼び出されたモンスターを見つつアクターは思案する。

 

――《森の聖獣 ユニフォリア》を採用している以上、デッキに獣族以外はいない可能性が高い。そして墓地に送られたのはあのカード。

 

 そしてさらに思案せざるを得ない――最初の手札がエゲツねぇ、と。

 

 そのアクターの絶望を余所にマイコ・カトウは動きだす。

 

「そして私の墓地のモンスターが獣族だけの時、《森の聖獣 ユニフォリア》の効果を発動出来るわ」

 

 《森の聖獣 ユニフォリア》の身体の草々がその身体を覆い隠す様により生い茂っていく。

 

「自身をリリースして私の手札・墓地から《森の聖獣 ユニフォリア》以外の獣族モンスターを蘇生させる」

 

 そして大樹のようになった《森の聖獣 ユニフォリア》の内側から槍が飛び出し――

 

「呼び戻すのは魔法カード《ワン・フォー・ワン》の効果で墓地に送られていたこの子を特殊召喚――現れなさい! 森を守護する三賢人が一人! 赤き彗星! 《エンシェント・クリムゾン・エイプ》!!」

 

 その槍で切り開いた大樹から現れたのは黒い革の防具で身を包んだ赤い体表の巨大なヒヒのような獣。

 

 しかしその獅子のたてがみのような白い体毛のある顔には森を荒らす者への怒りが見て取れた。

 

《エンシェント・クリムゾン・エイプ》

星7 光属性 獣族

攻2600 守1800

 

「お次は《ビーストライカー》を通常召喚させて貰うわね」

 

 《エンシェント・クリムゾン・エイプ》の隣に降り立つのはダメージジーンズを着こなし、巨大なハンマーを持つ身体の所々に黒い毛の生えた二足の獣。

 

 その口から伸びる巨大な牙を唸らせ、アクターを睨む。

 

《ビーストライカー》

星4 地属性 獣族

攻1850 守 400

 

「そして私の手札を1枚捨てて《ビーストライカー》の効果を発動よ。デッキから《モジャ》を1体特殊召喚するわ」

 

 《ビーストライカー》がハンマーで地面を叩いて地面に穴を開けると、そこから黄色く丸い愛らしい顔に黒い体毛を纏わせた達磨のような獣、《モジャ》が顔を覗かせた後に飛び跳ねて獣の一団へと並ぶ。

 

《モジャ》

星1 地属性 獣族

攻 100 守 100

 

「さらに私のフィールドの表側の《モジャ》をリリースして墓地の《キング・オブ・ビースト》を特殊召喚するわ」

 

 《モジャ》の黒い毛が逆立っていく、そしてその黒い毛は体積を増やしていき、《モジャ》の時とは違った捕食者としての獣の雄叫びを上げ始めた。

 

「さぁ! 貴方の真の姿を見せて上げなさい!! 《キング・オブ・ビースト》!!」

 

 黒い大きな体毛を揺らすその姿にかつての《モジャ》にあった愛らしさなどはどこにもない。

 

 黄色い顔の部分は厳つい顔つきへと変わり、黒い体毛に覆われた巨大な身体から伸びる、骨だけのような黄色い4本の手足が不気味にひしめく。

 

《キング・オブ・ビースト》

星7 地属性 獣族

攻2500 守 800

 

「最後に永続魔法《補給部隊》を発動して、カードを1枚伏せたらターンエンドよ」

 

 マイコ・カトウの一切の無駄のない手札から繰り出される一部の隙も見えないプレイングにアクターは「引き」の差を感じざるを得ない――毎度のことではあるが、未だに慣れない様子。

 

 

「私のターン、ドロー」

 

 今使用しているデッキにしてはアクターの手札はそこそこ良く、分相応といったところだ。

 

「相手フィールドのみモンスターが存在する為、手札から《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚」

 

 小さなスパークと共に現れた銀の装甲を持つ蛇のように長い身体の機械竜。

 

《サイバー・ドラゴン》

星5 光属性 機械族

攻2100 守1600

 

 その有名なデュエル流派であるサイバー流でお馴染みのカードにマイコ・カトウは懐かしいものを見たかのように声を漏らす。

 

「《サイバー・ドラゴン》? サイバー流のカード……鮫島を思い出すね――あの小僧は、今はどうしていることかしら」

 

 そんな昔の記憶を楽しそうに語るマイコ・カトウだったが、そんな姿も直ぐに鳴りを潜め、自身のセットカードに手をかざす。

 

「その特殊召喚の際に罠カード《針虫の巣窟》を発動させて貰うわよ。その効果で私のデッキの上から5枚のカードを墓地に送らせて貰うわ」

 

 ほとんど無差別に墓地にカードを送る効果だが、一線級のデュエリストが行う「それ」は因果をも超えたものとなる。

 

「フフッ、いいカードが落ちたわね」

 

 そんな嬉しそうなマイコ・カトウの言葉を聞きつつ、墓地に落ちた5枚のカードを超視力で捉えるアクター。

 

――制限カードの《おろかな埋葬》×5と何が違うのだろう……

 

 墓地に落ちたカードはどれもこれも墓地にいてこそ効果を発揮するカードたち。

 

 そのとんでもない運――否、運命力にアクターは内心で眩暈を覚える。

 

 たった1枚の罠カードが、デッキに1枚しか入れることの出来ない制限カード5枚分の働きをしたに等しいのだから。

 

「《サイバー・ドラゴン》をリリースし、《人造人間-サイコ・ショッカー》をアドバンス召喚」

 

 光となって地面に光の軌跡を描く《サイバー・ドラゴン》。

 

 そしてその丸い光から、黒い拘束具のような服装に赤外線スコープのような装備を顔に付けた《人造人間-サイコ・ショッカー》が腕を組みながら浮かび上がる。

 

《人造人間-サイコ・ショッカー》

星6 闇属性 機械族

攻2400 守1500

 

「あらあら、サイコ流のカードまで、先に罠カード《針虫の巣窟》を発動しておいてよかったわ」

 

 そう、マイコ・カトウの言う通り《人造人間-サイコ・ショッカー》には罠カードの効果と発動を封じる力を持ったモンスター。

 

 当然マイコ・カトウはアクターのデッキなど知る由もない為、マイコ・カトウが先に罠カードを発動させたのはほとんど直感に等しい。

 

 

 アクターが苦労して知識の中から相手のカードを予想しているのに対し、相手は経験に裏打ちされた直感のみ、労力の差が酷く大きかった。

 

 アクターは気が滅入りそうになる己に檄を入れ、デュエルを続ける。

 

「バトルフェイズ。《人造人間-サイコ・ショッカー》で《ビーストライカー》を攻撃」

 

 《人造人間-サイコ・ショッカー》が両の手の間にサイコエネルギーを球体状に留め、そのエネルギーを天に掲げるかの如く突き上げ、相手に背が見える程に片足を上げながら体を捻る。

 

 そしてその長身を活かしオーバースローで球体状のサイコエネルギーを投げ下ろすかのように放った。

 

 対峙する《ビーストライカー》は横を向くように立ち。己が持つハンマーを一本足で構え、飛んできた球体状のエネルギーをハンマーで撥ね飛ばすべく振りぬくが――

 

 だがその球体状のエネルギーはハンマーを砕き、抉るような軌跡を描いて《ビーストライカー》に直撃、その身体を撥ね飛ばした。

 

マイコ・カトウLP:4000 → 3450

 

「くっ……でも私のフィールドのモンスターが破壊されたことで永続魔法《補給部隊》の効果で1枚ドロー!」

 

 しかし《ビーストライカー》の闘志はマイコ・カトウの手札となって引きつがれ、

 

「そして私のモンスターが破壊され墓地に送られたことで《エンシェント・クリムゾン・エイプ》の効果が発動! 私のライフを1000回復する!」

 

 《エンシェント・クリムゾン・エイプ》の天に掲げた槍から放たれる光のオーラがマイコ・カトウを癒す。

 

マイコ・カトウLP:3450 → 4450

 

「さらにこの瞬間! 私の墓地の《異界の棘紫獣(きょくしじゅう)》の効果を発動させて貰うわ!!」

 

 《ビーストライカー》の勇敢なる姿を称えるような遠吠えが響く。

 

「私のフィールドのモンスターが戦闘で破壊され墓地に送られた時! 墓地の自身をフィールドに特殊召喚する!」

 

 やがて遠吠えの音が鳴り止むと共に跳躍して現れたのは体中が鋭利な棘で覆われたオオカミのようにも見える獣。

 

 だがその体中の棘のように生え並んだ牙を持つ顔には6つの瞳が爛々と輝く。

 

《異界の棘紫獣(きょくしじゅう)

星5 闇属性 獣族

攻1100 守2200

 

「もっともこの効果で特殊召喚したこのカードはフィールドから離れたとき除外されるわ――まぁ必要のない説明だったかしら?」

 

 注釈するかのように告げられたマイコ・カトウの言葉にもアクターは何も返答を返さない。

 

「バトルフェイズを終了し、カードを3枚伏せてターンエンド」

 

 そしていつものようにデュエルの進行以外は何も語らずターンを終えた。

 

 しかしそんなアクターの姿にマイコ・カトウは挑発するかのように待ったをかける

 

「意外と消極的なターンだったわね――でも待って頂戴。そのエンドフェイズに私の墓地の《デーモン・イーター》の効果を発動させて貰うわ」

 

 どこかビーバーを思わせる《デーモン・イーター》が現れるが、その身体は悪魔のような翼が生え、鬼のような角が伸び、蜘蛛のように複数の目を持つ不気味な様相をかもしていた。

 

「私のフィールドのモンスター1体を破壊して自身を蘇生させる効果をね――《キング・オブ・ビースト》を破壊して、来なさい! 《デーモン・イーター》!!」

 

 そんな《デーモン・イーター》は《キング・オブ・ビースト》の頭に噛り付き、《キング・オブ・ビースト》はその痛みで堪らずフィールドを後にする。

 

《デーモン・イーター》

星4 地属性 獣族

攻1500 守 200

 

「また私のモンスターが破壊され墓地に送られたわ――《エンシェント・クリムゾン・エイプ》の効果でライフを1000回復させて貰うわね」

 

 どんな形であれ同胞がいなくなった悲しみを癒す様に《エンシェント・クリムゾン・エイプ》の槍から光がマイコ・カトウの元へと向かう。

 

マイコ・カトウLP:4450 → 5450

 

「さらに! ここで私のフィールドの獣族がカード効果によって破壊された時! 私のライフを1000払うことで! 眠れる森の番人が目を覚ますわ!」

 

 散っていった仲間の無念を感じ取った森の番人の雄叫びが木霊する。

 

マイコ・カトウLP:5450 → 4450

 

「現れなさい!! 森を守護する三賢人が一人! 緑の巨星! 《森の番人グリーン・バブーン》!!」

 

 そして大地を揺らしながら現れたのは茶色の革の鎧を纏った緑の体表を持つ巨大なヒヒ。

 

 その顔の周囲は黒いたてがみのような毛で覆われ、その手には丸太をそのままバットのように加工した無骨な棍棒をその怒りを表す様に地面に叩きつけ、大地を揺らす。

 

《森の番人グリーン・バブーン》

星7 地属性 獣族

攻2600 守1800

 

 相手ターンに悠々と展開したマイコ・カトウは自身のターンにデッキの上からカードを引き抜く。

 

「私のターン! ドロー!! 貴方の実力はその程度じゃないでしょう! 寝ぼけているのなら目を覚まさせて上げるわ! バトルよ!」

 

 アクターの立ち上がりの悪さに若干の失望と苛立ちを込めたマイコ・カトウの怒声が響く――このデュエルの為にマイコ・カトウが行った段取りの苦難を考えれば、今のアクターの覇気のない姿は許せるものではない。

 

 アクターはいつも大体こんなものではあるが、「裏の王者」などと揶揄されているゆえに色々とイメージだけが先行していた。

 

「《デーモン・イーター》で《人造人間-サイコ・ショッカー》を攻撃!!」

 

 攻撃力の劣る《デーモン・イーター》で攻撃を指示したマイコ・カトウの姿にアクターはその脳内の知識をフル動員してその意図を探る。

 

――攻撃力の変化によるコンバットトリック? いや必要ない。攻撃力の勝るモンスターをコントロールしている以上、温存すべきだ。

 

 《デーモン・イーター》が《人造人間-サイコ・ショッカー》に突撃する姿がアクターの視界でスローに映る。アクターの思考は加速する。

 

――仮に此方のセットカードを警戒していたとしても自己蘇生効果を持った《森の番人グリーン・バブーン》がいる。其方で攻撃すればいい。よって導き出される結論は――

 

「速攻魔法《エネミーコントローラー》を発動――コントロール変更の効果を選択」

 

 フィールドにゲームの巨大なコントローラーが現れ、そのボタンがひとりでに動き出す。

 

「《人造人間-サイコ・ショッカー》をリリースして《エンシェント・クリムゾン・エイプ》のコントロールをこのターン終了時まで得る」

 

 そして《人造人間-サイコ・ショッカー》へと《エネミーコントローラー》がコードを繋がれた。

 

 すると《エンシェント・クリムゾン・エイプ》へ《エネミーコントローラー》に操られ掴みかかる《人造人間-サイコ・ショッカー》。

 

 そして《エンシェント・クリムゾン・エイプ》をアクターのフィールドに引き摺り込んだ後に《人造人間-サイコ・ショッカー》は爆散した。

 

 空で幻影となって親指を上げる《人造人間-サイコ・ショッカー》の姿はどこか誇らしげだ。

 

「さらに永続罠《王宮の鉄壁》を発動。このカードが存在する限り互いはカードを除外できない」

 

 あっという間の出来事で《人造人間-サイコ・ショッカー》に突撃していた《デーモン・イーター》は《エンシェント・クリムゾン・エイプ》に殴り飛ばされる。

 

マイコ・カトウLP:4450 → 3350

 

「成程ね――そうきたかい。モンスターが破壊されたことで永続魔法《補給部隊》の効果で1枚ドローさせて貰うよ」

 

――しかし《王宮の鉄壁》での除外封じ……私のイエローバブーンが呼べなくなったねぇ。

 

 そう思案するマイコ・カトウ。

 

 《森の狩人イエロー・バブーン》は自身の獣族モンスターが戦闘で破壊された際に墓地の獣族2体を除外して手札から特殊召喚出来るモンスター。

 

――あの一瞬で私の手札を読み切った訳か……良い読みしてるじゃないか……でも除外を封じたのは失敗だよ。

 

 マイコ・カトウは己の有利を感じ取る。

 

 除外封じにより《森の狩人イエロー・バブーン》は機能しなくなったが、それでも自身のデッキはまだポテンシャルを完全に落とした訳ではない事実に。

 

 マイコ・カトウにとって相手の弱点を突くことに長けたアクター相手に値千金の事実だった。

 

「エンドフェイズに返ってくるなら無理をする必要もないね。私はバトルを終了――」

 

 しかし、マイコ・カトウは気を緩めはしない――まだデッキを阻害されなくなったに過ぎず、あくまで互いに同条件になっただけなのだと。

 

「バトルフェイズに罠カード《マジカルシルクハット》を発動」

 

 だがアクターの声がこのタイミングで響く。

 

「デッキの魔法・罠カードをモンスター扱いで自分フィールドのモンスターと共に裏側守備表示でセットし、シャッフル」

 

 アクターに奪われた《エンシェント・クリムゾン・エイプ》が裏側守備表示となり、3つのシルクハットと共にシャッフルされた。

 

 基本的に相手の攻撃を躱す為のカードをマイコ・カトウが「バトルを終える決断の後」で発動させたアクターにマイコ・カトウの不信感が募る。

 

「……このタイミングで? 私はこのままバトルを終了させて貰うよ」

 

――《エンシェント・クリムゾン・エイプ》を破壊して欲しいのかしら?

 

 追撃に出れないバトルフェイズ終了時に発動しなかったことからマイコ・カトウはそう推理するが、推測の域は出ない。

 

 さらに今総攻撃をかけても3つのシルクハットを破壊するに終わる為、《エンシェント・クリムゾン・エイプ》を失うことを嫌って攻撃のキャンセルを決断したマイコ・カトウ。

 

「バトルフェイズ終了時にモンスター扱いになっていた魔法・罠カードは破壊される」

 

 そして再びアクターの機械的な声が響き、3つのシルクハットが全て砕け、裏側守備表示の《エンシェント・クリムゾン・エイプ》だけが残った。

 

「破壊されたフィールド魔法《歯車街(ギア・タウン)》の効果発動」

 

 シルクハットが砕けたと同時に歯車がフィールドに転がる。それは歯車の都市、《歯車街(ギア・タウン)》の残骸。

 

「自身の手札・デッキ・墓地から『アンティーク・ギア』モンスターを1体特殊召喚する――デッキから《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》を特殊召喚」

 

 その残骸は一つに集まり巨大な山となる。

 

 そしてその残骸の山を蹴散らし飛翔するのは歯車仕掛けの巨大な飛竜。

 

 ボロボロの大翼を広げ、長い尾をしならせながら、身体から蒸気を噴き出す。

 

古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)

星9 地属性 機械族

攻3000 守3000

 

「アンティーク・ギアまで……色々混ざってるねぇ」

 

 機械族というシナジーはあれど、アクターのデッキに色々と取っ散らかったイメージをマイコ・カトウは感じざるを得ない――相手の狙いがマイコ・カトウには読めなかった。

 

「攻撃は防がれちゃったけど……こういうのは、どうかしら?」

 

 しかしそんなことはおくびにも出さずマイコ・カトウは微笑んで見せる。

 

「貴方が私のモンスターの数を減らしたことで、今の私のフィールドには獣族モンスターが2体!」

 

 そのマイコ・カトウの宣言通り、マイコ・カトウのフィールドにいる獣族は《森の番人グリーン・バブーン》と《異界の棘紫獣(きょくしじゅう)》の2体。

 

「――この条件を満たしているとき、墓地の《チェーンドッグ》は自身の効果で特殊召喚出来るわ。出番よ! 《チェーンドッグ》!!」

 

 ピョーンと飛び出したのは鎖に雁字搦めにされた片方の目元と耳、そして尾の先が黒い犬。

 

 首には身体に巻き付いた鎖を繋ぐ南京錠が付いており、その口にはその南京錠の鍵が咥えられている。

 

《チェーンドッグ》

星4 地属性 獣族

攻1600 守1100

 

「この子も自分の効果で特殊召喚された後にフィールドから離れるときは除外されちゃうけど――貴方の永続罠《王宮の鉄壁》の効果で除外されないわ」

 

 そう挑発するマイコ・カトウだが、アクターは相変わらず何のリアクションも返さない。

 

「永続魔法《冥界の宝札》を発動し――《異界の棘紫獣(きょくしじゅう)》と《チェーンドッグ》をリリースしてアドバンス召喚!!」

 

 《異界の棘紫獣(きょくしじゅう)》と《チェーンドッグ》が同時に空へと跳躍し――

 

「現れなさい! 森を守護する三賢人が一人! 黄色い閃光!! 《森の狩人イエロー・バブーン》!!」

 

 その2体の代わりに空から落ちてくるのは土色の装備に身を纏った黄色い体表の巨大なヒヒ。

 

 その顔の周りには緑のたてがみが揺らめき、その手に持つ巨大な弓と矢でアクターを狙う様に弓を弾き絞っていた。

 

《森の狩人イエロー・バブーン》

星7 地属性 獣族

攻2600 守1800

 

 《異界の棘紫獣(きょくしじゅう)》も《チェーンドッグ》も除外されずに墓地に戻る――アクターの発動した永続罠《王宮の鉄壁》が完全に裏目に出ている状態だ。

 

「さらに2体以上のモンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した為、永続魔法《冥界の宝札》の効果で2枚ドローさせて貰うわ!」

 

 その新たに引いた2枚の手札でマイコ・カトウは取るべき手を考える――アクターの出方が分からない以上、攻めの手は休めてはならないと。

 

「これで私のフィールドの獣族モンスターは2体になった――よって再び墓地の《チェーンドッグ》を特殊召喚!!」

 

 再び身体の鎖をジャラジャラ鳴らしながらかけてくる《チェーンドッグ》。

 

 そしてマイコ・カトウの足元で大人しく伏せをする。

 

《チェーンドッグ》

星4 地属性 獣族

攻1600 守1100

 

「最後に永続魔法《エクトプラズマー》を発動し、カードを1枚伏せてターンエンドとさせて貰うわね」

 

 結果的にマイコ・カトウの攻撃の手は届かなかったが、これならばどうだとマイコ・カトウは高らかに宣言する。

 

「――でもこのエンドフェイズに永続魔法《エクトプラズマー》の効果が貴方を襲うわよ」

 

 周囲の空気が震えるように騒めいていく。

 

「その効果で私は自分フィールドのモンスター、《森の番人グリーン・バブーン》をリリースして、その元々の攻撃力の半分のダメージを与えるわ!」

 

 マイコ・カトウの目配せに「任せろ」とばかりに《森の番人グリーン・バブーン》が力の限り体内のエネルギーを外へと放出し、そのエネルギーは《森の番人グリーン・バブーン》の姿へと変化する。

 

「《森の番人グリーン・バブーン》の元々の攻撃力2600! よってその半分1300のダメージよ!!」

 

 そして己が全てのエネルギーを魂の弾丸としてアクターを襲い、そのマントを揺らす。

 

アクターLP:4000 → 2700

 

「さらに《エネミーコントローラー》の効果も切れるわ――さぁ、帰っていらっしゃい」

 

 そのマイコ・カトウの言葉に《エンシェント・クリムゾン・エイプ》は裏側守備表示を保ちつつ、ほふく前進で仲間の元へと戻っていった。

 

 

 

 先制攻撃を許したアクターは「いつものことだ」と考えつつ、デッキに手をかける。

 

「私のターン、ドロー」

 

 相変わらず手札は何とも言えぬものだった。

 

「バトルフェイズ。《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》で――」

 

 攻撃するべく身体から蒸気を噴き出し、全身を稼働させる《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》。

 

「ちょっと待って頂戴な。私は貴方のバトルフェイズ開始時に罠カード《猛突進》を発動させて貰うわね」

 

 だがマイコ・カトウの言葉に空高くへ飛翔する《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》――「来るな」と叶わぬ思いを抱きつつ。

 

「その効果で私のフィールドの獣族モンスター、《チェーンドッグ》を破壊して貴方のフィールドのモンスター1体をデッキに戻す!!」

 

 空を舞う《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》に向かって懸命にジャンプする《チェーンドッグ》。

 

 しかし届く訳もなく《チェーンドッグ》は地面にゴロリと転がり落ちる。

 

「私が選ぶのは当然――《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》」

 

 そんな姿を見かねた《森の狩人イエロー・バブーン》が己の矢に《チェーンドッグ》を括りつけて、弓を弾く。

 

 そして《チェーンドッグ》は弓矢で砲弾の如く射出された。

 

「『アンティーク・ギア』モンスターたちには攻撃時に魔法・罠カードの発動を封じる効果があるのでしょう? そう簡単に通す訳にはいかないわね」

 

 その《チェーンドッグ》付きの矢は《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》をしたたかにとらえ、《チェーンドッグ》と共に星になる《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》。

 

 空に《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》の悲痛な叫びのような機械音が響いた。

 

「自分フィールドのモンスターが破壊されたことで、私は永続魔法《補給部隊》の効果で1枚ドロー」

 

 常にマイコ・カトウの戦線は途切れることはない。

 

「さらに私のフィールドの『獣族』が効果で破壊されたわ――ライフを1000払い、墓地から舞い戻りなさい!! 《森の番人グリーン・バブーン》!!」

 

マイコ・カトウLP:3350 → 2350

 

 空に散っていった《チェーンドッグ》の姿に《森の番人グリーン・バブーン》は怒りの雄叫びを上げ、

 

 《森の狩人イエロー・バブーン》もその雄叫びに共鳴するように叫ぶ。

 

《森の番人グリーン・バブーン》

星7 地属性 獣族

攻2600 守1800

 

「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2へ移行。カードを1枚伏せ、魔法カード《命削りの宝札》を発動。手札が3枚になるようにドロー」

 

 マイコ・カトウという原作にて遊戯を追い詰めた実力者にアクターは「選ばれたデュエリストのドロー力は此方のドロー力にも作用しそう」などと詮無きことを考えつつ、カードを引きつつ思案する。

 

「永続魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》を発動」

 

 アクターの背後に近未来的なビル群が立ち並ぶ。

 

「さらにカードを2枚伏せてターンエンド。エンド時に魔法カード《命削りの宝札》の効果で自身の手札を全て捨てる。だが今の私の手札は0」

 

 そうしてターンを終えようとしたアクターにマイコ・カトウは一応と声をかける。

 

「そのエンドフェイズに私の永続魔法《エクトプラズマー》の効果で貴方のフィールドの表側のモンスターをリリースしなきゃならないけど、貴方のフィールドにモンスターは0。意味はないわね」

 

 自分のターンになったマイコ・カトウだが、言い得ぬ不信感はまだ拭えていない。

 

 アクターのアクションがあまりにも少なすぎる為に何を狙っているのか不気味な程に分からない。

 

 なお、それはアクターのドロー力の低さが問題なのだがマイコ・カトウが知る由もない――「何も賭けられていない」だけ、これでもいつもよりマシなのだが。

 

「あらそれで終わり? 手札事故かしら? なぁんてね」

 

 そんな軽口でマイコ・カトウは自身の心の動揺を隠しつつデッキに手をかける――おぼろげながら見えてきた事実を確かめるように。

 

「私のターン、ドロー」

 

――互いの罠を封じるサイコ・ショッカーを使っているにも関わらずセットカードが多い……恐らくサイコ・ショッカーを限定的に使って罠カードや永続罠《王宮の鉄壁》の除外封じをON・OFFに切り替えながら戦うデッキか……

 

 そう考えるマイコ・カトウ。段々とアクターという存在を察し始めていた。

 

 

 そして今の自身のフィールドには《森の番人グリーン・バブーン》と《森の狩人イエロー・バブーン》の2体の獣族のみ。

 

 3体目の《エンシェント・クリムゾン・エイプ》は裏側守備表示の為、カウントされない。

 

――今の私のフィールドの獣族は2体、また《チェーンドッグ》の効果を使ってもいいけど……ここは!

 

「私は手札の《金華猫(きんかびょう)》を通常召喚!」

 

 フィールドをトコトコと歩くのは小さな白い子猫。

 

金華猫(きんかびょう)

星1 闇属性 獣族

攻 400 守 200

 

「このカードの召喚時に私の墓地のレベル1のモンスター1体を蘇生させるわ」

 

 だが白い子猫の影が伸びていき、黒い大きな猫の形を取り、毛を逆立てアクターを威嚇する。

 

「墓地の《モジャ》を蘇生。でも《金華猫(きんかびょう)》がフィールドを離れたときに除外されちゃうけどね」

 

 その黒い猫の口に咥えられていた《モジャ》は身をくねらせて、フィールドに着地した。

 

《モジャ》

星1 地属性 獣族

攻 100 守 100

 

「そしてフィールドの《モジャ》をリリースして、《モジャ》は真の姿となるわ!! 墓地から《キング・オブ・ビースト》を蘇生!!」

 

 再び身体が巨大化し、《モジャ》はその身を己が成体としての《キング・オブ・ビースト》へと変化させる。

 

《キング・オブ・ビースト》

星7 地属性 獣族

攻2500 守 800

 

「最後に裏側守備表示の《エンシェント・クリムゾン・エイプ》を反転召喚して――」

 

 槍を振りあげ、敵に操られたことに怒りの咆哮を上げる《エンシェント・クリムゾン・エイプ》。

 

 その怒りの形相は鬼の如く猛っていた。

 

《エンシェント・クリムゾン・エイプ》

星7 光属性 獣族

攻2600 守1800

 

 展開を終えたマイコ・カトウはバトルフェイズに入る前にクスリと笑う。

 

「フフッ、あらごめんなさい」

 

 そうアクターに謝りつつも、ここまでのデュエルを通じて「デュエリスト」としてのアクターをおぼろげながらも掴んだことにマイコ・カトウはクスクスと笑う。

 

 嘲笑している訳ではない。それは「未知」の発見に対する喜びに近い。

 

「アクター、貴方ってデュエリストとして未熟、いや違うわね。酷く――」

 

 ほんの少しの貯めと共にマイコ・カトウが見えたアクターの姿を零す。

 

 

 

「――『不完全』だわ」

 

 

 

 観客となったテッド・バニアスの動揺するかような気配がマイコ・カトウには読み取れた。

 

 無理もない。裏世界で「無敗」を誇ってきたデュエリストが「不完全」などと言われてもピンとこないだろう。

 

 

 しかし実際にデュエルして対峙したマイコ・カトウの中で様々な情報がパズルのように組み上がっていく。

 

「成程、成程――あのペガサスが『異端』と称したのがよく分かるわ。それに『役者(アクター)』と名付けたのも」

 

 ペガサスも「役者」などと随分と皮肉の効いた異名を付けたものだと。マイコ・カトウは笑う。

 

「本当に驚いたわ。私もそれなりに長くデュエルしてきたつもりだけど貴方みたいなデュエリストは初めて見る」

 

 マイコ・カトウもアクターと同じくデュエルモンスターズが生まれて直ぐにデュエリストになった最初期の時期の人間の一人。

 

 そのデュエル歴は他の追随を許さない――そんなマイコ・カトウですらアクターは未知であった。

 

 

「貴方は何者にも『なれる』んじゃない、何者にも『なれない』のよ」

 

 

 そう語るマイコ・カトウだがアクターは何も言葉を返さず沈黙を守るだけ。

 

「だからデッキをこうもアレコレ変えられる――『自分』というものがないから」

 

 しかしそんなマイコ・カトウの主張に待ったをかける声が上がる――テッド・バニアスの声だ。

 

「待ってくれよ! ばあさん! そりゃどういうことだよ!!」

 

 テッド・バニアスにとってデッキとは「もう一人の己」であった――それゆえにアクターには「自分」というものがないとのマイコ・カトウの説明が上手く呑み込めない。

 

 そんなテッド・バニアスにマイコ・カトウは順序だてるように指を一つ立てる。

 

「『デュエリスト』なら誰もが『自分の色』を持っているわ」

 

 それは世界的に有名なデュエリストであっても、

 

「『キース・ハワード』なら、何度倒されても立ち上がる『不屈』」

 

 それはまだデュエル歴の短い年若いデュエリストであっても、

 

「そのキースと死闘を繰り広げた『武藤 遊戯』なら、何のシナジーもない数多のカードを纏める『絆』」

 

 それはデュエルを「力」とした意味を主眼に置くデュエリストであっても、

 

「その遊戯のライバルである『海馬 瀬人』なら、究極的にまで極めた『力』」

 

 どんなデュエリストであっても「自分の色」を持っている。

 

 それはカードとの絆を否定するエックスのようなデュエリストですら例外ではない。

 

「何言ってんだよ、ばあさん! ソイツの色は――」

 

「あらゆるカードを意のままに操る『多様性』とでも言うの?」

 

 テッド・バニアスの発しようとした言葉を先回りするようにマイコ・カトウはワザとらしく首を傾げる。

 

「そうね。『みんな』そう思っているでしょうね――みんな『勘違い』した」

 

 その認識のまま、数多のデュエリストが絶望の只中に消えていった

 

「貴方には『多様性』なんてものはないわ――本当に何もない」

 

 

 そう、アクターにとって――

 

「『カードを想う気持ち』も――」

 

 カードはただの玩具だ。

 

「『デュエルにかける熱意』も――」

 

 デュエルはただの遊びだ。

 

「『デュエリストの誇り』も――」

 

 デュエリストはただのプレイヤーだ。

 

「――そして『勝利への執着』すらない」

 

 アクターにとってデュエルはただの遊び――勝って負けて笑い合う。それ以上の意義も意味も見出せない。

 

 アクターにとって、神崎にとってゲーム(デュエル)とは「そういう」ものだった。

 

 

「――『デュエルそのものにさして興味を抱いていない』といってもいい」

 

 その遊び(ゲーム)の勝ち負けに人生を、己の全てを費やすことなどアクター(神崎)にとってはあり得ない。

 

 あくまで日常を潤すアクセントでしかないのだ。

 

「無理やり貴方のデュエリストとしての色を表現するなら、それはきっと『無関心』――フフッ、何故デュエルをしているかが不思議でならないわね」

 

 マイコ・カトウは「この世界」でアクターの本質に最も近づいた。

 

 

「貴方って本当に――」

 

 

 そうアクターは――

 

 

「――『(から)っぽ』だわ」

 

 

 デュエリストではない(デュエルに誇りを持っていない)

 

 




「全力」と「本気」は別



~一瞬だけ名前が出た人の人物紹介~
鮫島(さめじま)

遊戯王GXに登場

GXの舞台であるデュエルアカデミアの校長。

そしてデュエル流派、「サイバー流」の道場の師範代である。
デュエルの腕前はかなりのもの。

門下生にはマスター鮫島と呼ばれていた。

温厚で気のいい性格であるが、教育者として理想主義が行き過ぎる点も見受けられる。いわゆる「意外と頭が固い」系

デュエルアカデミアに蔓延る様々な問題を完全に放置、もしくは殆ど手が回っていなかったところを見るに、組織を纏める者としてはアウトである。

まぁメタ的な関係でGXの主人公である十代が活躍する為にある程度の問題が必要だったのだろうが……それを差し引いても酷かった(行方不明になった生徒の放置など)

良い人ではあるのだが……「名選手、名監督にあらず」といったところか


――今作では
今現在のDM時代はサイバー流の道場で自分の腕を磨いている。

「師範代に」との話が出てきている模様。



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