もしもベル・クラネルにこんなスキルがあったなら:短編集 作:自堕落キツネ
「これで、最後ぉっ!!」
「グギャァッ!?」
「ふぅ、もう少しでバックも一杯になるし、そろそろ帰ろうかな。サポーターの人を雇えればいいんだけど、まだ収入が不安だし、もう少し強くなってからかなぁ。」
ダンジョン五階層、まだまだ
「………ォォォ。」
「?…なんだ今の?」
遠くから響く咆哮と思わしき声にベルの手が止まる。
警戒度を引き上げたベルの耳に聞こえてきたのは、冒険者にはまずないであろう重量の重そうな足音。それが確実に近づいて来ている。
「モンスター?…でもこんなに重いのなんてこの階層に居ないはず。」
ベルは独り言を呟きながら、いつでも動けるように体勢を整える。現れたのは、少々傷ついたミノタウロス。息を荒げ、血走った目で
「なんでミノタウロスが?たしか『中層』のモンスターで、冒険者でいうとLv.2位じゃなかったっけ。逃げ切れないだろうなぁ。」
やや呑気に感じる口調でそんなことを言うベルは、普通の新人なら絶望するだろう状況で口角を上げ、その顔に似つかわしくない獰猛な笑みを浮かべる。
「丁度イイ、色々技を試してみたかったんだ。実験台になってもらうよ。『突風』!!」
ベルは瞬時に踏み込み、ミノタウロスの魔石が有るであろう人ならば心臓のある辺りに、ギルドで支給されたナイフを突き刺そうとした。が、
パキィィン
「やっぱりか!脆すぎるよコレ!」
ミノタウロスの毛皮の硬さと突きの鋭さに負け、あっさりとナイフは砕けてしまった。
「仕方ない。ならここからは素手しかないね!!まずは、『疾風』!!」
柄だけのナイフを投げて牽制し、左手を鞘に見立て右手刀を収め、居合い抜きの要領で振り抜き、風の斬撃を飛ばす。ミノタウロスの右脇腹から左肩にかけて浅くキズができ、余波で後ろの壁にも破壊痕が刻まれた。
「よし、キズは浅いけどできたし、攻撃は絶対避けなきゃいけないけど、倒せるかも。」
『
・行動にイメージを込め、技名を叫ぶことでイメージを具現化できる。(例:『兜割り』と叫びながら踵落としで、打撃を斬撃に変え頭防具や角などを確定破壊、頭部命中で威力アップ)
・イメージが明確、技名が適切なほど特殊効果(風を纏うなど)の消費マインド軽減
「ヴオォォォォ!!」
「っと、『流水』!!」
弱そうな獲物に軽くでもキズをつけられ、激昂したミノタウロスの拳を懐に踏み込みつつ左の肘から手のひらまでで後ろに受け流し、
「『氷牙』!!」
「ヴゴォッ!?」
右肘を鳩尾に叩き込み内側を凍りつかせる。間髪いれずに
「『火花』!!『烈火』!!」
「ヴァ!?」
傷口に軽い連打を浴びせ燻り続ける火種を埋め込み、炎を纏ったアッパーでアゴを打ち上げる。無理矢理上を向かせ晒されたノド目掛けて
「『烈風』!!」
飛び上がり回し蹴りで首を飛ばそうとしたが、レベル差に負け受け止められる。
「しまっ」
「ヴオォォォォ!!」
「っ、『落葉』!!」
降ってくる拳が生み出す風に身を任せ、ギリギリで回避し背中を向けて着地する。
「『昇雷』!!『雷鳴』!!『落雷』!!」
両手、片足で飛び上がり雷を纏った後ろ蹴り上げ、バヂッ、と放電音を鳴らしミノタウロスの目の前から直上の天井に移動し、天井を蹴りつけて雷を纏った踵落としを叩き込む。ほんの一瞬で行われた為にミノタウロスの頭は同時に打ち込まれたように衝撃が弾ける。
「っ、とと、この調子ならなんとか………あれ?」
ふらつきながら着地したベルは中々の手応えを感じたのか嬉しそうに笑うが、急に目眩を感じた。
「まさかマインドダウン!?流石に今なったら………。」
そのままパタリと倒れてしまうベル。このままではミノタウロスの餌食になってしまうが、
斬ッ
ゴシャッ
「アイズ~、この子マインドダウンしてるだけでケガは殆どしてないみたい。」
「ほぅ、装備はギルド支給のだろ?それでミノタウロスと殺り合うたぁイイ度胸じゃねぇか。」
「…この子、フィンのとこに連れていこう。その方が、多分安全。」
「じゃぁアタシがオンブするね。」
こうしてロキ・ファミリアの遠征隊に拾われたベルは、途中で目覚めてティオナから質問攻めにされ、スキルを説明する。
あっさりと秘匿すべきスキルを開示するベルに驚くが、ヘスティアが悩みぬいた末にギルドに、スキルの詳細を含めて冒険者達に開示を許可したため、知られても問題ないのだ。
開示のさいにベルは一文を加えて貰っている。
門前払いされたファミリアの名前と共に。
『様々なファミリアに門前払いされていた僕を拾ってくださったヘスティア様は、僕の恩神なので、
これに地団駄を踏んだ神や顔を青ざめた冒険者が多数いたらしい。
フィンやリヴェリアなどが頭痛を感じながらもその場で謝罪をし、地上に戻ってからファミリア同士の交流を持つことを提案した。ベルとロキ・ファミリアではあまりに差のある提案に思えるが、アイズやベート、若い団員にイイ刺激になると判断したためだ。
以降、技名を叫ぶロキ・ファミリアからオラリオ全体に流行し神々を悶えさせるが、今はまだ誰も知らない。