ぼっちの門 〜圓明流異聞〜   作:エコー

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六、面倒な面々

 

 

 前回に引き続きではあるが……どうしてこうなった。

 

 龍造寺つむぎに押し込まれた更衣室で強引に空手着に着替えさせられた俺は、龍造寺先導の元で階段を下っていた。

 

「ったく。あのオヤジは何なんだよ……眉毛無えし」

「あの人は、神武館四聖(しせい)の一人、陣雷師範だよ。すっごく強いの。知らない?」

 

 龍造寺は丁寧に眉無し強面オヤジの説明をしてくれるが、正直「ハリケーンソルジャー」とか「ローキックの鬼」なんて恥ずかしい二つ名など知ったことではない。

 

「知らねぇよ。それに何だ、その神武館四聖とかハリケーン何とかって。厨二病かよ。つーかあとの三聖誰だよ」

「んーとね、東京本部の海堂さんでしょ。それと亀岡支部長の木村さん。あとは……ブラジル支部のイグナシオさん、かな」

 

 うわぁ、またまた律儀に答えてくれたけど全く知らねぇ。

 つーかイグナシオさん、勝手に厨二病みたいな呼び方されてますよ。誰だか存じ上げないけれど。

 

「で、運動不足の解消って……何をやらされるんでしょうかね」

「やっぱり……」

 

 やっぱり、何だよ。

 

「組手、かな」

 

 ──はあああああっ!?

 

「ちょ、ちょっと待て。俺はド素人だぞ。非戦闘要員だぞ。戦闘力たった5のゴミだぞ!?」

 

 龍造寺の説明だと、あの眉無し腐れ支部長は若かりし頃、全日本空手選手権で優勝した実力者だと云う。

 そんな奴の、ぶっとくて固ぁい腕をねじ込まれたら……いっちゃうゾ。

 

「んー、そこらへんは意外と大丈夫なんじゃない……かな?」

「こら待て。語尾に不安を残すなよ」

 

 不安を紛らわそうと頭をがしがしと掻いて溜息を吐く。

 

「じゃあ──あたしと、やる?」

 

 なにそれ、ちょっとエロい。

 

  * * *

 

 案内されたのは、地下だった。

 窓も何も無いコンクリート剥き出しの壁に、インテリアは掛けられた時計がひとつ。あとは畳が敷き詰められただけの殺風景な稽古場。

 

「適当に座ってて」

 

 そう言い残して龍造寺が稽古場を去って既に十五分程が経っている。

 つーか何を俺は律儀に待っているんだ。そう思って逃亡を考えるも、すぐに頓挫する。

 着て来た服は三階のロッカーの中だ。階段は一か所しか無い為、取りに行くには見つかるリスクが高い。だからと言って空手着で街を駆け抜ける程の度胸は俺には無い。

 そうして思考を巡らせて辿り着いた結果は、さっさとくたばって帰るというものだった。

 二十分ほど放置されて、複数の足音が聞こえてくる。

 軽い足音が幾つか響く中で重そうな足音を出しているのが、あの強面眉無しオヤジだろう。

 もう覚悟は決めた。こてんぱんのけちょんけちょんにやられて、さっさと家に帰って引き篭ろう。

 まるで刑の執行を待つ咎人の様な心境。

 

 と、稽古場の鉄のドアが開いた。

 入って来たのは、言うまでもなく強面眉無しオヤジだ。ご丁寧に道着に着替えての登場である。

 その後に入ってきたのは龍造寺つむぎ。こちらも道着を着ている。しかも黒帯。

 と、その他にも人の気配がする。少し遅れて入って来たのは小町。その後に由比ヶ浜、雪ノ下と続き、最後は道着姿のままの川崎だった。

 

「おい……八幡」

 

 野太い声色に身が震える。その声の主、眉無し強面オヤジをチラ見すると。

 

「道場破りに女連れとは、いい度胸だなぁ、あん?」

 

 なんと完全なお怒りモードじゃありませんか。なんならその睨む三白眼の威力で石にされそうまである。それってラノベならツンデレ美少女の専売特許なんですがねぇ。

 

「いやいや、そんなもん破る気はまったく──」

「そんなもん、だぁ!?」

 

 そこから始まるは眉無し筋肉オヤジの独演会。

 つらつらと若い頃の話をしたかと思えば、陸奥九十九に負けて辛酸を舐めただとか、一度も本部の海堂さんに勝てなかっただとか、自分の言葉で勝手に怒りのボルテージを上げてくる。

 それってマッチポンプ、もとい……あーもう、喩えも浮かびやしねぇ。

 

「ま、男なら拳で語れってヤツだな」

 

 散々ぺらぺらと一人で喋っておいて、結果それかよっ。

 このオヤジ面倒くせぇ!

 もう嫌っ、八幡おうち帰るっ。

 

「まあまあ、おじ様」

「てかお嬢よォ。こいつ、本当の本当に……あの八幡なのかよ」

 

 どの八幡のことを言ってらっしゃるのでしょうか。あ、鶴岡の方かな。それとも石清水?

 俺のことじゃない、よね?

 

「まあいい。やってみりゃ分かる。さて、誰からいくか……川崎。相手になってやれ」

 

 おぅふ。

 ま、道着姿の三人は全員黒帯。誰が相手だろうと俺の負けは決定、何ならオーバーキルも確定なんだが。

 

「比企谷……よ、よろしく、ね」

 

 なんで黒帯の端を弄りながらもじもじしてるんでしょうか川崎さん。

 

 

 

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