マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
格闘戦士アルティメーター「アルティメット・スクリュー・ナックル!!」

トム「あ、あれは! 城之内さんを昔から支えてきたカード!!」




第89話 一人じゃねぇ奴は強い

 

 

 絶体絶命だった状況から何とか城之内の攻撃を凌いだエスパー絽場はこの屈辱は倍にして返すとばかりにデッキに手をかける。

 

 今のエスパー絽場が大きく巻き返す為にはあるカードが必要になる。確率は決して高くない。しかしエスパー絽場はそのカードを引ききる自信があった。

 

「ボクのターン! ドロー!! ボクは今引いた速攻魔法《サイクロン》を発動! 君の右のセットカードを破壊させて貰うよ!!」

 

 フィールドに竜巻が渦巻く――エスパー絽場が狙うのは当然、あのカード。

 

「おおっと! そうはさせねぇぜ! 破壊される前に発動させて貰うぜ! 速攻魔法《スケープ・ゴート》!! 俺のフィールドに『羊トークン』4体を特殊召喚!!」

 

 破壊される前に使ってしまえとばかりに城之内はエスパー絽場の思惑に知らぬ間に乗り、城之内のフィールドに丸みを帯びた4体の羊が小さく鳴き声を上げながら現れた。

 

『羊トークン』×4

星1 地属性 獣族

攻 0 守 0

 

 城之内のフィールドに最大限カードが溜まったことを確認したエスパー絽場は意気揚々と最後のリバースカードに手をかざす。

 

「ならボクはリバースカードを発動させて貰うよ! 罠カード《裁きの天秤》!!」

 

 空を割き現れた、立派な髭を携えた老人が持つ天秤がユラユラ揺れる。

 

 その片方の天秤にはエスパー絽場の手札とフィールドのカードの数の光が灯り、もう一方には城之内のフィールドのカードの数だけ光が灯る。

 

「君のフィールドのカードは9枚! そしてボクの手札は0! フィールドは《裁きの天秤》のみ!」

 

 そのエスパー絽場の言葉通り、エスパー絽場の手札はなく、フィールドには《裁きの天秤》のみ、

 

 城之内のフィールドは――

 

 モンスターが《ギルフォード・ザ・ライトニング》と4体の『羊トークン』。

 

 魔法・罠カードが《冥界の宝札》に《連撃の帝王》と2枚のセットカードの合計9枚。よってその差は――

 

「よってその差の分! 8枚のカードをドローする!!」

 

 一気に手札を回復させたエスパー絽場はここから巻き返しを図る為に動き出す。

 

「ボクは2枚目の魔法カード《シャッフル・リボーン》を発動! 墓地のモンスターを蘇生する!! 蘇れ!! 《A(アーリー)・マインド》!!」

 

 再び現れる様々なコードがぶら下がる黒い球体、《A(アーリー)・マインド》。やる気を見せるようにその身体をクルクルと回している。

 

A(アーリー)・マインド》

星5 闇属性 機械族

攻1800 守1400

 

「ドッカーン!!  罠カード《奈落の落とし穴》だぜ! 相手が攻撃力1500以上のモンスターを召喚・特殊召喚・反転召喚した時! ソイツを破壊し、除外する!」

 

 しかしそんな《A(アーリー)・マインド》の真下に突如穴が開き、そこから緑の腕が伸び、奈落へと引きずり込まんと《A(アーリー)・マインド》に掴みかかる。

 

 その穴の底は血の池のような赤で染まり、おどろおどろしい気配を放っていた。

 

「あばよっ!」

 

 ターンの終わりに破壊されるカードを率先して破壊に動く城之内。

 

 そう、城之内は見抜いていた――態々レベル5のモンスターを蘇生させたエスパー絽場が次の取る手を。

 

 しかしエスパー絽場はその城之内の想定を上回る。

 

「させないよ! 速攻魔法《我が身を盾に》!! ボクはライフを1500払うことで相手の発動した『フィールド上のモンスターを破壊する効果』を持つカードの発動を無効にし破壊する!!」

 

 自身のライフが危険域に達しようとも勝利の為に身を削る。

 

エスパー絽場LP:1900 → 400

 

 そのエスパー絽場のライフを吸って満足したのか、奈落への穴から伸びた緑の腕は穴の中へ戻っていった。

 

「さすがにそう簡単には通しちゃくれねぇか!」

 

 罠カードを躱したエスパー絽場に鼻をかきつつ城之内はニヒルに笑うが、エスパー絽場の一手はまだ終わりではない。

 

「それだけじゃない! 相手がコントロールするカードの発動を無効にしたことで! ボクは手札のこのカードを特殊召喚出来る!!」

 

 空から「キーン」という音速の壁を破るような音と、青いボディに背中と肩部分に翼が取り付けられたロケットのようなフォルムのマシンがブースターを吹かす姿が見える。

 

「現れろ!! ジェット・マシン!! 《A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》!!」

 

 やがてフィールドにある程度近づくとその身体を反転させ、肩部分が回転し、腕が現れる。

 

 さらにブースター部分が二つに別れ、脚部となってブレーキ代わりに地面にブースターを吹かし、宙に浮かぶように静止した。

 

A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》

星5 闇属性 機械族

攻2200 守1000

 

「ここで2枚目の魔法カード《トランスターン》を発動! 《A(アーリー)・マインド》を墓地に送って、同じ属性・種族! そしてレベルが1つ高いカードをデッキから特殊召喚!!」

 

 《A(アーリー)・マインド》が地面にめり込み、その身体をエネルギーに変えてゲートを生み出す。

 

「つまりレベル6のモンスターを呼び出す訳か!」

 

 その城之内の予想通りエスパー絽場が呼びだすのは己がエース、《人造人間-サイコ・ショッカー》。

 

「そうさ! ボクが呼ぶのはレベル6の――」

 

 しかしエスパー絽場の言葉に城之内は手を前に出し、待ったをかける。

 

「なら、ちょっと待って貰うぜ! お前の《トランスターン》の効果にチェーンして俺の罠カード《ゴブリンのやりくり上手》を発動!! 俺の墓地の《ゴブリンのやりくり上手》の数+1枚のカードをドローだ!」

 

 《人造人間-サイコ・ショッカー》の効果は罠を封じる効果。なら先に使ってしまえばいいのだと城之内は最後のリバースカードを発動させた。

 

「俺の墓地の《ゴブリンのやりくり上手》は2枚! よって3枚ドロー! その後で手札を1枚デッキの一番下に戻す!!」

 

 当然残りの2枚の《ゴブリンのやりくり上手》は《名推理》の時に墓地に送っている為、やりくりしているゴブリンは満足顔だ。

 

 そしてチェーンの逆順処理が進む。

 

「くっ! 先にトラップを使われたか!! ――だが《トランスターン》の効果は止まらない!! さぁ、来い! 《人造人間-サイコ・ショッカー》!!」

 

 地面のゲートからゆっくりと上昇してくるのはいつものように腕を組んだ《人造人間-サイコ・ショッカー》の姿。

 

《人造人間-サイコ・ショッカー》

星6 闇属性 機械族

攻2400 守1500

 

 これによりいかなる罠もエスパー絽場には届かない――といっても城之内のフィールドに罠と言うべきセットカードはないが。

 

「そして次はこのカードだ! 《可変機獣 ガンナードラゴン》を妥協召喚! このカードはリリースの2体必要なレベル7のモンスターだが、攻・守が半減する代わりにリリースなしで召喚出来る!」

 

 城之内の見知った赤い機獣がキャタピラをうねらせて現れる。

 

 その身体はくすんでおり、碌に整備もする間もなく飛び出してきた装いだ。

 

《可変機獣 ガンナードラゴン》

星7 闇属性 機械族

攻2800 守2000

攻1400 守1000

 

「ここで魔法カード《ダウンビート》を発動! ボクのモンスターを1体リリースして、そのモンスターと元々の属性・種族が同じで、元々のレベルが1つ低いモンスターを特殊召喚する!!」

 

 何処からかギターのパンチの聞いた音が流れ出す。

 

「レベル7の《可変機獣 ガンナードラゴン》をリリース!!」

 

 その音の先は《可変機獣 ガンナードラゴン》の内側から――中に誰かいるようだ。

 

 そして突如爆発する《可変機獣 ガンナードラゴン》。その爆風から大空へ飛び立つ影が一つ。

 

「現れろ! レベル6!! 大空を舞う鋼の翼!! 《A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》!!」

 

 大空を舞うのは金属の翼を得た骨だけを組み上げたようなコンドルにも似た機械の怪鳥。

 

 しかし身体の中央には水色に光る丸い核と、目の代わりについた赤いモノアイが鈍く光る。

 

A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》

星6 闇属性 機械族

攻2300 守1200

 

「2枚目の魔法カード《闇の量産工場》を発動! 墓地の通常モンスター《A(アーリー)・マインド》と《メカ・ハンター》の2枚を手札に!」

 

 エスパー絽場の手札に回転しながら戻る丸い2体こと《A(アーリー)・マインド》と《メカ・ハンター》。

 

「装備魔法《やりすぎた埋葬》を発動! 手札のモンスター、《A(アーリー)・マインド》を捨て、そのモンスターより元々のレベルが低いモンスターを蘇生させる!!」

 

 そして地面から生えてきた墓標へ早速ボッシュートされる《A(アーリー)・マインド》。

 

 回転しながら落ちる《A(アーリー)・マインド》は《メカ・ハンター》に「一足先に」とコードの1本を手を上げるように揺らす。

 

「ボクはレベル5《A(アーリー)・マインド》以下のレベル――墓地のレベル4のモンスターを蘇生する! 現れろ! レベル4! 《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》!!」

 

 その《A(アーリー)・マインド》を足場に跳躍するのは胸と腹にイナズマのマークがついたオレンジを基調にした人型のロボット。

 

A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》

星4 闇属性 機械族

攻1700 守 0

 

「だが蘇生した《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》には装備魔法《やりすぎた埋葬》が装備され、効果が無効にされる!」

 

 その《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》の両の腕に装着した青い装備の先についたコンセントらしきものから紫電が奔る――と思ったが、効果が無効化されているゆえか何も起こらない。

 

 それゆえにヤレヤレといった具合に《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》は肩をすくめる。

 

「でもボクは墓地の《シャッフル・リボーン》を除外して効果を発動! 《やりすぎた埋葬》をデッキに戻しカードをドロー!!」

 

 だが墓標である《やりすぎた埋葬》がなくなったことで、そのコンセント部分から紫電が奔る。

 

「これで《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》の効果が適用される!!」

 

 力こぶを作るようなポーズをとって腕から紫電を周囲に放つ《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》。

 

「《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》が表側で存在する限り! このカードと同じ属性を持つ、このカード以外のモンスターの攻撃力は500アップ!!」

 

「絽場のモンスターは全部が全部、闇属性……」

 

 その城之内の呟きを肯定するかのように《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》の放った紫電によってエネルギーをチャージしていく3体のモンスターたち。

 

《人造人間-サイコ・ショッカー》

攻2400 → 攻2900

 

A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》

攻2300 → 攻2800

 

A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》

攻2200 → 攻2700

 

「さぁ、バトルだ!! サイコ・ショッカーで《ギルフォード・ザ・ライトニング》を攻撃!! サイバーエナジーショック!!」

 

 最大限にチャージされた《人造人間-サイコ・ショッカー》のエネルギー砲が《ギルフォード・ザ・ライトニング》に迫る。

 

 その攻撃を大剣で真っ二つに切り裂いた《ギルフォード・ザ・ライトニング》だったが、切り裂いた衝撃で拡散したエネルギーの奔流に呑まれてしまい、その身を消滅させた。

 

「うぉっ! 《ギルフォード・ザ・ライトニング》が!!」

 

城之内LP:4000 → 3900

 

「次だ! 《A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》と《A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》! そして《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》の3体で――」

 

 《A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》は滑空しながら足の爪をギラリと光らせ、

 

 《A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》はブーストを最大限に吹かし、自身を砲弾と化して、

 

 《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》はその腕のコンセントのような武器から紫電の弾丸を放つ。

 

「3体の《羊トークン》それぞれに攻撃!!」

 

 その結果、赤、桃、黄色の3体の『羊トークン』が切り裂かれ、潰され、消し炭と化す。

 

 最後の青色の『羊トークン』はその光景を目に焼き付けていた――その胸中は如何ほどなのか。

 

「トークンが1体残ったか……ボクはバトルを終了――そして手札から2枚目の速攻魔法《魔力の泉》を発動!」

 

 城之内のフィールドには《冥界の宝札》と《連撃の帝王》の2枚。

 

 エスパー絽場のフィールドには《魔力の泉》のみだ。よって――

 

「君のフィールドのカードは2枚! ボクのフィールドは1枚! よって2枚ドローして1枚捨てる!!」

 

 やはりという思いを見せつつ《メカ・ハンター》はクルクルと回転しながら墓地に落ちていく。

 

「そして次の君のターンの終わりまで、君のフィールドの魔法・罠カードは破壊されず、無効化されない!」

 

 これにより城之内の永続罠《連撃の帝王》は《人造人間サイコ・ショッカー》の「罠封じ」の呪縛から解き放たれる。

 

 だが今の城之内のフィールドにはアドバンス召喚のリリースに出来るモンスターはいない。城之内のフィールドに残った「羊トークン」はアドバンス召喚のリリースに出来ない制約がある。

 

 その為、殆ど意味はない――それゆえにエスパー絽場はリリース出来るモンスターを破壊してから《魔力の泉》を発動したのだから。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ!! エンドフェイズに《シャッフル・リボーン》の効果で手札を1枚除外するが、ボクの手札は0――意味はない」

 

 盤面を覆し、2枚のセットカードもプラスした攻防一体の自分のフィールドにエスパー絽場は一先ず安心だと挑発的な笑みを城之内に向ける。

 

 

 そんな城之内の視線は自分のフィールドで仇討に燃えるように毛を逆立てている『羊トークン』に注がれていた。

 

――『羊トークン』が1体残ったか……だがコイツはアドバンス召喚のリリースには出来ねぇからなぁ……どうすっか。

 

 そう考えながらも「ドローしてから考えるか」などと思いながらデッキに手をかける。

 

「なら俺のターン! ドロー!!」

 

 引いたカードは悪くない。

 

「まずは、墓地の2枚目の《カーボネドン》を除外して効果を発動! 俺のデッキからレベル7以下のドラゴン族の通常モンスター1体を守備表示で呼び出すぜ!」

 

 《カーボネドン》の黒い身体が光を放ち、その光が収まるころには――

 

「次はコイツだ! 《メテオ・ドラゴン》!!」

 

 《メテオ・ドラゴン》が丸い隕石のような身体から亀のように僅かに顔を覗かせる。

 

《メテオ・ドラゴン》

星6 地属性 ドラゴン族

攻1800 守2000

 

「次に俺は魔法カード《マジック・プランター》で永続罠《連撃の帝王》を墓地に送って2枚ドローするぜ!」

 

 泥の沼に沈む《連撃の帝王》を余所に城之内は更に手札を補充すべく舵を切る。

 

「3枚目の《馬の骨の対価》を発動して《メテオ・ドラゴン》を墓地に送り2枚ドロー!」

 

 その城之内の声に首を引っ込めさせた《メテオ・ドラゴン》は隕石に翼の生えたような状態で城之内の手札を潤すべく飛び立った。

 

「魔法カード《闇の量産工場》を発動! 墓地の通常モンスター《メテオ・ドラゴン》と《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の2枚を手札に!」

 

 城之内の背後から半透明な2体の竜が手札に舞い戻る。これにて準備は整った。

 

 だが城之内は眉にシワを寄せ、エスパー絽場のフィールドの2枚のカードを凝視する――相手のセットカードが気になるようだ。

 

――サイコ・ショッカーがいるから罠カードじゃねぇとは思うが……念には念をだ!

 

「俺は手札の《メテオ・ドラゴン》を捨てることで装備魔法《やりすぎた埋葬》を発動するぜ! コイツの効果はお前も知っての通りだ!」

 

 墓地から《メテオ・ドラゴン》に乗って現れるのは――

 

「これで《メテオ・ドラゴン》のレベル6より下のレベルのモンスターを復活させるぜ 蘇れ! レベル4! 孤高の牙! 《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》!!」

 

 《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》が緑のマントを棚引かせる。その後《メテオ・ドラゴン》から飛び降り、音もなく着地した。

 

《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》

星4 地属性 獣戦士族

攻2000 守1600

 

「お次はコイツだ! 2枚目の魔法カード《蛮族の狂宴LV(レベル)5》を発動! 墓地のレベル5の戦士たちを2体まで特殊召喚だ!! 《バーバリアン1号》! 《バーバリアン2号》!!」

 

 再び現れる《バーバリアン1号》と《バーバリアン2号》。

 

 そして先程見た顔である《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》の背中をバシバシ叩き、再会を喜んでいた。

 

 城之内のデッキの先輩?の激励に《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》がどこか困った顔に見えるのは気のせいなのか。

 

《バーバリアン1号》

星5 地属性 戦士族

攻1550 守1800

 

《バーバリアン2号》

星5 地属性 戦士族

攻1800 守1500

 

「そして! 《バーバリアン1号》と《バーバリアン2号》をリリースして再びアドバンス召喚!! 何度でも燃え上がれ!! 《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》!!」

 

 後輩に激励を入れたその後、《バーバリアン1号》と《バーバリアン2号》は互いの棍棒を打ち合わせ火花を散らし、やがてその身を炎と化す。

 

 その炎から1ターン目のように再び飛び立つのは《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の姿。

 

 眼下に映る《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》を眺める《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》が「デジャヴ?」と疑問に思うように首を傾げていた。

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)

星7 闇属性 ドラゴン族

攻2400 守2000

 

「2体のリリースでアドバンス召喚したことで永続魔法《冥界の宝札》の効果で2枚ドロー!!」

 

 さらに手札を補充した城之内はその目を見開く――友から託されたカードを引いたゆえに。

 

「行くぜ! 本田とトレードしたカードだ!! だがその前に2枚目の《闇の量産工場》を発動! 墓地の通常モンスター《メテオ・ドラゴン》と《アックス・レイダー》の2枚を手札に戻す!」

 

 翼を広げる《メテオ・ドラゴン》の丸い身体の上で腕を組み佇む《アックス・レイダー》。

 

 その2体はやがて城之内の手札に戻っていくが――

 

「そして! コイツが本田が俺に託してくれた力だ! フィールド魔法《融合再生機構》を発動!!」

 

 フィールドに廃材が積まれた工場らしき建物が現れ、その煙突から光が零れる。

 

 本田が実家の工場を思い出すと言っていたカードだ。そして融合を多用する本田のデッキとも相性は良い。

 

「コイツの効果で俺は1ターンに1度だけ、手札を1枚捨てて、俺のデッキ・墓地から《融合》のカードを1枚手札に加えるぜ!!」

 

 《メテオ・ドラゴン》から振り落とされる《アックス・レイダー》。

 

 そしてその工場に愛用の斧を放り込むと、《融合》のカードが現れた。そのカードを城之内に《アックス・レイダー》は投げ渡す。

 

「そんでもって! 魔法カード《融合》を発動! 手札の《メテオ・ドラゴン》とフィールドのレッドアイズを融合だ!」

 

 《メテオ・ドラゴン》が《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の身体に溶け込むように消えていく。

 

 やがて《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の流線形の身体が脈動し、強靭になっていき――

 

「融合召喚!! 流星竜!! 《メテオ・ブラック・ドラゴン》!!」

 

 全身が力強いフォルムとなって、その剛腕を左右に広げ、眼下のモンスターたちを威圧するかのように咆哮を上げる《メテオ・ブラック・ドラゴン》。

 

《メテオ・ブラック・ドラゴン》

星8 炎属性 ドラゴン族

攻3500 守2000

 

「バトルだ!」

 

 城之内はエスパー絽場の2枚のセットカードを気にしつつも、果敢に攻めていく。

 

「パンサーウォリアーはモンスターをリリースしなけりゃ攻撃できないが、今は装備魔法《やりすぎた埋葬》のお陰でその効果は無効化されてるぜ!」

 

 《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》は剣を横なぎに構えながら自身の身体に起こる異変に歓喜する――己が力の制限が解放されていることに。

 

「パンサーウォリアーで《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》を攻撃だ! 黒・豹・疾・風・斬!!」

 

 ゆえにその獣の脚力を駆使した高速移動により《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》との距離を瞬時にして0にした《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》は剣を振りかぶる。

 

 この戦闘で発生するダメージは400ポイント。

 

 エスパー絽場の残り400のライフをピッタリ削り切れる。

 

 その事実にエスパー絽場は苦悶の表情を浮かべた。しかしそれは敗北の危機ではなく、思惑が外れたゆえだ。

 

――くっ、コイツを返り討ちにしても、奴にはまだ《メテオ・ブラック・ドラゴン》の攻撃が残る……やむをえない!!

 

 エスパー絽場のセットカードの1枚はモンスター1体を強化するカード。今使用してもその効果は十全に発揮できない。

 

 ゆえにエスパー絽場はもう1枚のセットカードを発動する。

 

「ならボクは速攻魔法《皆既日蝕(かいきにっしょく)の書》を発動! フィールドの全てのモンスターを裏側守備表示にする!!」

 

 太陽の光が隠れていくにつれ身体の力が抜けたのかフィールドの全てモンスターが項垂れた様子で裏側守備表示になっていく。

 

 そんなモンスターたちをトークンゆえに裏側守備表示にならない青い『羊トークン』が静かに見ていた。

 

「くっそー! 躱されちまったかー! 俺はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

 その城之内の宣言の後、《融合再生機構》の工場の煙突から汽笛のように煙が噴出する。

 

「融合召喚したエンドフェイズ時に俺のフィールド魔法《融合再生機構》の効果が発動するぜ!! 俺の墓地の融合素材モンスター1体を手札に加える!」

 

 その煙は竜の形を型取っていき――

 

「俺は《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を手札に戻す!」

 

 《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》となって城之内の手札へと舞い戻った。

 

 その《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》が飛び立った後から太陽の光が差し込んでいく。

 

「そのエンド時にボクも速攻魔法《皆既日蝕(かいきにっしょく)の書》のもう一つの効果だ……君のフィールドの裏側守備表示のモンスターを全て表側表示にする」

 

 その太陽の光と共に裏側守備表示の《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》が盾を構えながら鎮座し、《メテオ・ブラック・ドラゴン》がその剛腕を交差させ、城之内を守るべく立ち塞がる。

 

「……さらに表側守備表示にしたモンスターの数だけ……君は、ドローする……」

 

「おっ! つまり2枚のドローか! やったぜ!」

 

 さらにその光は城之内の手札を潤した。

 

 

 シーソーゲームの様に互いのモンスターは展開されていくが、エスパー絽場は拳を握りしめる。

 

 エスパー絽場は理解していた――追い詰められているのは自分なのだと。

 

 しかし納得できるかは別の話だ。

 

――ボクが追い詰められているだって!? こんな弱そうな奴に!!

 

 ゆえにそう内心で苛立ちを見せるエスパー絽場。

 

「こんな大したことなさそうな奴にッ……!! ボクのターン! ドロー!!」

 

 弱者と思っていた相手に良いようにされている現実をキチンと受け止めきれないエスパー絽場が怒りと共にドローしたカードは決して悪くない。

 

 そのため、エスパー絽場は攻めの姿勢を崩さない。

 

「ボクは4体のモンスター全てを反転召喚し! 攻撃表示に!! そして《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》の効果で自身以外をパワーアップ!!」

 

 オレンジの身体で跳躍し、周囲に紫電を放ち力を与える《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》。

 

A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》

星4 闇属性 機械族

攻1700 守 0

 

 その力にブーストを吹かせる《A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》。

 

A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》

星5 闇属性 機械族

攻2200 守1000

攻2700

 

 赤いモノアイをより光らせながら《A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》は大空を舞い、

 

A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》

星6 闇属性 機械族

攻2300 守1200

攻2800

 

 《人造人間-サイコ・ショッカー》は身体から溢れる力に赤いスコープをギラつかせる。

 

《人造人間-サイコ・ショッカー》

星6 闇属性 機械族

攻2400 守1500

攻2900

 

「ボクは負けない! 負けちゃダメなんだ!! バトルフェイズ!! やれ! 《A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》! 守備表示の《メテオ・ブラック・ドラゴン》に攻撃!!」

 

 《A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》は再び己を砲弾と化す勢いでブーストを吹かせ、《メテオ・ブラック・ドラゴン》目掛けて突進を敢行する。

 

「そうは行くかよ! 速攻魔法《禁じられた聖杯》を発動!!」

 

 しかしその《A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》の隣を黄金に輝く聖杯が投げられていた。

 

「コイツの効果でフィールドのモンスター1体! サイコ・ショッカーの攻撃力を400アップさせる代わりにその効果を封じるぜ!!」

 

 その《禁じられた聖杯》は《人造人間-サイコ・ショッカー》の頭に命中し、その中身をぶちまける。

 

 その聖杯の力を得た《人造人間-サイコ・ショッカー》は漲る力に腕を突き上げテンションの上がった声を上げるが、同時にその聖杯の浄化の力により、その能力の一部が制限された。

 

《人造人間-サイコ・ショッカー》

攻2900 → 攻3300

 

 これにより《人造人間-サイコ・ショッカー》の「罠カード」を封じる効果は一時的に封じられる。

 

「ま、まさか!!」

 

 その意図するところを見抜けぬエスパー絽場ではない。そしてそんなエスパー絽場の姿に返答代わりに城之内はニヤリと笑う。

 

「そうよ! これでトラップが発動できるぜ! リバーストラップオープン! 罠カード《ダブルマジックアームバインド》を発動!!」

 

 城之内のフィールドに出現したのは蛇腹のような伸び縮みする機構の先にシンバルのような挟み込む部分が付いたマジックアームが2つ。

 

「コイツは俺のモンスター2体をリリースすることで! 相手のモンスター2体のコントロールを俺のエンドフェイズまで得る!!」

 

「――しまった!?」

 

 エスパー絽場は己の不利を悟るも、手札の温存を選択する――次の相手のターンを凌げばモンスターのコントロールは戻るのだと。

 

「俺は『羊トークン』とパンサーウォリアーをリリース!!」

 

 その2つは《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》と『羊トークン』に手渡され――

 

「テメェのフィールドの《A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》と《人造人間-サイコ・ショッカー》を頂くぜ!!」

 

 その2本のマジックアームはエスパー絽場の空へと逃げる《A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》と腕を回しつつ、上体を逸らしながら《人造人間-サイコ・ショッカー》は回避しようとするが――

 

 互いに足を掴まれ、引き摺られるながら城之内のフィールドに引っ張られた。

 

 そして《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》の強化から外れたゆえにアップしていた攻撃力も元に戻る。

 

A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》

攻2800 → 攻2300

 

《人造人間-サイコ・ショッカー》

攻3300 → 攻2800

 

「ボクのサイコ・ショッカーが!?」

 

 そのエスパー絽場の驚愕の面持ちに『羊トークン』は満足気な顔で消えていった。《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》もスゴスゴとその後に続くように消える。

 

「くっ! だが《メテオ・ブラック・ドラゴン》には消えて貰う!!」

 

 《A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》の突進を無理に受け止めた《メテオ・ブラック・ドラゴン》は身体に大穴を開け、無念そうに力尽きる。

 

「ボ、ボクはバトルを終了して、カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 己のエースを失い狼狽する今のエスパー絽場の最後の頼みの綱は2枚のセットカードのみ。

 

 そして前のターンのエスパー絽場の《皆既日蝕(かいきにっしょく)の書》の効果による追加ドローで城之内の手札はかなり潤っている。エスパー絽場にとってマズイ状況だ。

 

「そのエンドフェイズに《禁じられた聖杯》の効果が切れて効果と攻撃力が元に戻るぜ!」

 

 先程までフィーバーしていた《人造人間-サイコ・ショッカー》も今は鳴りを潜め。大人しく城之内のフィールドで腕を組む《人造人間-サイコ・ショッカー》。

 

《人造人間-サイコ・ショッカー》

攻2800 → 攻2400

 

 

 当然デュエルの流れが自身の方へ大きく傾いていることを感じ取った城之内は勢いよくデッキに手をかける。

 

「よっしゃぁ! このまま押し切るぜ! 俺のターン! ドロー!」

 

 だが城之内には気がかりがあった。それはエスパー絽場の2ターン目からずっと伏せられたままのセットカードの存在。

 

「俺は魔法カード《ギャラクシー・サイクロン》を発動! コイツでフィールドにセットされたカードを破壊する! ――オレは前のターンに伏せたカード『じゃない方』を破壊するぜ!」

 

 ゆえに気がかりを潰すべく城之内の指示の元で白い渦がエスパー絽場のセットカードに襲い掛かった。

 

「ただではやらせない! その効果にチェーンして速攻魔法《イージーチューニング》を発動だ! その効果でボクの墓地の『チューナー』1体をゲームから除外して、その攻撃力分だけフィールドのモンスター1体の攻撃力をアップさせる!!」

 

 しかしその白い渦を躱す様にエスパー絽場はセットカードを発動させた。

 

「ボクは墓地の『チューナー』《A(アーリー)・マインド》を除外! そしてフィールドの《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》をパワーアップ!!」

 

 《A(アーリー)・マインド》からコードが伸びていき《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》に繋がれ、パワーが送られる

 

A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》

攻1700 → 攻3500

 

 これで今の城之内のフィールドのモンスターではエスパー絽場のモンスターを戦闘破壊することは出来ない。

 

「なんだ《我が身を盾に》みてぇモンスターを守るカードじゃねぇのか――なら!」

 

 しかし城之内は始めから戦闘破壊など狙っていなかった。

 

「魔法カード《戦士の生還》を発動! 俺は墓地の戦士族――《ギルフォード・ザ・ライトニング》を手札に戻すぜ!!」

 

 城之内の手札に舞い戻る《ギルフォード・ザ・ライトニング》の姿にエスパー絽場の中に嫌な予感が生まれる。

 

「そして俺はライフを1000払って、魔法カード《簡易融合(インスタントフュージョン)》を発動!」

 

城之内LP:3900 → 2900

 

 それは城之内のフィールドに現れたカップ麺を見て確信に変わる。

 

「エクストラデッキからレベル5以下の融合モンスター1体を融合召喚扱いで特殊召喚するぜ! 来いっ! 俺の相棒! 《炎の剣士》!!」

 

 城之内と共に長らく歩んできた《炎の剣士》が大剣に炎を纏わせながら大剣を構える。

 

 その後、城之内の方へ振り返り、軽く首を縦に振る――いつでもOKだと示す様に。

 

 その《炎の剣士》の動きに追従するように《人造人間-サイコ・ショッカー》も城之内に向けて親指を立てる。

 

《炎の剣士》

星5 炎属性 戦士族

攻1800 守1600

 

 城之内のフィールドにモンスターが3体! 来るぞ! エスパー絽場!!

 

「これで俺のモンスターは3体! この意味、分かるよな!!」

 

「そ、そんな……」

 

 エスパー絽場の顔に絶望が垣間見え始める。

 

「俺は! 《A(アーリー)O(オブ)J(ジャスティス)クラウソラス》と《人造人間-サイコ・ショッカー》! そして《炎の剣士》の『3体』をリリースしてアドバンス召喚!!」

 

 城之内のフィールドに再びイナズマが唸りを上げる。

 

「再びその真の力を振るえ!! 《ギルフォード・ザ・ライトニング》!!」

 

 そしてフィールドにイナズマが落ちると共に舞い戻るのはイナズマの戦士、《ギルフォード・ザ・ライトニング》。

 

 その大剣に纏われた雷の力は1度目よりも滾って見えるのは気のせいではない。

 

《ギルフォード・ザ・ライトニング》

星8 光属性 戦士族

攻2800 守1400

 

「そして3体のリリースでアドバンス召喚された《ギルフォード・ザ・ライトニング》の効果だ!!」

 

 その《ギルフォード・ザ・ライトニング》の大剣に秘められた力が再び――

 

「絽場! お前のモンスターを全て破壊するぜ!! 何度でも轟けっ!! ライトニング・サンダー!!」

 

 解放される。

 

 破壊の奔流となって迫るイカヅチの奔流にただの力(攻撃力)は意味をなさない。

 

 その奔流に成す術なく消し飛ばされた《A(アーリー)・ジェネクス・パワーコール》と《A(アーリー)・ジェネクス・リバイバー》は断末魔代わりの音を出す間もなく散っていった。

 

「ボクのモンスターが……また全滅……」

 

「2体以上のリリースでアドバンス召喚したことで、永続魔法《冥界の宝札》で2枚ドロー!」 

 

 呆然と呟くエスパー絽場を余所に城之内はデッキから新たにカードをドローする。

 

 しかしエスパー絽場は自身の最後のセットカードをしっかりと見据えると、まだ終わってはいないと己の精神を震い立たせる。

 

「まだまだぁ! フィールド魔法《融合再生機構》の効果を使い、手札を1枚捨てて墓地の《融合》を回収!!」

 

 再び《融合再生機構》から送られる《融合》のカード。同封された写真には《アックス・レイダー》が良い汗をかいて働く姿が写っていた。

 

「そんでもってもういっちょ《融合》を発動だ!! 俺は手札のレッドアイズと――」

 

 《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》に今、新たな力が宿る。

 

「融合素材の代わりになれる《心眼の女神》を融合!!」

 

 それは静香に託されたカードによって発揮できるようになった力。

 

――見てるか静香! お前のお陰で俺はまた一つ強くなれたぜ!!

 

 そう城之内はここにはいない静香に誇るように心で声を上げつつ胸を張る。

 

 

 空に浮かぶ《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の全身が《心眼の女神》が呼び寄せた白い骨で覆われていく。

 

「融合召喚!! 悪魔竜!! 《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》!!」

 

 やがてフィールドを見下ろすように翼を広げる黒竜の姿は強靭な骨格によって力を増し、手足は大きく強靭な爪で覆われ、その頭には悪魔の如き巨大な角が左右に伸びる。

 

 そして地の底から響くような声と共に新たな姿、《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》としてフィールドに降り立った。

 

《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》

星9 闇属性 ドラゴン族

攻3200 守2500

 

「バトルだ!! 《ギルフォード・ザ・ライトニング》でダイレクトアタック!! ライトニング・クラッシュ・ソード!!」

 

 《ギルフォード・ザ・ライトニング》が大剣を構え、エスパー絽場に迫る。しかし城之内はこの攻撃が通るとは思っていなかった。

 

「さぁ! そのリバースカードで防いでみな!!」

 

 それは最後のエスパー絽場のセットカードの存在ゆえだ。

 

「なっ!? 何故それを!?」

 

「その反応だと当たりか!」

 

 思わず驚いたエスパー絽場に城之内は「やはり」と鼻をこする。

 

「くっ! ハッタリか!!」

 

「おうよ! 殆ど『勘』みてぇなもんだ!!」

 

 悔しがるエスパー絽場の言葉に城之内は自信満々に返すが、城之内とて判断材料が0だった訳ではない。

 

「俺の《ギルフォード・ザ・ライトニング》の効果でモンスターが全滅したってのに、お前には余裕があった! そんでもって自分の最後のセットカードを見てたからな!」

 

 城之内に確信はなかった。

 

「『なんとなく』そうかもしれねぇと思っただけだ!!」

 

 ゆえに城之内としては殆ど「勘」のようなものだ。

 

 だがまるでイカサマをしていた自分のようにカードを見抜いた城之内の姿にエスパー絽場は内心で思う。

 

――コイツ……決闘者の王国(デュエリストキングダム)の時とは全然違うじゃないか!!

 

 エスパー絽場の知る城之内のデュエルは言い方が悪いがもっと「雑」であった。にも関わらず「今の実力は何だ」と思わざるを得ない。

 

「くっ! 速攻魔法《月の書》を発動!! 《ギルフォード・ザ・ライトニング》を裏守備表示に!!」

 

 既にエスパー絽場の敗北は決まっている。しかし僅かに残ったデュエリストとしての矜持がエスパー絽場に最後まで足掻く選択を取らせた。

 

 月の魔力を受け、跪き裏守備表示になる《ギルフォード・ザ・ライトニング》。

 

 

 しかしエスパー絽場への道は開けた。

 

「だがコイツの攻撃は防げねぇだろ!! 《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》でダイレクトアタック!! メテオ・フレア!!」

 

 《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》の口から巨大な火の玉が形成されていき、全てを焼き尽くさんが勢いでエスパー絽場に向けて地獄の業火を宿したブレスが放たれた。

 

「ぐぁああああああああ!!」

 

エスパー絽場LP:400 → 0

 

 






デーモンの召喚「レッドアイズ!! 今こそ俺たちの結束の力を見せてやろうぜ!!」

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)「おうよ! 俺たちの友情パワーは最強だ!!」

心眼の女神「魔法カード《悪魔払い》発動」

ブラック・デーモンズ・ドラゴン「《デーモンの召喚》? アイツは良い奴だったよ……」



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