マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
オベリスクの巨神兵「フッ……如何な『パーフェクトデュエリスト』といえど、我が拳の前では無力よ……」

パンデミック・ドラゴン「えっ?」




第96話 デッキはデュエリストを映す鏡

 

 

 デュエルを終え、どこかスッキリとした面持ちの月行の態度に海馬はニヤリと笑う。

 

「ふぅん、貴様には感謝するぞ――これで俺は更なる高みへと到達できた」

 

「……お見事です。パズルカードとレアカードを――」

 

 そんな海馬の含みのある言葉にも、月行は探し求めていた「パーフェクト」の先を感じ取れたゆえか満足気に海馬へとカードを差し出す。

 

「貴様のデッキのカードなどいらんわ!」

 

 そんな月行の姿に面白くなさそうにパズルカード「のみ」を受け取る海馬――これではどちらが勝者なのか分からない。

 

「……助かります――それと本戦出場おめでとうございます」

 

「ふぅん、食えん男だ」

 

 そんなどこまでも素直で真っすぐな月行の姿に海馬は毒気を抜かれたかのように息を吐く。

 

 だがやられっぱなしは海馬の趣味ではない――ゆえに1枚のカードを月行に投げ渡す。

 

 そのカードを掴み取った月行の瞳は驚愕に見開かれた。

 

「これは? ……ッ! 神のカード!? 何故――」

 

 その狼狽する月行の姿に満足そうに鼻を鳴らす海馬。

 

「それが俺の持つ神のカード、『オベリスクの巨神兵』だ。イシズとかいう考古学者から預かった」

 

 どのみち海馬は月行の目的を察しつつ、協力を要請するつもりだった――神崎だけに任せておくような選択肢は海馬にはない。

 

 ゆえに『オベリスクの巨神兵』の情報を月行にキチンと公開する配慮を見せる海馬。仮に三幻神をカード化したペガサスから情報はあれど、実物を見ておいて損はないのだから。

 

「先のデュエルの神を封じるような立ち回りを見るに、貴様もグールズを追っているのだろう?」

 

 そう締めくくった海馬に月行は確認するように問いかける。正直にいって我が道を全速前進する海馬に「協力」などと言った言葉は遠く感じてしまう月行。

 

「貴方が神のカードを私に直に見せたということは、協調して頂けると取っても?」

 

「好きに受け取るがいい――俺は貴様の助けなどなくとも問題はないがな」

 

 何とも不器用な協力要請だった。もう少し素直に頼めないのだろうか? ……頼めないのだろうな。

 

「いえ、此方からお願いしたい程です」

 

 そう返す月行は海馬の姿を再度視界に収める。

 

 もっと「絶対者」的な海馬のイメージがあった月行。だが意外な部分を見たゆえなのか、月行の顔は何処か柔らかい。

 

「我々の今の方針は本戦でグールズの総帥とぶつかるつもりです――ただ私はパズルカードをかなり失ってしまったので、集めなおさなければなりませんので、失礼させて貰います」

 

 そう言って神のカードを海馬に渡し、踵を返した月行の足取りは何処か軽かった。

 

 

 そんな月行の姿にどこか苛立つかのように本戦の場所を確認しようとする海馬。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが遠方から強大な力を放つ赤き竜の姿と咆哮、そして雷撃の轟きに海馬と月行は足が止まる。

 

「あ、あれは――」

 

 瞠目する海馬に月行はその分かり切った正体をポツリと零す。

 

「――『オシリスの天空竜』!!」

 

 そしてすぐさま2人のデュエリストは三幻神が一柱、『オシリスの天空竜』の元へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、すぐさま『オシリスの天空竜』の元へと駆け出した海馬と月行。

 

 そしてその2人の気配が遠ざかっていくのを感じながらリシドはその場で崩れ落ちるように腰を下ろす。

 

「『オシリスの天空竜』が召喚されたとなれば、人形……パントマイマーをマリク様が直接操り、動き出されたのか……」

 

 羽蛾から得たパズルカードによりマリクとリシドが本戦に出場する枚数を確保したリシドだったが、『オベリスクの巨神兵』の所持者と「思われる」海馬のデュエルに遭遇。

 

 その為、息を殺しつつ海馬と月行のデュエルを監視していた――『オベリスクの巨神兵』の存在が確認できれば儲けものだと。

 

「あれが……『オベリスクの巨神兵』の所持者、海馬 瀬人……そして三幻神をカード化したペガサス・J・クロフォードの後継者、天馬 月行……」

 

 そして海馬 瀬人が三幻神の一柱、『オベリスクの巨神兵』の所持者と判明したゆえに、今すぐにでもこの情報をパズルカードと共にマリクの元へと届ける必要がある。

 

「……マ、マリク様にお伝えせねば……」

 

 だがそんな己の意に反してリシドの足は動かない――否、動けない。

 

 

――神のカードを「ああ」も翻弄するデュエリストが居ようとは……

 

 

 三幻神に選ばれていない為、神のカードを扱うことの出来ないリシドにとって「神のカード」は絶対的なものである。

 

 圧倒的な力を持つ『オベリスクの巨神兵』に『オシリスの天空竜』、そしてその二柱を超えた最高位の神、『ラーの翼神竜』。

 

 

 リシドはその最高神たる『ラーの翼神竜』がある限り、マリクが負けることなどないと考えていた。

 

――彼らに……勝てるのか……?

 

 リシドのマリクへの、神のカードへの盲目的な信頼が揺らぎ、ピシリとリシドの覚悟に、心にヒビの入る音が聞こえる。

 

 リシドはしばらくその場から動くことが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがリシドが動けなかったのは幸運だった。

 

 遥か遠く離れた建物の上から海馬と月行のデュエルを眺めていた人物がもう一人――建物の上にいる為かその黒い衣装は風にはためいている。

 

――これで『オベリスクの巨神兵』の効果は完全に割れた。神の耐性の『範囲』も知れたのは大きな収穫。

 

 そう、アクターがその超人的な視力を以て観戦していたのである――その観戦度合いはカードテキストまで読み上げる徹底振りである。

 

 ゆえに辛うじてアクターの視界の死角にいたリシドが動きを見せればマリクの元までアクターを案内する結果になっていた――後はお察しの結果が待っている。

 

 まさにリシドにとってギリギリセーフの状況。

 

 

 イシズがどこかでガッツポーズを取り、息を吐いているのは余談だ。

 

 

 そして、そんなことなどつゆとも知らぬアクターは内心で一人ごちる。

 

――しかし……このまま放っておいても、マリクは問題なく処理されるような気がするが……

 

 最後に圧倒的なデュエルを見せた海馬に、その海馬を終始翻弄していた月行。

 

 海馬の実力は既に、というより嫌というレベルで知っていたアクターだったが、月行の想定をはるかに超えた実力は未知のものだった。

 

 アクターは「どこが『完了』だよ」とため息を吐きたい程である。

 

 

 そんな風に考えるも、ビビり――もとい慎重派のアクターは万が一を考え、マリクを探しに建物の上から飛び降りる。

 

 

 『オシリスの天空竜』が召喚された以上、マリクがグールズの構成員を直接操ってデュエルさせているのは明白な為、足の止まったマリクを探し出すチャンスでもあるのだから。

 

 

 しかしあと数秒アクターが動くのが遅ければ、マリクの元へと動き出したリシドを見つけることが出来たのだが……どこまでも間の悪い男である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 此処で時間はしばし巻き戻る。

 

 エスパー絽場を相手に後味の悪い結果にやり切れぬ思いを抱いた城之内はそれをかき消すように双六に努めて明るく切り出す。

 

「そういや、爺さん――次の相手って誰なんだ? もう決まってたりすんのか?」

 

 そんな城之内のぼやくような言葉に双六は笑いつつ髭を撫でる。

 

「ホホッ! 勿論じゃ、さっき小耳に挟んだ話なんじゃが……まぁ、行ってみれば分かるぞい」

 

 エスパー絽場とのデュエルで並大抵な相手では城之内のレベルアップには繋がらない嬉しい誤算を受けた双六は「とっておき」の相手を見繕っていた。

 

 

 

 

 そしてしばらくして双六が立ち止まった個所を見渡す城之内一同。やがて代表して御伽が疑問を浮かべる。

 

「ここって……水族館だよね? バトルシティは町中が舞台だから、この手の建物の中にデュエリストはいるとは思えないけど……」

 

「ん? これは――」

 

 そんな御伽の言葉を余所に気になるものを見つける本田。それをよく見る――

 

「――何か手書きのポスターが貼ってあるぜ……何々『漁太と鯱子の愉快な水中ショー』? おい、城之内! これって!」

 

「その通り! 次の相手はあの梶木 漁太くんじゃ!! これまで以上の激戦になることは確実じゃぞ~」

 

 本田が城之内に振り向き顔を見合わせると同時に双六が指を一つ立てて「正解」だと元気よく返す。

 

 そう、次の城之内の対戦相手はあの遊戯をあと一歩のところまで追い詰めたデュエリスト「梶木 漁太」――今まで以上の激戦が予想されることは明白だ。

 

 しかしそんな前評判で憶する城之内ではない。

 

「そんなこと言われたってビビるような男、城之内様じゃねぇぜ!! さっさと行くぜ、みんな!!」

 

 そう拳を握り、ズカズカと水族館に突き進む――その強気な姿勢は不安の裏返しである。だが不安があろうとも歩みを止めない強さが城之内にはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで水族館のシャチのショーの会場までたどり着いた城之内一同。

 

 だが梶木はショーの最中ゆえに大人しく観客席に座っていたのだが――

 

「おおっ! 城之内じゃねぇか! また会ったのう!」

 

 城之内に気付いた梶木の方から声がかけられた――そんな梶木は直立で泳ぐシャチの口元の上に立っている。

 

「そっちこそ元気そうじゃねぇか! だがよぉ、大会ほっぽりだして何やってんだ?」

 

 そんな梶木を見上げながら聞き返す城之内――先に御伽も言っていた通り、バトルシティの会場は「町」である為、建物に、ましてや水族館でショーをする必要などない。

 

「なに、ちょっとわけありでな、此処のショーを手伝うことになったんじゃ」

 

 城之内の問いに鼻を擦りながら返す梶木。

 

 

 その訳は――

 

 水族館の魚を昼飯にしようとした梶木を叱った水族館のシャチのショーを担当する職員が高熱により倒れた為、梶木が急遽代理を務めていると言うものだ。

 

 水族館の魚を昼飯に、などと若干おかしな部分もあるが、天然の気が多い梶木の行動である――あまり気にしない方が良い。

 

 

「そうか! だったらこのショーが終わった後でお前にデュエルを挑むぜ!」

 

 そうデュエルの約束を取り付けようとする城之内だが、梶木は悩む素振りを見せつつ城之内の頭から爪先までをジーと眺め――

 

「オメェがワシとデュエル? ふ~む、よし! 了解じゃ!」

 

 少しの思案の後で快諾する梶木。

 

「おっ! いいのか!!」

 

決闘者の王国(デュエリストキングダム)での弱っちい頃のオメェならともかく、今のオメェならワシも楽しめそうじゃ!」

 

 梶木は如実に感じ取っていた――城之内が決闘者の王国(デュエリストキングダム)の時よりも格段にレベルアップしていることを。

 

 楽しいデュエルになりそうだと、梶木はニカッと笑う。

 

「ならショーが終わったらまた来るぜ!」

 

 デュエルの約束が取り付けられたゆえにシャチのショーをこれ以上邪魔することは出来ないと、客席に戻ろうとする城之内だったが――

 

 

「何を言っとるんじゃ! 今直ぐデュエルといくぜよ!! ついでにオメェにもデュエルでショーに協力して貰うぜよ!」

 

 そんな梶木の提案に歩を止める城之内。

 

 

 

 その梶木の言葉にシャチのショーを見に来ていた観客たちも思わぬサプライズに色めき立つ。

 

 城之内が断れそうにない雰囲気だった。

 

 

 そしてシャチがどこか寂しそうにしていたのは気のせいではあるまい――お客を取られた悔しさなど感じてはいない。いないったらいないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがてショーの舞台に上がり向かい合った城之内と梶木。そして梶木は手持ちのパズルカードを提示する。

 

「ワシが今持っとるパズルカードは4枚じゃ!」

 

「奇遇だな! 俺も4枚だ!」

 

 互いに持つパズルカードの数は同じ。

 

 パズルカードの数はデュエリストの強さにも繋がるといっても過言ではない為、梶木は自身の直感が正しかったとやる気を漲らせる。

 

「ほう、ワシの見立て通りやるようになったようじゃのう! なら互いにパズルカードを2枚賭けと行くぜよ! この勝負に勝ったヤツが本戦に出場決定じゃ!!」

 

「いいぜ、その勝負乗った!! だが梶木――お前は別にレアカードを賭けなくて良いぜ!」

 

 豪快な梶木の提案だったが、城之内は快く快諾。だが代わりにレアカードの賭け分にモノ申す。

 

「ん? 別に構わんが、何でじゃ?」

 

 梶木側にしかメリットのない提案に疑問符を浮かべる梶木――この提案では城之内が余計なリスクを背負うだけの結果しか生まない。

 

 そんな梶木を城之内は真摯に見つめ返す。

 

「俺はレアカード欲しさにこの大会に出た訳じゃねぇからな! それにカードにとっても、やっぱ全力で活躍できるとこが一番だろ?」

 

 城之内の想いに納得を見せる梶木――「この勝負を受けて良かった」と笑う。

 

 ならば梶木が返す言葉は一つだった。

 

「成程の……ならワシもオメェのレアカードはいらんぜよ!!」

 

 デュエリストとして対等な条件での勝負を願う梶木の想いが木霊する。

 

「なら行くぜ! 梶木!!」

 

「おう! 来い、城之内!!」

 

「 「 デュエル!! 」 」

 

 その互いの熱意が呼応した声に観客たちのボルテージも沸き上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 デュエルが開始されるが「来い!」といった梶木の方が先攻だった――何だか締まらない。

 

「ワシの先攻じゃ! ドロー!!」

 

 しかし梶木は気にした様子もなくデッキからカードを引き抜いた。手札は悪くない模様。

 

「よっしっ!! 早速行くぜよ!! フィールド魔法《伝説の都 アトランティス》を発動じゃい!! これでフィールドの水属性モンスターの攻撃力と守備力は200アップじゃ!!」

 

 梶木の背後に海底神殿がせり上がり、互いのデュエリストの足元に海がさざ波を打つ。

 

「なにっ!? 《海》じゃねぇのか!?」

 

「いや、《海》ぜよ!! 《伝説の都 アトランティス》はルール上《海》として扱えるんじゃ!!」

 

 決闘者の王国(デュエリストキングダム)での遊戯とのデュエルから《海》を使うとばかりに思っていたゆえに驚いた城之内だが、梶木の言う通り形は違えど《海》である。

 

「魔法カード《二重召喚(デュアルサモン)》を発動じゃい!! ワシはこのターン2回の通常召喚が行えるぜよ!!」

 

 そして新たな《海》の力が今、振るわれる。

 

「ワシはこのカードを召喚じゃ! 海の男!! 《伝説のフィッシャーマン》を通常召喚!!」

 

 (もり)を構えた戦士――否、『漁師』が緑の腰布を付けただけの文字通りの裸一貫でシャチに跨り、海の上を自在に移動する。

 

《伝説のフィッシャーマン》

星5 水属性 戦士族

攻1850 守1600

 

「なぁに!? レベル5のモンスターを召喚するにはモンスターを1体リリースしなきゃならねぇ筈!?」

 

 城之内の驚きの声の通り、《伝説のフィッシャーマン》の星の数――レベルは5。

 

 本来、モンスターを1体リリースする必要があるレベルである。だがこれこそが新たな《海》である《伝説の都 アトランティス》の力。

 

「これこそ《伝説の都 アトランティス》の隠された力ぜよ! このカードがある限り。互いの手札とフィールドの水属性モンスターのレベルは1つ下がるんじゃ!」

 

「なんだと!? ――ん? いや、待てよ……でも、その《伝説のフィッシャーマン》のレベルが5のまま……ん?」

 

 梶木の説明に納得を見せた城之内だったが、腑に落ちない点に気付き頭をガシガシとかきつつ情報を整理する――が、答えはでない。

 

「《伝説のフィッシャーマン》は海の男ぜよ!! フィールドに《海》がある時、真の力を発揮できるんじゃ!」

 

 そんな城之内に誇るように《伝説のフィッシャーマン》の効果を説明していく梶木――このカードはバトルシティへ挑む梶木に梶木の父から餞別として渡されたカードなのだから。

 

「《海》がある限り、魔法カードの効果は受けず、攻撃対象にもされないんじゃ!!」

 

 その《伝説のフィッシャーマン》の姿はどこか梶木の父の姿を思わせる。

 

「え~と……手札ではレベル4になってっけど、フィールドに出れば魔法カードの《伝説の都 アトランティス》の効果を受けなくなってレベル5に戻る、と!」

 

 梶木から《伝説のフィッシャーマン》の説明を聞き終えた城之内はレベルの増減の流れを指折り数えていき、理解を見せる。

 

「その通りじゃ!! 更にワシはコイツも召喚じゃ!!」

 

 先んじて発動された魔法カード《二重召喚(デュアルサモン)》の効果による召喚権が増えていることを表す様に海の一部からポコポコと気泡が漏れ出る。

 

「伝説の海の男の意思を継ぎ! 突き進め! 《伝説のフィッシャーマン二世》!! 《伝説の都 アトランティス》でパワーアップじゃ!!」

 

 やがて海から飛び出すのは紫の体表を持つシャチの背に乗った《伝説のフィッシャーマン》の面影を残した少年の漁師がボウガンを片手に海面をシャチに走るように泳がせる。

 

《伝説のフィッシャーマン二世》

星5 → 4

水属性 戦士族

攻2200 守1800

攻2400 守2000

 

「《伝説のフィッシャーマン二世》はフィールド・墓地では《伝説のフィッシャーマン》として扱うぜよ! まさにその海の男の生き様を継いどるんじゃ!!」

 

 《伝説のフィッシャーマン二世》 → 《伝説のフィッシャーマン》

 

 《伝説のフィッシャーマン》の隣に陣取った《伝説のフィッシャーマン二世》――その姿はどこか親子を思わせる。

 

「そいつも海の男なら《海》があれば、何かあるのか?」

 

 その姿を見た城之内がふと思った疑問に梶木は「勿論だ」と元気よく声を張る。

 

「よくぞ聞いてくれた、城之内!! 《伝説のフィッシャーマン二世》は《海》がある時、他のモンスターの効果を受けないんじゃ!!」

 

 その梶木の言葉通り『伝説のフィッシャーマン』たちは《海》の中でこそ本領を発揮する狩人たちだ。

 

「カードを1枚セットして、魔法カード《命削りの宝札》を発動じゃぁい!! 手札が3枚になるようドローするぜよ!!」

 

 《命削りの宝札》の効果で引いたカードにギロチンがかけられ――

 

「更にカードを2枚伏せて、ターンエンドじゃ! エンド時に《命削りの宝札》のデメリットで手札を全て――と言っても1枚じゃが、捨てるぜよ!!」

 

 その中の1枚のカードがギロチンの餌食となり、墓地に――海に還っていった。

 

 

 梶木のフィールドの2体の海の戦士に対峙する城之内は決闘者の王国(デュエリストキングダム)時とはかなり様変わりした梶木のデッキに興味津々だ。

 

「『海の男デッキ』って訳か! おもしろそうじゃねぇか!!」

 

 しかし城之内はどうしても見過ごせないことがあった。それは――

 

「だけどよ、その《伝説のフィッシャーマン二世》のカード……ど~も梶木、お前に似てる気がすんだけど……気のせいか?」

 

 《伝説のフィッシャーマン二世》の姿が梶木とよく似ていたことだった――偶然にしてはやけに共通点が多い気がするレベルである。

 

 そんな城之内の疑問に梶木は頭を軽くかきつつ照れるように笑う。

 

「やっぱりお前もそう思うか、城之内! ――なんでもペガサス会長が決闘者の王国(デュエリストキングダム)の時のワシのデュエルを見てインスピレーションを受けたとか何とかいう話らしいんじゃ!」

 

 決闘者の王国(デュエリストキングダム)の本戦出場者へはペガサスが厳選したカードが送られている――当然予戦を突破し、本戦に上がった梶木もその一人だ。

 

 その送られるカードの中にはペガサスが手ずからデザインしたものもある。この《伝説のフィッシャーマン二世》もその1枚だった。

 

 ただし世界に1枚のカード――と言う訳ではなく、あくまで先んじて梶木の手に送られたものに過ぎない。

 

 後に普通に一般流通するカードである。

 

 そんな裏側を知らない城之内は思わず呟く。

 

「成程な……羨ましい……」

 

 無理もない――「デュエルモンスターズ」の生みの親であるペガサスが「『一人のデュエリストの在り方』にインスピレーションを受けて作ったカード」だ。

 

 デュエリストにとっては垂涎ものの名誉である――ペガサスミニオンの一人、夜行が半狂乱になるレベルだ。I2社ではリッチーが大変だったらしい。

 

「いやいや! そんなこと思ってる場合じゃねぇ! 俺のターン! ドロー!!」

 

 しかし「今はデュエル中だ」と頭を振り、デッキからカードを引き抜く城之内。相手は遊戯を追い詰めた実力者である。

 

 半端な気持ちではすぐさま呑まれかねないのだから。

 

「最初は魔法カード《カップ・オブ・エース》を発動! コイントスを1度行って、表が出れば俺が2枚ドロー! 裏が出れば、梶木! お前が2枚ドロー出来るぜ!」

 

「城之内! お前のデッキは『ギャンブルデッキ』か! なら、その運気ってもんを見せて貰うぜよ!!」

 

「思う存分見せてやるぜ!」

 

 海の男とギャンブラーの闘いの生末を占う様にコイントス代わりに《カップ・オブ・エース》のカードがクルクルと回る――しかし海の男VSギャンブラー……字面にすると何だかおかしな対戦カードである。

 

 

 やがて《カップ・オブ・エース》の回転が止まった向きは、「正位置」――つまりコインの表扱いだ。

 

「――おっし!! 表だ!! 2枚ドロー!!」

 

 スタートダッシュを成功させた城之内はこのまま流れに乗るべく動き出す。

 

「そして魔法カード《予想GUY(ガイ)》を発動! コイツは俺のフィールドにモンスターが存在しない時! デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚するぜ!」

 

 城之内のフィールドのスパークが起こり海が波打っていき――

 

「来い! 《ワイバーンの戦士》!!」

 

 そこに降り立ったのは黒い軽装備に身を包んだ緑の体表のトカゲ人間。

 

 手元のサーベルのような剣を軽やかに振り海水の飛沫を飛ばすその姿はどこか演舞にも見える。

 

《ワイバーンの戦士》

星4 地属性 獣族

攻1500 守1200

 

「次は魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札のモンスターを1体墓地に送って、デッキからレベル1のモンスターを呼び出すぜ! 頼むぜ! 《伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)》!!」

 

 《ワイバーンの戦士》がキャッチした黒い卵、《伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)》――その内部でドクンと大きく何かが脈動している。

 

伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)

星1 闇属性 ドラゴン族

攻 0 守 0

 

「早速、《伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)》の効果を発動だ! このカードをリリースしてデッキからレベル7以下の『レッドアイズ』モンスターを呼び出すぜ!」

 

 やがて《伝説の黒石(ブラック・オブ・レジェンド)》が砕け、空に黒い影が飛び立った。

 

「俺が呼ぶのは当然! 《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》!!」

 

 その影はご存知、城之内のエースカード、可能性の権化たる黒き竜――《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》。

 

 その竜の羽ばたきで海は大波を打ち荒れ狂う。

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)

星7 闇属性 ドラゴン族

攻2400 守2000

 

「そんでもって墓地の《カーボネドン》の効果を発動だ! 墓地のコイツを除外することでデッキからレベル7以下のドラゴン族通常モンスターを守備表示で特殊召喚する!」

 

 《ワン・フォー・ワン》の際に墓地に送られていた《カーボネドン》が海に穴を開けながら飛び立ち、空で光を放つ。

 

「次はコイツだ! 《メテオ・ドラゴン》!!」

 

 やがて光の先から降り立ったのは《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の可能性を引き出す竜、《メテオ・ドラゴン》。

 

 その隕石のような胴体は海水に着水し、プカプカ浮かんでいる。

 

《メテオ・ドラゴン》

星6 地属性 ドラゴン族

攻1800 守2000

 

「そんでもって《真紅眼の遡刻竜(レッドアイズ・トレーサードラゴン)》を通常召喚!!」

 

 機械の扉が海を割きながら現れ、その扉が開くと共に飛び立ったのは身体全体が赤く脈動する《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》よりも若干小さなレッドアイズ。

 

 その姿はまるで《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の過去の幼少期にも見える。

 

真紅眼の遡刻竜(レッドアイズ・トレーサードラゴン)

星4 闇属性 ドラゴン族

攻1700 守1600

 

「ここで手札の《黒鋼竜(ブラックメタルドラゴン)》の効果で、自身を俺のフィールドの『レッドアイズ』モンスターに装備! 攻撃力を600アップさせる!!」

 

 鋼の身体を持った小さなドラゴン、《黒鋼竜(ブラックメタルドラゴン)》がパーツごとにバラバラになって空を舞う《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》に装着されていく。

 

 やがて《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》は鋼の鎧を纏い、より強靭な佇まいとなって咆哮を上げた。

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)

攻2400 → 攻3000

 

 一気に4体のモンスターを展開した城之内は果敢に攻め込む――梶木相手に様子見するだけの余裕など城之内にはない。

 

「一気に攻め込むぜ!! バトルだ!!」

 

 鋼の鎧を纏った《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》がバチバチと放電しながらその口元にエネルギーが蓄積されていく。

 

「レッドアイズで《伝説のフィッシャーマン二世》を攻撃!! ダーク・メタル・フレア!!」

 

 その隙にと《伝説のフィッシャーマン二世》は海面からシャチに飛ぶように跳躍させ、《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を狙うが、放たれたブレスにシャチは爆散。

 

 しかしその爆風に乗って飛んだ《伝説のフィッシャーマン二世》は眼を狙ったボウガンの矢を放つ――が《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の鋼の鎧に弾かれる。

 

 やがて逃げ場のない空中で無防備になった《伝説のフィッシャーマン二世》は竜の尾に弾かれ、海に水柱を立てた。

 

「ぬぅうう!! じゃが、《伝説のフィッシャーマン二世》はただではやられんぜよ!!」

 

梶木LP:4000 → 3400

 

 海面から水浸しになって現れる《伝説のフィッシャーマン二世》は最後の力を振り絞り、ボウガンから伸びる縄を引き上げる。その縄の先は海の底。

 

「デッキから水属性・レベル7のカード、《海竜(リバイアドラゴン)-ダイダロス》を手札に一本釣りじゃぁ!!」

 

 やがて釣り上げられたのは鎧のような甲殻を持った青い海竜。その海竜は暴れ回りながらも梶木の手札に加わり、それを見届けた《伝説のフィッシャーマン二世》は海の中へと消えていった。

 

「そ、そのカードは!?」

 

 《海竜(リバイアドラゴン)-ダイダロス》――決闘者の王国(デュエリストキングダム)で遊戯のカードを全て破壊し、苦戦させたカード。

 

 そんな強力なカードが梶木の手に舞い込んだ事実に城之内は一瞬心が揺れるが

――

 

「……いや、後だ!」

 

 今考えても詮無き事――城之内に出来るのは今できる最善を尽くすことだけだ。

 

「確か《伝説のフィッシャーマン》は攻撃対象にされないんだったよな」

 

 《伝説のフィッシャーマン二世》が沈んだ先を見つめる《伝説のフィッシャーマン》に向けて確認するように問いかける城之内。

 

 《伝説のフィッシャーマン》はその返事代わりに海の中へと姿を隠す。

 

「だったら梶木! 他に攻撃出来るのはお前だけだ! 《ワイバーンの戦士》でダイレクトアタック!!」

 

 《ワイバーンの戦士》が軽やかに跳躍しながら身体を回転させ、梶木の頭上から剣を振り下ろす。

 

「そう易々と海を突破できると思わんことじゃ! 罠カード《戦線復帰》を発動! ワシの墓地のモンスター1体を守備表示で特殊召喚するぜよ!!」

 

 だがその剣の行く手を遮るように水柱が立ち――

 

「来いっ! 《イマイルカ》!! 《伝説の都 アトランティス》でパワーアップじゃ!!」

 

 その水柱から現れたのは何処かファンシーな小柄なイルカ。

 

 《ワイバーンの戦士》の剣を前に「ひゃー」と言わんばかりにヒレで顔を押さえる。

 

《イマイルカ》

星2 → 1

水属性 海竜族

攻1000 守1000

攻1200 守1200

 

「いつの間にそんなカードを――いや! 《命削りの宝札》の時か!?」

 

「その通りぜよ! じゃがまだワシの一手は終わっとらん! ワシのフィールドに攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚されたとき! コイツを発動させて貰うぜよ!!」

 

 いつの間にやら墓地に送られていた《イマイルカ》が梶木を守るべく身体を張るが――

 

「速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動じゃい!!」

 

 さすがに一人では心細いのかヒレで口元を押さえ、指笛ならぬヒレ笛を鳴らした《イマイルカ》。

 

「コイツの効果でその攻撃力1500以下のカード、《イマイルカ》を手札・デッキ・墓地から可能な限り特殊召喚!!」

 

 その音の合図を受け取り、海から飛び出す新たな2体の《イマイルカ》。

 

 対峙する城之内のフィールドを見て、最初の《イマイルカ》同様に「マジか」と言わんばかりにヒレで顔を押さえつつ悲鳴のような鳴き声を上げた。

 

《イマイルカ》×2

星2 → 1

水属性 海竜族

攻1000 守1000

攻1200 守1200

 

「そして城之内! お前も自分のモンスター1体を選んで同名モンスターを同じように可能な限り呼び出すんじゃ!!」

 

「俺は新しくモンスターは呼ばねぇ! っていうか呼べねぇ!! 俺のフィールドのカードはどれもデッキに1枚しか入ってねぇからな!!」

 

 折角の《地獄の暴走召喚》の効果も、今の城之内には使えない――梶木だけがメリットを得た形だ。

 

「だからそのまま《ワイバーンの剣士》で攻撃続行だ! 守備表示の《イマイルカ》をぶった切ってやれ!!」

 

 《ワイバーンの剣士》の剣に頭を押さえて衝撃に備えていた《イマイルカ》だったが、剣の腹で横殴りにされ、そのまま海面に叩きつけられプカプカ浮かぶ。

 

「じゃが相手によって破壊され、墓地に行った《イマイルカ》は波を呼ぶぜよ!」

 

 しかしただプカプカ浮かんでいる訳ではない――痛みを堪えながらも音波を発し、海を波立たせることで救援信号を送っているのだ。

 

「その効果でワシのデッキの上のカードを墓地に送り、ソイツが水属性モンスターならワシはカードを1枚ドロー出来るんじゃ!!」

 

 そして梶木のデッキの上からカードが1枚墓地に送られ――

 

「デッキの上のカードは――《フラッピィ》! 水属性じゃ! よって1枚ドロー!!」

 

 たのは紫のスライムのようなモンスター《フラッピィ》。

 

 その《フラッピィ》は《イマイルカ》を担ぎ海に沈んでいき、その後、梶木の手札に光を運びその手札を潤した。

 

「手札を増やす算段か! だが俺は怯まねぇ!! 《真紅眼の遡刻竜(レッドアイズ・トレーサードラゴン)》で攻撃表示の《イマイルカ》を攻撃!!」

 

 《真紅眼の遡刻竜(レッドアイズ・トレーサードラゴン)》の爪の一撃に悲痛な叫び声を上げる《イマイルカ》。

 

「くっ……!」

 

梶木LP:3600 → 3100

 

「破壊された《イマイルカ》の効果でデッキトップを墓地に! 『水属性』! よって1枚ドローじゃ!!」

 

 先程と同じようなやり取りと共に梶木の手札は更に潤う。

 

 

 そしてこれで城之内のフィールドの攻撃可能なモンスターはもういない。ゆえに城之内のダイレクトアタックを防ぎ切った梶木は挑発気に返す。

 

「それで終わりか! 城之内!!」

 

「まだまだに決まってんだろ! 梶木!!」

 

 しかし、城之内は攻めの手を緩めはしない――リスク覚悟でガンガン動くのが自分のスタイルなのだと。

 

「俺は手札から速攻魔法《瞬間融合》を発動して融合召喚を行うぜ!! 俺はフィールドの《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》と《メテオ・ドラゴン》を融合だ!」

 

 《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》と《メテオ・ドラゴン》が共鳴し合うかのように咆哮を上げる。

 

 そして2体のドラゴンが《瞬間融合》の渦に呑み込まれて行き――

 

「融合召喚!! 猛ろ! 《メテオ・ブラック・ドラゴン》!!」

 

 その渦から飛び出したのはレッドアイズの進化の可能性の一つ、《メテオ・ブラック・ドラゴン》。

 

 その紫の巨体から放たれた咆哮は海に大波を引き起こす程に力強い。

 

《メテオ・ブラック・ドラゴン》

星8 炎属性 ドラゴン族

攻3500 守2000

 

「攻撃力3000オーバーのドラゴンじゃとぉ!?」

 

「どんなもんよ! そんでもって墓地に送られた《黒鋼竜(ブラックメタルドラゴン)》の効果でデッキから『レッドアイズ』カードを手札に加えるぜ!!」

 

 《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》が融合素材となって墓地に送られた為、共に墓地へ行った《黒鋼竜(ブラックメタルドラゴン)》のパーツの一部が城之内の元へと運ばれる。

 

「俺は《真紅眼の鎧旋(リターン・オブ・レッドアイズ)》を手札に!!」

 

 それはレッドアイズたちの力が込められたカード――いわゆる専用サポートのカードだ――梶木は警戒するようにそのカードを見据えている。

 

「そして追撃だァ!! 《メテオ・ブラック・ドラゴン》で最後の攻撃表示の《イマイルカ》を攻撃!! バーニング・ダーク・メテオォ!!」

 

 《メテオ・ブラック・ドラゴン》から放たれる巨大な火球に《イマイルカ》は懸命にヒレを動かし水を飛ばすが、結果はお察しである。

 

 やがて《イマイルカ》の全身を炎が包み込み、悲痛な鳴き声が木霊した。

 

「これで大ダメージだぜ!!」

 

 炎が踊り狂う海面が互いの視界を奪う。しかし城之内には確かな手ごたえがあった。

 

 攻撃力3500の《メテオ・ブラック・ドラゴン》と攻撃力1200の《イマイルカ》――その戦闘で梶木が受けるダメージは2300ポイントにも及ぶ。

 

 

 初期ライフ4000の半分以上を消し飛ばす一撃だ。

 

 

 だがその荒れ狂う炎が突如として海面から飛び出した竜巻によりかき消された。

 

梶木LP:3100

 

 《メテオ・ブラック・ドラゴン》の攻撃を受けた筈の梶木のライフは1ポイントたりとも削れてはいない。

 

「なにっ!?」

 

「そう簡単に海を攻略できるとは思わんことじゃ! 城之内!!」

 

 驚きに目を見開く城之内に梶木は咆える――その程度では《海》は揺るがないと。

 

「ワシはコイツを使わせて貰ったんじゃ!! 永続罠《竜巻海流壁(トルネードウォール)》をな!!」

 

 《イマイルカ》を焼き尽くし、梶木に迫っていた《メテオ・ブラック・ドラゴン》の炎がかき消された竜巻の正体は梶木の発動した永続罠の効果。

 

「コイツの効果でワシのフィールドに《海》がある限り、ワシの受ける戦闘ダメージは0じゃ!!」

 

 その永続罠《竜巻海流壁(トルネードウォール)》はまさに梶木を守る鉄壁の城塞。だが当然デメリットもある。

 

「まぁこのカードはフィールドから《海》がなくなっちまったら、破壊されちまうがのう!!」

 

 この永続罠《竜巻海流壁(トルネードウォール)》は《海》があってこそのものだ。

 

 

 しかし城之内には解せないことがあった。

 

「な、なんでこのタイミングで?」

 

 そう、永続罠《竜巻海流壁(トルネードウォール)》で戦闘ダメージを無効化できるのであれば《伝説のフィッシャーマン二世》が攻撃された最初の戦闘時に発動しておけばダメージを0に抑えられるのだから。

 

「――いや、まさか!」

 

「そうじゃ! 儂の目的は城之内! お前の攻撃を誘うことにあったんじゃ!」

 

 だがすぐさまその訳を察する城之内。その姿に梶木も満足気だ。

 

「破壊された最後の《イマイルカ》の効果でデッキトップを墓地に! 『水属性』! よって1枚ドローじゃ!!」

 

 散っていった《イマイルカ》の想いを海がさざ波となって示し、梶木の手札を潤す。

 

 そう、梶木の狙いは城之内からの攻撃を誘い《イマイルカ》を破壊させることで手札を補充することにあったのだ。

 

「これでワシの手札は潤った! この程度のダメージは何てことないぜよ!」

 

「くっ……まんまと梶木の策に乗っちまった……だが反省するのは後だ! 今やれることをやるぜ! バトルを終了!」

 

 0枚だった梶木の手札は今や4枚――次のターンで十分に動ける数だ。

 

 相手の思惑の上だった城之内は焦りを見せるも、気持ちを切り替え手札を切る。

 

「俺は魔法カード《馬の骨の対価》を発動!! コイツで効果モンスター以外を墓地に送って2枚ドローだ!」

 

 その城之内の宣言に《ワイバーンの戦士》は膝を突き、城之内に頭を垂れる――いつでも準備は出来ている、と。

 

「《瞬間融合》で呼んだ《メテオ・ブラック・ドラゴン》はこのターンの終わりに破壊されちまうが、これで問題ねぇぜ!」

 

 しかしそんな《ワイバーンの戦士》を余所に《メテオ・ブラック・ドラゴン》が翼を丸めて城之内の背後で小さく丸まった。

 

「《メテオ・ブラック・ドラゴン》を墓地に送って2枚ドロー!!」

 

 その《メテオ・ブラック・ドラゴン》の炎のような暖かな想いが城之内に新たな手札を舞い込ませる――《ワイバーンの戦士》ィ……

 

「よしっ!! 2枚目の《馬の骨の対価》で《ワイバーンの戦士》を墓地に送って、更に2枚ドロー!」

 

 若干恥ずかし気にしていた《ワイバーンの戦士》も城之内に再度かしづき、その剣の腹を両の手で捧げるように持ち上げ、城之内へのドローと変える。

 

「カードを4枚伏せてターンエンドだ!!」

 

 モンスターの溢れていた城之内のフィールドも、今や《真紅眼の遡刻竜(レッドアイズ・トレーサードラゴン)》を残すのみ、4枚のセットカードを背に苦難に負けぬよう小さく喉を鳴らす。

 

 

 結果的に城之内のモンスターは1体まで数を減らしたが、それは逆に言えば「狙われるモンスターが減った」ことでもある。

 

 更には4枚のセットカード――厚い守りを以てして、潤沢な手札を得た梶木の攻勢に城之内は備えた。

 

 

 

 






半魚獣・フィッシャービースト「梶木のデッキは《伝説の都 アトランティス》を軸にしたもの、そして俺のレベルは『 6 』……つまりはそういうことだ」


アナシス「涙を拭くんだっちゅーの! そんでもってこっちのデッキに来いっ!」


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