(コウ視点)
「高3から新人時代の思い出を話そっか。
漫画やイラストを描くのが好きだった。とくにイラストについては時々入賞していたなぁ。
RPGは、中学生のころから好きだった。ウルテイマ、ウィザードリイ、レジェンダリー・エイジ、ラギナロク・オンラインが好きで、ファンフェスタのコンクールのイラスト部門も入賞していた。キャラデザ公募で入賞したこともあったよ。
ライバルのイラストレーターは、猫姫をデザインした人だ。とてもかわいいと思った。わたしの描く絵はもっと繊細だったりこじんまりしたりって感じだ。フェアリーズ3のコナー、ナイト、カレンをみてもらえばどんな感じかかわってもらえると思う。
高校卒業後の進路には迷っていた。ラノベの仕事を時々やっていたがしょっちゅう来るわけではないからね。
分かってると思うけどイラストレーターや漫画家って仕事は不安定だ。仕事がいつもあるとは限らないし、ヒットするとは限らないからね。だからママ、じゃない母さんには口癖のように
『コウ、あなたが絵がうまいのはわかるけど、イラストレーターや漫画家って不安定でしょう。ちゃんとお給料がもらえる安定した会社に勤めなさい。』
と言われていた。
『わかってるけど...わたしはそれでやっていきたいんだよ。』
と話したが首をかしげて納得いかないような顔だ。それもある意味仕方ない。漫画はうまく描けなかったからね。もちこみをするんだけど、キャラや絵については凄く褒められるんだけど、シナリオについてはいまいちだ~って言われていつも没になる。
イラストを生かせて安定した職業...それで、選択肢のひとつとしてゲーム会社を受けることにしたんだ。
そしていくつか会社訪問。印象的な受験者は、レジェンダリー・エイジを作っていた会社NCグラビティを受験した時に出会った前ヶ崎大学の西村くんっていう男の子だったなあ。
性格がよさそうで、ゲーム業界をよく研究していて、プログラムをやったり、その会社のGMのアルバイトをやっていたみたいだね。しかし、面接にまで彼女がついてくるって...どうなのって思ったけど。
それはそれで自分は落ちた。やはり、パソコンやゲームプログラムの知識がちょっと足りなかったからだったみたいだけどね。
最後に受験したのはこのイーグルジャンプ。当時は南阿佐ヶ谷の青梅街道沿いにならぶビルの2階と3階のフロアを借りていた小さなゲーム会社だった。
名前の由来は旧約聖書イザヤ書の「わしのように翼を駆って」ということで業界に雄飛するゲーム会社でありたいという願いからつけられたらしい。
ファンタジーのほかに春秋戦国志とか失われた十二部族を素材にした「トウェルフ・トライブス」など独創的でマニアックなゲームを作っていた。
面接官は、ウェーブかかった灰色の髪で面接官だというのにストールを着けた女性、もしかして想像しちゃった人もいるかもしれないが、葉月さん。そして真面目そうな男性、なんていうか最近女子高校生が戦車に乗るアニメがやってたけどそこに登場する文科省の役人みたいな感じの、だけどあんな根暗な感じではないごく普通の印象の男性だった。
『八神コウ、か。面白い名前だねえ。』
『このイラスト、かわいいね。本人もかわいいし。磨けば光る素材だ。』
葉月さん、いまみたいな調子だよ。待合室で青葉を「面接」したときみたいに眼鏡はかけてなかったね。
男性のほうが聞いてきた。
『志望動機は?』
『御社で、イラストやキャラデザの仕事にたずさわりたいと考えて志望しました。御社ではファンタジーRPGも作られていますし、大手にはない斬新なRPGをつくってみたいと考えてこのような企画書もお持ちしました。』
と答えたよ。
『なるほど...このイラストやキャラはきれいだね。』
いくつか質問を受けたが、あっさりとした印象の面接だった。
3月上旬、内定の電話が来て、一週間後に内定通知が来た。
『コウよかったじゃない。これでわたしも安心だわ。』
マ、こほん、母さんは喜んでくれたけど、ゲーム業界がどういう職場か知っているわけじゃなかったから単純に喜んでた。あたり前のように定時出勤定時退社と思い込んでいたんじゃないかなあ。わたしはこうしてイーグルジャンプに入社した。
イーグルジャンプの入社式は、7年前の4月1日。わたしは、服装は自由と聞いていたから、たぶん今みたいな黒のTシャツにエスニック柄のスカートかジーンズだったんじゃないかと思う。
しゃちこばらない簡単な入社式だったなぁ。なんといってもその年の新入社員は、わたしを含めた女性社員二人だけだったから。
もちろん、同僚は、りんだよ。紫がかったボブヘアの上品な女の子っていう印象。いまは朝の女子アナをみたいな清楚な美人って感じだけど、当時は18歳だったから、今に比べてまだすこしあどけなさが残っている印象だったなあ。」
その時りんが口をはさんだ。
最後尾部分訂正、加筆(1/11,2:11am)