【04/13 水】
俺の名前は花村陽介。親の仕事の都合で都会から越してきた。現在絶賛ピンチ中である。
「と……ととと。お……お? ブレーキ……ブレーーキ! おわッ!!」
今ではすっかりこんな田舎町での生活にも慣れて……。慣れて……。
何やってんだよ俺。昨日滑ってチャリ滑らして股間打ったばっかなのに……。昨日打った後遺症でも残ってんのかっての……。
昨日と同様、今度はゴミ捨て場に突っ込んでしった俺。まさかのゴミバケツに頭からすっぽりと入ってしまい、自力では出られない状態になってしまった。
「大丈夫か?」
「おお、すまねぇ」
急に視界が明るくなったと思ったら、誰かが助けてくれた。ってあれ、鳴上じゃん。
「ありがとな! って鳴上。サンキューな」
「いや、正直そっとしておこうって思ったけど……あまりにも哀れだったから」
「そっとしておこうって思ったの!?」
「冗談だ」
コイツ……真顔で冗談言う奴だったのか。気を付けねぇとな……。
「花村、行かないと遅れる」
「お、じゃあついでに一緒に行くか」
……あれ? 何か足りない。
「なぁ鳴上。奏ちゃんは?」
「……」
な、何だこの重苦しい雰囲気は……っ。しかもため息までしている。
「ただの寝坊だ」
「……寝坊?」
「寝坊」
「今のため息はナニ?」
「雰囲気出てただろ?」
コイツ……! こんなにもボケなのかっ。しかもまた真顔でだ。
俺は無言でチャリを押しながら学校の道のりをすたすたと歩いて行く。後ろから鳴上が俺の雰囲気を察したのか「……悪い。何か奢るか?」と言ってきた。流石にやり過ぎてしまったか。
「今日空いてるか?」
「……あぁ」
「今日の礼に奢るぜ」
助けてくれた礼だしな。それにさっきの無言オーラはやり過ぎた。
俺は続きは放課後することを鳴上と約束して、学校に向かった。ちなみに、奏ちゃんは普通に遅刻したそうだ。それを聞いた鳴上の目、少々怖かった。これならボケてる時の真顔の方がまだマシだと思った。
◇◇◇
流石にあのジョークはボケし過ぎたと思った。アレ以降、少し陽介が話してくれなかった。
意外と寂しいんだな。話しかけてくれないのって。
俺は陽介に「……悪い。何か奢るか?」と言う。すると陽介は笑って「俺が奢る」と言ってくれた。陽介……何ていい奴なんだっ!
教室。授業が終わり昼休みになった時、奏のクラス、1年1組の担任がやってきた。どうやら奏は普通に寝坊で遅刻したらしい。……かなり呆れてしまった。その時の俺の目は意外に怖かったらしい。陽介情報だ。
仕方ない。どうせジュネス行くのに奏も連れていく予定だったし、その時に説教することにしよう。
「花村」
奏の担任から話を聞いたあと、俺は陽介を呼ぶ。
「今日、奢ってくれるって花村言ったよな?」
「おう。助けてくれた礼だしな」
「奏も連れてく予定だったんだが」
「だが?」
説教の代わりに奏には罰ゲーム的なヤツをお見舞いしよう。恐らく戦闘でいう「体制を崩しました」的なアレになるだろう。
「奏には奢らなくていいから」
「お、おう……」
ちなみにこの時も俺の目は怖かったらしい。これを聞いたのは明日の昼だった。直接ではなく、メールで。
放課後。“成龍伝説”のお詫びとして里中にも奢ることになった陽介。天城は1週目と同じく家の手伝いでパス。1年1組で奏も連れていき、俺たちは陽介の父親が店長のジュネスにやってきた。
ジュネス店長の息子ってことを陽介は俺と奏に説明してくれた。俺はその話を聞き流しながら視線を横にやる。……1週目通りだ。陽介の思い人、小西早紀先輩がいた。
助けることは上手くいけば出来るだろう。だが今の俺はペルソナは自分の影と向き合わないと現れないし、テレビに入る力は元はイザナミからの貰い物だ。ワイルドはこの世界では奏のモノ。俺はもうここでは“特別”ではないことが容易に考えられた。
さらに言えば、助けようとすると小西先輩を落とした足立さんに目をつけられることになるかもしれない。それは絶対に避けたいことだ。生田目ならまだいい。あの人は正直驚異にはならない。生田目に関しては菜々子を助ける際にまた考えることにする。
小西先輩には悪いが助けられるかはどうかはわからない。陽介にも悪いことだと思う。もしも俺が1週目からきたってことがバレだら怒られるかもしれない。陽介にならいいと思う。これは、俺の“勝手な判断”で動くことだから。
もう1つ言えば陽介のペルソナは小西先輩の死が鍵となってると俺は思う。小西先輩にこれでもかって程にフラれて、自分のシャドウと向き合う。陽介のペルソナ「ジライヤ」はきっとこうして生まれるのだと、昨夜考えたのだ。
……陽介が小西先輩に気づいて向かった。そろそろ俺たちに話がくる。俺は意識を陽介達の方に戻した。
◇◇◇
小西早紀先輩。家は商店街の酒屋さんで、実家のほうの経営が苦しくてウチのとこでバイトをしている。
どこか申し訳ない気持ちもあるが、先輩は気にしないでこんな俺を弟のようにかわいがってくれている。ホント、いい人だ。
「あの子たち……転校生?」
「ああ。なんか親の都合で転校してきたって。なんか共感できるっつーか」
「もう、お節介なんだから」
小西先輩は鳴上兄妹のところに近づき話しかける。先輩、冗談も言ったりしていた。とても恥ずかしかったけど、悪い気はしなかった。
休憩が終わったらしく先輩は戻っていった。その姿を見ている俺を里中がにやけながら見ていた。若干ムカついたので、せっかく奢ってやった(元はと言えば俺が悪いのだが)たこ焼きを1つ食べてやった。……見事に思いっきり蹴られた。
すると、里中が話を変えてきた。珍しく少しシリアスなオーラを出して。里中は俺たちの視線が集まると静かに言い出す。
「ねぇ、『マヨナカテレビ』って知ってる?」
ちなみに前編、後編形式なのは同じ日だからです。