主に占ツクで(同じ名前で)活動しています。
剣を振るい続け数十年。
気づけば剣士の頂上、剣帝にまで上り詰めていた。
そして上り詰めて数年、闘いを申し込む輩は星の数。俺に敵う者などいるはずもなく膝を着き屈する者も数知れず。
闘いを申し込む者の内一人を除き記憶に残る闘いなどするものはいなかった。
「メイソン!」
その男は馬鹿でかい声で俺の名を叫び、そして他の剣士たちと同じように俺の前に屈した。
それがいつだったか、どのような経緯だったのか、はっきりとは覚えていない。ただひとつ覚えているのは、
「いつか……必ずッッ、俺がお前を倒す!
だからそれまで、待っていやがれ!」
一度も死ななかったその目。
一つのものを追い求めるその目。
「……名前はなんだったか。」
確か、ルークと言っていたような……。
そうだ、ルークと言う男だった、あの男は。負け犬にしては面白い輩だった。
まあ、所詮あの言葉も負け犬の遠吠え、ただの戯れ言にしか聞こえなかったが。
そう、戯れ言なのだ。
あの男は、成り上がりの、無名の、思い上がりの、ただの、
剣士。
だというのに俺は、今。
「うォォォォォ!!!」
何故こんなに焦っている。
何時ものように軽くあしらえない。
その闘争心を折れば良いだけだと言うのに。
ただ、それだけなはず。
「俺が、今日から、剣帝だ!!」
「ふざけたことを……!」
あの日のあの言葉が痛い。
ただの負け犬の、ただの敗者のあの言葉が。
耳から離れない。
「……ぅ、」
思わず漏れた呻き声。状況だけを見れば俺が優勢だというのに、お前の完全なる劣勢だというのに。
何故目が死なない。
何故この瞬間瞬間に強くなる。
何故_____。
「俺が、必ず、お前を……倒す!」
その言葉が呪いのように体の自由を奪っていく。
闘うと共に強くなる、一撃一撃が変わって行く、俺を追い詰めて行く。
そんな馬鹿なことがあるかと叫びたい。しかしそれは紛れもない真実で。
これが才能の違いか、とそんな言葉が頭をよぎった。
努力だけでここまで来た俺は所詮秀才ではあっても天才ではない。
天才しか見ることができないその景色を俺は一生見ることはできない。
剣帝になれどもその世界に俺は入ることすらできない。
「ルーク……ッ」
お前は見えているのだろう。俺の立ち入ることすらできないその世界が。
お前は持っているのだろう。俺が望みそして叶わなかったその才能を。
お前は知っているのだろう。負け犬がどちらであるのかということを。
カラン、と乾いた音がやけに大きく響いた。
ただただ痛いと思った。
言葉とはこんなに痛いものなのか。
あの日のあの言葉も今日口にしたあの言葉も、全てがまるで呪いのように。
あの日のあの言葉が、負け犬の遠吠えが、
心臓を貫いた。
【完】
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。