王朝戦乱記   作:藤種沟

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今我が校ではテスト週間です。だから更新が大変遅くなりました。

ま、テストのことなんて忘れて小説書くど〜‼︎(勉強しろ)




長盛即位

「こ、これは………」

 

そのきたない箱の中には、綺麗な宝石でできた勾玉が入っていた。

 

「何ですか?これは………」

 

いつもは冷静な喜条 長隆も不思議な顔をしている。

 

「これはな………」

 

長隆の兄、喜条 長盛はおもむろに口を開いた。

 

「これは我が父が残した、『三種の神器』のひとつじゃ。」

 

「三種の神器⁉︎」

 

神器は確か喜条軍の敵、武花 冴長の居城にあるはずである。現に長隆はそれを追っていたのだ。しかも神器はいわゆる、「蛇の剣」、「太陽の鏡」の二つだけであったはずだ。それがなぜ…………?

 

「長隆はまだ幼かったから覚えておるまい。その昔、まだ我が一族が王族であった頃の話だ。私とおぬしは、父からよく聞かされたものだ。『おぬしたちが朕の後を継いだらこの三種の神器を持って天下を治めよ』とな。

そして、父が天子の位を追われた時、わしはその三種の神器のうち、この勾玉と幼いおぬしを連れて逃げ延びたのだ。」

 

長隆は、その話を初めて知った。

 

「つまり我々が倒した皇帝は神器を三種類持ち合わせていなかったから正式な皇帝ではなかったわけだ。」

 

「………」

 

しばらくの静寂を噛み締めた後、長隆はこう兄に聞いた。

 

「しかし兄者。勾玉がここにあるとは申せ、神器は三種集めねば意味がありません。やはりあそこで私が退却したのは間違いではありませんでしたか………」

 

その通りである。この話は別に急いで軍を引き返させなくとも、戦が終わった後でも聞けた話である。

 

しかし長盛は首を横に振った。

 

「わしはな、今すぐ天子の位につく。おぬしを即位の儀に出席させるためにわしはおぬしを退却させたのじゃ。」

 

長隆には話の意味が分からなかった。

 

「しかし神器が無ければ………」

 

「勾玉ならここにある。」

 

「俺は鏡と剣の話をしておるのじゃ‼︎」

 

長隆は声を荒らげた。

しかし、長盛は全く冷静である。むしろやっと帝位につくことができる、とウキウキしているものだから周りが見えないのではないか、と長隆が思うほどだった。

 

「よいか?わしは皇帝であった父の嫡男ぞ。皇帝の嫡男が帝位について何が悪い。」

 

「しかし………」

 

長盛は「はぁ〜」と息を漏らす。

 

「分からん奴だな。わしは仮に帝位につくだけだ。仮に皇帝となった後、改めて敵と戦うのだ。

『本当の皇帝が奪われた神器を取り返す』

という風な形で戦えば世間に聞こえが良いし、兵の士気は上がる。

そしてまた改めて正式に皇帝になればいい。」

 

「………‼︎」

 

長隆は唖然とした。

はっきり言って、兄長盛がこんな策を練るとは思いもよらなかったのだ。しばらく唖然としていると

 

「長隆‼︎急ぎ即位の儀の準備をせい‼︎我が兄弟の悲願がついに叶う時が来たぞ‼︎」

 

「ぎ、御意‼︎」

 

 

 

 

直後、喜条 長盛は第19代皇帝に即位した。

それは名臣や青龍寺の守ってきたものが完全に崩壊した瞬間だった。

 

さらに長盛は弟長隆を軍の最高司令官に任命し、武花 冴長、名臣 翔彦の追討を命じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長盛即位の報は武花城にも届いた。

 

「な、なんと長盛が………即位………?」

 

名臣は信じられなかった。

一体自分は何のために姫や神器を持って皆を見捨てて逃げ延びたのか。

一体青龍寺は何のために死んでいったのか。

王妃や姫ももはや王族からただの人になってしまったのだ。

 

「あなたは結局、何も守れなかったのね。父上最大の失敗はあなたのような役立たずに王朝のことを任せたことだわ。」

 

姫の心は完全に崩壊していた。

無理もない。父親と兄が死に、王朝が崩壊したのだから。

 

さすがの王妃も朝から部屋にこもって泣いている。

 

名臣の心には罪悪感の文字が焼き付いて離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと、名臣は一振りの小刀を手に持って城の一室に一人たたずんでいた。

「それがし、最期まで王朝のためになることができませなんだ。」

 

名臣の目に、涙が浮かんでいた。

 

「王朝のこと、任されておりながら情け無い次第………」

 

名臣の脳裏には、皇帝と共に理想の国をつくろうと東西に駆けた時のことが思い浮かんだ。

 

「皇帝陛下‼︎皇太子殿下‼︎青龍寺殿‼︎今そちらに参りまする‼︎」

 

今、一人の若武者が命を絶とうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「名臣殿‼︎」

 

名臣の喉元に小刀の切っ先が触れかけたその時、武花が急いで部屋に入ってきた。

 

「大変だ名臣殿‼︎引き上げたと思ってた喜条軍がかえってきた‼︎急いで戦支度を‼︎」

 

そう言うと武花はまた走り去っていった。

しばらく名臣は呆然としていたがすぐ正気に戻った。

 

「あの男も割とそそっかしいな。」

 

名臣は苦笑した。

どうやら武花は焦りすぎて名臣が何をしようとしているかよく分からなかったらしい。

 

「ま、最期にまたひと暴れするのも忠義というもの。」

 

名臣はそう呟くと鎧を身に付け、槍を持って部屋を出た。

 

 

 

 

名臣が城の外を見ると城はすでに喜条軍に包囲されていることが分かった。

 

「ああ、名臣殿。」

 

武花が名臣を見つけ、寄ってきた。

 

「喜条軍の行動力は半端ではないな。」

 

「いったりきたり大変だろうな。」

 

名臣はそう皮肉を言ったが、あまりそう言ってられる状況ではないらしい。何でも敵の数は十万を越すそうだ。

 

「いやはやかの喜条殿に十万の兵をよこされるとはこの武花 冴長も偉くなったもんだ。」

 

若き城主はそう冗談を言ったものの顔はひきつっていた。

 

「…………とりあえず軍議を開こう。」

 

二人の若武者は軍議の部屋に急いだ。

 

 

 

 

 

〜喜条軍の陣〜

 

「やつらめ突然十万の兵があらわれてさぞ驚いていよう。」

 

ハッハッハと喜条 長隆は笑った。

 

「左様ですな。ところで総攻撃はいつでござる?」

 

長隆はくるりと振り向くと

 

「総攻撃はせぬ。」

 

と、さらりと言ってのけた。

 

「そ、総攻撃はしないのですか⁉︎」

 

兵はすっとんきょうな声を出した。

 

「左様。こうして城を取り囲み、武花の心が揺れ動くのを待つ。」

 

「と、申しますと?」

 

兵はあまり言葉の意味が分からなかった。

 

「まだ兄者が即位したばかりで、あまり国の基礎は固まっておらん。だからあまり大きな戦をして、損害をだすほど余裕はないのじゃ。

そこでこうして武花を脅し、首尾良く降伏を持ちかけるのじゃ。」

 

「なるほど…………」

 

兵はようやく納得できた。

 

その横で、長隆はまた高笑いをした。

 

「ハーッハッハッハ‼︎」

 

 

 

 

 

 

〜軍議の席〜

 

「相手は十万もいるのだ‼︎城に籠るのが賢明‼︎」

 

「何を言うか‼︎ここには二万の兵がいるのだ‼︎じきに兵糧も底をつく。ここは打って出て包囲網を突破するのが得策‼︎」

 

「もういっそのこと降伏を…………」

 

「何を弱気な‼︎論外だ‼︎」

 

ピーチクパーチク…………

 

「武花殿。」

 

名臣は武花に話しかけた。

 

「いつもこんなに意見がバラバラなのか?」

 

「うむ…………一応それがしがまとめ役なのだが…………元は皆、それぞれの土地を治める豪族。意見は皆違うんだ。」

 

ギャーギャー‼︎

 

「いつもこんなんでまとまるのか?」

 

「うう…………微妙。」

 

そんな時、伝令が軍議の席にやってきた。

 

「申し上げます‼︎喜条軍の軍使がやって参りました。」

 

「何⁉︎ここへ通せ。」

 

「御意‼︎」

 

ザワザワ…………

部屋が少しどよめき始めた。

 

しばらくすると喜条軍の軍使が武花の前にあらわれた。

 

「喜条軍代表、輪木 夜九(わき やく)でござる。」

 

「武花 冴長だ。」

 

軍使は武花に一礼すると、口を開いた。

 

「この度お伺いしたのは他でもない。貴殿との講和を取り付けたく、ここへ参った。」

 

「…………‼︎」

 

「何?」

 

「どういうことだ?」

 

部屋にどよめきが広がる。

 

「そもそも我ら喜条家と武花家は先祖代々盟友として協力してきました。此度のクーデターも喜条家の王位を回復するためであり、決して武花家と対立するためではありません。武花家と戦うことを我が君はとても残念に思っております。そこでこうして講和を結ぼうと馳せ参じました。」

 

軍使はつらつらとそう言ってのけたが、喜条が戦いを残念に思っているだなんて嘘だろうな、と名臣は思った。

 

ザワザワ…………

しかしざわめきは収まらない。

 

「講和の条件は?」

 

武花はとっさに尋ねた。

 

「一つ、ここで保護している王妃、姫、そして旧王朝の遺臣名臣 翔彦の身柄をこちらに引き渡す。

一つ、三種の神器のうちの『蛇の剣』、『太陽の鏡』を引き渡す。

一つ、喜条軍は直ちに武花城の包囲をとく。

一つ、「皇帝」喜条 長盛は武花 冴長を将軍の位に封ず。

 

以上。」

 

「何と…………」

 

「名臣殿らを引き渡す?」

 

皆のざわめきがさらに大きくなった。

 

「これは非常に重要なことゆえ皆と話し合って決めたい。返事は後日でもよろしいかな。」

 

武花はそう答えた。

 

「かしこまりました。良い返事を期待しております。」

 

そう言うと軍使は部屋を出た。

 

 

 

 

「講和だ‼︎戦がなくなるならこれに越したことはない‼︎」

 

「しかしそれでは保護している姫たちはどうするのか?ここで見捨てては武花家は末代まで義を知らぬと笑い者になるであろう。」

 

「今は名誉にこだわっている時ではない‼︎」

 

「笑い者の汚名をきてまで生きながらえたいのか⁉︎おぬしは良いかもしれんがここにいる全員がその汚名を着ることになるのだぞ‼︎」

 

「ならばおぬしは二万の兵で十万の喜条軍に勝てるのか⁉︎我々が我慢すれば民が戦火から免れるのだ‼︎」

 

「おぬしは武花家に対する忠義がないのか⁉︎」

 

ピーチクパーチク…………

 

「武花殿…………」

 

名臣は武花を見つめた。

ここで見捨てられては名臣や姫は路頭に迷うことになる。武花の決断は、王朝が再興できるかできないかの重要な決断であった。

 

「…………」

 

武花は固く口をつぐみ、眉間にしわをよせていた。

まだ若い武花にはこの決断は本当に難しいものだった。

 

「しばらく…………一人にさせてくれ。」

 

そう言うと武花は部屋を出た。

 

王朝の再興の是非は、この若武者の両肩に委ねられたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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