俺たちの冒険の書No.001〜ロトの血を引きし者〜   作:アドライデ

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Lv.15:トヘロスを覚えた。

 

「へー。これは便利だ」

 呪文を唱えるとあたりから魔物の気配が消えた。ラダトーム城周囲では、モンスターが逃げることも多くなったが、出会い頭に戦うことが多くあり、流石に数をこなすと鬱陶しいと言う気分になる。

気合いが削がれると、いざ強い魔物が出てきたときに対応が遅れてしまう。

 

 何度も挑戦して退却しているあの魔のライン。今日こそは越えてやると意気込む。

トヘロスと言う呪文は案の定自分より強い敵には効かなかったが、ここまで来る体力温存には役に立った。

何せ、ドムドーラの町で休憩と言うのが出来ないので、今まで以上の長旅を強いられる。それを完遂できずに、往復する羽目になっていた。帰りはルーラで帰っているのである意味片道だが…。

 

「って、あれ?」

 自分が思い描いていた場所にメルキドの町が見つからない。橋を渡って広がるはただの平原。遠くの方に毒沼も見える。

流石に焦る。デッドラインをようやく超えたのに目的地がありませんでしたって言うのは困る。

 

 いやいやいや。ドムドーラの町の東だよな。

南下し過ぎたか?

ドムドーラの町を目印に東へ西へ、北へ南へ彷徨う。高い山に挟まれた狭い谷間を縫うように歩き回るが、出会うは行き止まりか、毒沼平原のみ。

途中で魔力が付き、何度かラダトームの町へ帰る日々。

 

「………そう言うことか」

 思い描いていた場所より一つ奥。ヘロヘロになりながら、漸く見えた城壁に囲まれた要塞都市メルキド。

ご丁寧に出迎えてくれるのは、巨大な【ゴーレム】

だが、怖くない。

なぜなら、マイラの村で聞いた情報で予測できたからだ。

手には妖精の笛。ちゃんと練習してきた。

 

 奏でる音色は癒しの音楽。

ゴーレムを心地良い眠りへと誘う。

 

 名付けて『ラリホー戦法、妖精の笛バージョン』

卑怯とは言わせない。

 

【ゴーレム】覚醒、笛を吹く、【ゴーレム】眠る、起きるまで叩く、【ゴーレム】覚醒、笛を吹く……の繰り返し、覚醒時の攻撃がかなり痛いが、なんとか凌げた。

満身創痍ながら、崩れゆく【ゴーレム】を見ることができた。妖精の笛が無ければ突破は不可能だろう。

 

 中に入ると活気溢れる声に驚いた。

ゴーレムを倒したのだが大丈夫だろうか。少し不安になったが、要塞としてきちんと機能しているらしい。

このゴーレム討伐は言わば、この町に入るための条件だったようだ。つまり、倒せなくはないが信仰の証と言うべきか、一見さんお断りということらしい。

この笛を所持しているかがこの厳重な要塞の鍵となる。一度入れば警戒は無くなるというわけだ。

 

 ウロウロと目的のものを探し回る。

求めるは強い剣。どう言う剣かは知らないが噂を信じればあるはずだ。

しかし、表のお店には売っていない。鍵の扉の奥、さらに死角の場所にそれを見つけた。

 

「炎の剣だね。9800Gだよ」

 思わず小さく握りこぶしを作ってしまった。

伊達に苦労していない。所持金も難なく溜まっていたので問題なく買えた。

ふと同じ店で見たこともない盾を見つける。

「そいつかい? 水鏡の盾って言って14800Gだよ」

「………」

 高い。わずかに所持金が足りない。

まだまだと言うことだろう。

買ってやる買ってやるとも、待ってろよ水鏡の盾!

 

 少し前のスランプが嘘のように目的が多くでき、気合いが入る。

 

 アレフLv.15、頑張りが報われる。


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