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「わーたーしーがー!!」
「戦車で」
「普通にドアから来っ…緑谷少年!!変な言葉付け足すのやめて!!」
午前は必修科目・英語などの普通の授業。昼は大食堂で一流の料理を安価で頂ける。そして午後は待ちに待ったヒーロー基礎学!あのオールマイトが教鞭を取るなんて、朝に聞いてなければ卒倒ものだ。現にクラスの皆も興奮しっぱなしだ。僕も興奮しすぎて茶々入れちゃったし。ごめんなさいオールマイト。
「ゴホン!!気を取り直して…ヒーロー基礎学とは!ヒーローの素地を作るため、様々な訓練を行う科目だ!!早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」
「戦闘……」
「訓練…!」
戦闘と聞いて何人かの表情が歓喜に染まる。戦闘向きの個性を持つ人にとって、これほど待ち望んだ授業は無いだろう。
まあ僕もそのうちの一人だけどね!!ようやく個性を思いっきり使える!!
「そしてそいつに伴って…こちら!!」
オールマイトが壁を指差すと、壁に切れ目が入って棚が飛び出てきた。中には番号の割り振られたケースが入っている。
「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた…
「「「おおお!!!」」」
ボルテージが最高潮に達した声ッ!!そう、ヒーローになるなら欠かせない要素、コスチューム!!これでテンションが上がらないヒーロー科はいないだろう!
「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」
「「「はーい!!!」」」
皆が次々にケースを持っていくが、僕は自前の大きなリュックを抱えていた。そう、この中に入っているのはお母さん特製のスーツだ。
この高校には被服控除という制度がある。入学前に個性届と身体情報を提出する事で、学校専属のサポート会社が最新鋭の技術を詰め込んだコスチュームを用意してくれる。要望を添付するとそれが反映される仕組みであり、例えば高くジャンプしたいとかなら足裏にバネが仕込んであったり、赤色が好きなら赤を主体にしたスーツになるという寸法だ。
僕もコスチュームを用意してもらおうとしていたんだけど、なんとお母さんが入学祝いとしてコスチュームを仕立ててくれていたのだ。
……寝落ちしていた時に開いてたノートを参考にされたのは心にダメージを受けたけどね。
このコスチュームは応援してくれている母の気持ちだ。これを着ずして何を着る!?便利じゃなくたって、最新鋭じゃなくたっていい。
これが僕のコスチュームさ!!
~~~~~~~~
「よし!これで全員揃ったかな?……む、緑谷少年がまだか…」
「――遅れてすいません!!」
「おお!来たか緑谷少ね……んん!?」
どうやら僕が一番最後だったみたいだな。ヒーローたるもの、着替える時も迅速にってやつか。これから精進しないとね。
キュラキュラキュラ…ん~心地いい響きだ。流石お母さん、僕好みのいいコスチュームに仕上がってる。移動速度が遅いのが難点だけど、射程の長さでそれもカバーできる。
僕がこのコスチュームの出来栄えに感銘を受けていると、オールマイトがいつもの良い笑顔で僕に近づいてきた。ただでさえ大きなオールマイトの体が、このコスチュームを着ていると更に大きく感じるな。周りの視線が集中しているのも、このコスチュームのあまりの出来に目を疑っているのだろう。
「み、緑谷少年…だよね?」
「はい!そうです!」
「……そのコスチュームは一体?」
「やだなあ、どこからどう見てもガンタンクじゃないですか」
「名前聞いてるんじゃなくてね!!確かに君の個性は出てるけど、前面に押し出し過ぎじゃないかな!!」
「そうですか?そうかなあ…?」
これほど僕らしいコスチュームは無いと思うんだけどな。腕のポップミサイルランチャーを眺めていると、斜め後ろから怒鳴り声が飛んできた。
「先生の言う通りだ緑谷君!!とてもじゃないが、その格好で戦闘が行えるとは思えない!!よもやふざけているのではあるまいな!?」
「その声…飯田君?ごめん、これ着てると腰が回らないから前に来て喋ってくれない?」
「それは欠陥ではないのかい!?」
ぶつくさ言いながらもきちんと前に来てくれる飯田君はやっぱり真面目だ。おお、飯田君のコスチュームメカメカしくてカッコいい。個性がエンジンだから車をモチーフにしているんだろうか。
「飯田君、そのコスチュームイカしてるよ」
「今は俺のことより君のコスチュームの話だ!!それは何のつもりだ!?」
「ガンタンクのつもりだけど」
「そういうこと聞いてるんじゃなくてだな!!」
「というかよ…それ、どうやって着てんだ?大分ちっちゃくなってるみてえだけどよ」
「ええと…この声は切島君であってる?」
「おう!」
顔見えないけど、恐らく笑顔で返してくれた切島君。このモビルスーツはキャタピラ部分に足を折りたたんで着なくてはならないため、常に正座の状態になっている。悪路だと足が痛くてしょうがないぜ!
「つまり座ったままで動いてるのかよ…」
「それ辛くない?」
「母の気持ちがこもったこのスーツ、ちょっとやそっとじゃ脱がないよ」
「お母さん作ったのそれ!?」
イヤホンガール、耳郎さんが驚いていた。僕もこの再現率には驚いたよ。
「どんな経緯でそのコスチュームの作成に至ったんだ…」
「ふふ、それはね、僕が寝落ちしてた時に密かに書き留めていたノートを見られるという黒歴史から生まれたのさ……」
「緑谷…もういい。無理に喋るな」
「常闇君…」
常闇君が僕の気持ちを察して優しく肩に手を置いてくれた。心遣いに涙が出そうだ。肩のキャノン砲が邪魔でごめんね。
「ねーねー緑谷君。気になる事があるんだけどさー」
「ええと…誰?顔が見えないから分かんないよ…」
「私は元から見えないよー♪」
「って事は葉隠さんだね?なに?」
「んー……とう!」
「どわ!?」
透明人間の葉隠さんが話しかけてきたと思ったら、突然横から押されて倒れてしまった。
「いきなり何するのさ葉隠さん!ちょっ…このスーツ一人じゃ起き上がれない!!」
「やっぱり!そうだと思ってたんだよねー!」
「うわああ起きられない!!誰か助けてぇぇぇ!!」
葉隠さんは無邪気に喜んでるっぽいけど、こっちはそれどころじゃないよ!バタバタ暴れている僕に何人かが手を貸してくれて、どうにか起き上がる事ができた。
「ふう、助かったよ…」
「あはは、災難だったねデク君」
「まったくだよ麗日さ……おぉぉ…!!」
麗日さんのコスチューム姿を見て変な声が出てしまった。僕の視線を感じてか、麗日さんはほんのり頬を染めて照れ笑いをする。
「もっと詳しく要望書いておけばよかったよ…。パツパツスーツんなった。恥ずかしいな…」
「ヒーロー科最高」
「Exactly(その通り)」
覆面スーツの峰田君と拳をぶつけ合って男の友情を結んだ。峰田君、ガンタンク状態の僕より小さいのか…。
「それでオールマイト先生、ここって入試の演習場みたいですけど、また市街地演習をやるんですか?」
「それはこれから説明を…って緑谷少年!!本気でそのコスチュームを着て戦闘訓練を行うつもりかね?」
「止めといたほうがいいと思うぜー。動きもとろそうだし良いカモになっちまうぞ」
「その分射程が広いから問題ないよ。ここからなら演習場のどこでも砲撃できるし」
「マジであんたのお母さん何者なのよ!!」
「でも、近づかれたら厳しいんじゃない?見たところ近接戦闘は不得意そうだけど」
「僕が戦車を呼べるって忘れてない?戦車に白兵戦仕掛けるなんて自殺行為もいいところだよ」
「……あれ、緑谷が一番危ない気がしてきた」
「おーい!!談笑もそこまでにしたまえ!!初回とはいえ、戦闘訓練なのだから気を引き締めてかからなければいけないぞ!!」
「!!!」
オールマイトの号令で皆が真面目な表情に切り替わる。特に僕はこの手の授業じゃ不慮の事故を起こす可能性が一番高い。待ち望んでいた個性を思い切り使える訓練だけど、浮かれていては入試の二の舞になってしまう。
「ではまず今日の訓練の内容だが、皆が入試でやった市街地演習の更に二歩先に踏み込む、屋内での対人戦闘訓練を行う!!」
…………え?こ、こんなだだっ広い演習場があるのに、屋内?
ていうか、それってもしかしなくても…。
「ヴィラン退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪ヴィラン出現率は高いんだ。監禁、軟禁、裏商売…このヒーロー飽和社会ゲフン!!…真に賢しい敵は
「基礎訓練も無しに?」
「その基礎を知るための実践さ!ただし今度はぶっ壊せばオーケーなロボじゃないのがミソだ!」
「勝敗のシステムはどうなります?」「ブッ飛ばしてもいいんスか」「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか…?」「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか」「このマントヤバくない?」「え、また戦車使えないんじゃ…」
「んんん~聖徳太子ィィ!!!」
いかにオールマイトといえども、この量の質問に一気に答えられなかったらしい。ていうか質問じゃないの混じってたし。僕とか。
「いいかい!?”敵”がアジトに”核兵器”を隠していて”ヒーロー”はそれを処理しようとしている!”ヒーロー”は制限時間内に”敵”を捕まえるか”核兵器”を回収する事、”敵”は制限時間まで”核兵器”を守るか”ヒーロー”を捕まえる事!!」
カンニングペーパー見てらっしゃる…!オールマイトも先生やるのは初めてなんだな…。
「コンビ及び対戦相手はくじだ!」
「適当なのですか!?」
「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップする事が多いしそういう事じゃないかな」
「そうか…!先を見据た計らい…失礼しました!」
「いいよ!!では最初、緑谷少年!引きたまえ!!」
「あ、この手だとくじ引けないので余りでいいです」
「………君、ホントにふざけてないよね?」
~~~~~~~~
「一緒のチームだ!縁があるね!よろしくね!」
「こ…こちらこそ…!」
余り物には福がありましたっ!なんと麗日さんとチームアップだ。同じスタートライン。同じヒーロー科。だけど彼女に良いところを見せたいというのはおかしい事でしょうか!?
「チームは割り振り終わったね!では最初の対戦相手は…」
オールマイトがヒーローとヴィランと書かれた箱に手を突っ込んだ。
「こいつらだ!Aコンビがヒーロー!Dコンビがヴィランだ!!」
……マジですか。Aコンビは僕と麗日さん。Dコンビは…。
「君達か…訓練とはいえ敵になるのは心苦しいが、手を抜いたりはしないぞ」
「デクゥゥゥ…!!!」
飯田君とかっちゃんのコンビ…もっかい言うけどマジですか。
「ヴィランチームは先に入ってセッティングを!5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで観察するぞ!」
Dチームが一足先にビルに入っていった。……やべえ、どうしよう…。
「戦車使えないし、ガンタンクスーツも役に立たない…!」
この高校は戦車に厳しすぎやしませんかね…?僕の個性がそれほど使いづらいとも言うけど…。
「屋内戦闘じゃガンタンクの射程が死ぬし…核兵器を保有してるなら外から砲撃も危な過ぎてできない…」
「デク君、新しいコスチューム頼んでみたら?ヒーロー基礎学ってきっと戦闘訓練だけじゃないだろうし、それだけじゃキツイよ」
「ああいや…コスチュームはもう1つあるから」
「……え?」
実はガンタンクの他にもう一着、オールマイトをモチーフにして僕がデザインしたコスチュームも作ってくれていた。本人の前で着るのは恥ずかしかったからガンタンクを選んだんだけどね。
「……普通のコスチューム?」
「ん?まあ…そうだね」
「そっちにしたほうがいいんじゃない?」
「え……でもガンタンクだって戦法次第で屋内戦くらい…」
「着替えたほうがいいよ」
「いや、でもほら」
「デク君」
「はい」
「着替えて」
「…はい」
…………怖ぇ!!!体力づくりの最中、背負った戦車に潰されて死にかかった時と同じ感覚がしたぞ!麗日さんはガンタンクスーツはお気に召さなかったようだな…。男の浪漫は女の子には理解されないものか。
急いで着替えてきたコスチュームは麗日さんに絶賛された。地に足がついた感じがカッコいいとか……キャタピラだったから駄目なのかな。
「はいこれ、建物の見取り図。覚えないとねコレ。…それにしても、相澤先生と違って罰とか無いみたいだし安心したよ」
「え…?僕は今にも緊張でぶっ倒れそうだけど…?」
「そうなんだ!!」
「その…相手がかっちゃんだし…それに飯田君もいるし…」
「…そっか、爆豪君って馬鹿にしてくる人なんだっけ…」
「凄いんだよ、嫌な奴だけど…。目標も自身も体力も僕なんかより何倍も凄いんだ」
かっちゃんとは家が近所だったってことで幼馴染だった。神に愛された…は言い過ぎだけど、才能に溢れていて何でもやってのけてしまう。ガキ大将で乱暴者だけど、自信に満ちたかっちゃんの背中は僕にとってかっこいいものでもあった。
けれど、個性が発現してからはそれらが悪い方向へ加速した。僕のノートを爆破したり、僕のノートを爆破したり、僕のノートを爆破したり……なんか腹立ってきた。
幼馴染っていったって、かっちゃんは僕を対等な存在だとは思っていないだろう。せいぜい道端の石ころ位の認識?元々無個性だったし、僕に対しては見下す傾向が強かった気がするし。
「なら、この勝負は男のインネンってヤツだね…!?」
「いや、今回そういうのは全部捨てるよ」
「えっ」
負けたくないとは思ってる…けど、今回はあくまで授業だ。自分の感情を優先させて動いたら麗日さんにまで迷惑がかかる。かっちゃんとはもっと…遠慮のいらないステージでボコボ…戦いたい。だから今はまだその時じゃないんだ。
「じゃ、作戦立てようか。まずは勝ち方をどっちに絞って動くかだけど…」
「あ、うん。どうする?」
「きっとかっちゃんは僕を親の仇みたいに追っかけてくると思うから、戦闘自体は避けられそうにないよ」
「じゃあ、私とデク君で迎え撃つの?」
「いや、それだと時間制限が厳しい。たった十五分しかないのに、かっちゃんだけにそんな時間はかけられないよ」
「だけ?飯田君と組んで来たりしないかな?」
「かっちゃんは僕を潰す事で頭がいっぱいなはずだから、飯田君と連携を取ろうなんてまず考えない…と思う。だから僕がかっちゃんを足止めして、その隙に麗日さんが核を探し出してほしいんだ」
「見つけたら確保、だね!」
「ううん…かっちゃんが一人で飛び出したなら、飯田君は核の見張りに着くはずだから、僕も合流して二人で確保しよう。一対一じゃ、飯田君のスピードには追い付けない。敵側は制限時間まで核を守り切れば勝ちになるから、無理に戦おうとは思わないだろうしね」
「……なんか、デク君の負担大きくない?」
「麗日さんがかっちゃんの相手できるなら代わるけど…」
「よろしくね!男の子!」
「うん…そうなるよね」
作戦も決まり、訓練スタートの時間が迫る。……オールマイトも見てるんだよなコレ。やっべ緊張する…。上手くいくかな…。
プレッシャーに押し潰されそうになっていると、麗日さんが顔を覗いてきた。教室で再会した時から思ってたけど…顔が近い!良い匂い!
「デク君…本当に大丈夫?爆豪君の相手、一人で…。個性もビルの中だと使えないんでしょ?」
「……実を言うと、使えるんだ。」
「え!!」
「屋内で使えて、かっちゃんに一番効果のある戦車がある。……今は出せないけど」
ちょっと不安そうだった麗日さんの表情が明るくなった。個性無しで爆破の個性とやり合うなんて作戦、不安にならないわけなかったな…。ちゃんと言っておかないと。反省反省。
「そろそろ時間だ…行こうか」
「おー!!」
屋内対人戦闘訓練、
・ガンタンク
機動戦士ガンダムに登場するモビルスーツ。そして連邦が初めて開発した栄えあるモビルスーツでもある。いいか、モビルスーツだ!そうは見えなくてもモビルスーツなのだ!
これは出久が呼び出したものではなく、出久のお母さんが出久の部屋のノートを見て作ったもの。キャタピラ部分は個人用の除雪機とか電動自転車とかの技術、キャノン砲は迫撃砲やピッチングマシーンの技術を応用して作った…らしい。あらゆる伝手を頼って作られたので、詳しい構造はお母さんも分からないらしい。
砲身を横に向けられないとか欠点も多く、改良の余地大アリ!頑張れ母!