「『マヨナカテレビ』って知ってる?」
里中がかなりのシリアスオーラで話し出した。
「雨の夜の午前0時に消えてるテレビを1人で見るんだって……で画面に映る自分の顔を見つめていると、別の人間がそこに映ってる……ってヤツ。それ、運命の相手なんだってよ」
俺と陽介は信じられないという表情で顔を見合う。本当は「マヨナカテレビ」を知っているのだが、「映ってる人が運命の相手」ではなく「人の『知りたい』という願望を映し出す」だということなのだが、今は黙っておく。
実際俺たちも最初の方は勘違いしていたからだ。「映ってる人がテレビの中に入れられて殺される」と思っていた。
奏は既にクラスの女子から噂話を聞いていたらしく、同じ内容だと里中に同意していた。
「なんだそりゃ? 何言い出すかと思えば……よくそんな幼稚なネタでいちいち盛り上がれんな」
「よ……幼稚って言った! 信じてないでしょ!?」
「信じるわけねーだろが!」
信じてる里中と信じてない陽介。口喧嘩していて正直うるさい。
「あの、それじゃご提案が」
急に奏が喋った。陽介と里中も奏の方を向く。
「天気予報では今晩あたりからまたしばらく雨だって言ってましたので、みんなで今夜0時! やってみましょー!!」
「はぁ!? まさか奏ちゃん信じてるの? まさか鳴上も……?」
急に話を振らないでほしい。かなりビックリしたじゃないか。……仕方ない。ここは妹の話に乗ろうじゃないか。
「信じてるわけではないけど、面白そう」
「ホラ、転校生くんもそう言ってることだし! 花村も! いいね! 絶対だよ!」
「鳴上ね」
こうして、俺たちは今夜0時「マヨナカテレビ」を見ることになった。俺にとっては久しぶりのマヨナカテレビだ。ちょっとドキドキありワクワクありだ。
午後11月59分。あと1分でマヨナカテレビの時間だ。俺は電気を消し雨が降ってるのを確認。テレビの前に座り準備完了だ。今ごろ奏も自室のテレビの前に座っているのだろう。一応5分前に起きてるか確認したから、大丈夫の筈だ。
そして午前0時。しばらくするとマヨナカテレビが映った。これを見るのは2回目だ。相変わらず少し気味が悪い。
映っているのは女の人。髪型から見ても小西先輩だとわかる。俺はわかってるが一応手をテレビに近づける。
「行けるわけ……ないよな。ーー!!?」
この時、俺は勘違いしていたのだ。ベルベットルームの人たちは「鳴上悠は『ワイルド』の力がなくなった」とだけ言った。
イザナミから貰った力は「イザナギ」と「テレビの中に入る力」の2つ。ペルソナのことはたぶんシャドウの件で何とかなるかと思う。そして問題のテレビの中に入る力。これを失ったとは
そう、見事に腕が“テレビの中”に突っ込んでいたのだ。流石にこの大きさは入りきらない。一旦諦める。
布団に横になりしばらく考える。奏も同じなら今ごろ腕がテレビの中に突っ込んで驚いていると思う。そして明日辺り言ってくる。そしてジュネスのテレビで初めてのテレビの中に入ることになる。
俺は「知らない一般人」でいこうと決めた身だ。明日はテレビの中に行かない。けど、ちょっと行く場所はある。一応、“小西先輩を助ける”ことにする。高校生の俺に何が出来るのかはわからないが。
◇◇◇
午後11月59分。「マヨナカテレビ」を見る準備が終わりテレビの前で待機する。さっき兄さんが私が起きてるか確認しに来てたから、兄さんも今ごろ待機中だろう。流石私の兄さんだ。
兄さんは料理が出来て、折り紙も器用にいろいろ折れてしまう。しかも外見もカッコいい。自慢の兄だ。それに比べ私は元気でいることしか取り柄がない。だがら、少しでも兄さんに心配されないように私はずっと元気でいれるよう、健康には人一倍気を付けてるつもりだ。
おっと、もう数秒で0時だ。私は暗くなってるテレビの画面を見つめる。
「ーー!!?」
ザザーと砂嵐の音が聞こえ、ぼんやりとだけど人が映っていた。女の人で、八校の制服を着ていた。
「……うっ! 頭が……」
急に頭が痛くなり、少しよろめいてしまった。私はテレビの画面に手をつく。
「!! えっ! ちょっ!」
私の腕が画面に突っ込んでいた。画面はそのまま腕を飲み込んでいる。テレビが小さかったお陰なのか頭は少ししか入らなかった。不幸中の幸いと言ったところだろう。だが不幸は結局訪れることになった。
画面に少しだけ突っ込んでいた頭を引っこ抜いた反動で尻餅をつき、そのまま勢いよく首が後ろにいった。首の行き先は机のちょうど当たると痛い横の部分だった。
「~~っ!!」
痛すぎて声も出なかった。今の音で兄さんや菜々子ちゃん起きなかったか心配だったが、誰もノックしてこないところを見ると大丈夫のようだ。
そして私は再びテレビを見る。マヨナカテレビは終わったのか暗いままだった。
明日、起きたら兄さんに相談してみよう。そう決めてから私は布団に潜った。しばらくぶつけた首が痛かったのはとても辛かった。