(青葉視点)
クリスマス。わたしは、ほたるんとねねっちを部屋に呼んでささやかなクリスマスパーティを開いた。帰りがけにお正月の初もうでの話になった。
ねねっちが突然こぶしを高く上げて言い出す。
「来年は高尾山で初日の出見ようよ。」
「え~っ山登るの?」
わたしは山登るのかと思い、一瞬ためらいを感じてしまう。
ほたるんも同じように感じたらしく
「ちょっと大変なんじゃ...。」
と言っていた。
ねねっちは、
「低い山だし、坂道みたいなもんだよ。なにより高校最後なんだから記念だよ記念。」
って言い張る。わたしたちはおされてしまった。
「そういわれると...行けそうな気がする...。」
「しかたないね~。」
しかし、1月1日当日早朝
ねねっち
「ふわ....。」
って眠そうにあくびしてる。
しかも
「おうちかえって眠りたい。」
なんて言ってる。
「ねねっち、言いだしっぺでしょーが。」
思わず言い返してしまった。
高尾山の駅で待ち合わせ。
「ほたるん、まだ来ていないのかな...。」
「きっとまだ寝てるんだよ。」
とねねっち。
「そんな、ねねっちじゃないんだから。」
しばらくして背中のほうから
「おまたせ~。」
って声かけられた。ほたるんの声だ。
振り向くと着物のほたるんが立っていた。
上品でよく似合う。
「あれ...おかしかった?振袖だとたいへんそうだから袴にしてみたんだけど...。あと靴もブーツだし。」
あれだ、お父さんが好きだったアニメやまんが、はいからさんが通るだっけ、の主人公みたいだ。ほたるんが着てると上品でかっこいい。
「振袖でも袴でもこれから山登るのにたいへんじゃん。」
「え...坂道みたいなものだって...。」
ほら、ほたるん困ってるじゃん。ねねっちが気分でものをいうから。
「しょうがない。日も昇っちゃうし、行けるところまで行こう。」
ケーブルカーとリフト乗り場の前まで来た。
しかし、まだ日も昇っていないのにすごく混んでる。
「朝4時過ぎなのにみんな物好きだよねぇ。」
とねねっちはつぶやく。
「それを言ったらわたしたちもだよ。」
山道の表示を見ると
「よーし、それじゃあ徒歩で登ろう。」
と突然言い出す。
「いやいや、ねねっち、ほたるんもいるんだよ。それはないから。」
どうにかリフトに乗れて山の中腹に到着する。
標識をみると神社までは40分はありそうだ。
「40分か...。」
「けっこうあるね。」
ねねっちは元気だ。
「この軟弱ものめぇ!」
とつぶやく。
「でも、確かに新年早々弱音はいてちゃだめだよね。わたし、がんばる。」
「うう...ほたるんががんばるなら、私も」
それを聞いてねねっちに言われる。
「単純だな~。」
だって。
坂道はゆるやかだった。着物着ているほたるんでもすいすい歩いていく。
「でもほんとに軽い坂道だね~。」
「うん、これならすぐに山頂へ行けるね。」
と思っていた矢先だった。
山の管理者だろうか。
「現在山頂は入場制限のため登れませーん。」
とハンドマイクでアナウンスがあった。
「えええええ!」
思わず叫んでしまう。まわりももちろん
「なんで~!」「ひどい~!」「なんとかしてよ!」
と叫び声やらざわついている。
「ちょっとしか歩いていないのに...。」
ほたるん残念そうだ。私も残念。
「この人ごみだもんね...。」
そうしたらねねっちが変なことを言い出した。
「やれやれ...新年早々この無計画っぷり...どうしてこうなったのか...。」
わたしのなかで何かがはじけた。おまえが言いだしっぺだろうが...。
のどからそんなセリフを吐き出しそうになった。
ほたるんもおなじことを感じてたみたい。
ほたるんとわたしはねねっちをかるくにらむ。
「「ねねっちがなにも考えないからでしょ!」」
ねねっち、胸の前で両手を軽く上げて
「ごめんごめん。でもでも、あっちのほう明るいよ。あそこから日の出が見えるんじゃ...。」
「ほんとかなぁ~。」
今度ばかりは少々ねねっちも必死だ。
「じ、じゃあ聞いてくるよ。」
ねねっちは立ち去った。
「ふふふ...。」
あれ...ほたるんが笑っている。
「どうしたの?」
「こんなに上手くいっていないのに二人がいるとなんだかおもしろいから...。」
ってほたるん。わたしは
「ま、まあね...。」
というのがやっとだった。
「来年の今頃はどうしてるんだろうね...。」
ほたるんがぼそりとつぶやく。
「もう来年の話?」
「だって、私、一年前は二人のこと知らなかったんだよ?。受験がどうなろうときっとまたいろいろあるよ。」
「あおっち、もし、会社の方に行きたかったら私のこと気にしなくていいからね。」
「え...。」
「わたしもねねっちと同じ。離れていてもあおっちが頑張っているって思えばさびしくないよ。」
「うん。ありがとう。ほたるん、わたしも同じだよ。」
そこへねねっちが帰ってきた。
「二人とも~聞いてきたよ~。やっぱりあそこから太陽出るんだって。」
「あ、ほんとだ...あそこ...。」
東の地平線から光があらわれて、じわじわとその光は大きくなっていく。黒かった東の空が暗い赤から紫色に、そして日の光がおおきくなっていくにつれて、その周りはじわじわと青く変わっていく。
「なりゆきだったけど。結果オーライだね。」
ねねっちがつぶやく。
「うん。とってもきれい。」
初日の出の朝日がさしてくるのをみながらほたるんがつぶやく。
「でも、みんなでみようって決めてここまで来たから見れたんだよ。」
「そうだね。」
「来年も...3人でまた一緒に見ようよ」
「うん!」
ほたるんが同意する。
「もちろん!」
ねねっちが答えた。
そしてねねっちが突然何やら思い出したように小さく叫ぶ。
「あつ。わすれてた。」
「??」
「あけおめ、ことよろ~。」
何かと思ったら...
「そうだったw。あけましておめでとう。」
「こちらこそおめでとう。今年もよろしくね。」
「うん!よろしくね。」
わたしは、今年もみんなにとって良い年でありますようにって願った。
「あおっちはなんてお願いしたの?」
ねねっちは興味津々だ。だけど教えない!
「内緒!」
「え~けちー!」
「ねねっちは?」
ほたるんが代わりに聞く。
「わたしはね~。」
ドヤ顔だ。
「大学合格でしょ、そんでもっていいバイト見つけてお金稼いでたくさん漫画とかアニメの円盤買えますようにって。」
あれ??ねねっちって大人だな~っと思ったのにこれってなに??
「前言ってたのと違うじゃん!」
思わず「抗議」した。でもねねっちは当然のように反論してくる。
「え~だってあれは私じゃなくてあおっちたちの問題じゃん!」
わたしはなんか納得いかない。なんか不公平っていうか...。
ねねっちはにやにやする。
「あ~もしかしてあおっち私たちの幸せでも願ってくれたの?」
なんかくやしい...図星だから;;
ほたるんがなにかあせって言う。
「ごめん。わたしも受験のことお願いしちゃった。」
「ふつうそうだって~。」
「もう!知らない!」
「う、うん、それはいいことだと思うよ。」
ほたるんは真剣にフォローしてくれる。
ねねっちはへらへらわらっている。
「あはは~ごめん。あおっち~。」
だって。もう!
初もうで噺は、ねねっちのADHDぶりがかなり際立っています。よくご注目あれ。