ナムストーン   作:kirimonji

51 / 56
アポロジュニア2

独りよがりな危険性がどうしてもにじみ出てくるから、

 

後回しにされ後輩に追い抜かれていったのだ。

 

 

 

 

自分では教官でもいいNASAに残れればと思っていたから

 

こんな幸運はない。一つ間違えば9.11のテロに

 

参加していてもおかしくはない自分を感じていたのだ。

 

 

 

 

ジェームズは典型的な英国紳士でその情報処理能力と判断力

 

は的確だ。あまりに慎重すぎるために予備飛行士のままできた。

 

最初にして最後のチャンスだと思っている。

 

 

 

 

ジャッキーはめっぽうメカに強い。体も強靭で陽気な性格だ。

 

ただ一つ身長が170㎝に満たないために後回しにされてきた。

 

 

 

 

大統領が続ける、

 

 

 

 

「戦いはこれからだ。何か異変が起きたなら失敗は許されない。

 

君たちの正確な情報掌握、分析、判断が60億全人類の生死を

 

分かつのだ。最重要な責務である。覚悟して出発してくれ。

 

万が一判断がつかない異変が起きたならば」

 

 

 

 

皆は真剣なまなざしで大統領を見つめた。

 

 

 

 

「その時は必死でナムストーンと唱えてくれたまえ。以上!」

 

 

 

 

『ナムストーンだって?大統領は気でも狂ったか』

 

とチャーリーは思いつつ顔だけは真顔で大統領を見つめていた。

 

 

 

 

モハメドは、

 

『ナムストーンなんて知らないね。俺にはアッラーがついている』

 

と大統領を睨み返した。

 

 

 

 

ジェームズとジャッキーは二人同時に、

 

「ナムストーン!」

 

と唱えていた。大統領は右手握りこぶしをどんと

 

左胸にあてて、

 

 

 

 

「イエス、ナムストーン、OK?」

 

「ナムストーン、OK!」

 

4人は一応声をそろえてナムストーンと答えた。

 

 

 

 

ガス状アメーバ大彗星SACはさらに詳しく分析された。

 

惑星間をものすごい速度で加速しながら進み、星に近づく

 

と急速にブレーキがかかる。高速移動中は高濃度に凝縮し

 

 

 

 

ブレーキがかかると拡散する。組成は炭酸ガスと水が90%

 

後がN、P、Sの化合物である。いわゆるハレー彗星と同じ

 

組成である。通常の彗星には核というものが存在するが、

 

 

 

 

SACには存在しない。拡散濃縮を繰り返しながら途中の

 

小惑星群を飲み込み吐出しして濃度を高めて進む。

 

まるで天空のアメーバそのものだ。

 

 

 

 

ほうき星のようにケイ酸塩のチリの尾や炭酸ガスイオン

 

のプラズマの尾がないのも特徴だ。ただしほうき星と同

 

じように周囲は水素のコロナ雲に包まれている。

 

 

 

 

木星軌道からははるかに離れていたが、それでも大きくSAC

 

の軌道は押し曲げられた。火星との間の小惑星群に次々と

 

衝突しながら火星をかすめた。この時SACの軌道はさらに

 

 

 

 

捻じ曲げられて地球直撃コースに定まったのだ。SACは

 

なぜ今まで発見されなかったのか?彗星というのは、いきなり

 

現れるから彗星というのだということで発見は難しい。

 

 

 

 

彗星はどこからやってくるのか?それは太陽から何兆キロメートル

 

も離れた冥王星の外、太陽系の果てからやってくる。230万年

 

というとてつもなく長い年月を経て、やっと木星を通過した。

 

 

 

 

このころ初めて存在が確認された。宇宙空間移動中は高濃度の

 

塊になるので高性能望遠鏡でもとらえにくい。心臓の鼓動の

 

ように収縮拡大を繰り返しながらアメーバ彗星は近づいてくる。

 

 

 

 

小惑星と衝突するときは大きく拡大して、その惑星の邪悪な物、

 

醜悪なものを全部吸い取ってしまう、天空のクリーナーでも

 

あるのかもしれない。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。