怨讐の浄銀   作:蕎麦饂飩

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Mighty Heart

レイス・グランツァーリンがアリシア・テスタロッサを2度殺した日、

 

「帰ってっ!!」

 

そうプレシア・テスタロッサに追い出されたレイスは本来の任務を失敗した事も忘れ、

職場の一角で落ち込んでいた。

と言っても仕事に支障は出ているわけでなく、

何時も通り、常人には弾きだせない速度で幾つもの案件を処理していた。

ただ、その表情が完全な無表情に固定されていたというだけだ。

普段から無表情か貼り付けた微笑しか見せないレイスだが、

それでもこの日の無表情は格が違ったと部下達は語る。

それと同時に、普段はアレでそれなりに気を許されていたのかもしれないというのが部下達の認識となった。

 

 

その話がどう伝わったのかは解からないが、レイスに後見人であるギル・グレアムから食事の誘いがあった。

普段部下達に誘われても、一切プライベートでの付き合いは行わないレイスだったが、

後見人であり、同盟者(・・・)であるグレアムが相手ではそうはならなかった。

 

ついでにその集合場所である『地球』にて行う幾つか―――――100件以上の工作任務を請け負って、

彼は妹と共に地球に向かった。

 

 

 

 

 

 

月村という地主から空き家(月額500万円)を一つ借り受けて地球での生活基盤を作ったレイスは、

グレアムに言われた回転寿司という聞き覚えの無い施設で待っていた。

 

「久しぶりだな、レイス君。」

 

「ええ、お久しぶりです。」

 

硬い挨拶を返してグレアムに連れられて店内に入ったレイスはその彫刻染みた顔を僅かに歪めた。

 

 

(生臭い。)

 

 

そう言いたいが、口には出さない。

本音を言ってしまえばもっと他にも言いたいところはある。

どうしてこのような大衆店を選んだのか?

妹を呼ばない食事会と言うには人払いもされていないのではないか?

というか、この周囲ののっぺり顔達は顔をジロジロと見てきて少々不愉快だ。

等、思う所は多々あるが重要ではないと判断して思考から追い出す。

 

そうすると余計にその生臭さが鼻に来る。

 

「まあ、兎に角座りたまえ。その回っている皿を自由にとって食べては積み上げるシステムになっている。

空いた皿はレーンには戻してはならない仕組みだ。」

 

グレアムから受けた説明は、入り口で回転ずしを知らないであろう東欧系外国人の様なレイスにたどたどしい英語で店員から受けていたが、

わざわざそれを言う必要もない。会話を楽しみに来たのなら、会話の情報内容に難癖をつける意味などないからだ。

 

取り敢えず横に来た皿をレイスは取ってみた。

 

 

 

(やはり、生臭い。というか、これは未調理の生魚ではないのか?)

 

使ったことも無い箸を器用に使って寿司を挟んだレイスが口元に近づけて固まっているのを見たグレアムは苦笑しながら、

 

「それは食べる前に醤油、そこのソースを付けるんだ。」

 

と指摘した。

その指摘通りにして今度こそ寿司を口に運んだレイスは愛しい妹シルヴィアを連れてこなかった事を心から喜んだ。

 

 

(っっっ~~~!!)

 

 

口の中に広がり鼻を抜ける暴力的な刺激。

今のレイスはまさに初めてわさびを食べて悶絶する外国人そのものだった。

 

 

「…これは、アブラナ科の食草忌避物質アリルイソチオシアネート。

視覚障害者への警報などに使われますが、

加水分解で引火性のある劇物アリルアミンになり―――――」

 

ペロッ、これは青酸カリッ!! どころではない的確な、的確過ぎる回答だったが、

ある意味において的外れだった。

 

「…これはワサビと言ってこの国の一般的な調味料だ。」

 

「…何と。」

 

この日レイス・グランツァーリンは日本人に対する認識を大幅に修正した。

劇物に耐性を付ける事を好む特殊工作員向きの人種だと。

 

その後、暫く嫌々ながら寿司を食べている内に、

少量ならワサビはウォッカのつまみに合いそうだと考えれるようになるまでには、

レイスは寿司に対する抵抗感を薄めた。

 

途中、赤い汁の付いた空の皿が流れて来た為に、その事をグレアムに話すと、グレアムが店員に通報し、

その店員が向かったレイス達の二つ横の席の家族連れが、

 

「皿を残したらお金を払わなくてはならないのだろうが!!

日本人は我々の祖先に酷い事をしてきたっ!!

だから日本人は我々を丁重に扱うのは当然だっ!!

ましてやお金を請求するなんて恥知らずだっ!!」

 

そんな風に怒鳴り始めた。

恐らく話しぶりからして日本人ではないのだろう。日本人がジロジロと己の顔を眺めていたのは、

外国人のこれまでの行動からへの信頼の無さなのだろうかとレイスは再びその認識を改める。

 

それと生真面目なレイスからすればこのようなどちらが恥知らずかわからない犯罪者に何もしないのは気が引けた。

思わず席を立った時、

 

レイスより先に動いたものがいた。

 

「ちょっとあんたたち、回転寿司のルールを知らないならともかく、知ってて皿を返すなんて頭おかしいわ。

あんたたちみたいな非常識がいるから関係無い外国人まで肩身が狭い思いをするのよ。

あー気分悪い。これなら安い回転寿司なんて来るんじゃなかったわ。」

 

そう怒る裕福そうな身なりの日本人には見ない髪色の少女も割と失礼な事を言っているが、

レイスにはその発言がまさにそのまま同意できた。

それに少女はどこか自分の知る者に似ていたというのもある。

 

 

「なんだとっ!! 小娘が、年上に対する礼儀も知らないのかっ!!」

 

その家族連れの少女より大きな子供が少女を蹴とばした後、

その父親らしき人物が、倒れた少女を踏みつけようとした。

どうやら自分より弱い者には強く出られる性質らしい。

 

少女の父親らしき外国人が少女の名前、それもレイスにはとてもなじみの深い音の名前を呼ぶ中、

少女を踏み潰さんとするその足は少女の頭に食い込む――――――――寸前で、銀色の何かが光り、

その足が固定されたのに遅れて男が殴り倒されることで事なきを得た。

 

固まる少女に、先程聞こえた名前をもってレイスは優しく呼びかけた。

 

「大丈夫か、アリシアちゃん。」

 

一瞬ポカンとなった少女は、

 

「あ…ありがと。それと私の名前はアリサだから。」

 

お礼を言いつつ自分の名前を訂正した。

レイス的にはアリサだろうが、アリシアだろうが、アリーシャだろうがアクセントの問題だとは思ったが、

敢えて口に出す事はせず、起き上がらせるために少女に手を差し伸べた。




割とナチュラルに黄色人種をディスっていながらも表面上は紳士面な主人公。
こればかりは生理的な好みの問題だから仕方ないね。
差別じゃなくて区別だから大丈夫(白目)

目の前で見ず知らずの国民が凶悪な魔法生物に襲われそうになったら、これを助けるために自分の奴隷を囮として、国民を逃がす手伝いをする超善良なリアニダニーの系譜だから仕方ないね。(真っ白目)

上流階級の相手にはきちんとした彼本来の生真面目な部分が出てくるが、
イエローモンキーにも表面上『だけ』はきちんとしています。
だって真面目だから。
勿論、有色人種が表舞台に上がるのを賞賛しつつも、その背後のエリート達との繋がりをこそ優先する類いである。

主人公の肩書き。
闇の書遺族連合会長(過激派)・貴族会同代表・帝国(現在資本主義共和国)出身・グレアムさんと親しい・ナマモノ苦手。
これだけでもはや語らずとも敵サイドなのは間違いないよね。
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