「これで……ッッ、俺の勝ちだメイソンッッ」
そう叫び剣を構え闘志の塊となって俺に向かってくるルークを俺はどうにも他人事のように感じていた。
ろくに構えもとらずただここで倒されることを運命として受け入れるかのように、ただ立っていた。
ルークの渾身の一撃をもろに食らい吹っ飛びながら諦めの言葉を呟いていた。
俺も昔はあんな風に感情そのままに一太刀一太刀を振るえていたのだろうか。闘志を燃やし己の道を突き進むことに、腕を上げていくことに喜びを感じていたのだろうか。
「もう、良い……」
疲れたのだ、俺は。
才能ある者達に抜かされ貶されることを怖れ剣帝として生きることはもう疲れた。これが潮時だろう。剣帝の名を次世代に託すときなのだろう。
ここでこの才能ある者に敗けて終わりにしよう。俺はよく頑張ってきた。一度も負けずに、剣帝の名を守ってきた。
無敗の男として何年もの間、たった一人で、剣を振るい続けてきた。もう充分な筈だ。
吹っ飛ばされ瓦礫の山に突っ込んで、あぁこのまま意識でも飛ばしてしまえば終わるのかと目を閉じた。
「お前、弱くなったな」
ルークの言葉が耳に届いた。
それは嫌味ではなくルークの心からの言葉。
弱くなった?そうだろうな、お前には分かるまい。天才にはなれない凡人の気持ちが。終わらせたいんだ、さっさと勝利の叫びでも上げろ。
「お前なんか倒しても、剣帝になれねー」
黙れ小僧。もういいだろう、何がしたいんだ。
俺は破れたんだ。それでいいだろう。
「めんどくせぇこと考えてんじゃねぇ!
剣帝だろ!メイソン!お前との闘いを俺がどれだけ待ってたと思ってんだ!」
面倒くさいこと?あぁ、考えている。
お前のように、ただ感情ままに剣を振るえたのはいつだったか、とな。あの頃の俺はただ強さを求めていた。剣を振るうこと事態が楽しくて幸せで。剣帝に憧れ、敬い、焦がれ……。剣帝と名乗るためお前のような天才には分からないであろう努力をし続けた。剣を愛していた。
……もうそんな経験は二度とないだろうが。
「お前は俺の英雄で、憧れなんだよ……!!」
英雄、俺が?
笑わせる。
「こんな無様に敗けてんじゃねぇよ!!」
カチャッと剣の刃の向きを正す音がした。
また向かってくるつもりか小僧。
……いつかお前は英雄になれるだろう。俺は、お前が羨ましい。
そのお前が俺を憧れと呼ぶのなら。
俺はお前のその言葉に答えてやろう。
一度膝を折ったことを剣帝としての恥と呼ぶのなら
剣帝の名を棄ててでも良い。
「……俺は今、剣帝の名を棄てる。
ただの一剣士として!俺の名を侮辱した貴様を許しはしない!」
望み道理憧れとしてお前を倒してやろう。
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