間違いが多きことと思います。すみません。
要するに強いニンジャであるということなので、その路線で行きます。
アリサ嬢を救出した後、その父親であるデビット・バニングスから礼を述べられたレイスは、
あくまで当然の事をしたまでです。と謝礼を固辞したが、
内心でこの地に影響を持つ実業家の繋がりができたことを内心喜んでいた。
借りを返せる有能な者への貸しはその場での金銭よりも大きな価値があるという判断だ。
裏を返せば、借りを返せる余裕や能力の無い者への投資は完全な無駄だとも言える。
幼い少女に振るわれる理不尽な暴力。
いや、例え対象が幼い少女であろうとなかろうと、目の前で行われる悪を許容できないのが、
罪を許容できず、それに例など必要は無く当然だと思えるのが、
生真面目なのがレイス・グランツァーリンという人間であり、
富める者は他者の好意に依存する必要も無く、
他者に気兼ねなく自身の正しきを行うという両親から引き継いだノブレスオブリージュであり、
また狡猾に計算高くこれ以降の事を考えて借りを返させないというのもレイス・グランツァーリンという人間なのである。
前者の性質はは生まれもって、そして家族に培われた教育の賜物であり、
後者の性質は幼くして権謀術数の世界に追い込まれ、自らその道を突き進んだ彼自身の選択である。
レイスは自身の葛藤などは傍において、あくまで何時もの微笑みを讃えたポーカーフェイスを用意して、
デビットには革命から逃れたものの、
他国が肌に合わずアメリカに対抗する力を少しでも欲していたロシアにその資産価値を餌に戻った貴族の家の出と自己紹介していた。
勿論、それが『現実』であるような工作は終わっている。
主に車、情報、IT、警備、武器・兵器、傭兵、鉱山・油採掘、温泉産業、園芸を取り扱う総合商社の御令息である。
勿論、グランツァーリン家は地球にすらいないので経営は現地の人間に一任しているが。
それにしても誰も安い回転寿司で米露の大企業のトップの対談が行われるとは想像もしなかっただろう。
レイスの曽祖父の代から行われていた地球への工作の基盤が生み出した成果であり、
グランツァーリンカンパニーの名前はデビットも聞いたことがあった。
というか、冷戦時代にはデビットの会社と色々あった。
例えば、東アジアでの代理戦争の折にはアレでアレでアレな応酬があった。娘には聞かせられないような内容だ。
まさかそのライバル―――――――いや、そんな綺麗な言葉ではない、
かつての怨敵の一つ、その当代会長が日本で娘を助けに入るとは思わなかった。
怪しい者すら感じてしまうが、それでもデビットは人を見る目はあるつもりだった。
恐らくこのレイスと言う青年はデビットの都合よく掌で転がせるような人間ではないだろうが、
逆に金の為なら娘のピンチを自作自演で作り出すような外道でもなく、
個人としてみるなら誠実であるように感じていた。
見た目も神々しいほどの美形であり、年は娘とは離れてはいるものの若い。出会いの形は悪くは無い。
娘次第だが、この青年と婚姻関係を結ぶことになれば、互いの利益になるのか?
それともアメリカ、ロシアの両国から敵と繋がる危険因子扱いされて行動や仕事が制限されるか?
そんなことをさらっとデビットは考えつつ、レイスに女性としての娘の印象を聞いてみたが、
アリサを傷つけないようなかなり婉曲なロリコン扱いノーセンキューなレイスの態度に人柄は悪くないが難しい感触を受けた。
遠回しにガキ扱いされたショックと、
持ち前の
一方、レイス側としても比較的ビジネスライクな月村の関係だけで無く、
氷村家といった割と性質的に好感触であった有力な一族との関係が他にも増えた事は喜ばしく、
冗談でも娘の配偶者として打診されるという感触に手ごたえと言う物を感じていなくも無かった。
「――――――――バニングスさん、其方の方は?」
無粋な日本人に邪魔されるまでは。
「ああ、士郎。此方はグランツァーリンカンパニーの――――――――――――」
その発言の直後、空気が凍った。
先程から脚に軽い撓みを持たせつつもぶれず、両足をしっかりと地面に付けた隙の無い体勢に加え、
その瞳から殺気染みた何かが発せられ、片腕を服の内ポケットの中に軽く入れた士郎と呼ばれた男は、
「――恭也、美由希。」
その後ろにいる彼に似た青年と、張りつめた雰囲気だけは似ている少女に声を掛けた。
青年は一見解からないレベルでその重心を大きく落とし、
少女はその背後にいる女性とアリサと同年代であろう少女を庇う位置に隙も無くにじり寄りながら視線だけで周囲を警戒していた。
…できる。
レイスとグレアムは目の前の3人の戦闘力の凄まじさを感じた。
寧ろグレアムは驚きを隠しきれず若干呑まれていた。
レイスはそのポケットに入っているものが手の形からして投合用の何か、
詰まるところの日本産高級暗殺者の類、外国人風に言うとNINJAである可能性が高いと迄は看過した。
≪グレアムさん、少なくとも3人の忍者がいます。≫
「アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」
念話で声には出さず情報を流したレイスだったが、
忍者の余りの恐ろしさにグレアムは思わず声に出してしまっていた。
仕方ない。だって忍者=絶対無敵なのは外国人脳内の基本なのだから。
地球を学ぶときに、最初に知る事は世界を裏から操ってきたとされる忍者であることは、
管理局に所属するものとして当然の事だ。
ナカジマという、地球にルーツを持つ男の妻が特殊部隊の人間である事など、
ナカジマ=ジャパン=ニンジャ=ヤバイの方式からなんら不思議な事では無い。
一方日本人達は忍者、つまり影に忍ぶ暗殺者的な思考で正体を見破られた以上、
一刻の猶予も無い。何故なら暗殺者の技能である所見殺しが警戒されているからだ。
JAPANESE NINJAサイドが完全に1秒の猶予があればレイスとグレアムの戦闘力を無力ができる様にと、
銃刀法などガン無視したものを何時でも引き出せるように構え、
どちらにどちらが向かうかと念話も使わず眼でコンタクトを交わした直後、
「あの時の確執は終わった事だ。今は彼とは友人なんだ。」
一瞬即発の火薬庫はデビット・バニングスによって沈められた。
つまるところ、デビット・バニングスは昔高町士郎氏に護衛を依頼し、
グランツァーリン家が地球の人間に経営を任せている間に、
国家間の思惑もあり、命を狙われる様な状況があったらしい。
そして、士郎がボディーガードを引退する事になった機会とも全く無関係であると言う訳ではない。
それに、士郎が知る限りの裏でグランツァーリンの息が掛かった暗殺者は所謂『異能』だらけで、
影に潜んだり、やたら撃たれても平気だったり、性格がぶっ飛んでいたり、碌なのがいなかった。
ヤバい奴は1割がグランツァーリン関係だと言えばそのぶっ飛び具合が解かるハズだ。
人質を取って協力させるのは基本、無関係な人をも巻き込むのも基本。
具体的にはデビットを暗殺するために幼い少女に人形の中に入った爆弾を届けさせたり、
オソロシアど真ん中なド外道行為に戸惑いの無い方針だった事はデビットも知っている。
まあ、アメリカとロシアだしそういう事もある。
何故、安い回転寿司屋でそんな事が起こるのかは全く解からないが、
こんな事が起こってしまった以上、レイスとグレアムは日本の印象を改める事になる。
管理局で最近その恐怖が眉唾物とされてきた忍者への警戒を再度大きく引き上げる様報告しなければならない、と。
レイスとグレアムが帰る時にアリサが、
「あの、銀色の物は何だったの。」
と、聞いてきたのでレイスは笑ってごまかした。