傷の少女 作:Einsamkeit
未だにオリムラの髪の毛の1本も採取することが出来ずに、ついに一ヶ月程が経ってしまっている。
そろそろ行動を起こさなければならない。
かと言って迂闊に行動すれば、私がスパイであることがバレてしまうかもしれない。
未だに確証の持てる証拠が掴めないとなると策を考えなければならない。
そういえば…クラスの対抗戦の特訓をするとか言っていたな…。
「イチカさん、ちょっと宜しいですか?」
「えっ?あ、ああ、なんだ?フロレン…ティア?」
「フロレンツィア…フロレンツィア・クロイツェルです。気軽にフローラとお呼びください」
「ごめん、フローラ」
「いえ、気にしておりません。あの、特訓をなさるとお聞きしたので、何か少しでもお役に立てることはないかと」
「んー…お願いし-」
「フロレンツィア・クロイツェル、お気遣い結構。一夏には私が教える」
「箒」
面倒なのが来た。
篠ノ之箒、IS開発者の篠ノ之束を姉に持つ。
織斑一夏の幼なじみで、わかりやすい恋心を抱いている。
見る限りはポンコツだ。考えることより先に行動している。
いざとなれば利用できる人材だ。
流石の篠ノ之束も人の血は通っているはずだからな。
「そうですか…。でしたら、私は身の回りのお世話をさせていただきます」
「いらん!私一人でやる!!」
「ですが…」
「いらないと言ってるだろ!!!」
「…ひどい…グスンッ篠ノ之さんは私のことが嫌いなのですね…グスッ」
「箒、謝った方がいいぞ」
「ッ!なんで私が!」
「フローラ、ごめんな。普段から当たりの強い奴なんだ。特別嫌ってるわけじゃないと思うから許してくれないか?な?」
「グスッ…イチカさんがそう仰るなら…私気にしません…。箒さん…私が何かお気に触ることをしたのなら申し訳ありません。…邪魔になるのであれば私は特訓にはー」
「ふ、ふん!勝手にしろ!」
「それは…?その…」
「来るなら来ればいいと言ってるのだ!」
「ありがとうございます!箒さん!」
「良かったなフローラ」
「ええ、これでイチカさんにたくさんご奉仕できます!」
織斑一夏に抱きつき腕を胸にくい込ませ、耳元でそう囁けば奴はたちまち真っ赤になった。
篠ノ之箒の方を窺うと鬼の形相でこちらを見ていた。
その拳は今にもはちきれんばかりにきつく握りしめられている。
「一夏、とても嬉しそうだな?」
「えっ?箒…こ、これは別に…」
すぐさま織斑一夏から離れる。
凄まじい音と共に織斑一夏の頬が赤くなる。
血は…出なかったか…。
まあいい。チャンスはいくらでもある。
「キャアッ!!イチカさん!大丈夫ですか!?箒さん何故こんなことを!?」
「ふんッ!」
「イチカさん、このハンカチをどうぞお使い下さい」
「あ、ああ、ありがとうフローラ」
篠ノ之箒は踵を返しどこかに行ってしまった。
こんな簡単な仕事に手間取ってるわけにはいかない…。
早く、一刻も早くこの手で奴らに…。
お父さん、お母さん、もうすぐだからね…。
もうすこしで、お父さんとお母さんの仇がとれる…。
だからその時まで待っててね。
「ぼーっとしてどうしたんだ?フローラ」
「…いえ、なんでもありませんわ。一夏さん」
不思議そうにこちらをみるオリムラに微笑み返す。
「じゃあ行くか」と歩き始めた奴の背を眺める。
仕事が終われば後は私の自由…。
アイツらにどうやって復讐しようか…。ただ殺しても、この怨みは晴れる気がしない。
…ああ、いい事を思いついた…眼には眼を歯には歯を…だ。
奴らはわたしの大切なものを奪ったんだ…。
ならば私はアイツらの大切なものを奪う…。