ぼっちの門 〜圓明流異聞〜   作:エコー

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プロット消失したのに投稿ペースを上げてどうする、俺。



二十四、男たちの宴

 案は決まった。あとは実行のみ、なのだが。

 俺はまだ動けずにいた。

 怖いのだ。この目の前の得体の知れない覆面野郎が。

 こいつの口ぶりと雰囲気から推測するに、対峙するのは間違いなく圓明流の使い手だ。

 だが陸奥ではない。

 昨晩の陸奥九十九からは、こんなに欲望丸出しの下卑た鬼気は感じられなかった。勿論、陸奥九十九が本気になったら分からんが。

 だが、陸奥ではないことには確信めいた自信があった。

 ならば比企か。

 いや、それも無い。

 比企圓明流の使い手は現在、お袋だけの筈。いや、かつての俺もそうだったのかも知れないが、その記憶が無いんじゃ使える訳は無い。

 

 なら──不破か。

 

 陸奥九十九が言った『不破に気をつけろ』ってのは、もしかしたらこの事か。

 

「まあ待て。まず、自己紹介からしようぜ」

 

 此の期に及んで何言っちゃってるの、と思われるかも知れないが、相手の情報は多い方が良い。

 

「──良かろう」

 

「不破圓明流、(おぼろ)。それがお前を葬る者の名だ」

 

 やっぱり不破、か。

 超こえぇよ。

 だが、隙を作るなら此処しかない。

 

「──俺は野比のび太。趣味はあやとり、特技は射撃だ」

「ふざけるなぁ!」

 

 怒り狂ったように覆面野郎が迫る。

 今だ。

 

「三浦っ、ルミルミを連れて逃げろっ」

「わ、わーったしっ!」

 

 三浦の叫びに覆面が振り向いた瞬間、ありったけの力を込めて覆面に体当たりをかます。

 ずじゃっと音を立てて倒れた覆面が立ち上がった時には、既に三浦と留美は逃げ果せていた。

 

「──貴様」

「んだよ。先に人質を取るなんて卑怯な真似をしたのはそっちだろ」

 

 おし、これで覆面のヘイトは俺が独り占め。何それ嬉しくない。

 さあ、後はここからどう逃げ出すか、だな。

 

  * * *

 

 斯くして俺は、覆面と対峙した。

 奴が圓明流を使うのなら、圓明流の記憶を失くしている俺に勝ち目はないだろう。

 龍造寺つむぎや陸奥九十九と少しだけ組手をして、俺の身体が薄っすらと圓明流を覚えていることは確認済みだが、それはあくまで組手レベルでの話だ。

 怒りに殺気立つ覆面は、きっと全力で俺を仕留めに来る。何なら殺す気でくるだろう。

 今の俺が、それに対応出来るとは思えない。まず俺は負けるだろう。

 

 だが、覆面野郎が俺を狙う明確な理由は分からない。

 逃げるにしても負けるにしても、理由だけでも確かめておきたい。

 理由も分からずに殺されて堪るかよ。

 

「何故、お前は俺を狙うんだよ。俺は圓明流を継いだ覚えは無いぞ」

「継いでいるか否かは関係無い。お前が圓明流である以上、オレはお前を葬る」

「何故」

「──」

 

 お、言葉に詰まった。

 この調子でペースを乱していけば……。

 

「オレは、お前を葬って陸奥九十九と死合う資格を手に入れる」

 

 ……はい?

 

「陸奥、九十九?」

「ああそうだ。俺はお前を斃して、俺に足りないモノを手に入れる。陸奥とやるのはその後だ」

「足りない、モノ?」

 

 何だそりゃ。

 

「人殺しの経験値だよ」

 

 うわぁ、聞くんじゃ無かった。それ絶対手に入れちゃいけない経験値じゃないですか。せっかくの平和な世の中、もっとピースフルに生きられないものですかねぇ。

 

「陸奥九十九は、少なくとも二人は殺している」

 

 あれを殺したというのならば、確かに覆面野郎の言う通りだ。

 陸奥九十九は全日本異種格闘技選手権で不破北斗を、ブラジルで開催されたヴァーリ・トゥードでレオン・グラシエーロを死闘の果てに葬っている。

 だが、それはあくまで試合の上でのこと。

 山中での殺し合いとは訳が違う。

 

「──あれは、試合中の事故だろ」

 

 口に出して、空々しいことに気づく。

 圓明流の技は人殺しの技だ。圓明流を使って闘う以上、相手が死ぬのはある意味当然の結果なのだ。

 だがそれを今俺が認める訳にはいかない。認めてしまえば──。

 

「死ね、比企圓明流」

 

 ──こうなるのだ。

 

  * * *

 

 先に動いたのは勿論と云うべきか覆面だった。一足飛びで間合いを詰めた覆面は、無造作に右拳を繰り出してくる。咄嗟に躱して、後ろへと距離を取る。

 しかし……いざ近くで対峙すると、俺よりも身長が大きくみえる。あんまり変わらないと思ったんだが。

 

 覆面が河原の砂利を踏み鳴らすと、その足元が突如跳ねた。

 

「──! はやっ」

 

 じたばたと派手に砂利を鳴らして覆面野郎の右上段蹴りを躱した俺は、ちらっと周囲に目をやる。

 よし、誰もいない、な。

 と、再び覆面に向き合った時、森の中から声が響いた。

 

「……比企谷っ」

 

 はぁ、これで振り出しかよ。出てくんなよ。とっとと逃げとけよ……葉山隼人。

 

「ほう、これはこれは学校のヒーロー、葉山くんじゃないか」

 

 覆面から発せられた言葉に耳を疑う。

 こいつ、葉山を知っているのか。なら誰だ。この覆面の正体は誰なんだ。

 その時、別の方向からまたしても声がした。野太い声だ。

 

「──あん? 八幡じゃねえか。何だってこんな河原に……ん?」

 

 森の中から出てきたのは上半身裸の神武館千葉支部長、陣雷さんだ。タイミングからして雪ノ下が寄越した訳では無いのだろう、その手にはビールらしき缶が握られている。

 つか、ほろ酔い気分かよ。

 

「いや、ケモノの匂いがしたんでな。ちょっくら夜警だよ」

 

 また厄介なのが増えたな。

 だが、心強い助っ人だ。

 

 




今回もお読みいただきましてありがとうございます。

やっと格闘シーンに突入!
なのですが邪魔モノが乱入してしまいました。
さてさて。
河原に集いし男四人。
どんな展開になるのでしょう。
……ま、戦うんですけどね。
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