1、はじめに
プロローグ1話、本編7話、エピローグ1話の計9話で構成される本作『xxxHOLiC・幻』ですが、多数の作品の中から当方の作品をお読み頂き、誠にありがとうございました。作中、至らぬ点が多くあったとは思いますが興味を持ってページを開いて頂いたことが何よりの喜びでございます。
2、執筆のきっかけ
そもそも本作を描くに至ったきっかけは、xxxHOLiC(以下、ホリック)と東方Project(以下、東方)って似てるよなあ……と漠然と思ったのが始まりです。侑子さんと紫んって立ち位置とか似てるよね、特にゆかりんの声は自分の中では大原さやかさんボイスで再生されるし、などとその共通点は主に以下の点に集約されます。
A、妖怪などの人外が少女の姿で描かれる
B、魔法や魔術が存在する
C、民俗学ネタ
D、管理人の存在(壱原侑子と八雲紫)
これだけ似てるならクロスオーバーSSの一つや二つあるだろうと思い、広大なネットの海をサルベージしてみたのですが、如何せん私の探索能力では一つも見つけることができませんでした。それなら自分で描こうと思い、この度、筆を取り、キーボードを叩いた次第です。
3、プロットの作成
話を考えるに辺り、ホリックに倣うことにしました。すなわち、四月一日が赴くか、東方キャラが侑子の店を訪れるか。四月一日が原作でたびたびお使いに行かされていることもあり、すぐに前者に決まりました。
何かをどこかに取りに行く。にとりってかわいいよね。人間の盟友だしね。河童のアジトに行かせたいね。河童といえば胡瓜だね。となると、侑子さんが河童の胡瓜を食べたくなったので四月一日を幻想郷へ送り込んだ……こんな感じで基本骨子が決まっていきました。
メインの登場人物の数はなるべく少なくしたほうが混乱しないと思い(私が)、ホリック側からは四月一日と侑子さん、東方側からは雛とにとりに固定することにしました。プロローグでモコナが出なかったのもそのためなのですが、まったく出ないのもおかしいと思い、エピローグで顔を出してもらうことになりました。
4、鍵山雛(さすがに夏場にブーツはきつい)
話の大枠は決まったのですが、行って取って返って来るだけでは味気ないと思い、何らかのトラブルに巻き込まれてもらうことにしました。
それと幻想郷についての説明役。誰がいいだろう……にとりと関係のある妖怪の山に住む存在……雛だ! もちろん原作ではそのような描写はまったくないのですが、そこは二次創作ということもあり、ベタといえばベタですが雛の厄に絡んだ問題を解決してもらうことになりました。
雛の厄神問題。
雛が実は神格ではなく妖怪だったというある種の一発ネタです。この辺りはホリックの影響で、何かどんでん返しを仕掛けられたなあ、という願望によりこのようになった次第であります。ミステリー小説っぽくしたかったということもありますが。
感想欄でもコメントさせて頂いたのですが、厄をため込む雛人形が素体である雛の本質は『ため込む』ことだと考えられます。厄だけではなくストレスや感情もため込んでしまいます。そのため、早めににとりに思いを打ち明けておけば別の結末になっていたのかもしれませんね。
5、河城にとり(ツナギ姿は伏線だったのだ)
四月一日が胡瓜を手に入れるためのキーとなる人物。それがにとりです。四月一日が瓢箪の片付けという対価を払うことによって胡瓜を手に入れる。または雛との問題に四月一日を巻き込む。そのために必要な存在でした。
河童の里という表記に関してはすでに本編のあとがきで述べましたの割愛するとして、モブ河童たちは茨歌仙ネタです。河童はにとりだけではない、と河童の里の奥行を出すのが目的でした。
そして、特筆すべきは連載中にもたらされてしまった『東方心綺楼でにとりが自機決定!』の報。まさかのにとり、と思わず草を生やして笑ってしまいました(笑)
それで例大祭の前日に第7話を描いている最中に、せっかくだから心綺楼につなげよう、と当初の予定を変更して本編のような結果になったわけです。ミュージシャンっぽく言えばライブ感を大切にしたかった、または役者っぽく言えばアドリブを大事にしたかった、などといかようにも言えますが、要するに例大祭だけにお祭りのノリでした。
ええじゃないか! ええじゃないか!
当初の予定では、光学迷彩スーツを対価にスーツの作成にかかった時間の分だけ雛の厄を引き受けてくれる身代わりの河童ぬいぐるみがもらえることになっていました。スーツは河童の証なので河童の輪からも外れてしまうという、少し悲しい結末ですね。それを考えると明るく終わった、宗教戦争に参加決定オチでよかったのかもしれません。
ちなみに河童の里で出てきた土蔵ですが、中には尻子玉が蓄えられています。後から店でそれを知った四月一日からも恐れられるという後味の悪い結末になりそうだったので作中では言及しないことにしました。
あと河童は瓢箪の他に刃物も苦手らしいです。ですので、最初は瓢箪の代わりに日本刀が祠の周囲に取り囲むように刺さってるという設定にしようと思ったのですが、刃物が苦手でどうやって金属を加工するんだろう、ということで本編でのように瓢箪に変更となりました。どちらかというと日本刀よりは瓢箪などの植物の方がホリックっぽいかもしれません。
6、四月一日君尋(永遠のツッコミ役)
一応、本編の主人公。ワトソンくんでもあり、彼の目線で物語は進みます。それなら一人称視点の文体でもよかったかもしれませんが、四月一日本人も気づいていない情報や雛の一人称描写などを出したかったので三人称視点の練習も兼ねて三人称視点文体にしました。ただ、雛の一人称視点による自分語りシーンはまとまりが無くなりそうだったのでカットしましたが。
それで描いている途中に気づいたことなのですが、大声でツッコミ入れてばかりのイメージがある四月一日って初対面の人相手にはけっこう礼儀正しいんですよね。これが思わぬ盲点でした。幻想郷にいてももっとにぎやかな会話になると思っていたのですが、まるで年下の少女や同級生の女の子を相手にするかのように普通。にとりがノリッツコミを入れたりしていたのもこのためです。四月一日では駄目だと賑やかし役を演じてもらいました。
また、雛とにとりに対する呼称ですが、雛の場合は年下の少女っぽい外見であることに加え、同級生の九軒ひまわりを重ねているため、名前にちゃん付け呼びとなりました。にとりの場合は、同級生の女の子っぽい印象だったので名字にさん付けで呼んでいます。
それと無月が付いて来たのは四月一日一人では危険だったからです。モコナが同行すると会話がにぎやかになりすぎる予感がしたので、九尾モードという戦闘力を持ち、尚且喋らない無月に付き添ってもらうことになりました。
7、壱原侑子(本日の憑き物落とし)
今回の物語の発端となる人物です。すべては必然だから、の一言で全部持っていってしまいます。ミステリー小説における探偵ポジション、ホームズ役です。
着物を紺の生地に白の巴模様と指定したのにも意味があって、紺=海、巴=渦で、厄が行き着く海原を表しており、厄を飲み込むという意味、というか効果があります。つまり、鏡越しとはいえ、雛の厄に当てられないようにするための魔除けですね。まさに厄除け。
あと鏡を割られてしまいました。だって流し雛に厄神になる方法を教えたりと好き勝手やったわけですから、幻想郷の管理人からすれば「え? 何勝手に厄神になるよう勧めてるの?」状態です。怒ってるかもしれません。だとしたら「怒」の感情の有無が二人の違いなのかもしれません。
8、雛の神格化について
雛の神格化について妖怪と神の違いから見ていきたいのですが、二つの違いは、人間に恐れられるのが妖怪で奉られるのが神だと私は考えているのですが、両者は明確に分かれているのかといえばそうではありません。長い年月の間に、妖怪が神になる場合もありますし、神が妖怪になる場合もあります。
日本民俗学の祖である柳田國男は妖怪は神が落ちぶれた姿であると述べましたが、これに対し、同じく民俗学者である小松和彦は夜刀の神を例に、神が妖怪になる場合もあれば、妖怪が神になる場合もあるといわゆる可逆性を認め、柳田氏の説を否定しています。
デジモンみたいですね。○○モン、妖怪モード! 神様モード! みたいな。
本作では妖怪も神になれるという小松氏の説を採用しております。柳田氏は河童を水神が零落した姿と捉えていましたが、これに小松氏の説を取り入れれば、にとりは水神になることができる可能性を有しているわけです。水神・河城にとり! ……なんかすげえ大物になった感じがします。ちなみに射命丸文の場合は神格化すると天狗だけに山の神、お燐の場合は火の神といった感じですかね。
9、おわりに
文章力の問題などは今後の課題とするとして、とりあえず『xxxHOLiC・幻』はここでひとまず終わりです。また何か話を思いついたら上げていくつもりですので、お暇な時にでもお目通し頂けたら幸いでございます。
それでは、繰り返しになりますが、ここまでお読み頂き、誠にありがとうございました。
参考文献:大野桂(1994)『河童の研究』三一書房