俺たちの冒険の書No.001〜ロトの血を引きし者〜   作:アドライデ

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Lv.2:初めて死んだ。

 

「今日もボロボロだねー。一泊6Gだよ」

 顔なじみになりつつある宿屋の女将に苦笑いされつつ、貰ったものと魔物と戦うことで得たお金で払う。

連日ラダトームの町周辺で修行の日々だ。

この宿はサービスが良好だが格安で泊まれる。言うなれば、城から援助金を貰い経営している宿だ。

格安の条件は竜王を討伐するために利用すると言えばいい。

先日、その宣言をして、その証を貰い受けたのだ。

それを利用する馬鹿な奴が出てこないわけではないが、逐一王への報告があるこの宿を不正に使うのは本当の馬鹿だろう。

 

「これは時間がかかりそうだ」

 何泊目か忘れた数を過ごしつつ溜め息をつく。一日に倒せる敵の数が増えてきて、手応えがないわけではない。

「少し遠出するか…」

 ベッドにごろりと横になり目を瞑る。

ラダトームの町から離れると、相手する敵は強いモンスターが多くなる。

しかし、近場の【スライム】ばかりでは強くなれないのも事実。

徐々に赤字だった宿代が黒字になってきたのだ。チャンスは今かもしれない。

 

 脳裏に地図を思い描く、ラダトーム城の北北西にはロトの洞窟がある。

そこにロトの血を引きし者が向かえば何かあるらしい。そこへ行くのも一つの手だろう。

そして、もう一つ。

ガライと言う独立した町がラダトーム城から北西、海側に沿って山を越えたところにある。

そこまでの長い道のりを行く自信はまだない。

この二択なら、ロトの洞窟へ向かおう。そう心に決め眠りにつく。

 

 次の朝、街の周辺から少し離れ、山を迂回した裏手に回りまだ行っていない場所へと足を運ぶ。

実のところに少し油断していた。

会う敵はスライムが多く、強くても【ドラキー】(顔のでかい蝙蝠のようなモンスター)であった。

 

「ゴースト!?」

 振り返ると奴はいた。黄色いお化けのモンスター【ゴースト】である。ただの攻撃が地味に痛い。

多くの【スライム】との戦いで傷ついていた己にとって致命的であった。

逃げようとするが、回り込まれてしまう。避けることも攻撃することももはや叶わない。

命の灯火が消える瞬間、視界が赤に染まる。

 

 

「………俺は」

 死を覚悟した。

町の人に『死なせたくないものだ』と言われていたのに、こんな城の近くで命を落とすなんて、浅はかだったのだろう。

「全く何事だ」

 悔いている時に聞こえた第三者の声。

思考を停止し辺りを見渡す。どうやら見慣れたお城の一角。

この地はあの世ではなかったようだ。

「ここは…」

「城内の休息室だ。お前は王の命により、今一度、機会を与えられた。心して挑めよ」

 第三者の近衛兵はそう言い休息室を後にした。

重い空気から脱し、溜息をつき再び横になる。目を閉じ、自己の身体を確かめる。

疲労はあるものの致命的な傷は癒えており、明日にでも旅立つことができる状態であった。

助けられた。偶然にも気を失うだけで生きていられたが、これがなければ死んでいた。

王から貰った竜王討伐を目的としている証明書、『帰還の御守り』。転移魔法の応用で、生命の危機に陥ると自動的に城に戻るシステムになっている。

 

「まさか所持金の半分を取られるとは…」

 出発時に謁見の間に向かうと、叱咤とともに治療費を取られたのだ。

銅の剣を買うと言う目標の金額がまた遠のく。

無茶をせず、もう二度と失態はするまいと誓う。

 

 アレフLv.2は勇気と無謀の差を知った。


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