「チェルノブリュニークから解放信号を確認しました。」
「ありがとうウーノ。
それにしても、ああ。いつ彼に知らせようか。
早く助けられてもデータが取れないし、早く助けないと『
ああ、どちらにしても面白い事になる。僕にも、彼にも、ね。」
何処かにある違法研究所で狂気の研究者は嗤う。
『
彼のスポンサー達が管理局に正しい正義を敷くために、
いや、彼等こそが管理局であるがゆえに、管理局として世界に正しきを敷く為に、
最上位に連ねられるプロジェクトだった。
神にも等しい彼らに今一度受肉の機会を与える聖杯を与える計画。
その為に、彼らは切り札であった大事な手駒を殺させたのだ。
だからこそ、彼らは通信回線を介して研究者、ジェイル・スカリエッティに釘を刺す。
「我が、我らこそが管理局だ。」
「彼女は我々の母になってくれるかもしれない女性だ。」
「我らが一番うまく管理局を動かせるのだ。」
そんな老害達の戯言に付き合わされる若者と言うのも疲れる仕事だが、
この科学者にとって、いやどの科学者にとってもスポンサー様と言うのは絶対なのだ。
故に、かつてのかの帝国における支配者が禁忌の改造を施すまで保持していた『生命』の属性を持つ、
現在では唯一の少女には、『器』としてこれまで管理局の療養所で、
診せてもらわなければならない。魅せてもらわなければならない。
彼女の生命の力は死にかけた肉体の持ち主に消える寸前の冥府からの逃げ込み先に魅惑的な住居なのだ。
それ故に、死してこの世界からいなくなる寸前の魂達は彼女の体調が弱った時に彼女に殺到した。
それを主治医に言ったところで、ドゥーエという女性が変装した医師に「何を言っているのか?」と馬鹿にされ、
それ以降その事を彼女は誰にも言えなくなってしまった。
その対象には彼女の唯一現存する肉親も含まれていた。但し、兄に対しては心配を掛けたくないという理由もあるのだが。
∮∮
神咲那美は焦っていた。
有能な退魔師である彼女はこの異変に一番最初に気が付いていた。
この海鳴の地における怪異と言う怪異、妖という妖が、
否、この海鳴の外からも異形の気配が迫ってくる。
そしてその集合点が自分の良く知る人物の家だと理解したとき、
彼女の脚は更に加速した。
道中危険な魔物達を封印しつつ、
彼女はお供の狐を連れて只管に駆ける。
お供の狐もどちらかと言わなくても魔に属するものであり、
他の魔物同様、この異変により引き込まれそうになってはいるが、
それを防げるだけの意思と力を持っていた。
それ故に、目的地までの最短を示すコンパスになり得たのだ。
狐が引き寄せられる感覚に従い、駆け抜けた先にあったのは、
月村邸。やはり彼女の良く知る人物の家だった。
霊的な結界により魔物達は最後の最後でという所で、侵入を防がれているが時間の問題であろう。
100人乗っても大丈夫な物置も101人乗ったらどうなるかは判らない。
本来彼女は問答無用に除霊する退魔師ではないが、今回ばかりは余裕が無い状況だった。
それでも生来優しい彼女は出来る限り対話をもって生霊や魔物を退けようとした。
その中には対話にならぬものが殆どだが、稀に会話ができるものがあった。
「ワレラガハハ、ナゼコバム。」
「カーサン、カーサン。」
「ままぁ。ままぁ。」
「偉大なる母よ、消えゆく幻想の我らをお救い下され。」
「ハハヨ、ワレラノカイキテンヨ。」
「なんだ、憑依できない。話が違うぞ神様。」
「超魔力の美少女にTS転生したいのに。」
中には意味不明のものも多くあったが。
多くは月村邸にいる彼らの『母親』に還ろうとする消えゆく幻想の怪異達だった。
消えていく原初の恐怖の逃げ道は魂を受け入れる逃げ惑う母だけであり、
この現代に居場所を失った不確かな存在達であった。
彼らは只避難場所を知って逃げ込んできただけ。
ただし、そこには既に住人がいて門は固く閉ざされている。
そこに在るのは怒りと戸惑いと―――――――――――悲しみだった。
これは祓えない。
那美にはこの異形達を祓うのは忍びなかった。
だが、放っておけば中にいる彼らの『母親』が襲われるは明白。
そして他の『神咲』がこの状況を放置する筈が無い。
集まった魔物達は一網打尽にされるだろう。他者に任せておけば自分は安全だ。最終的にはかたは付く。
だがそれは赦せない。
それが彼女が神咲那美である事を止める事になるのだから。
魔の天敵、神咲として、魔にさえ優しさを持つ那美として、
彼女はここに集まった有形無形の魔物や生霊達を
その決意を固めた瞬間。
容を持った入り口付近の魔物達はその全てが駒切れとなった。二度とその命は蘇る事は無い。
彼らは完全に抹消されたのだ。
銀髪の剣鬼によって。
∮∮
レイス・グランツァーリンは焦っていた。
嫌な予感はしていた。だからその日はずっと妹の事を考えていた。
そんな中、知り合いの研究者から電話がかかってきたのだ。
「ああ、レイス君。
今すぐマリ…妹さんの所へ向かう事をお勧めするよ。
所謂危篤状態みたいだよ? 彼女。」
思考は焼けついた。
血液は沸騰した。
肉体は悲鳴を上げた。
だがそんな事はどうでもいい。
彼にとっての最優先事項だけがあればいい。
最重要事項――――――――――――――――――――――シルヴィア・グランツァーリンの生存
レイスはなりふり構わず駆けつけて月村邸の門を斬り飛ばし、
その暴挙に咄嗟に刀を構えて正対した中にいた高町恭也に切りかかった。
「忍者ァッ!! 邪魔をするなァッッ!!」
どう考えても襲撃者の様なレイスに神咲那美より少し早く月村邸に着いた恭也と忍としては、
そのまま中にお入り下さいとは判断できない。というかそもそも彼らにとってレイスは信頼し切れる相手ではなかった。
よって、少々手荒な方法で頭を冷やして貰ってお話を聞かせて貰おうと考えたのは、
恭也がなのはの兄である証拠なのかもしれない。
互いに俊足で踏み込んだレイスは立ち塞がる恭也と切り結び、
瞬間の鍔迫り合いの直後その力を抜くことで、弾き飛ばされた剣を代償に、
その手を顎に宛がい、足払いと同時に真下に叩き付けた。
しかし、所謂JAPANESE NINJA、若しくはSAMURA-Iである恭也は地面に横から殴りぬく様に受け身を取る事で体を捻り、
逆にレイスの脚を蹴り飛ばした。
宙に浮いたレイスの顔に恭也の柄突きが入るが、
それは背面で何時の間にか掴み、脇の隙間から指の力で弾き飛ばす事で正面で反対の手で逆手に掴んだレイスの剣によって逸らされた。
仕切りなおした恭也はその勢いを殺す事無く、もう一刀の小太刀を抜き、
小太刀二刀による舞うような横薙ぎの2連撃を放ったが、その一つは躱され、
もう一つは剣で弾かれた。
だが、剣舞は終わらずそのまま回転を利用して死角から更に連撃を繰り出した。
その追撃を糸の様なものでレイスは逸らし、
そして
レイス・グランツァーリンには普通の魔法は使えない。
それで士官学校主席と言うのも凄まじいのだが、問題はそこではない。
彼は『白銀』の変換に魔力の放出先が固定されており、
その白銀を、時に武器に時に防具に、そして今回の様に時には足場に利用して戦闘を行う。
更に白銀には魔力素の粒子と波の性質を利用して反射し阻害するという性能もあるのだが、今回は使えそうにも無い。
背後を取られた恭也は向き直りに合わせた攻撃と共に意識を鋭敏化させ、その境地にある感覚の高速化を実現させた。
纏わりつく空気の中、体感的に遅くなった世界で、レイスの剣を弾く。
そしてレイスの虚を狙い死角に峰打ちを滑り込ませた―――――――が、
同様にレイスも意識を高速化させた。
高位魔導師の基本スキル
それは奇しくも恭也の高速化のロジックと似ていた。
それはまさに不要なものを排除し、必要な思考のみを高速化させるという点では同じであった。
どちらも人外染みた無機質で冷静な理論の力によってその境地に立っていた。
その状況下で、
まるで
月村家のメイド2
メイドの内一体が、その腕の先を切り離し飛ばしてきた。
腕先と付け根の間にはワイヤーで繋がっていた。そう、彼女達は機械人形と呼ばれるロボットだったのだ。
だが、レイスには通用しなかった。
そのワイヤー部分を狙い銀の糸を巻き付けた。これで再射出は不可能になった。
ワイヤーで制御するものは、ワイヤーの口径を変えられれば回収できなくなる。それを狙ったのだ。
だが、レイスの敵は1体では無かった。もう一体と一人の脅威、
更に言えばロケットパンチが使えなくても脅威の全ては消えてなどいない。
ヴォルケンリッター絶対殺すマンであるレイスだがそれ以外の者相手の不要な殺生を愉しむ性ではない。
それでも、この場合においては必要な殺生だ。そう決意したとき、
「バカッ 何やってるのよっ!!」
特徴的な舌足らずボイスでその争いを止めた女神がいた。
名前をツンデレクイーン―――――――――もといアリサ・バニングスと言う。
「良く解からない状態で妹さんが倒れてるの。私にはどうする事も出来ないけど、
あの子の兄ならどうなってるか解かるんでしょ。
それと日本じゃ、入門の挨拶はお邪魔しますで、忍者ァーじゃないんだから次から気を付けてよね。」
状況的には恐らく妹を助けるために頭に血が上ったという割と当たり前に考えられる状況を薄々想定していながらも、
あのグランツァーリン(地球における評価はロシア以外では悪い)だし、
かつてには幼女爆弾や人質や情報操作によってその者の一族を殺させたりした、あのグランツァーリンだし、
レイスは主人公やその友人系というより鬼畜眼鏡(美形)な外見だし、
巻き込んだ女をあっさり切り捨てるアークでザラッドなアニメや、
色んな元凶なテイルズでアビスな大佐や、
破滅させて独占するIn the darkなのも全て鬼畜眼鏡だし、
鬼畜眼鏡に碌なのがいないのは世界の法則だ。
そんな事は大人ならみんな知っている。
そんな状況で幼女組が心を許す分、大人組が警戒しておかねばならない。
特に、裏の世界を知っている大人組なら自分が最後の警戒心になる必要を考えてしまったのだろう。
「…すまないわね。少々貴方に偏見があったみたい。」
「此方もいきなり入り口を破壊して申し訳なかった。」
常日頃から地球のグランツァーリンカンパニーの評価はロシア国内では災害などの際に、
無料で簡易テント、食糧、風呂を提供する超人道的優良企業だが、それ以外での地域での評価ははっきり言って悪い。
石油やガスを目的に隣国を攻撃する特殊工作のバックアップ。経済工作。逆らえない弱腰の相手になら容赦無い攻め込み。
自国の医療に貢献するための難民を使った人体実験の噂(事実)さえある。
だが、それを忍達が告げてしまうとグランツァーリンの名前LOVEなレイスはブチ切れるだろうと思ってその口を忍達は自粛した。
外国人に特有の恥ずかしくなるほどの家族自慢をコンサートの終わり際に話されたことを覚えていたからだ。
レイス側としても入り口を綺麗に破壊しての強行侵入であるし、
未成年である妹の管理責任を月村に押し付ける事はできるが、
見方によっては生体兵器(妹)を押し付けたうえ、家屋破壊の上の不法侵入および不退去罪だ。
しかも相手が大家の家に向かってという大暴挙だ。
そんな互いの責任(グランツァーリン9:月村1)の追及に時間をかけるよりも、
此処は速やかに謝罪を済ませてごまかs…もとい速やかに妹の所に向かう事こそ先決だと考えたのだ。
大切な身内の事になると完全にポンコツになる自称・他称超エリートなのがレイス・グランツァーリンである。
勿論超エリートの後には(笑)が付くことは言うまでもない。
人間絶対的で完璧な相手には近寄り難さを感じるが、ちょっとポンコツな所があれば途端に同じステージに感じて親近感を持つものだ。
例えばイケメンでも残念な中身だったり、高スペックな美女でもやっぱり中身が残念なら途端に自己投影ができたり、
攻略できると感じてしまうアレだ。実際には中身が変態でも残念でも高スペックな美形とその他大勢に接点さえ存在しないのだが。
だが、月村忍も高町恭也もギャルゲーのヒロインや主人公の様な高スペック美形である。
だから、生物的に廃スペックなレイスがポンコツになった事で、
実際に同じステージに立って親近感を感じてしまったとしても無理はない。
雨降って地固まる、川辺で殴り合って芽生える友情。
比べるのも理不尽だが、家屋破壊及び殺人未遂で芽生える信用と言うのもあった。
だが、これは再度襲い掛かってきても返り討ちにする自信を持っている古流剣術使いと、
彼に絶対の信頼をおく人外と言う特殊な条件が付くが。
絶対に勝てない相手には人は信用を置けず、幾多の種族を、幾多の同じ人間の民族を滅ぼしてきたのが人間なのだ。
それはそうだろう。相手の出方次第で自分達の命がいつ消し飛ぶかわからない状況を放置できるほど人間は勇敢ではないのだから。
互いに武器を鞘に納めた剣士達は一応の信用を重ね、
レイスは忍にシルヴィアの居場所を聞いて、その場所に駆けた。
月村忍はそれを見送った後、ある事を思い出した。
そういえば、そこには一緒にすずかもいるはずだ。
シスコンのあまり普段のお貴族様をぶっこわしてお貴族様(笑)になっていたレイスなら大丈夫だとは思うが、
信用しきった訳でもない相手と護衛もいないすずかを合わせるのもどうかと思い、
恋人と共にその後ろに追随した。
すずかの部屋のドアを開いたままでレイスが固まっていた。
その理由は遅れて忍達にも理解できた。
忍の妹が完全にアレな顔をして目の前で固まっている男の妹と口づけしていたのだ。
世界が凍った。
完全に停止していた。
例えるなら体感時間で3秒程。
時間が止まっているのに3秒と言うのも不思議な話だが、確かに3秒程世界は停まっていた。
そんな理由でシリアス空間が再びギャグ空間に変わったのも束の間。
世界の修正力は再びシリアスを望んでいた。タグ『残酷な描写』は伊達じゃない。
部屋の窓が割れて忍達の良く知る巫女服の少女が飛び込んできた。
それに少し遅れて昏い液体が窓を突き抜けて入り込もうとして、巫女の持つ札によってその動きを封じられた。
まるで割れたはずの窓がそこに在るかのように黒き異形はその見えぬ壁に張り付いていた。
よく見ると舌と眼が無数にその黒の中にある。
それは埒外の命だった。
秩序を冒涜する禍であった。
「窓に、窓にっ!!」
それに気が付いたすずかがどうやらSAN値が下がりそうな発言をしているが、
彼女自身も人間から見れば向こう側の生き物の癖にかえって不思議である。
『夜の一族』だとかどう考えても屍喰鬼とかナイトゴーントとかそいつらと一緒に魔導書に記述されていてもおかしくない筈なのだ。
現世に肉体を持つために自身を受胎させたい異形達が光の壁に張り付いている。
特殊な技を半減させるどころか、特殊な存在の接触を完全に防いでおり、
そんなことはポケットサイズのモンスターをしても例えレベルが100だろうと、
種族値が600だろうとできないが、(1ターンならワイドにガードする技は存在する。)
神咲那美はそれを成し遂げた。
だが、時間の問題だろう。
その見えない壁には少しずつ罅が入り、那美の背中からは夥しい汗が溢れている。
(見えない壁に罅なんて入っても解からないし、白基準の薄布が透けてエロいとかそういうツッコミは無しである。)
困った時のスカえもん、もといDr.スカリエッティから聞いていた強制封印コードをチェルノブリュニークに施す。
それと同時に最後の気力を振り絞って母の胎内に孵ろうとした妖魔達が封絶を切って侵入してきたが、
流石にポンコツな所もあるが、超帝国人の純血をひくレイスがそれを許すことは無かった。
先程忍者との戦闘で威力を垣間見せた『白銀』がその真価の一片を顕した。
銀粉が部屋の中を包むように発生した。
その銀の霧は中にいる人々だけは避ける様に充満して存在していた。
物理粒子を周囲に散布する事で、魔力子、霊力子、字祷子、邪悪の因子、暗黒素粒子等を問答無用で反射する破邪の浄銀。
それが『白銀(ミスリル)』。
又の名をオレイカルコス、日緋色金という。
そして先程容がある異形を切り伏せた後に再生させなかったロジックだ。
「有象無象が触れる事能わざる事と識れ――――――――――――――――、銀界一斉昇華。」
レイスは『白銀』の状態を個体から液体を通り越して気体に移し替える事で強制的に相手に浸透させた。
魔そのものである彼らにとってそんな事をされて堪る筈が無い。
人間なら肉体に気化した超高温の水銀をぶちまけられる様なもので、助かる筈が無い。
奈良の大仏だって制作の際に水銀やらを沸騰させている内に周辺住民が大仏完成までの間、
謎のそれまで仏像を立てなかった仏罰を受ける事になったのだ。
それ程の有害なものが直接かけられたらどうなるかなど考えてみる必要すらない。
哀れ那美が救おうとした魂達は、一切合財が一瞬に永遠の苦痛を凝縮した苦痛を内包し消滅した。
基本的にシリアスモードならオサレ
剣を抜くことなく格の差だけで相手を抹消できる程度には違いがある。
レイスはそんな魂達の事など直ぐに意識の外に追い出して、(そもそも意識すらしていなかったのかもしれないが。)
シルヴィアの枕元に飛びついてその手を握りこの場にいる誰にも理解できぬ異郷の言語で祈り始めた。
「…彼らにだって言い分はあったんです。」
その祈りを邪魔したのが那美だった。
その一言はレイスの祈りにとって邪魔だった。
「シルヴィアを害すものは須らく悪だ。
強き正義が悪を滅ぼして何がおかしい。
シルヴィアを奴等から護りきる事も出来ず、俺から奴等を護りきる事も出来なかった者が終わった後に恨み言を言うのか。」
それは残酷で冷酷な現実だった。
そして彼自身にとっては自戒そのものだった。
ただそれをそのまま納得するにはレイス以外の人間は優しすぎた。
「それでも、守りたい命があったんです。」
「助けに来てくれた那美さんを責めるのはお門違いだ。」
「そうね、恭也の言う通りよ。」
「窓に、窓に。」
一人、SAN値が回復するまで使い物にならないのがいるが、それは置いておく。
というか、誰か一人でもすずかを気にする者がいてもいいと思うのだが、そんな者はいなかった。
「第一、窓から侵入するなんて非常識だ。家主の確認を取れ。」
「今一番それを言ってはいけない奴がそれを言った気がするぞ。」
「…今日のお前が言うなのスレッドはここかしら?」
「窓に…窓、に、いあ…い…あ」
「ふんっ。」
完璧にいじけたクール系ライバルキャラの様な対応しかできなかったレイスは4(実質3)対1での舌戦を不利だと感じてその話を打ち切った。
理論で相手全てに勝ちを取る自信はあったが、相手が意見を思い込んで変える気が無い場合、
多数で作った空気で結論が押し切られるであろう未来を、そして家主との関係の悪化を危惧したのだ。
正直に言ってしまうと民主主義に敗北した共産的理想主義者の様であり、リア充に負けたヘタレである。
ぶっちゃけ只のアホにも見えるが、これでも普段は冷静で冷酷で冷徹な指揮官であり、
時に危険を伴う自爆染みた行為や、相手に殺す事を布告した上で拷問して殺す躊躇や情けの無い特殊工作員なのである。
別に、「俺は何人殺せばいい」と疑問に思うことなく必要ならば着々と殺す特殊工作員である。
領域化及び情動域欠落化装置を搭載した巨大ロボットには乗らないが、
その頭脳自体が領域化及び情動域欠落化装置なので特に何の問題も無い特殊工作員なのである。
妹が絡むとポンコツだが。
「…すまないが、俺と妹を此処に三日置いて欲しい。金なら幾らでも払う。」
「シルヴィアちゃんと一緒のベッドで寝ていいのなら。」
それに答えたのは少しずつ正気が戻ってきたすずかだった。
こうしてその後、やられ役の成金のような発言をした彼は三日三晩眠り続けた妹を見守る為に居候と化していたが、
妹が目覚めたときには涙を流しながら歓喜した。
だが、念には念をという事で経過を見る為に彼は妹に言ったのだ。
「一応、病院で体調を見て貰おう。」
がっつり空気中の
シルヴィアの笑顔が一瞬固まったのを。
そしてそれにはレイスは気付いては居なかった。
シルヴィアは愛する兄にこそ気付かせないために演技をしたのだ。
すずかだって、病院に行きたくないと叫んだあの発言が無ければ気が付く事なんて到底在り得なかった。
シルヴィアを心配してレイスに何かを言いかけたすずかに対して彼女は小さく首をふって目を閉じた。
すずかは結局何も言えなかった。
病院で外国人のイケメンが入院中の妹の為に面会時間いっぱいまでいるという噂が全看護師に伝わった日から三日後、
その外国人レイスは暗くなった夜道を歩いていた。
月村から提供された家に帰る帰途、
その途中の公園。
そこで、彼はある少女を見た。
見合誤るわけは無い、見合間違えるわけはない。
だって、
だって彼女は、彼女は―――――――――――――――
「アリシア…?」
とらいあんぐるハートは全く知らないのでWiki片手でやりましたが、だいたいあってますか?
多分主人公が忍者で挫折から立ち直る、canvas2みたいなお話しなんですよね。