マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
グレート・モス「想像していたのとは違いましたが――出番ゲットォ!!」

なお、しめやかに爆散した模様




第94話 エルフなんていなかった

 

 

 先攻は月行。海馬の真意を確かめるべくカードを切る。

 

「私の先攻、ドロー。まずは魔法カード《手札抹殺》を発動します。互いに手札を全て捨て、捨てた枚数分ドロー」

 

 いきなりの手札交換カードだが、その月行の瞳に動揺は見られない――誰かさんとは違うのだ。

 

「そして私はカードを3枚セットし、フィールド魔法をセット」

 

 そのまま月行のデュエルは静かな立ち上がりを見せていく。

 

「さらに魔法カード《命削りの宝札》を発動し、手札が3枚になるようにドロー。そしてモンスターを伏せ、更にカードを2枚セットしてターンエンドです」

 

 ギロチンの刃が月行の引いたカードに狙いを定めるが、こういう場合は――

 

「このエンド時に《命削りの宝札》のデメリットにより手札を全て捨てますが、今の私の手札は0です」

 

 大抵、空を切る――ギロチンの刃が日の目を見ることはあるのだろうか。

 

 

 そんな展開らしい展開をしなかった月行の酷く静かなターンに海馬は挑発気に鼻を鳴らす。

 

「ふぅん、どうした守りを固めるだけか? 『パーフェクトデュエリスト』と呼ばれた実力を見せて欲しいものだな――俺のターン! ドロー!」

 

 海馬は月行のような様子見などといった消極的な手は好まない。

 

「自分フィールドにモンスターがいない時! 魔法カード《予想 GUY(ガイ)》を発動! デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚! 来いっ! 《アレキサンドライドラゴン》」

 

 光を反射し、仄かに青く光るアレキサンドライトの鱗を持ったドラゴンがその腕と共に翼を広げ、2足で海馬のフィールドに降り立つ。

 

《アレキサンドライドラゴン》

星4 光属性 ドラゴン族

攻2000 守 100

 

「次に、魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札のモンスターを1体墓地に送り、デッキからレベル1のモンスター1体を呼び寄せる!!」

 

 お馴染みの《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の白い石のような卵が転がり、淡く光を放つ。

 

伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)

星1 光属性 ドラゴン族

攻 300 守 250

 

「ここで魔法カード《ドラゴニック・タクティクス》を使わせて貰うぞ!!」

 

 《アレキサンドライドラゴン》と《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》から漏れ出た光が空へと収束していき2本の光の柱を生む。

 

「俺のフィールドのドラゴン族モンスター2体をリリースし、デッキからレベル8のドラゴン族モンスターを特殊召喚する!!」

 

 その光の柱はやがて交わり、天に太陽の如き巨大な光の球体となり――

 

「《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》と《アレキサンドライドラゴン》をリリース!!」

 

「来ますか、海馬 瀬人の代名詞たるあのカードが!」

 

「フハハハハハッ! 降臨せよ! ブルーアイズ! ホワイトォ! ドラゴンッ!!」

 

 白き竜が光の球体を打ち破るかのように全身を広げ、天を裂くかの咆哮を上げた。

 

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)

星8 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「さらに墓地に送られた《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》の効果でデッキから《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》を手札に!!」

 

 光の柱へと消えた《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》から更なる白き竜が海馬の手札へと羽ばたき、

 

「《正義の味方 カイバーマン》を通常召喚!!」

 

 橙の長髪を揺らす《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》を模したマスクを付けた、海馬とよく似た出で立ちの男が高笑いと共に現れる。

 

《正義の味方 カイバーマン》

星3 光属性 戦士族

攻 200 守 700

 

「そして《正義の味方 カイバーマン》の効果発動! 自身をリリースして手札の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》を特殊召喚する!!」

 

 その《正義の味方 カイバーマン》は天に拳を突き上げ、その身体が光を放つ。

 

「並び立て!! 《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》!!」

 

 その光が消えた後にあるのは2体目の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》が低空で羽ばたき、周囲に突風を起こしていた。

 

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)

星8 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「バトルだ!! ブルーアイズよ! そのセットモンスターを焼き払え!! 滅びのバースト・ストリィイイイイムッ!!」

 

 1体目の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》から放たれた白き暴虐のブレスが月行のセットモンスターを直撃。

 

 それゆえに表側になったセットモンスターは青みがかった色合いの壺。その中から除く一つ目と歯を見せて笑うのが特徴な《メタモルポット》。

 

《メタモルポット》

星2 地属性 岩石族

攻 700 守 600

 

 だが破壊の奔流に呑まれ断末魔らしき声と共に壺が中身ごと消し飛んだ。

 

「《メタモルポット》のリバース効果を発動します――互いは手札を全て捨て、その後5枚のカードをドローします」

 

 バラバラに吹き飛んだ壺のかけらが互いの手札に降り注ぎ、手札を増強していく。

 

「その5枚の伏せカードは飾りか? このまま何もせんと言うのなら、そのまま消し飛ぶがいい!! 2体目のブルーアイズでダイレクトアタックだッ!!」

 

 そんな失望を込めた海馬の言葉と共に2体目の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》から月行に向けて滅びのブレスが放たれる。

 

「その攻撃を通す訳にはいきませんね――罠カード《カウンター・ゲート》を発動! 相手のダイレクトアタックを防ぎ、私はデッキからカードを1枚ドロー!」

 

 その滅びのブレスを遮るように青い両開きの扉が盾として立ち塞がり、ブレスから月行を守り――

 

「そして、そのカードがモンスターだったとき、そのカードを通常召喚する!! 私が引いたのは――」

 

 その扉が音を立てて開く。

 

「《ヴァイロン・プリズム》!! モンスターカードです! そのまま召喚!!」

 

 キラキラと光と共に扉からゆっくりと現れたのは白く四角いボディに金の縁が散りばめられたどこか十字架を思わせる身体の機械のようなモンスター。

 

 その十字架のような身体の両端から黒い腕が生え、白と金の手甲で覆われる。

 

《ヴァイロン・プリズム》

星4 光属性 雷族

攻1500 守1500

 

「ふぅん、この程度は防いでくるか……俺のバトルは終了だ」

 

 そう挑発気に言いながら、月行のフィールドに召喚された小柄なモンスターを海馬は注意深く観察する――海馬にとって初見のカードだったようだ。

 

「そして俺はフィールドの《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》を2枚墓地に送ることで――」

 

 2体の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》が渦の中で混ざり合う様に、うねりながらその身を重ねていく。

 

「エクストラデッキから特殊召喚! 美麗なる双竜!! 《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》!!」

 

 混ざり合ったその姿はやがてハッキリとした輪郭を得ていき、2つ首の白き竜となる。

 

 その身体に奔る文様が淡く発光し、2つ首から上がる雄叫びは空間そのものを震わせた。

 

青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)

星10 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「更に俺は魔法カード《闇の量産工場》を発動。墓地の通常モンスター2体、《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》2体を手札に戻す」

 

 海馬の手札へと墓地から飛び立つ半透明となった《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》。

 

 しかし海馬の手札に再び《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》が補充されたが、これは新たな展開の為ではなく――

 

「ここで魔法カード《手札抹殺》を発動。互いに手札を全て捨て、同じ数だけドロー!」

 

 手札をより充実させる為のものだ。

 

「この瞬間、墓地に送られた《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》の効果で、デッキから最後の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》を手札に加える!」

 

 再び《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》の淡い輝きが、新たな《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》を海馬の手元へ呼び寄せる。

 

「そして! 墓地の《A-アサルト・コア》! 《B-バスター・ドレイク》! 《C-クラッシュ・ワイバーン》の3体を除外して融合召喚!!」

 

 黄色い装甲のサソリ型のロボ《A-アサルト・コア》が脚部となるべくその尾を上に掲げ、

 

 紫色の装甲のプテラノドンを思わせるロボ《C-クラッシュ・ワイバーン》の頭がその《A-アサルト・コア》の尾に取り付き、

 

 そのまま《C-クラッシュ・ワイバーン》の翼が背面へと移動し、翼の付け根からミサイルタンクが顔を覗かせる

 

 緑の装甲を持つティラノサウルスのようなロボ《B-バスター・ドレイク》の身体がバラけ、頭が《A-アサルト・コア》の尾に取り付き、

 

 《B-バスター・ドレイク》の背中の2つのキャノン砲が《B-バスター・ドレイク》《C-クラッシュ・ワイバーン》の頭の隣に装着された。

 

「変形合体!! 《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》!!」

 

 音を立てて組み上がった《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の姿は2つの頭を持ち、翼が生え、先がキャタピラとなった尾が伸びた姿。

 

 ドラゴンの名を持つが、その様相はまさにキメラである。

 

ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》

星8 光属性 機械族

攻3000 守2800

 

「《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の効果発動! 1ターンに1度! 手札を1枚捨てることで相手のカード1枚を除外する!! そのセットされたフィールド魔法を除外だ!!」

 

 《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の2つの竜の形の頭が火を吐き、月行のセットされたフィールド魔法を焼き尽くさんと迫るが――

 

「させません! 私は手札の《エフェクト・ヴェーラー》を相手のメインフェイズに捨てることで、相手モンスター1体の効果をこのターンの終わりまで無効にします!!」

 

 水色のツインテールを伸ばす白の法衣を纏った魔法使いがその背から伸びる半透明な翼で《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》を包んでいく。

 

 すると《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の機能は一時的に止まり、力を失う様にその2つの首は力なく下がった。

 

「くっ……俺はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ……」

 

 

 月行の覇気が感じられぬ姿に、違和感が強まる海馬――「パーフェクトデュエリスト」と呼ばれていた筈の月行の姿が海馬にはどこか遠くに感じさせられていた。

 

 

 そんな海馬の認識を余所に月行は静かにデッキに手をかける。

 

 

「私のターン、ドロー。まずは《ヴァイロン・チャージャー》を通常召喚」

 

 ふわりと宙に漂うのは白い柱に腕が生えたようなモンスター。その柱の頂上には扇上の頭部が見て取れ、更に柱のような身体の周りには金のリングが5つ回っている。

 

《ヴァイロン・チャージャー》

星4 光属性 天使族

攻1000 守1000

 

「そして墓地の罠カード《ブレイクスルー・スキル》を除外して効果を発動! 相手フィールドのモンスター1体の効果を無効化します! 《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の効果を無効に!」

 

 《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の足元が崩れ、余計な動きが出来ないようにされかけるが、海馬はさらにその先を行く。

 

「除外効果を嫌ったか! だが甘い! 《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の効果は相手ターンでも発動できる! その効果にチェーンして発動! 手札を1枚捨て、相手のカード1枚を除外!」

 

 再び《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の2つの機械の竜の頭から炎が噴出さんと開く。

 

「雑魚に用は無い……そのセットされたフィールド魔法を今度こそ除外だ! 消えるがいい!」

 

 しかし、それらの動きに合わせカードが発動される。

 

「ならばリバースカードオープン! 罠カード《ゲットライド!》! 墓地のユニオンモンスターを自分フィールドの装備可能なモンスターに装備します!」

 

 異次元のゲートからスパークを放ちながら、黒い影が顔を覗かせる。

 

「更に《ゲットライド!》にチェーンして3枚のリバースカードオープン!! 罠カード《ゴブリンのやりくり上手》!」

 

 さらに己が計算力こそ一番と、競い合うようにそろばんを弾く3体のゴブリン。

 

「さらにチェーンして速攻魔法《非常食》をフィールドの《ゲットライド!》と3枚の《ゴブリンのやりくり上手》を墓地に送り、発動です!」

 

 3体のゴブリンのそれぞれの手には缶に入った乾パンのような《非常食》が握られている――一人のゴブリンが2つの缶を持っている為、揉めているようだ。

 

 

 ここで《非常食》によって魔法・罠が墓地に送られた為に開いた魔法・罠ゾーンに月行は新たにカードを発動させる。

 

「そして最後にチェーンして速攻魔法《禁じられた聖杯》を発動! 相手モンスターの攻撃力を400上げる代わりにモンスター効果を無効にします!」

 

 天より聖杯が《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の頭上に現れ、

 

「さぁ、海馬 瀬人……《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の分離効果を発動しますか?」

 

 月行の言う通り《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》には相手ターンに自身をリリースすることで、除外されている光属性・機械族のユニオンモンスター3体をフィールドに呼び戻すことが出来る。

 

 その為《禁じられた聖杯》の効果でモンスター効果を無効化される前に、フィールドを離れれば《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の効果は無効化されない。

 

 

「ふぅん、さっさとチェーンの逆順処理でも何でもするんだな……」

 

 しかし今や《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》が除外できるのはセットされた月行のフィールド魔法1枚。

 

 ゆえにこのタイミングで《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》を分離した場合に自身のフィールドに低ステータスのモンスターが並ぶ事実を鑑みた海馬は、分離効果を使わない選択を取る。

 

「なら、チェーンの逆順処理がなされます!!」

 

 その月行の言葉を皮切りに――

 

 まず速攻魔法《禁じられた聖杯》の効果により、天に浮かぶ聖杯から赤い雫が《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》に降り注ぐ。

 

 音を立てて機能の一部が止まる《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》だが、神の雫を受けたその身には新たな力が宿っている。

 

ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》

攻3000 → 3400

 

 そして速攻魔法《非常食》の効果で墓地に送った数×1000のライフ――4枚墓地に送った為、その回復量は4000。

 

 やがてゴブリンたちの手から《非常食》が飛び立ち、光の粒子となって月行のライフの糧となる。

 

月行LP:4000 → 8000

 

 次に罠カード《ゴブリンのやりくり上手》の効果で墓地の《ゴブリンのやりくり上手》の数+1枚ドローして手札を1枚戻すが、先の《非常食》の効果で3枚とも墓地に送られている。

 

 よって3人のゴブリンの必死の計算により算出されたドロー数は――

 

 4枚ドローして手札を1枚戻す効果を3度繰り返す――大量の手札が月行に舞い込んだ。

 

 最後に罠カード《ゲットライド!》の効果で――

 

「罠カード《ゲットライド!》の効果で墓地のユニオンモンスター《ヴァイロン・テセラクト》を《ヴァイロン・チャージャー》に装備!!」

 

 異次元から顔を覗かせた黒い影の正体である《ヴァイロン・テセラクト》がその黒い六角形の身体から金に輝く腕の先のかぎ爪を《ヴァイロン・チャージャー》へと伸ばす。

 

 そして《ヴァイロン・チャージャー》の柱状の身体の背面に装着された《ヴァイロン・テセラクト》。

 

「ふぅん、これで俺の《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》の攻撃力はブルーアイズをも超えた。それに引き換え、貴様は先程から低級モンスターばかり――少しは骨のあるカードを出してみたらどうだ?」

 

 大量に増えた月行の手札を眺めながら期待と挑発が入り混じった言葉を呟く海馬。

 

 そんな海馬の期待に応えるように月行はカードをデュエルディスクに力強く差し込んだ。

 

「ならお見せしますよ! 私のカードたちを! セットしておいたフィールド魔法《祝福の教会-リチューアル・チャーチ》を発動!」

 

 白一色の教会が月行の背後を彩っていく。

 

「その効果により、1ターンに1度! 墓地の魔法カードを任意の数デッキに戻し、戻した数と同じレベルの墓地の光属性・天使族モンスターを特殊召喚します」

 

 周囲に教会の鐘の音が響き――

 

「私は墓地の魔法カード《命削りの宝札》と《手札抹殺》、そして速攻魔法《非常食》の3枚をデッキに戻し――」

 

 そして3つの光が教会を照らし出し、モンスターのシルエットが月行の背後に映し出される。

 

「その数の合計は3! よってレベル3の光属性の天使族、《ヴァイロン・ステラ》を特殊召喚!!」

 

 そこから飛び出したのは星型を思わせる形をした白いモニュメント。その星型の先には金色の輪がそれぞれ浮かぶなか、その左右の先から2つの腕が伸びる。

 

《ヴァイロン・ステラ》

星3 光属性 天使族

攻1400 守 200

 

「まだまだ行きますよ! 魔法カード《トランスターン》を発動! モンスターを1体――《ヴァイロン・ステラ》を墓地に送り、そのカードと属性・種族が同じでレベルが1つ高いモンスターを1体デッキから特殊召喚します!」

 

 《ヴァイロン・ステラ》がクルクルと回転を始め、その姿を別のものへと転化させていき、新たに生まれたのは――

 

「現れろ! 《ヴァイロン・ソルジャー》!!」

 

 金色の頭を持つ白く細い身体が現れるもその身体に脚部はなく、

 

 身体から伸びる黒い腕は金色の大きな肩当てで覆われ、その黒い腕の先に延びる金色の装甲に覆われた巨大な腕を見せつけるように振るった。

 

 そして身体に取り付けられた宝玉が鈍く光る。

 

《ヴァイロン・ソルジャー》

星4 光属性 天使族

攻1700 守1000

 

「モンスターカードゾーン上から墓地へ送られた《ヴァイロン・ステラ》の効果を発動!」

 

 《ヴァイロン・ステラ》が何処からともなく現れ、再びその星型の身体をクルクルと回転させる。

 

「500ライフを払うことでこのカードを装備カードとし、自分フィールドのモンスターに装備します! 《ヴァイロン・ソルジャー》に装備!!」

 

 《ヴァイロン・ソルジャー》の身体の中心にコアの様に装着される《ヴァイロン・ステラ》。

 

月行LP:8000 → 7500

 

「ここで魔法カード《トラスト・マインド》を発動! 自分フィールドのレベル2以上のモンスター1体をリリースし、その半分以下のレベルを持つ墓地のチューナーを1体手札に戻します!」

 

 天から月行のフィールドを打ち抜くような光が放たれる。

 

「レベル4の《ヴァイロン・プリズム》をリリースし、墓地のレベル1の《エフェクト・ヴェーラー》を手札に!!」

 

 その先に打ち抜かれた《ヴァイロン・プリズム》の身体は溶けるように地面へと沈んで行き、その地面から《エフェクト・ヴェーラー》が透明な羽を広げ月行の手札に舞い戻った。

 

「ここで墓地に送られた《ヴァイロン・プリズム》の効果を発動! このカードもライフを500払うことで装備カードとなります!!」

 

 先程の地面から《ヴァイロン・プリズム》がスゥっと浮かび上がり――

 

月行LP:7500 → 7000

 

「《ヴァイロン・プリズム》を《ヴァイロン・チャージャー》に装備!!」

 

 柱のような《ヴァイロン・チャージャー》の前面に鎧の様に《ヴァイロン・プリズム》の十字架のようなボディが装着される。

 

「魔法カード《二重召喚(デュアルサモン)》を発動し、もう1度通常召喚を行います――《ヴァイロン・オーム》を召喚!」

 

 金色の盾でスケートボードのように宙を滑り、同じく金色の翼を広げる白いボディ、《ヴァイロン・オーム》が疾走する。

 

 その両腕はキャノン砲のように巨大であり、その掌にはチャージされた光が爛々と輝いていた。

 

《ヴァイロン・オーム》

星4 光属性 天使族

攻1500 守 200

 

「そして召喚に成功した《ヴァイロン・オーム》の効果! 私の墓地の装備魔法1枚を除外し、次のターンのスタンバイフェイズに手札に加えます――装備魔法《ヴァイロン・マテリアル》を除外」

 

 その両腕から放たれた光が先端に金細工が施された白い杖を異次元へと飛ばす。

 

「最後に『ヴァイロン』モンスターにのみ装備可能な装備魔法《ヴァイロン・マテリアル》を《ヴァイロン・チャージャー》に装備! それにより攻撃力が600アップ!」

 

 先程の杖と同じタイプのものが《ヴァイロン・チャージャー》の腕に収まり、所持者の力を高めていく。

 

《ヴァイロン・チャージャー》

攻1000 → 攻1600

 

「さらに《ヴァイロン・チャージャー》は自身に装備された装備魔法1枚につき私のフィールドの光属性モンスターの攻撃力を300アップさせます! 《ヴァイロン・チャージャー》に装備された装備魔法は――」

 

 《ヴァイロン・チャージャー》の瞳が点滅し、その内に眠る力を解放していく。

 

「装備魔法カード《ヴァイロン・マテリアル》に

装備カードとして扱うユニオンモンスター《ヴァイロン・テセラクト》!

自身の効果で装備カードとなった《ヴァイロン・プリズム》の3枚!」

 

 そして《ヴァイロン・チャージャー》に装備されたカードがそれぞれ光を放ち――

 

「よって私の光属性のモンスターの攻撃力は900ポイントアップ!!」

 

 やがて《ヴァイロン・チャージャー》の柱のような身体の脚部側の先端から光が灯り、月行のフィールド全体を照らしていく。

 

《ヴァイロン・チャージャー》

攻1600 → 攻2500

 

《ヴァイロン・ソルジャー》

攻1700 → 攻2600

 

《ヴァイロン・オーム》

攻1500 → 攻2400

 

 下級モンスターでしかなかった月行のサイボーグ天使たちの攻撃力はその枠組みに収まらぬ程に力が高まっている――これぞ月行のデュエルスタイル。

 

「バトルです!! 《ヴァイロン・ソルジャー》で《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》を攻撃!!」

 

 《ヴァイロン・ソルジャー》が巨大な肩当てを全面に押し出し、《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》に向けて突き進む。

 

「何を隠しているかは知らんが、返り討ちにしろ! ツインバースト!!」

 

 だが《ヴァイロン・ソルジャー》の攻撃力はパワーアップしたとはいえ2600――3000の攻撃力を持つ《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》には届かない。

 

 パーフェクトデュエリストとまで言われた月行の行動ゆえに海馬は何かあるとは思えど、カードに詳しい海馬ですら初見のカードの為、狙いが読み切れないようだ。

 

「それは無理な相談ですね! この瞬間! 《ヴァイロン・ソルジャー》の効果発動!」

 

 海馬の宣言に従い反撃のブレスを放とうとした《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》の動きが突如としてピタリと止まる。

 

「このカードが攻撃宣言した時! このカードに装備された装備カードの数まで相手モンスターの表示形式を変更できる! ツインバーストには守備表示になって貰いますよ!!」

 

 その原因は《ヴァイロン・ソルジャー》の身体に取り付けられた宝玉の光。その胸にある4つの宝玉の内、一つが爛々と光り輝く――それは己に装備されたカードの数。

 

「成程な……確かにツインバーストの守備力をお前のモンスターの攻撃力が上回っている……だが! ツインバーストは――」

 

 《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》の身体はその意に反して守備体勢を取らされ、《ヴァイロン・ソルジャー》のショルダータックルを受けて弾き飛ばされる。

 

 《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》の守備力は2500――《ヴァイロン・ソルジャー》の2600の攻撃力を下回っている為本来なら戦闘破壊される。

 

 だが《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》は――

 

 

 

「『戦闘では破壊されない』ですか?」

 

 

 

 海馬の言葉を引き継ぐように返された月行の言葉。

 

 

 そして海馬の眼前の《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》はその巨体を地に沈めて倒れ伏し、消えていく。

 

「なにっ!?」

 

「《ヴァイロン・ソルジャー》の装備カードとなっている《ヴァイロン・ステラ》の効果です」

 

 驚きを見せる海馬に月行は静かに語りだす。

 

「このカードを装備したモンスターとバトルしたモンスターをダメージステップ終了時に破壊します!」

 

 《ヴァイロン・ソルジャー》に装着された《ヴァイロン・ステラ》の天輪がキラリと光る。

 

「俺のツインバーストの効果を知っていたのか……」

 

「おかしなことを言いますね――私はI2社にてペガサス会長の夢をお手伝いさせていただく身……」

 

 海馬の呟きに月行は苦笑しつつ返す。

 

 I2社でペガサスと共に切磋琢磨する月行ならこの程度は――

 

「――その程度の知識などあって当然です。私には貴方が使うカードの傾向・戦略・戦術、その全てが手に取るように分かる」

 

 出来て当然だった。

 

 さらに月行の言う通り、I2社でカードを生み出す過程で求められるものは多い――あのペガサスとて画家としてのスキル以外も様々なスキルを高い水準で修めている。

 

 月行もペガサスに恥じぬよう、己の力を高め続けてきた。

 

 更にペガサスに送られた「パーフェクト」との評価を「完了」との意味に捉えてしまう程の足掻きに足掻けど抜けど抜け出せなかった停滞感を味わった日々が、月行に確かな糧となって活かされている。

 

「次です! 《ヴァイロン・チャージャー》で《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》を攻撃!!」

 

 《ヴァイロン・チャージャー》の手の中の杖、《ヴァイロン・マテリアル》からエネルギーが迸る。

 

「攻撃力が劣るにも関わらず――《ヴァイロン・プリズム》の効果か!」

 

「ご名答。貴方の予想通り装備カードとなった《ヴァイロン・プリズム》も秘められた効果を持ちます!」

 

 先程のバトルの影響ゆえに海馬の理解は早い。月行は言葉を続ける。

 

「装備モンスターがバトルする際に、その攻撃力をダメージステップの間、1000上げる効果が!」

 

 そして《ヴァイロン・チャージャー》の装甲となった《ヴァイロン・プリズム》からエネルギーが迸り、更なる力の奔流が生まれていく。

 

 やがて《ヴァイロン・チャージャー》は《ヴァイロン・プリズム》の効果を受け、一時的に攻撃力を3500まで上げ、そこから放たれたエネルギーの奔流が《ABC(エービーシー)-ドラゴン・バスター》を呑み込み破壊しつくしていった。

 

「チィッ!!」

 

海馬LP:4000 → 3900

 

 僅か100ポイントのダメージだが海馬にはそれ以上の屈辱感に襲われる。

 

 しかし月行の攻勢は此処からだった。

 

「更にこの瞬間! 《ヴァイロン・チャージャー》に装備されたユニオン《ヴァイロン・テセラクト》の効果を発動!」

 

 《ヴァイロン・チャージャー》の背後に静かに装着されていた《ヴァイロン・テセラクト》が起動する。

 

「《ヴァイロン・テセラクト》を装備したモンスターが相手モンスターを破壊した時、自身の墓地からレベル4以下の『ヴァイロン』モンスターを1体特殊召喚します!」

 

 《ヴァイロン・テセラクト》の細長い腕が地面へと溶け込み、新たな仲間を引っ張り出す。

 

「スタンドアップ! 《ヴァイロン・ヴァンガード》!」

 

 《ヴァイロン・テセラクト》に引っ張り上げられたのはどこか《ヴァイロン・ソルジャー》に似たモンスター。

 

 しかしその腕は《ヴァイロン・ソルジャー》の様な巨大さはなく、どこかフットワークの軽そうなボディだ。

 

 その《ヴァイロン・ヴァンガード》は《ヴァイロン・チャージャー》から発される力を受け、自身の力を高める。

 

《ヴァイロン・ヴァンガード》

星4 光属性 天使族

攻1400 守1000

攻2300

 

「《ヴァイロン・ヴァンガード》でダイレクトアタックです!!」

 

 腕を振りかぶり海馬へと迫る《ヴァイロン・ヴァンガード》。

 

「それは通さん! 永続罠《蘇りし魂》を発動! 俺の墓地の通常モンスター1体を守備表示で蘇生する! 舞い戻れ! 《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》!!」

 

 しかしその海馬を守るように《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》が飛び立ち、その翼を盾のように身構えた。

 

青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)

星8 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「さすがにすんなり通してはくれませんか……」

 

 そんな言葉を零しつつ《ヴァイロン・ヴァンガード》へ攻撃のキャンセルを命じる月行。

 

「ならバトルを終了し、カードを1枚伏せてターンエンドです」

 

 

 海馬の最上級の攻撃力を持ちつつ、厄介な効果を持つモンスターを苦も無く処理した月行。

 

 

 その事実に海馬はデュエリストとしての昂りを覚え、遊戯を打ち倒すべく己が力量を引き上げる絶好の獲物だと笑う。

 

 

「俺のターン! ドロー!!」

 

――感じるぞ! あのカードの脈動が!

 

 ドローしたカードは海馬が目にせずとも感じられる強大な力――そのカードが何たるかなど海馬には分かり切っていた。

 

 ゆえに準備に入る。

 

「まず墓地の魔法カード《ギャラクシー・サイクロン》を除外し、フィールドの表側の魔法・罠カードを破壊する! ユニオンモンスター《ヴァイロン・テセラクト》を破壊!!」

 

 白い銀河の大渦の引力が《ヴァイロン・チャージャー》に装備された《ヴァイロン・テセラクト》を引きはがし、その黒いボディは大渦に呑み込まれて行く。

 

 これでユニオンモンスター特有の身代わり効果はなくなった。

 

「次に魔法カード《アドバンスドロー》を発動! 俺のフィールドのレベル8以上のモンスター、ブルーアイズをリリースし、2枚ドロー!!」

 

 その身を光の粒子と変え、海馬の手札の新たな可能性へとバトンを繋ぐ《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》。

 

「魔法カード《マジック・プランター》を発動! 永続罠の《蘇りし魂》を墓地に送り、2枚ドローだ!!」

 

 海馬のフィールドの最後のカードが地面へと沈んでいき、これにて海馬のフィールドのカードはセットカードが1枚のみ――だがその手札は潤沢なまでに整えられた。

 

「2枚目の魔法カード《予想 GUY(ガイ)》を発動! 効果は貴様も知ってのとおりだ! 来いっ! 《 X(エックス)-ヘッド・キャノン》!」

 

 空になった海馬のモンスターゾーンに放電を奔らせながら現れた《X-ヘッド・キャノン》は、ヤル気を漲らせるように両肩のキャノン砲を構える。

 

《X-ヘッド・キャノン》

星4 光属性 機械族

攻1800 守1500

 

「そしてリバースカードオープン! 罠カード《スクランブル・ユニオン》! その効果により除外された光属性・機械族のユニオンモンスターを3体まで呼び戻す!」

 

 上空から異次元のゲートが開き――

 

「異次元の彼方より帰還せよ!! 《A-アサルト・コア》! 《B-バスター・ドレイク》! 《C-クラッシュ・ワイバーン》!!」

 

 そこから降り立つ黄色いサソリロボこと《A-アサルト・コア》が尾の先の砲台を振り上げ、

 

《A-アサルト・コア》

星4 光属性 機械族

攻1900 守 200

 

 脚部の発達した中型のドラゴン型のロボ《B-バスター・ドレイク》が背中のキャノン砲の照準を敵に向け、

 

《B-バスター・ドレイク》

星4 光属性 機械族

攻1500 守1800

 

 紫のプテラノドン型のロボこと《C-クラッシュ・ワイバーン》が翼を広げつつ、ミサイルポッドを構え、

 

《C-クラッシュ・ワイバーン》

星4 光属性 機械族

攻1200 守2000

 

 これにて贄が揃った。

 

 そして海馬は瞳を閉じる。

 

 

 このカードはバトルシティでは呼び出す機会に恵まれなかったカード。

 

 

 双六とのデュエルはあくまで《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》を示す一戦だった。

 

 レベッカとのデュエルはレベッカの実力があと一歩足りなかった。

 

 

――だが貴様ならば、潰れはしまい!

 

 その内心の雄叫びと共に力強く目を見開く海馬。

 

「貴様に神を見せてやろう!!」

 

 海馬は天へと腕を掲げ――

 

「《A-アサルト・コア》! 《B-バスター・ドレイク》! 《C-クラッシュ・ワイバーン》の3体のモンスターを生贄に(リリース)――」

 

 その指し示した先に3体のモンスターが光と消え、巨大な蒼き光の柱が海馬の背に降り立つ。

 

「極上の獲物だ! 存分に暴れるがいい!!」

 

 蒼き光の柱を吹き飛ばし、現れた三幻神が一角、蒼き破壊神。

 

「――『オベリスクの巨神兵』!!」

 

 その蒼き巨神の巨大さは全てのモンスターを見下ろし、絶対者としての威光を示すかのように地を揺らすような雄叫びを上げる。

 

『オベリスクの巨神兵』

星10 神属性 幻神獣族

攻4000 守4000

 

「これが……神……」

 

「嘆ずるがいい! 称えるがいい! 誇るがいい! 神の力を受けるに値する貴様の力を!!」

 

 月行の呟きに海馬は天へと届かんばかりの賛辞を贈る――『オベリスクの巨神兵』を使うに値すると。

 

 そして神の贄にされた3体のモンスターが墓地より、神にその身を捧げるかのようにその力を示す。

 

「ここで墓地に送られた《C-クラッシュ・ワイバーン》の効果で手札のユニオンモンスター、《Y-ドラゴン・ヘッド》を特殊召喚!!」

 

 紫色のプテラノドンのようなロボ、《C-クラッシュ・ワイバーン》が赤いドラゴンのようなロボ、《Y-ドラゴン・ヘッド》と並走するように飛び、海馬のフィールドへと案内し、

 

《Y-ドラゴン・ヘッド》

星4 光属性 機械族

攻1500 守1600

 

「更に同じく墓地に送られた《B-バスター・ドレイク》の効果でデッキからユニオンモンスター、《Z-メタル・キャタピラー》を手札に加え!!」

 

 緑の脚部が発達したドラゴン型のロボ、《B-バスター・ドレイク》が黄色いどこか蟹を思わせる戦車、《Z-メタル・キャタピラー》と並走し、海馬の手札へと導き、

 

「最後に墓地に送られた《A-アサルト・コア》の効果で自身以外の墓地のユニオンモンスター、《C-クラッシュ・ワイバーン》を手札に戻す!!」

 

 黄色いサソリ型のロボ、《A-アサルト・コア》の尾で投げ飛ばされた《C-クラッシュ・ワイバーン》も海馬の手札へと戻っていった。

 

「そして速攻魔法《魔力の泉》を発動! 貴様のフィールドの表側魔法・罠カードの数だけドローし、俺の表側魔法・罠のカードの数だけ手札を捨てる!」

 

 月行のフィールドには装備魔法が3枚とフィールド魔法が1枚。

 

 一方の海馬のフィールドは《魔力の泉》のみ、よって――

 

「よって4枚ドローし。手札を1枚捨てる!! これで次のターンの終わりまで貴様の魔法・罠カードは破壊されず、発動と効果を無効化されん……」

 

 手札を潤し、《Z-メタル・キャタピラー》を墓地に送る海馬はその程度の耐性などくれてやるとばかりにニヤリと笑う。

 

「だがこれでその事実も無意味となる! 『オベリスクの巨神兵』の効果を発動ォ! 2体の贄を捧げることで発揮される真の力を見るがいい!! ソウルエナジーMAX!!」

 

 《X-ヘッド・キャノン》と《Y-ドラゴン・ヘッド》が『オベリスクの巨神兵』の左右の手に中に収まり、神の更なる力となって神の拳を蒼く光り輝かせる。

 

「そして貴様のフィールドのモンスターを全て破壊! さらに4000ポイントのダメージを与える!! ゴッド・ハンド・インパクトォオオオ!!」

 

 『オベリスクの巨神兵』の破壊の拳が月行のフィールドの4体のサイボーグ天使たちに迫る。

 

「させません! その効果にチェーンして墓地の罠カード《ダメージ・ダイエット》を除外し効果発動! このターン私が受ける効果ダメージを半分にします!」

 

 だが月行は想定内とでも言わんばかりにカードを発動し、うっすらとバリアが神の力の前に現れ、

 

「さらにチェーンして、罠カード《力の集約》を発動! フィールドの全ての装備カードを選択したモンスターに装備させます!」

 

 《ヴァイロン・チャージャー》と《ヴァイロン・ソルジャー》がそれぞれ装備されたカードを振りかぶり、急ぎで他のモンスターに投げつける。

 

「私のフィールドの3枚の装備カードを《ヴァイロン・ヴァンガード》に装備!」

 

 その先にいたのは《ヴァイロン・ヴァンガード》――3枚の装備カードがその身体に装着されていく。

 

「無駄だ! 神の一撃は止めることなど出来ん!!」

 

 そしてこれで何も怖くないと、神の攻撃の前に飛び出す《ヴァイロン・ヴァンガード》だったが、神の一撃を止められる訳もなく、4体のヴァイロンたちと共に消し飛ばされた。

 

「ぐぅううッ!!」

 

 しかし《ダメージ・ダイエット》の効果によりその効果ダメージは半減される。

 

月行LP:7000 → 5000

 

 そのお陰か月行のライフには神の攻撃を受けきれるだけの余力、ライフが残る。

 

 さらに『オベリスクの巨神兵』の効果による一撃で焼け野原となった月行のフィールド。だが残ったものもあった。

 

「ですがカード効果で破壊された《ヴァイロン・ヴァンガード》の効果が発動します! それにより自身に装備されていた装備カードの数だけドローできる! 3枚のカードをドロー!」

 

 消し飛ばされた《ヴァイロン・ヴァンガード》の光の残滓が月行の手札を潤し、

 

「さらにフィールドから墓地に送られた装備魔法《ヴァイロン・マテリアル》の効果! デッキから『ヴァイロン』魔法カードを1枚手札に加えます――装備魔法《ヴァイロン・コンポーネント》を手札に!」

 

 『ヴァイロン』装備魔法特有のサーチ効果が、常に補給を途絶えさせない。

 

「ふぅん、手札を増やしたか……」

 

 月行の初期手札を優に超えた手札の多さに海馬は挑発気に笑う――神の一撃を前に、これだけの手を打てた月行の実力は海馬としても想定外に喜ばしいものだった。

 

「だがこれで邪魔はなくなった! バトル! オベリスクよ!! 奴に力とは何かを教えてやれェ!! ゴォッドォ! ハンドォ! クラッシャァアアア!!!」

 

 海馬の言葉に背を押され、『オベリスクの巨神兵』の拳がゆっくりと振り上げられる。

 

 しかし月行もただ座して神の一撃を眺めることなどしない。

 

「それはどうでしょうか――相手のダイレクトアタック時に私は墓地の《クリアクリボー》の効果を発動!」

 

 遊戯の窮地を何度も救ってきた「クリボー」たちの一人《クリアクリボー》がパカリと半分に分かれ、月行のフィールドに新たなモンスターを呼び寄せる。

 

「カードをドローし、それがモンスターだったとき! そのカードを特殊召喚してバトルさせます!」

 

「ふぅん! 何を呼ぼうとも『オベリスクの巨神兵』の餌食になるだけだ!」

 

 海馬の言う通り『オベリスクの巨神兵』の攻撃力は4000――召喚制限のないモンスターの中では比肩しうるものがいないレベルの数値だ。

 

「残念ですが、そうはいきません! 更に墓地の《超電磁タートル》の効果を発動! 墓地のこのカードを除外することでバトルフェイズを強制終了させます!」

 

 《超電磁タートル》が『オベリスクの巨神兵』の顔に飛来し、視界を奪われたゆえに振り上げられた拳は空を切る。

 

「これはあくまで『バトルフェイズ』に影響を及ぼすカード――ゆえに神と言えど止めることは出来ない!!」

 

「くっ! 神への対策カードか……」

 

 その後、鬱陶しそうに『オベリスクの巨神兵』は自身の顔に張り付いた《超電磁タートル》を引きはがし、握りつぶす。

 

「これで《クリアクリボー》の効果でモンスターを呼んでも問題はありません! 引いたカードはモンスターカード! 《ヴァイロン・ステラ》!!」

 

 2体目の《ヴァイロン・ステラ》が『オベリスクの巨神兵』を挑発するかのようにその星型のボディをクルクルと回す。

 

《ヴァイロン・ステラ》

星3 光属性 天使族

攻1400 守 200

 

「防いだか……ならば俺はバトルを終了し、永続魔法《前線基地》を発動! この効果で手札のユニオンモンスターを特殊召喚! 来いっ! 《C-クラッシュ・ワイバーン》!!」

 

 紫色のプテラノドン型のロボ、《C-クラッシュ・ワイバーン》が翼を丸め『オベリスクの巨神兵』にかしずくように頭を垂れる――守備表示で特殊召喚されたようだ。

 

《C-クラッシュ・ワイバーン》

星4 光属性 機械族

攻1200 守2000

 

「カードを2枚セットし、ターンエンドだ! さぁ、神の前に貴様はどう立ち向かう!!」

 

 

 神を超えてみろと言わんばかりの挑発気な海馬の言葉に月行は何も返さない。

 

 

 『オベリスクの巨神兵』の前であっても何も変わらずいつものようにデッキに手をかける。

 

 

「私のターン! ドロー!! このターンのスタンバイフェイズに《ヴァイロン・オーム》の効果で除外されていた装備魔法《ヴァイロン・マテリアル》を手札に加えます」

 

 天から『ヴァイロン』の杖、《ヴァイロン・マテリアル》が月行の元にゆっくりと降りていく。

 

「再び魔法カード《トランスターン》を発動! 《ヴァイロン・ステラ》を墓地に送り、属性と種族が同じでレベルが1つ高いモンスターを1体デッキから特殊召喚します!」

 

 《ヴァイロン・ステラ》が再びその身を高めていき、その身を更なる力への呼び水と化す。

 

「――来なさい! 《ヴァイロン・ハプト》!!」

 

 白い十字架を思わせるボディに金色の羽を背に、同じく左右の手に装備された金色の幅の広い手甲をかち合わせる《ヴァイロン・ハプト》が現れる。

 

《ヴァイロン・ハプト》

星4 光属性 天使族

攻1800 守 800

 

「墓地に送られた《ヴァイロン・ステラ》の効果でライフを500払い《ヴァイロン・ハプト》の装備カードに!」

 

 《ヴァイロン・ハプト》の右の手甲部分に装着された《ヴァイロン・ステラ》。

 

月行LP:5000 → 4500

 

「此処で《ヴァイロン・ハプト》の効果を発動! 装備カード扱いの『ヴァイロン』モンスター1体を特殊召喚します! 《ヴァイロン・ステラ》をコール!」

 

 しかしすぐさま《ヴァイロン・ハプト》の手甲から《ヴァイロン・ステラ》は射出され、星型の身体を乱回転させながら、空中で静止する。

 

 その《ヴァイロン・ステラ》は目を回したのか、身体をふら付かせていた。

 

《ヴァイロン・ステラ》

星3 光属性 天使族

攻1400 守 200

 

「この効果で特殊召喚されたカードはフィールドを離れた際に除外されます――が些細な問題です! 《ヴァイロン・ハプト》と《ヴァイロン・ステラ》をリリースし、アドバンス召喚!!」

 

 2体の天使たちが光の柱となって天を穿つ。その天から降り立つのは――

 

 

「サイボーグ天使が最上位! 《エンジェル O7(オーセブン)》!!」

 

 

 巨大な十字架のような白い機械的な天使が6つの白い帯のような腕をユラリと揺らし、頭上の天使の輪が光り輝く。

 

《エンジェル O7(オーセブン)

星7 光属性 天使族

攻2500 守1500

 

「それが貴様のエースといった所か……」

 

「ええ、このカードこそ私のフェイバリットカードです――貴方のブルーアイズのようにね」

 

 海馬の呟きに頬を緩めつつ返す月行だったが、その顔は直ぐに引き締められる。

 

「ですがまだ終わりではありません! 此処で発動済みのフィールド魔法《祝福の教会-リチューアル・チャーチ》の効果を発動!」

 

 《祝福の教会-リチューアル・チャーチ》が淡く発光する。

 

「墓地の魔法カード《トランスターン》2枚と、速攻魔法《禁じられた聖杯》に装備魔法《ヴァイロン・マテリアル》の合計4枚をデッキに戻し――」

 

 そして再び教会の祝福の鐘の音色が響き渡り――

 

「その数と同じレベルの光属性・天使族――《ヴァイロン・チャージャー》を墓地より蘇生!!」

 

 その祝福を受け、再び舞い戻る《ヴァイロン・チャージャー》。

 

 そして再起動するかのように、その柱状の身体の周囲を回る金色のリングがゆっくりと回り始める。

 

《ヴァイロン・チャージャー》

星4 光属性 天使族

攻1000 守1000

 

「《ヴァイロン・チャージャー》に装備魔法《ヴァイロン・マテリアル》と《ヴァイロン・コンポーネント》の2枚を装備!これにより攻撃力が600上がり、守備モンスターを攻撃した際、貫通ダメージを与えることができます!!」

 

 先端の金細工が眩しい白い杖、《ヴァイロン・マテリアル》と、

 

 鋭利な棘が2つ全面に突き出している白いリング《ヴァイロン・コンポーネント》が《ヴァイロン・チャージャー》の左右の手にそれぞれ装備される。

 

《ヴァイロン・チャージャー》

攻1000 → 攻1600

 

「更に《ヴァイロン・チャージャー》の効果で自身の装備カードの数×300、私の光属性のモンスターの攻撃力がアップ!!」

 

 そして《ヴァイロン・チャージャー》から光が放たれ、月行のモンスターたちが更に力を高める。

 

《ヴァイロン・チャージャー》

攻1600 → 攻2200

 

《エンジェル O7(オーセブン)

攻2500 → 攻3100

 

「最後に装備魔法を《エンジェル O7(オーセブン)》に装備し、バトルで――」

 

「待って貰おうか! 貴様のメインフェイズに罠カード《戦線復帰》を発動! 墓地のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する! 戻ってこい! 《B-バスター・ドレイク》!」

 

 月行のバトルフェイズの宣言を遮るように発動された罠カードの効果により海馬のフィールドに《B-バスター・ドレイク》が走りきて、守備表示となってその身を伏せる。

 

《B-バスター・ドレイク》

星4 光属性 機械族

攻1500 守1800

 

「フハハハハハハハハハ! これで俺のフィールドに2体の贄が揃った! この意味が分からぬ貴様ではあるまい!!」

 

 『オベリスクの巨神兵』の効果は互いのメインフェイズに発動できるもの――ゆえに相手ターンであっても、その破壊の一撃の脅威に晒されるのだ。

 

 そして海馬の宣言を受け、『オベリスクの巨神兵』が動き出す。

 

「貴様のメインフェイズ終了時に効果を発動! 2体の贄を捧げ、再びその力を解放せよ! ソウルエナジーMAX!!」

 

 

 

 かに思えた。

 

 

 

 《エンジェル O7(オーセブン)》の頭上に浮かぶ天使の輪から光輪が広がって行き、フィールド全体を包み込む。

 

「これは一体……!?」

 

 その光景に不審がる海馬へと月行は静かに返す。

 

「無駄です、海馬 瀬人――私のフィールドのアドバンス召喚された《エンジェル O7(オーセブン)》が存在する限り、互いにモンスター効果を発動することは出来ません」

 

「ふぅん、それこそ無駄だ! 『オベリスクの巨神兵』は『神』以外のあらゆる効果を受けず、自身の効果も無効化されん!!」

 

 月行の言葉に神の絶対的な耐性の存在を明かすが――

 

「少し違いますね――《エンジェル O7(オーセブン)》はモンスター効果を『無効化』しているのではなく、『発動できない』状態にしているだけです」

 

 月行の言う通り、そもそもの前提が違う。

 

 それを示す様に《エンジェル O7(オーセブン)》から広がった光輪が2体の贄に手を伸ばす『オベリスクの巨神兵』を縛りつける。

 

「これはモンスターを封じる効果ではありません! ゆえに神のカードといえども、その影響からは逃れられない!!」

 

 その月行の言葉と共に《エンジェル O7(オーセブン)》の力は強まり『オベリスクの巨神兵』の力を封じていく。

 

 

 

 

 だが空気が震える程の雄叫びが響き渡った。

 

 

 そしてガラスの割れるような音と共に『オベリスクの巨神兵』は怒りに満ちた雄叫びを上げながら《エンジェル O7(オーセブン)》の光輪による拘束を砕き、2体の贄をその手に掴む。

 

「これは……」

 

「フハハハハハッ! 貴様のご自慢のカードでもオベリスクの力を止めるには至らなかったようだな!!」

 

 拘束から解放された『オベリスクの巨神兵』は赤い瞳を怒りで染めながら2体の贄である《B-バスター・ドレイク》と《C-クラッシュ・ワイバーン》の力を奪っていく。

 

「さぁ! オベリスクよ!! 神を封じられるなどと驕った愚か者に鉄槌をくれてやれ!! ゴッド・ハンド・インパクトォオオオ!!」

 

 そして怒りのままに『オベリスクの巨神兵』の破壊の拳が振るわれ、両の手から発された破壊の奔流が《ヴァイロン・チャージャー》と《エンジェル O7(オーセブン)》を呑み込み、巨大な爆炎を上げた。

 

「これで貴様のサイボーグ天使どもは全滅! そして4000のダメージを受け、貴様のライフは僅かに1000残すだけだ!!」

 

 『オベリスクの巨神兵』の一撃により爆炎を上げる月行のフィールドを眺めながら鼻を鳴らす海馬。

 

 

 

 

 

 

 しかし爆炎が道を開くように2つに割れ、そこから2()()()サイボーグ天使たちが進み出た。

 

「なんだと!?」

 

 海馬の驚愕に見開かれた眼を余所に月行は想定外だったと言葉を零す。

 

「さすがは神のカード……私の《エンジェル O7(オーセブン)》を以てしても止められないとは……」

 

「何故だ!? オベリスクの効果は確かに発動した筈!!」

 

「ええ、貴方の言う通り『オベリスクの巨神兵』の効果は確かに私のフィールドに届いています」

 

 そう海馬の言う通り確かに『オベリスクの巨神兵』の一撃は月行のカードを吹き飛ばしていた――神の力を止められてはいなかった事実は揺るがない。

 

「ですが破壊したのが『私のフィールドのモンスターではなかった』だけで」

 

「何を言っている……」

 

 訝しむ海馬に月行は手をかかげながら返す。

 

「墓地の儀式魔法《機械天使の儀式》を除外することで、私の光属性モンスターが破壊されるとき身代わりに出来ます」

 

 月行のフィールドをよく見ると砕けた祭壇の破片のようなものが見受けられる。

 

「まさか!?」

 

「そう、『オベリスクの巨神兵』が破壊したのは儀式魔法《機械天使の儀式》だけです!」

 

 海馬にも覚えのある効果――《復活の福音》と同系統の力である。

 

「これは神への影響は全くない効果……ただオベリスクの一撃が別のカードを破壊しただけだ!!」

 

 神の一撃により月行がモンスターを守り切った訳は理解できた海馬だが、まだ解せないことがあった。

 

「だがサイボーグ天使どもを守ろうとも、オベリスクの効果で貴様は4000のダメージを受ける筈だ!!」

 

 そう、如何に『オベリスクの巨神兵』の一撃をモンスターが躱しても、その際の効果ダメージは躱せないのだ。

 

「其方は手札の《ハネワタ》の効果を使わせて貰いました――このカードは手札から捨てることで、このターンに私が受ける効果ダメージを0にします」

 

 しかしこれも月行にとっては問題ではなかった――別のカードで躱せばいいだけだと言わんばかりだ。

 

 それを示すかのように卵色の毛玉に小さな触覚の生えた愛らしい姿の天使、《ハネワタ》が小さな羽を自慢げにパタパタ動かす。

 

「オベリスクの効果が『効果ダメージ』であることは前のターンに《ダメージ・ダイエット》で確認済みです」

 

 月行の全てを見逃さぬ覚悟の籠った言葉と共に『オベリスクの巨神兵』と向かい合う様に佇む《エンジェル O7(オーセブン)》。

 

 三幻神の一角たる『オベリスクの巨神兵』を前にしても《エンジェル O7(オーセブン)》に、そして月行に恐れなどありはしない。

 

「こんな……ことが……」

 

呆然と呟いた海馬の月行は力強く返す。

 

「確かに『オベリスクの巨神兵』は強力無比なカードです。ですが『カード』である以上、世界の法則(ルール)の壁を超えることは出来ない。如何にそれが――」

 

 そして月行は神、『オベリスクの巨神兵』を見据えた。

 

 

 

「――『神』であっても!!」

 

 

 

 

 まさに「神封じ」の戦術に海馬は一瞬言葉を失うも、すぐに立ち直る。その戦術には大きな穴があると。

 

「それが貴様の神への策と言う訳か……だが何の解決にもなってはいないな! 次の俺のターン、再びオベリスクの効果が貴様を襲う! いつまでも躱し続けられると思うな!!」

 

 海馬の言う通り『オベリスクの巨神兵』の効果が止められない以上、月行は「全体破壊」と「効果ダメージ」を躱し続けなければ勝機はない。

 

 だがそれらを躱す為に手札を使い過ぎれば、攻めに回す余力がなくなってしまう。

 

「それはどうでしょうね! バトルです!! 《エンジェル O7(オーセブン)》で『オベリスクの巨神兵』を攻撃!!」

 

 そんな海馬の余裕に溢れた言葉も意に介さず月行は宣言する――突き進むのだと。

 

「神に臆することなく攻撃してくるか!!」

 

 《エンジェル O7(オーセブン)》の頭上の天使の輪にエネルギーが蓄積され、白き光が輝いていく。

 

「行けっ! 《エンジェル O7(オーセブン)》! エンジェル・ビームバスター!!」

 

「ならば返り討ちにしろオベリスク! ゴォッドォ! ハンドォ! クラッシャァアアア!!!」

 

 《エンジェル O7(オーセブン)》から放たれた白銀のビームと『オベリスクの巨神兵』の拳がぶつかり合い、その余波が周囲に突風となって荒れ狂う。

 

 

 ジリジリと押し戻されていく《エンジェル O7(オーセブン)》のビーム。

 

 やがて《エンジェル O7(オーセブン)》のビームが霧散し、『オベリスクの巨神兵』の拳が《エンジェル O7(オーセブン)》の身体を打ち据える。

 

 ピシリ、ピシリとひび割れる音が聞こえ始め――

 

 《エンジェル O7(オーセブン)》に装備された()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そして周囲の視界を覆うほどの蒼い極光が放たれ、その膨大なエネルギーによって互いが弾かれる。

 

 

 

 その蒼き極光が収まった先には――

 

 

 

 その胸に大穴が開いた『オベリスクの巨神兵』の姿。やがて破壊の神の身体は力尽きるように崩れていく。

 

「バ、バカな……オベリスクが……」

 

海馬LP:3900 → 3800

 

 呆然と呟く海馬に月行はそのタネを明かすかのように語り始める。

 

「バトル前に《エンジェル O7(オーセブン)》に装備した装備魔法《月鏡の盾》の効果を使わせて貰いました」

 

 崩れ落ちた『オベリスクの巨神兵』とは違い《エンジェル O7(オーセブン)》の身体に損傷などない。

 

「このカードを装備したモンスターが相手のモンスターとバトルする際にダメージ計算時のみ――」

 

 そしてその《エンジェル O7(オーセブン)》の身体の中央には砕けた跡など無い()()()()()()()()()()()()()()()――《月鏡の盾》が装着されている。

 

「その相手のモンスターの攻撃力・守備力のどちらか高い方の数値の+100ポイントの攻撃力を装備モンスターが得ます」

 

 装備魔法《月鏡の盾》の説明を終えた月行。

 

 その説明の通り《エンジェル O7(オーセブン)》に装備された《月鏡の盾》の効果で『オベリスクの巨神兵』の攻撃力4000に+100した攻撃力を《エンジェル O7(オーセブン)》は得ていたのだ。

 

 しかしあくまで「ダメージ計算時の間」ゆえに、今の《エンジェル O7(オーセブン)》の攻撃力は元に戻っている。

 

《エンジェル O7(オーセブン)

攻3100 → 攻4100 → 攻撃3100

 

「この《月鏡の盾》の効果もあくまで攻撃力を『参照』するだけ、神のカードに直接作用する訳ではありません」

 

 その言葉通り『神のカード』に直接作用していない為、無効化されることはない。

 

「まさか神のカードをこれ程までに熟知しているとは……」

 

「何を驚いているのですか、海馬 瀬人」

 

 思わずそう呟いた海馬に月行は心外だと言わんばかりに返す。

 

「グールズが神のカードを奪った事実がある以上、当然『神』と対峙することは分かり切っている」

 

 三幻神はどれも強力な効果を持つカード――ゆえにあらゆる可能性を考え、対策を立てるのは当然の帰結。

 

「ゆえに私は――いえ、私たち(ペガサスミニオン)はそれ相応の準備をしてきているのですよ」

 

 その言葉通り、ペガサスミニオンたちはそれぞれのデュエルスタイルの中で神を攻略する数多の策を用意しているのだ。

 

 一つや二つ通じなかった程度で手詰まりになる筈がない。

 

 そして月行は海馬へと視線を送る。

 

「貴方が神の力を振るうというのなら、私はその全てを討ち果たすまでです」

 

 神を討つ準備は出来ているのだと示す様に。

 

 






遊戯王Rでの月行のデッキは「天使族のエルフたちを装備カードで補助するデッキ」ですが
OCGには天使族エルフが殆どいなかった……ので


《エンジェル O7(オーセブン)》は「サイボーグ天使」とのこと + 装備ビート

= 『ヴァイロン』ってサイボーグっぽい + 『ヴァイロン』装備カード

の方程式が組み込むことで

今作の月行デッキは――
「サイボーグ天使's ヴァイロン O7(オーセブン)デッキ」になりました
(なおシンクロなしバージョン)


《エンジェル O7(オーセブン)》のアドバンス召喚のタイミングをミスると
エライことになるデッキです(目そらし)

「愛(装備魔法)」でカバーしましょう(`・ω・´)キリッ


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