怨讐の浄銀   作:蕎麦饂飩

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さよならをおしえて

「…アリ…シア。アリシアじゃないか。

ほら、()だよレイスだ。レイス・グランツァーリンだ。

ははは、全然変わらないね。」

 

思わずかつての一人称に戻ってしまうほど興奮したレイスだったが、

自分で言っていてその違和感に気が付いた。

 

全然変わらない(・・・・・・・)

 

ああ、そういうことか。

 

 

 

 

―――――――――――――――――プレシアさんも人が悪い。

教えてくれてもいいのではないのだろうか?

アリシアの蘇生は成功していたんだ。

ほら、この輝くような髪、白い肌、そしてあの可愛らしい顔。

この少女はアリシア以外の誰だというのだろうか?

 

さあ、再会の喜びを分かち合おう。

レイスは涙を堪えながら、アリシアが眠っていた間に成長した自分の余裕を見せる事にした。

 

 

「アリシア、俺の事を覚えているか?」

 

「…あなたも、私の事をそう呼ぶんですね。」

 

 

返ってきたのは否定。

レイスは笑顔の表情を固定したままその心が冷え込んだ。

 

 

「教えて下さい。私は―――――――――――――――――フェイト・テスタロッサは、何者なんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイスはフェイトと彼女の使い魔アルフに彼女達の境遇を聞いてすぐさま、

外付けの無変換魔力解放装置を使って部隊の持つ独立動力源とリンクした転移魔法を実行した。

場所は時の庭園以外に在り得なかった。

 

 

 

「どういう事ですか、プレシアさん。」

 

「何の事かしら。」

 

 

「アリシアの事です。何故彼女がFATEなんですか。貴方の愛娘じゃないんですか。」

 

「何を言っているの、あんな失敗作(・・・)とアリシアを一緒にしないで頂戴っっ。」

 

 

「何を以ってアリシアをあの醜悪な実験の名で呼ぶんですか。

何があっても貴方だけはアリシアを否定してはいけない。否定するなんてありえない筈だ。

僕は貴方がアリシアを愛していたことを知っている。愛していることを知っている。

ありえない。そんな事はあり得ない。在り得ない。在り得ない。在り得ない。」

 

 

 

『裏』の世界の住人だけあって人造人間計画ProjectF.A.T.Aを知っていたレイスは静かに激怒した。

いや、こんなはずじゃなかった世界の理不尽に憎悪していた。

 

 

「違うの。あの子とは、違うの。」

 

「何が違う。彼女の遺伝情報に何の違いがあるっ!!

彼女はまごうことなくアリシア・テスタロッサだ!!」

 

 

 

「正確が違う。利き腕が違う。魔力資質が違う。

ほら、違うじゃない。違うわ。断じてアレはアリシアなんかじゃない。私の可愛い娘なんかじゃない。」

 

 

 

その発言を聞いてレイスはふと冷静になった自分に気が付いた。

こんな気持ちは管理局に徒名す愚物を壊滅するときのようだ。

レイスはその感情の名前を知っていた。

 

『無感情』

 

自分の心を殺す感情。だから無感情。

愛とは対極にある感情だった。

決して今まで彼がプレシア・テスタロッサに決して向ける事の無かった感情だった。

 

 

 

「だったら、利き腕が同じで、魔力が無くて、元気に見えればアリシアなんですね。」

 

「…何を言って―――――――――――?」

 

プレシアは得体の知れない恐怖をかつてよく知っていた(・・)青年に感じた。

 

 

「じゃあそこを修正すればいい。貴方は芸術家じゃない、研究者なんだ。

失敗したら壊して一から造り直すよりも問題点だけを修正する方が合理的だってわかるでしょう?

利き腕も修正できる。魔力だって封印できる。性格だってそれこそProjectF.A.T.Aで記憶の転写技術で修正できるでしょう?

何だったら、クローンの応用で少し遺伝子や脳をいじってもいい。

貴方のアリシアになるまで修正すればいい。何度も、何度も、何度も、何度も、

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

何度も――――――――――――――――――――――――――――――――――修正すればいい。

ほら、アリシア・テスタロッサの出来上がりだ。」

 

 

 

「ひぃっ。」

 

 

「なにをおどろいているんです。

もしかしてきがつかなかったんですか?

あはは、はじめてぷれしあさんにかったぞ。やったぁ。

あははははははははは、あはははははははははははははは。」

 

 

プレシアは自分がアリシアの死んだ日に壊れてしまったと感じていた。

そしてレイスは壊れなかったと思っていた。

 

でも、そうじゃなかった。

いや、そうだったが、それこそが違っていた。

 

壊れる事が出来た自分は幸運だった。

壊れる事で痛みを産む銃弾は突き抜けてくれた。

だが、その痛みを受け止めて壊れる事が出来なかった、

護るべきものがまだいた少年は、

壊れる事が出来なかったがゆえに壊れていた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

今の彼の話し方は初めて会った時以上に幼くなっていた。

プレシアはここに来て恐怖より憐れみを感じてしまっていた。

それは彼女が本来持っていた優しさだった。

 

 

「ふぇいとをありしあになおしてあげよう?

ぷれしあさんならきっとできるよ。

ぼくもおうえんする。きっとできるよ。」

 

 

その青年(しょうねん)の眼は何も映してはいなかった。

何も、見ようとはしていなかった。

 

 

プレシアはそっとレイスを抱きしめ、

そして電撃魔法で気絶させた。




やっぱり身内にはポンコツ
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