0から始まる2週目の物語   作:雨扇

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花村陽介編
4月ー④ 前編


【04/14 木】

 

 朝。起きると珍しく奏が早起きして朝ごはんを食べていた。理由を訊いたら「早く目が覚めてしまった」とのこと。まあ、理由はわざとらしく訊かなくてもわかる。“マヨナカテレビ”のせいだろう。確かに初めてテレビに腕が突っ込んだ時は俺も驚いた。

 

 

 さらに珍しく用意も終わっていたので1日ぶりに一緒に学校に向かった。昨日は奏が寝坊したから一緒に行けなかったから正直少し嬉しい。

 

 

「ねえ、兄さん」

 

 

 急に奏が呼んだ。深刻な表情だった。俺は1週目での戦いで鍛えられた勘ですぐにマヨナカテレビのことだと察した。……勘を使わなくても昨日の時点で話してくるかと思ったが。

 

 

「テレビに腕が突っ込んだって言ったら……信じる?」

 

「信じるよ」

 

 

 俺は素直に答えた。奏は驚いた顔をする。

 

 

 俺は朝ごはんを食べてる最中に考えていた。もしも奏が俺のこと信じて話してくれたら……どう反応するのか、と。

 

 

 俺も1週目の時は陽介や里中に話した。二人は最初は信じてくれなかったが見せたらあっさり信じた。一瞬イリュージョンかと思われたけどな。

 

 

 奏にとっては16年間一緒に過ごした家族だとしても、俺にとってはまだ2日くらいしか過ごしてないから、奏のことなんて全然わからない。だから、正直どう妹と接したらいいのかよくわかってない。

 

 

 仲間の中に妹がいる人なんていないから、聞こうと思っても……って確かマーガレットが「妹がいる」と話していたような。忘れてしまったが。

 

 

 それでも、奏が俺の妹なのは事実だ。だったら、兄として大切にしないといけない。

 

 

「そんなにすぐ、信じてくれるの?」

 

「だったら訊くけど。俺が奏と同じこと言ったら、信じる?」

 

「もちろん!」

 

 

 奏はすぐに答えた。これはとても嬉しい。

 

 

「それと同じ。マヨナカテレビの結果、俺が花村と里中に話しておく。放課後、ジュネス行くぞ」

 

「わかった!」

 

 

 ちょうど学校に着いたので奏と別れ、俺は階段を上って教室へと向かった。

 

 

「……さて、どうしたものか」

 

 

 俺は呟く。「小西先輩を出来れば助けたい」と思ったまではいい。誰だって思えることだ。でも問題は「どうやって助ける」かだ。俺はいつ生田目と話すのか。そしていつテレビに入れられるのかわからない。足立さんにテレビに入れられるまでに助けないと難易度がとても難しくなってしまう。

 

 

 今の俺はテレビに入ることしか出来ない。ペルソナ出して戦闘とか無理だ。ちゃんと手順を行う必要がある。

 

 

 1週目で初めてクマと会ったときの口ぶりからするに、小西先輩が入れられたのは俺たちがテレビの中の世界から帰ってきたあとだと考えられる。だとすればだ。花村たちがテレビに入ったあと、鮫川河川敷に行ってみれば会えるかもしれない。

 

 

 1週目で生田目は鮫川で小西先輩と話したと言っていた。……これはスピード勝負になるな。小西先輩が生田目と離れて警察署に行ってしまわれたらおしまいだ。

 

 

 うまく奏たち3人で入ってくれればいいのだが。

 

 

 

 

 

 教室。俺は朝のHRの前にさっそく陽介と里中に話した。

 

 

「え……じゃあおまえも、奏ちゃんも見たのかよ?」

 

 

 陽介が驚いて疑問系で返してきた。俺は頷く。

 

 

「でも見えたのが、みんな同じ女の子ってのはどうなのよ」

 

「つか運命の相手が女ってどゆこと。髪の毛が肩くらいでフワっとしてて、ウチの制服着てて……小西先輩に似てたかも。そういえば事件の第1発見者って小西先輩らしいね」

 

「ああ。だから元気なさそうだったのかな。今日学校来てないっぽいし……」

 

 

 陽介が若干落ち込んでいた。かなり心配なのだろう。

 

 

 俺たちが話していると天城が先に帰った。どうやら最近忙しいようだ。確か山野アナが泊まった旅館、天城の所だったな。そのせいかもしれない。

 

 

「しっかしおまえ……」

 

 

 急に陽介が話をふってきた。奏がテレビの中に吸い込まれた件についてだった。陽介は「寝ぼけてた」という意見だ。……1週目のときの俺は寝ぼけてたってことはなかったが、今となって奏が寝ぼけていたかどうかなんてわからない。

 

 

「いや、寝ぼけたってことはないと思う。今日、珍しく早起きだったから」

 

 

 それに昨日と比べると明らかに元気がなかった。それだけでも奏が寝ぼけてたとは考えにくい。

 

 

「けど夢にしてもおもしろい話だねそれ。“テレビに小さいから入れない”とか変にリアルっつかくだらないというか。もし大きかったら……」

 

 

 

 

「なんてウチのとこまで見に来たわけだけど、まーたそんなくだらん話信じてるのかよ」

 

 

 確かめることになり、ジュネスの家電製品売り場にやってきた俺、奏、陽介に里中。また“あの”テレビの前にやってきた。

 

 

 陽介と里中が試しにテレビに触れてみる。もちろん、何も起こらない。2人は横のテレビの方へと歩いていってしまった。

 

 

「兄さんは触らないの?」

 

「俺は……いいや。ちょっと行くとこあるから」

 

 

 触れる訳がない。ちょっとでも触れてみろ。奏に色々とバレてしまう。

 

 

「奏。触れてみたら?」

 

「う、うん」

 

 

 緊張した表情で奏は1歩前に進む。テレビの画面に指先を近づける。伸ばしている腕は緊張のせいなのかブルブルと震えていた。

 

 

「ーー!! やっぱり……兄さん、入る」

 

「中に空間があったりしてな」

 

「そういえば鳴上。おまえんちのテレビ……て……おい。奏ちゃんの腕……刺さってない?」

 

 

 ここでようやく腕突っ込んでいる奏に気づく。陽介と里中はかなりパニックになってるようだ。奏はどんどん奥に進んでいく。2人は俺のことを忘れたかのように奏の方に走っていく。

 

 

 客が来るのかかなり焦っているようだ。

 

 

「ってちょ! まっ!! うわあああああ」

 

 

 ……俺が手を貸すまでもなく落ちていったな。かなり綺麗に。ある意味スッキリした転落だった。

 

 

「……さあ、急いで鮫川河川敷に行かないと」

 

 

 俺はジュネスをあとにして、鮫川へと走った。

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