白い雪の降り積もった静かな路地裏。
そこで裕福そうな服を着た少年の目の前で、その父親が切り伏せられた。
彼の知る中で敗北など想像もできなかった最強の英雄である父が無法の徒によってその身を引き裂かれた。
どんな状況でだって助けてくれる絶対のヒーローは、
何時だって正しい法の執行者は、少年の憧れは、大切な家族は、
一瞬拮抗した互いに必殺の斬撃の交差の後、その剣ごと肩越しに切断された。
「父様ぁっ!!」
ゆっくりとスライドして地面に落ちる父親の上半身があった場所の向こう側には剣を構えた悪鬼がいた。
そして、その悪鬼の背後では―――――――――――――――
「せめてこの子達だけは、どうかお願い…。」
妹を抱きしめる母の姿があった。
先程襲撃を受けた際に、長女を家ごと喪った悲しみに落ちながらも、
せめて残された二人の兄妹だけは助けよう。
その為なら自分はどうなっても構わない。
せめて、せめて幼いこの子たちだけは…
だが悪鬼の一味にそんな懇願を聞き届ける情など存在する訳も無く、
幼い妹を庇う母は鉄槌によって壁に叩き付けられ、
頭から流す血を壁に擦り付けながらその身は力無く崩れ落ちた。
そして妹もまた…
「なんで…どうして…?」
少年には理解できない、本来なら理解する必要もない光景がそこにはあった。
妹のその体の中央を貫く手に何かを抜き取られるようにして崩れ落ちた。
少年も自分の何かを引き抜かれるような感覚を受けたが、その直後何かの悲鳴と共にそれは止んだ。
「この子っ、何者っ!?」
黄色い髪の強盗一味が手首の先が無くなった片腕を押さえて何かを言っているがどうでもいい。
殺してやる。全員殺してやる。
縛り首だ。電気椅子だ。凍結刑だ。永久封印だ。次元追放だ。
いや、それじゃ駄目だ。斬首刑。そう、斬首刑こそ相応しい。
その首を切り落として晒してやる。
正義を踏みにじった悪の末路として相応しい結末を用意してやる。
そうだ、それが良い。それしかない。
少年は真ん中ほどから折れた父親の剣を掴むと、さしあたって一番近くにいた父親の仇に向かい、
そして逆に剣の柄で叩き伏せられ、その意識を失った。
少年が意識を取り戻すと、そこには先程の悪夢の続きがあった。
今までの事は夢でも何でも無く、残酷な現実だった。
「シルヴィアッッ!!」
彼は唯一《・・》の生き残りに駆け寄ってその身を抱きしめた。
妹は僅かに動いている。
命だけは取り留めたようだが、このままでは助からないかもしれない。
当然だ。余りにも幼い身で臓器を抜き取られる様な目にあったのだ。
誰か、誰か早く助けに来てくれと少年は懇願する。
父親と母親は見るまでも無く命は無い。
片や上半身と下半身が分離し、
片や美しかった顔の半分が陥没している。
魔法でだって、直せるはずがない。
死人を蘇らせる術なんて存在する筈も無いのだから。
そして両親から教育を確りと受けた少年にはそれが理解できた。
少年には理解できてしまった。
この悪夢を創り上げた集団は何と言っていただろうか?
少年の聡明すぎる頭脳はこの憎むべき相手の発した言葉を一字一句余すことなく記憶しており、
そして父親が部下と話した内容を漏れ聞いたことと複合して答えを出した。
出してしまった。
生涯に渡り憎しみ続ける対象を心の世界に刻み付けてしまった。
確か奴等は―――――――――――――――――――
『
――――――――――――騎士?
笑わせるな。詰まらない冗談にもほどがある。
あんな臓器ブローカーの殺人集団が尊敬する父と同じ騎士を自称する?
大概にしておけ―――――――――――――。
少年はこの日初めて殺意で体を満たす感覚を覚えた。
もし、抱きしめた妹の体温を感じる事が無かったら彼は在るべき姿に壊れて居たかも知れない。
だが、彼は決意した。
妹を護る事を。護り通して見せる事を亡き両親と姉に誓った。
それでも復讐心は捨てる事は出来なかった。
本来彼には多くの翳りの無い未来があった。
直接繋がってこそいないが、背後では公然と関わりのある企業を含めれば世界で有数の御曹司である彼には。
かつての王国の遺産を受け継ぎ、彼の父親も現在は騎士を自称しているが、
本来は公爵家、それも王家の血と交じりのあるルーツを持つ。
名家・旧家の集合体である貴族会同の後継者でもあった。
彼はその華やかな道を進めば幸せな未来があったはずだ。
同じ名家の出であり、無二の親友の美しく気立てのよい妹を妻に迎え、
乗り越えられぬ苦しみも少ない未来だって在ったのかも知れない。
だが、彼は復讐の道を選んだ。
常に心に、その白銀と称される美髪や白肌と対照的な、
闇よりも尚深い闇を心に宿し続ける道を自ら選んだ。
――――――――――――他でも無い、彼の家族を奪った悪達への怨嗟が彼に復讐を誓わせるべく駆り立てたのだ。
先程の惨劇を覆い隠す様に雪は再び赤く染まった大地を少しずつ白く染めていく。
少年は寒さに震える妹を抱きしめ、
残酷な光景を見せない様にその視界を塞ぎ、
恐らく事件の様子を確認しに来た治安維持を担う者達の遅すぎるサイレンを聞きながら少年は吠えた。
彼らを救う事の無かった世界を呪う怨嗟の言葉を、
世界を正すための決意の言葉を、
彼は吠えた。
「赦さない。絶対に赦さない。
お前達には裁きを下してやる。一人残らず裁いてやる。
他でも無くっ!! この僕がっ!! 裁きを下してやるっ!!
ヴォルケンリッターァァァァッッ!!」
僕たちは正しいのに、正しい事をしてきたのに。
正しくても強き悪には負けるのか?
いや、こんなのは不意打ちだ。準備も無い相手に、
しかも自分達の様な足手纏いがいたからだ。
きっと、正義は悪に勝利し、勝利するのが正義であるのがあるべき姿なのだ。
そう、だからそう信じた彼は父親と同じ路を往く。
闇の書事件の被害者の一人、レイス・グランツァーリンの復讐はここから始まる。
これは一人の少年の救われない復讐の物語である。
サイレンが鳴り響く街で白き雪はまだ――――――――――――――――降りやまない。
シチュエーション的には某大金持ちのアメコミヒーローの幼少と似たような境遇です。
カッコいいですよね。登場人物の殆どがキチガイのコスプレマニアって。
一応レイス少年にはコスプレ趣味はありませんが(笑)
別にメンタルは豆腐と言うよりはアルファゲルなので批判も何でも結構です。
ですがぶっちゃけた話、リリカルなのは見た事は無いので、WIKIで調べて書いている上に、
時系列とか細かい設定は投げ捨てていくつもりなので、原作とのズレや矛盾点、設定間違いは多々あると思います。
ついでにいえばリリカルなのはの元ネタなんてもっと知りません。
完全にWikiだよりです。
それはそういうものだと思ってくれるならありがたいと思います。