主催者による修正指示前のものですので一部掲載分と違う箇所があります。
二〇一七年八月。
年に四回の大規模作戦のうちの一回も佳境を迎えた日。
俺は長い夢を見た。
この長い長い戦いが、誰一人欠ける事無く終わり再び世界に仮初の平和が訪れる夢。
そこで俺は、幸せそうな表情の、愛しい彼女と結ばれていた。
嗚呼——これ程までに暖かい夢を見たのはいつ以来か。少なくともここ数年見た記憶がない。
こうして幸せな気持ちのまま、俺の意識は覚醒へと向かっていく。
次第に目が開いていくと、そこにあったのは紅と白のコントラスト。だが俺の記憶の中にこの二色の組み合わせの物など無い。とすると誰かの私物だろうか。
「あ、起きた。おはようございます、提督」
突然上の方から声がかかる。
声のする方を向くと、そこにいたのは愛しい人——瑞鳳だった。
次第に目が冴えてきて、自分の状態がだんだんと分かってくる。
紅と白のコントラストは彼女の服の一部分で、頭は太股の上。所詮膝枕の体勢だった。
きっと彼女がこうしてくれたから、あれほど暖かな夢を見ることが出来たのだろう。
だけどどこか恥ずかしくて思わず、起き上がろうと身じろぎをしてしまう。
「て、提督ぅ。擽ったいから動かないで!」
どうやらそれがくすぐったかったようで、顔をほんのり赤らめながら彼女は言う。
その表情は余りにも煽情的で、思わず苛めたくなってしまう。
起き上がるのを諦めると、そっと彼女の格納庫へと手を這わせいつものように弄り始める。
「んっ、提督?やめないと今日の卵焼き、作らないよ?」
それは困る。と弄るのを中断し手を離す。瑞鳳の卵焼きが食べられなくなる、というのは生死に関わってしまう。
それにしても——
「どうして瑞鳳は俺のことを膝枕していたんだ?」
「それは……て、提督が疲れてたからこうすれば元気になるかなって」
「そうか。ありがとう」
これはきっと彼女なりの労いなのだろう。
瑞鳳は先ほどまでよりもさらに顔を赤らめ、恥ずかしそうにうつむく。
結果、その表情は余すこと無く俺の視界へと飛び込んでくる。
「やっぱり瑞鳳は可愛いな」
思わずそんな言葉が漏れる。きっとこの表情は『ケッコン・カッコカリ』をした俺にだけ見せてくれる表情なのだろう。
「提督……恥ずかしいからそう言うこと言わないでよぅ」
流石に苛めすぎた過ぎたかな、と思う。
「ごめん、苛めすぎた。そろそろ仕事に戻らないとだし……わざわざありがとな」
「まって。せっかくだし耳かきしてあげよっか?」
どこからともなく耳かきを取り出しながらそんな事を言う。いったいどこから取り出したのだろうか。
「あ、いや……汚いし……」
「もう。気にしなくていいの!それにその方がやりがいもあるし。ね?」
「そうか。じゃあ頼むよ」
結局、押しに負けてしまった。
「じゃあまずは向こうを向いてね」
言われるがままに後頭部を瑞鳳へと向ける。
「じゃ、じゃあやるよ」
どこか緊張した声と共に耳かきがそっと耳たぶへ触れる。カリカリと軽快な心地よい音と共に周りにまでついてしまっている汚れが少しずつ落ちていく。
「次は中だね」
決して傷を付けないように、慎重な手つきで耳かきが耳の中へと入ってくる。
カサカサと入り口付近の粉状の耳垢を掻き出しながら、奥へ奥へと耳かきが入ってくる。ガサゴソと大きな音を立てながら俺の耳垢は掻き出されていく。決して痛くならないように加減されたそれは瑞鳳の膝枕と併せてとても気持ちが良い。まるで耳が犯されているような気分になってくる。
「ねえ提督、気持ちいい?」
「ああ。凄く気持ちいいよ」
そんなちょっとした会話を挟みながら、瑞鳳の耳かきは続いていく。
ふと、瑞鳳の手が止まる。
「どうした?」
「ちょっと待って、すごく大きいのが」
そう言うやいなや瑞鳳は耳かきを先ほどよりも奥へと入れる。ガサリ、ほんの僅かな痛みと共に一段大きな音がする。それは見ていなくても大きいと感じられるような音だ。
そんな事を思っていると、瑞鳳は小さく息をつき、ゆっくりと落とさないようにそれを掻き出す。
「見て、提督。こんなにおっきいの取れたよ」
そう言って手のひらに載せた耳垢を目の前へ持ってくる。
「こんなに大きいのが入ってたのか」
それは明らかに大きい部類に入るもので、こんなに大きなものが入っていたのかと思わず感心してしまう。
「じゃあ次は反対の耳だね。私の方を向いてね」
言うとおりに向きを変える。すると目の前に瑞鳳のお腹が来るわけで。瑞鳳のそこからはとてもいいにおいがした。
「危ないから絶対に動いちゃダメだからね。特に弄るのは絶対ダメだからね」
こうしてまた、耳かきが再開される。やはり瑞鳳の耳かきは気持ちよく、さらには太股の柔らかさとお腹周りの良いにおいも相まって思わずウトウトしてしまう。
そのまま、あまりの気持ちよさに意識を手放した。
ふー。ふー。
耳に感じる音で目が覚める。
息を小さく吸っては耳に吹きかける。
たったそれだけの動作なのにとてもくすぐったくて、気持ちがいい。
「提督、気持ちよかった?」
「ああ。凄く気持ちよかったよ。ありがとう」
「えへへ。よかったぁ」
そう言ってはにかむ瑞鳳は今までで一番と言っても良いレベルに可愛かった。
「じゃあ次は俺がやってやるよ」
これはちょっとしたお礼。本当は間宮で何か奢ってあげる方が良いのかも知れないけど、せっかく耳掃除してくれたのだから瑞鳳にもしてあげたいと思った。尤も個人的な欲求の方が大きいのだけれど。
「で、でも……提督に悪いし……」
「いいからいいから」
渋る瑞鳳をひょいと持ち上げてから横たえる。
勿論頭は俺の太股の上。
これで先ほどまでとは完全に立場が逆転した。
さっきの瑞鳳のように上手く出来るかは分からないけど、気持ちいいと言って貰えるように頑張らなくては。
「じゃあ行くぞ、瑞鳳」
「はい。よろしくお願いします、提督」
こうして平穏な時は過ぎていった。
初めまして。 今回初めて小説で合同誌に参加させて頂きました、はっちゃんです。 公式で発売された小説を読んで以来一気に瑞鳳が好きになり、いつか文字にしたいと思っていたのでこの機会にと参加させて頂きました。 感想等下さると幸いです。 耳かきへの拘りとアドバイスをくれた友人のkさんにはこの場を借りてお礼申し上げます。
以上掲載時の後書きです