ぼっちの門 〜圓明流異聞〜   作:エコー

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久しぶりに木曜日の投稿です。
今回は、プロット無しで記憶を頼りに書いて出し。



二十三、算段

 

 

「比企谷八幡はどこだ」

 

 覆面が留美の腕を掴んだまま云う。留美は苦悶の表情を浮かべて覆面を見上げている。

 夜目を凝らして茂みの向こうを見ると、葉山隼人は身体をくの字に曲げて悶絶、戸部に至っては完全に白目を剥いて倒れていた。

 つまり、この場でまともに動ける男子は俺だけ。

 

「……はぁ、めんどくせぇ」

「ひ、比企谷、くん……?」

 

 やっぱこれって……俺が何とかするしか無い状況だよな。

 まともに動けそうな男子はこの場には俺だけだし、女子に矢面に立てという程の鬼畜にはなれない。

 

 つーか葉山、情けないぞ。リア充の王たるお前がそのザマでどうする。お陰で俺が動かざるを得なくなったじゃねぇか。

 俺は秘密で終わる秘密兵器だぞ。秘密過ぎて誰にも存在を認知されないまであるんだぞ。簡単に云えばベンチウォーマー、戦力外なんだぞ。

 とまあ脳内で逡巡してみたものの、このままでは留美の問題を解決するどころかその身が危うい。

 諦めを胸に留美のいる方へと歩き出そうとすると、Tシャツの背中が突っ張った。

 見ると、雪ノ下が不安そうな目でTシャツの裾を摘まんでいた。視線を落とすと、心なしか足が震えているように見えた。

 ──恐いのだ。

 無理もない、か。

 こいつと俺は昨日の夜、陸奥九十九という化け物に遭っている。そしてその化け物に俺は組手でぎったんぎったんにされた。骨や筋に異常が無いのが不思議なくらいに、だ。

 だからと云って留美の手を掴んでいる覆面が同じ人種とは限らない。違う可能性の方が大きいだろう。

 しかしそれを雪ノ下に理解しろというのは酷な話だ。

 こいつはただの人間だ。多少合気道の心得はあるらしいが、それは恐怖を乗り越える拠り所となる筈も無い。

 見ちゃったもんなぁ、陸奥を。

 頭を掻きながら刹那の思考で最善策を考える。

 よし、これでいこう。

 

「……雪ノ下はここに隠れてろ。俺が奴の注意を引きつけとくから、隙をみて人を呼びに行け。出来れば強い奴を頼む」

「でも、それではあなたが……」

 

 雪ノ下の視線が泳ぐ。

 ここは素直に従ってくれ。ここを離れてくれ。

 

「心配要らん。陣雷のおっさんの攻撃すら凌ぎまくった俺だぞ」

 

 吐いた言葉と裏腹に、背中を冷たい汗が流れる。怖いのやっぱ嫌いですぅ。

 

「ま、とにかく頼んだぞ、部長」

 

 雪ノ下の細い指からTシャツの裾を引き抜き、重い足を持ち上げて茂みの中に一歩目を投じる。

 靴の下でがさりと音が鳴ると、複数の視線が俺に集まった。

 三浦さん、その「なんだヒキオかよ」みたいな目はやめてね。

 これでも囮役くらいは出来る……といいなぁ。

 さて、どうしたものか。考えつつ、俺は覆面野郎の眼前に歩み出る。 まずは交渉か。さあ、素人ネゴシエーター比企谷くんの実力、とくと拝むがいい。

 

「あ、あの、その子まだ小学生なんで、やめてあげてくれません……かね」

 

 ……駄目だった。

 勇気を振り絞って発した言葉がこのザマだ。声が上ずってたし、語気が弱い。

 じろりと覆面野郎がこちらを見る。といっても顔全体が覆面で覆われている為、視線を感じただけに過ぎないが。

 

「は、八幡……助け、て」

 

 留美の肘は身体の内側、つまり可動域ではない方向に捻られていた。

 

「八幡……お前が比企谷八幡か」

 

 あれれ。この覆面野郎、俺を御指名の癖に俺の顔を知らん、だと。

 さすが俺、今日もステルスヒッキーは絶好調のようで少し泣けてくる。

 

「比企圓明流継承者、比企谷八幡。この俺と死合(しあ)え」

 

 ど、どういうことっすか。

 てか誰。

 

「いや、いきなり初対面の人にそんなこと言われても──」

 

 ぼく、困っちゃう。

 

「ヒ、ヒキオ……そいつ、誰なん」

 

 それはこっちが聞きたいくらいだ。

 ちらと後ろの気配を探ると、雪ノ下はいない。無事に逃げ果せたようだ。

 ならば後は、どうにかして留美を救出して三浦と一緒に戦線離脱してもらって、その後で俺もバックれる。

 

 よし、これでいこう。

 

 




今回もお読みくださいましてありがとうございます。
記憶を頼りに1話書いてみましたが、その記憶が頼りないのなんのって。
とてつもなく短くなってしまいました。

次回からはもうちょい長く書けると思います。
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